ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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御覧になっていただきありがとうございます。
誤字報告ありがとうございます。
そして20話突破!めでたいめでたい。
今回は個人的に補完したかった案件も含まれてます。


師匠と姪と豚バラカレー

今日はバイトのシフトは入ってなくて、バンド練習が終わったタイミングで帰ることになった。「お疲れ様でした」と挨拶をしてSTARRYの外に出ると見覚えのある人が倒れているのが見えた…。真っ赤な顔に前と同じ薄着なキャミワンピと素足に下駄、手にはパック酒。その風体を見間違えるはずもなく…。あっ目が合った。

 

「あっ、ひとりちゃ~ん来たよ~」

 

「あっお姉さん、きっ今日は私達のライブの日じゃないですよ?あっあと時間も違います」

 

「あれ?今日じゃなかったっけ~?ちゃんとチケット見て確認して来たんだけど…あっ」

 

「どっどうしました?」

 

「これ違う後輩のチケットだったわ~…あっ、てことはその後輩のライブすっぽかしちゃったか…まあ私ドンマイ!」

 

それでいいのですかお姉さん…。

 

「あれ?ぼっちちゃん入り口でなにしてんの?ってその人はお客さん?」

 

「ぼっち…ちゃん?何?ひとりちゃんってぼっちちゃんって呼ばれてんの?」

 

「あっはい、ぼっぼっちです」

 

「そっか~かわいいアダ名だね。じゃあ私は新宿に帰りま~す!ぼっちちゃんまたライブの日にね~!」

 

「あっはい」

 

「なんだったの?あの人」

 

「あっあの人は…わっ私の恩人…ですね」

 

改めて虹夏ちゃんに挨拶をして帰路につく。はずだったのだが少し進むと、再びお姉さんがこちらに向かって来た。あっこれデジャブだ。

 

「ごめ~ん!おにころ買ったらお金なくなっちゃった~電車賃かして~」

 

「あっすっすいません、私も今日はお金持ってきてなくて…」

 

あっこの流れリョウさんの時と同じような…。先に謝っておこう。叔父さんごめんなさい。

 

 

ピロン

ひとりちゃんからだ。確か今日は練習だけだから早めに帰れるって言ってたっけ。

 

 

すいません前に言っていた廣井お姉さんが困っていて助けたいので連れてきていいですか?

 

 

廣井さん…お酒を嗜むひとりちゃんの先輩バンドマンだよね。あの要注意人物の。助けたい?一体何に困っているのだろう…。しかしひとりちゃんの誰かを助けたいという思いを無下にするのは忍びない。返信。

 

 

大丈夫だよ。連れておいで。

 

 

ピンポーン

インターホンが鳴る。さて、話に聞いていた廣井さんとはどんな人なのだろうか。

 

「あっただいまです。あっあの、こちらが廣井きくりさんです」

 

「こんばんは~おっちゃんがぼっちちゃんの叔父さん?私お酒とベースをこよなく愛する廣井きくりで~す!」

 

わー顔赤いなー、一目でわかるくらいベッロンベロンだなー。お酒の臭いすんごい。ひとりちゃんが連れてきた子じゃなかったら今すぐ追い返しちゃう類いの人間だね。

「はいはじめまして、ひとりちゃんの叔父です。路上ライブの時はひとりちゃんが大変お世話になりまして。ひとりちゃんから聞きましたが何かお困りのようで」

 

「あっそうそう、実は帰りの電車賃がなくなっちゃって…かしてください」

 

廣井さんは申し訳なさそうに頭を下げた。なるほど、お金がないのか…確か廣井さんは先輩のバンドマンだったね。前にリョウさんが「バンドやってると売れるまではいつも金欠」って嘆いていたな…。この人もそうなのかな。

「お腹、すいてませんか?」

 

「え?…あ~言われてみれば今日はこれしか飲んでないや~」

 

そう言って見せてくれたのはどう見ても安いパック酒。

待て待て待て、今日ってもう夕方になるよ?お酒しか飲んでないなんてあり得ない。

「今からご飯だから家で食べていきなさい」

 

「えっでも電車賃さえかしてもらえたら」

「食・べ・て・い・き・な・さ・い」

 

「は、は~い…」

 

「あわわ…」叔父さん…おっ怒ってる?

 

 

前日に仕込んでおいた豚バラブロックと野菜(玉葱、人参、生姜、ニンニク、リンゴ等)の煮込みを火にかける。これは昨日から急速冷却&チルド保存しておいたものなので食中毒対策も万全だ。別で蒸かしておいたじゃがいもを大きめの賽の目に切りフライパンにバターを入れて玉葱、赤パプリカと一緒に炒める。温まった豚バラブロックを取り出して1センチくらいの厚さに切りオーブンで炙る。野菜の煮込みにカレールーを溶かして牛乳と炒めた野菜、炙った豚バラを投入して。「完成」

 

 

本日の晩御飯

炊きたてご飯(雪若丸)

叔父さん特製豚バラカレー

ミモザサラダ

福神漬け

 

「では手を合わせてください」

 

「あっはい」

 

「え~っと…」

「合わせてください」

「はい~…」

 

「「「いただきます」」」

 

さて、つい勢いで廣井さんもご飯に誘ってしまったけど、食べてくれるだろうか。ルーは甘口にしてなるべく食べやすく作ったと思うけど…。注目の一口目、器用にご飯、ルー、豚バラをバランスよくスプーンに詰めてパクり。ひとりちゃんの「んう~♪」の声に癒される私。かわいい。廣井さんはそんなひとりちゃんを見て、ルーだけを掬ってチビッと啜る。

 

「うんまっこれ!」

 

その一口で食欲に火が着いたのか、そこからモリモリと

カレーを掻き込み出した。かわいい?

 

「おっちゃん料理上手いね~。こんなうまいカレー初めて食べたよ」

 

「そう?口に合ったようで何よりだよ。おかわりもあるからね」

 

「おっす~…ところで私のおにころは?」

 

「家では禁酒禁煙です」

 

「んぐんぐ…」叔父さん…やっぱり怒ってる?

 

 

ごちそうさまでした

 

 

「はい、これ電車賃です。必ず返しに来なさいね」

 

「おっちゃんありがとう!絶対返しま~す。あとごちそうさまです!カレーめっちゃうまかったよ~。ぼっちちゃんもありがと~ライブ絶対行くからね!」

 

「あっはい」

 

廣井さんは返したパック酒持ってる方の手をブンブン振りながら帰っていった。家では飲ませなかったけど既に結構酔ってたね。ちなみにこの後、ひとりちゃんの(自発的な)謝罪ラッシュが始まったのは言うまでもない。すぐ止めたけど。

 

「とりあえずひとりちゃん?」

 

「あっはい」

 

「あんなふうになっちゃダメだよ?」

 

「あっはい」

 

 

 

 

 

 

「あっやっべ、結局ライブすっぽかしちゃった…。おっちゃんのカレーうまかったな…へへへ~」




次回 ライブ前日の姪と◯◯

↓人物紹介6

廣井きくり
叔父さんに胃袋を掴まれちゃった系女子(?)その7。台風ライブまでにひとりちゃん呼びからぼっちちゃん呼びになるイベントをねじ込むためにカレーを食べさせられた酔っぱらいベーシスト。これを機に、何かと理由をつけて叔父さんのご飯を食べに来るかもしれない。ただし叔父さんからの好感度はまだ微妙。
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