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今回は運命のライブの日の前日です。
いよいよ明日は結束バンドのライブ。私は仕事(泣)そして明日の主役であるひとりちゃんはというと…。
「あっ叔父さん、こっこれもお願いします」
「はいはい、じゃあこれは玄関に吊るしておこうか」
「あっはい、ねっ念のためもうひとつだけ…」
明日の天気予報をスマホやテレビで確認しながら一心不乱にてるてる坊主を作っては部屋に吊るしている。大型の台風が近づいていることが理由だ。テレビ画面では気象予報士が今後の進路について解説している。予想進路だと直撃はしなさそうだけど、目の前のてるてる坊主の大群から察するにひとりちゃんはとても心配なようだ。話を聞くとSTARRYでもたくさん作ってきたそうで、天候の影響でお客さんの数が大きく変わってくるみたいだ。
「あっこれもお願いします」
「うん、これは…ベランダはもういっぱいだから冷蔵庫に貼っておこうかな」
「あっすっすいません叔父さん。こんなにいっぱい…めっ迷惑ですよね?」
「大丈夫だよ、それだけ明日が楽しみなんだよね?そのバンドTシャツも様になってるよ」
「あっこれ虹夏ちゃんのデザインで…へへへ」
ここ数日はずっとこのバンドTシャツを着ている。私の言葉を聞いてひとりちゃんは嬉しそうにシンプルなデザインの『結束バンド』の部分を強調するように裾を伸ばして見せてくれた。この様子だけで明日のライブをどれだけ楽しみにしているかが窺える。かわいい。
「さて、そろそろご飯の支度しないと。ひとりちゃんはゆっくりしててね」
「あっはい、ありがとうございます」
さて、今晩は新鮮な魚が幾つか手に入ったからお刺身…いや、もっと食べやすくちらし寿司の具にしようかな。
酢、塩、砂糖を合わせて火を入れてすし酢を作る。みじん切りにした干し椎茸、人参、レンコンを醤油と砂糖で薄味に煮たらザルにあげてあら熱を取っておく。炊き上がったご飯(にこまる)に椎茸、人参、レンコンを入れ、すし酢をふりかけながら団扇で扇ぎ、しゃもじで切るように手早く混ぜ合わせて酢飯にする。
皿に酢飯を盛り、錦糸卵を敷く。賽の目に切ったマグロ、サーモン、ハマチ、タイを散りばめてボイルエビ、イクラもバランスよく盛る。最後に刻み海苔と千切りの大葉を散らして…「完成」
本日の晩御飯
叔父さん特製海鮮ちらし寿司
蛇腹キュウリと油揚げのおろし和え
豆腐と三葉のお吸い物
「では手を合わせてください」
「あっはい」
「「いただきます」」
ひとりちゃんは酢飯が見えなくなるくらいに所狭しと散りばめられた海鮮ちらしを見て「ふおぉ…」と驚いている。どこから手をつけて良いかわからないようだ。迷い箸はお行儀が悪いと言われてるけど全然許せるね。ひとりちゃんだから。
「どうしたの?遠慮なく好きなように食べていいんだよ?」
「あっいえ、なっなんとなくこんなにキレイにもっ盛ってあるの食べて崩しちゃうのがもったいない気がして」
「ハハッ優しいんだね。でも気にしなくていいんだよ。
どんなに華やかに料理を盛り付けたとしても、食べてもらえなきゃ意味がないからね」
「あっはい、じゃあ…」
意を決したような顔つきでちらし寿司に箸を伸ばす。酢飯の上に乗った具がこぼれないように素早くパクっと頬張った瞬間「んん~♪」至福の唸り声をあげる。かわいい。
「んっおいひいれふ。こっこんなにお魚の乗ったちらし寿司は初めてです。なんか、いろんな味がします」
「実はあれもこれもって買いすぎちゃってね。生でも食べられるうちに全部入れちゃおうと思って盛り付けたらすごい量になっちゃったよ。おかわりもできるからどんどん食べてね」
「そっそうだったんですね。ズズッ…ふぅ、お吸い物温かくてホッとします」
お吸い物で口の中をリセットできたのか、その後モリモリとちらし寿司を食べきってくれた。これだけたくさん食べて力をつけたなら明日のライブもバッチリだね。
ごちそうさまでした
「ひとりちゃん、明日は頑張ってね。叔父さんは観に行けないけど職場で応援してるからね」
「あっはい、がっがんばります」
「てるてる坊主、効くといいね。予想進路だと大丈夫そうだけどどうなるかは当日までわからないし」
「でっですね。STARRYでも作ったので、きっきっと効くと思います…あっあと叔父さんこっこれを」
そう言ってひとりちゃんが渡してくれたのは、ひとりちゃんが着ているのと同じバンドTシャツ。結束バンドのロゴの部分をこちらに向けてくれる辺りにひとりちゃんの人柄の良さが垣間見える。
「にっ虹夏ちゃんがお世話になったお礼にって叔父さんの分も作ってくれました…つっ次のライブの時着て来れるように。だそうです」
「そうか、虹夏さんが…ありがとう。明日はこれ着て行くよ。仕事だけど気持ちはファンとして応援してるよ。虹夏さんにもよろしく言っておいてね」
「あっはい、伝えておきます」
「うん、ひとりちゃん達なら、結束バンドならきっと大丈夫だよ。絶対うまくいくから」
「…はい!」
ああ台風よ。こんなにバンド活動に真剣に向き合って頑張ってるひとりちゃん達のために空気を読んでくれよ?フリじゃないからね?
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