ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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ノルマ5枚の姪と素麺と野菜天ぷら

STARRYのオーディションからひとりちゃんが帰って来た。 本当は夏休みに入るので実家に帰ってもよかったのだが、普段お世話になっている私にちゃんと報告したいと言って帰ってきてくれた。うれしい。ただ…

 

「あっただいま…です」

 

「おかえりひとりちゃん」

ひとりちゃんはいつにも増して暗い顔をして俯いていた。この様子だと…オーディションダメだったのかな?

 

「こんばんはオジサン。また来ました」

 

「おや、山田さんいらっしゃい」

 

「あっすいません、リョウさんまた金欠らしくて…」

 

「ご飯食べさせてください。これよかったらどうぞ」

 

ご丁寧に山田さんから野草をいただきました。そんなに気を使わなくてもいいのに。ちょうど良いからこれは晩御飯に使わせてもらおう。

 

「これはどうも、わざわざありがとう。さっ上がって」

 

「はい、ゴチなります」

 

そそくさと部屋に入っていく山田さんをよそにひとりちゃんは俯いたままだ。

 

「ひとりちゃんもお疲れ様。すぐご飯にするからね」

 

「あっはい、あっあの叔父さん…オッオーディションですけど…受かりました」

 

「えっすごいじゃないか。よかったね!ひとりちゃん頑張ったんだね」

あれ?だとしたらなんでそんなに浮かない顔をしてるんだろう…。

 

「あっはい…ありがとうございます」

 

「なら今日はお祝いのご馳走にしようかな」

 

「あっあの、でっできればお腹に優しいもの系でお願いしたい…です」

 

「あっひとりちゃん調子悪い?わかった、任せておいて」

 

きっと緊張の連続で胃の調子が良くないのだろう。ならば季節的に定番の素麺にするか。山田さんの野草は他の野菜を足して天ぷらかな。

 

 

氷水に卵黄を入れて撹拌する。よく混ざったら小麦粉を入れてほどほどに混ぜて天ぷらの衣を作る。打ち粉をした各野菜に衣を潜らせて180℃に熱した油に入れて揚げる。「完成」

 

たっぷりのお湯に素麺を入れる。素麺同士がくっつかないように菜箸でかき混ぜる。2分後ザルにあけて流水でよく洗って滑りを取る。少し過剰なくらいに洗うと段違いに美味しくなるのでしっかり洗う。皿に盛り付けて各種薬味も用意して「完成」

 

 

本日の晩御飯

素麺

薬味(山葵、茗荷、生姜、葱、海苔、胡麻、大根おろし)

野菜天ぷら(なす、さつまいも、カボチャ、オクラ、大葉、山田さん寄贈の野草[オオバコ])

 

「では手を合わせてください」

 

「あっはい」

 

「うぃ」

 

「「「いただきます」」」

 

言い終わるやいなや山田さんは野菜天ぷらにかぶりつく。めんつゆ兼天つゆにダイブさせて各種天ぷらをサクサクもぐもぐ。相変わらずいい食べっぷりだね。素敵だ。

 

「うむ、美味い!シェフを呼べ」

 

「ここにいるよ。よかった」

 

「あの野草がこんなふうに味わえるとは…感謝」

 

「まさか生で食べてたりしてないよね?」

 

「…刻んだり水で流し込んだりしてるんで大丈夫」

 

「普通にお腹壊すから今度から家に持ってきなさい。ちゃんと調理して出すから!」

 

やれやれ…山田さんは放置するとどこかで野垂れ◯んでそうで心配だ。そんな山田さんに対してひとりちゃんは静かに素麺を啜る。チュルチュルと音を立てて数本の素麺が口の中へ。途端にギンッと目を見開き顔色も変わる。

 

「あっこの素麺、すっすごく美味しいです」

 

「よく洗ってあるから喉ごしが違うでしょ?」

 

「あっはい。ツルツルです」

 

「喉ごし爽やか。こんなそうめんは初めて」

 

これを機にひとりちゃんも野菜天ぷらへ箸をのばす。少し迷ってオクラを取り、サクサクハミハミする。何かが原因で食欲が減退してたようだけど、調子が戻ってきたようで何よりだ。かわいい。

 

「そういえばオーディション合格って言ってたよね?改めておめでとう」

 

「あっはい。…ありがとうございます」

 

「うむ。まあこれくらいは余裕」

 

ふむ…やっぱり浮かない顔になるね。オーディション合格自体はうれしいけど他の懸念材料がある感じかな。対して山田さんはすごい自信だね。その1割でもいいからひとりちゃんに分けて上げて。

 

 

ごちそうさまでした

 

 

「ゴチでした。また来ます」

 

「はい、家以外でもちゃんと食べるんだよ?」

 

山田さんを送った帰り道、ひとりちゃんは終始無言。何か言いたそうだけど私からふった方がいいのだろうか。いや、ひとりちゃんのことだから今頭の中で何て言おうかたくさん考えているのだろう。

 

家に着いて中に入ったと同時にひとりちゃんは話し始めた。

 

「あっあの実はオッオーディション合格して、ラッライブできるようにはなったんですけど…ノッノルマがありまして…」

 

「ノルマ?ああ、チケットを一定数売らないといけないんだっけ」

 

「あっはいそっそうです。そっそれで叔父さんに1枚…かっ買ってほしくて…あっむっ無理だったらいいんですけど、でっできればでいいんですけど」

 

「なんだそんなことか。それぐらいお安いご用だよ。なんならノルマ分全部買っちゃうよ」

 

「あっそれは…だっダメです。うれしいですけど、それでノルマ分をさばくのは…なっなんか違う気がして」

 

うーむ、こういう時くらい近くの大人を頼って少しズルいことしてもバチは当たらない気がするけど…ひとりちゃんの真面目な部分がそれを許さないのかな。

 

「わかった。じゃあ1枚買わせてもらうよ。あっライブはいつだったっけ?」

 

「あっ8月24日です」

 

「ん?24日?…あっ」

急いでシフトを確認する。私の記憶が確かならば…ああやっぱり。

「ごめんひとりちゃん、その日仕事だ…しかもイベント食で絶対休めない日だ…あっでもチケットは買うよ」

 

「あっだっダメですダメです、来れないのにチケット代払っていただくわけには…」

 

「いやいやでもノルマもあるし1枚くらい」

 

「いやいやダメです、ノッノルマは4枚は何とかなるんで後1枚くらいなら…」

 

「いやいやなら尚更その1枚を」

 

「いやいや」

 

「いやいや」

 

しばらくいやいや合戦が続き、ついぞ私からのチケット代は受け取ってもらえなかった。ひとりちゃんは意外と頑固なんだね。次のライブの時は日程確認してしっかり希望休を取っておくからね。




次回 誤解を生む姪と◯◯

次もゲスト回ですよ。ついに結束バンド最後の砦がやってくる?
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