ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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今夜叔父さん飯を食べるのはアニメ8話後のひとりちゃんと…?


打ち上げ帰りの姪と天使達と鯛茶漬け

ライブ当日、外はバケツの水を巨大扇風機の上からひっくり返したような横殴りの雨。モロに台風直撃で、何か見えない力に引き寄せられたかのようにこっちに向かってきた。来んなって言ったじゃん…。外を見た時のひとりちゃんの絶望の淵に叩き落とされたかのような顔は忘れられない。こんな日でも出勤しなければならない自分が憎い…。今は結束バンドの武運長久を祈ることしかできない。

 

 

休憩中スマホを確認すると、数件のロインの通知があった。通知の届いた順に開いてみると…

 

虹夏さんから

『今日はおじさんが来られなくて残念です。次は是非観に来て下さいね!生憎の空模様ですが、それでも来てくれたお客さんのためにライブ頑張ります!』

 

喜多さんから

『もうすぐライブです!叔父様も応援しててくださいね!』

 

ひとりちゃんから

『台風の中私のファンの人が来てくれました。絶対成功させます』

 

リョウさんから

『客少ないオジサンも来て』

 

4人がそれぞれライブ前にメッセージを送ってくれていた。嬉しいね。リョウさんだけ無茶振りだけど、これはこれでリョウさんらしい。…頑張れみんな。

 

 

それから数時間後、仕事終わりにスマホを見るとまたロインの通知が数件。

 

喜多さんから

『ライブ終わりました!最初はお客さんが減っちゃったり演奏ミスしちゃったり散々でした…。私もまだまだです。でも後藤さんがスゴかったんです!後藤さんがライブを成功させてくれました!叔父様にも見せたかったです!』

 

ひとりちゃんから

『ライブなんとかなりましたそして燃え尽きました』

 

虹夏さんから

『ライブは大成功!特にぼっちちゃんが最悪な空気をぶっ壊してくれたんだ!帰ったら叔父さんも話聞いてあげてね!』

 

リョウさんから

『ぼっちヤバかったみんなも頑張った。ご褒美飯期待』

 

 

各々すごく頑張ったみたいだね。そしてどうやらひとりちゃんが燃え尽きるくらい何かやりきったらしい。リョウさんのご飯は…考えておこう。

 

今日はひとりちゃんは打ち上げでご飯を食べてくると言っていた。帰りが夜遅くなるから私の家に帰ってくる予定だ。夜食とか作ったら食べるかな?

 

 

ピロン

ひとりちゃんからだ。

 

 

もうすぐ帰ります

 

 

思ってたよりも早く打ち上げが終わったみたいだ。それもそうか、参加者半分くらい未成年だもんね。返信。

 

 

了解気をつけて帰っておいで。

 

 

と打って送信したあとすぐにマンションの外に出る。夜道を帰ってくるのが心配なのもあるが、早くひとりちゃんを労ってあげたい気持ちとライブの話を聞きたい気持ちを我慢できずに迎えに出てしまった。少し歩くと目の前に3人の人影が見えてきた。1人はひとりちゃんで間違いない。あと2人は…。

 

「あっ叔父さん?なんでここに?」

 

「ごめんごめん、もう夜だしひとりちゃんが心配になってね」

 

「おじさん!こんばんは~」

 

「こんばんは虹夏さん、ひとりちゃんを送ってくれたんだね。ありがとう。えっとそれと…?」

 

「会うのは初めてだよね?こっちはあたしのお姉ちゃん!夜も遅いから2人でぼっちちゃん送ってたところなんだ!」

 

「あー、はじめまして。伊地知星歌です。虹夏がいつもお世話になってます。私も何度もご馳走になっちゃってすいません」

 

と言ってペコリと頭を下げ私に挨拶してくれた。この人が虹夏さんのお姉さんの星歌さんか。なるほど、一目で優しくて素敵なお姉さんだとわかるね。

「星歌さんはじめまして、後藤晋作です。こちらこそ、ひとりちゃんがバイトやバンド活動でお世話になってます」

 

しばらく大人同士の挨拶とお辞儀の応酬が続き、終わり時を見失っていると虹夏さんがその流れを変えてくれた。

 

「じゃああたし達はこの辺で、お姉ちゃん行こ?ぼっちちゃん、おじさんまたね!」

 

「あっ虹夏さんと星歌さん、よかったら家によっていきますか?実は夜食の用意してあるんですけど、食べていってくれたら嬉しいです。…て言うのは建前で2人からもライブの話聞きたくて。ひとりちゃんはお腹はどうかな?」

 

「あっはい。すっ少し、すいてます。…にっ虹夏ちゃんは?」

 

「えっと、実はあたしも少し小腹が…でも夜ももう遅いし」

 

「帰りは私が2人を送ります。いかがですか?」

 

「んー、お姉ちゃんどうする?」

 

「いいんじゃないか?虹夏も叔父さんに話したいんだろ?」

 

「決まりですね。では行きましょう、こちらです」

準備しておいた甲斐があった。今日は星歌さんという初めてのお客さんもいるから叔父さん張りきっちゃうぞ。

 

醤油、みりん、生姜、ゴマ油で鯛の切り身を漬けにする。鯛の骨を焼き、出し汁で煮る。茶碗に盛ったご飯(夢しずく)に鯛を敷き詰めて炒り胡麻、刻み海苔、あられ、わさびを添える。丁寧に灰汁を取った出し汁をかけて「完成」

 

 

本日の夜食

叔父さん特製鯛茶漬け

カブの塩昆布和え

 

 

「では手を合わせてください」

 

「あっはい」

 

「は~い」

 

「あっああ」

 

「「「「いただきます」」」」

 

私のご飯に慣れてるひとりちゃんと虹夏さんは、躊躇うことなくお茶漬けをサラサラと食べ始める。その様子を見て、少し遅れて星歌さんもお茶漬けの茶碗に手を伸ばし、ゆっくりと出汁を啜って「ほぅ」と声を出す。かわいい。

 

「ふぅ、あっ美味しいです」

 

「ホッとする味~この鯛もおいし~。あたしもこんな味が出せたらな~」

 

「うま…いや美味しいです。前にもらったエビマヨや煮魚もでしたけど料理上手いですね」

 

「一応本業なのでね。喜んでもらえてよかったです」

星歌さんの口にも合ったようで何よりだ。

 

「そういえばおじさん、そのTシャツ着てくれてるんだ」

 

「あっこれ?ありがとう。ライブには行けなかったけどこれのおかげで遠くでだけど応援できてる気分になれたよ」

 

「あっ叔父さんもらった日からずっずっと着てますよね」

 

「へえ。えっずっと?」

 

「あっ、ちゃんと毎日洗ってるから大丈夫」

 

「毎日!?そんなに気に入ってくれたんだ!」

 

「うん、これはいいものだ。次のライブには必ず着て行くよ」

 

「ありがとおじさん!」

 

「それで今日のライブはどうだったのかな?」

 

「それはもう!ね!ぼっちちゃん」

 

「あっはい」

 

「ふっ…」

 

そこからひとりちゃんと虹夏さんが今日あった出来事をたくさん話してくれた。あと横で星歌さんがドヤ顔してた。それとなんだか2人が前よりも親密になってるような…。きっと今日のことでより絆が強まったんだね。

 

 

ごちそうさまでした

 

 

「じゃあここで、おじさん送ってくれてありがと!」

 

「なんかまたご馳走になってしまってありがとうございます。今度はSTARRY(うち)にも来てください」

 

「はい、是非」

 

虹夏さんと星歌さんを送った帰り道に、ひとりちゃんは今までにない満足げな顔で口を開いた。

 

「じっ実は…虹夏ちゃんにギターヒーローなのがバッバレちゃいました」

 

「うん」

 

「でっでも、虹夏ちゃんわっ私でよかったって言ってくれて…」

 

「うん」

 

「にっ虹夏ちゃんの本当の夢も教えてくれて…あっおっ

叔父さんにはひっ秘密ですすいません」

 

「うんうん」

 

「私、結束バンドを最高のバンドにしたいです」

 

「ひとりちゃんならできると思うよ。あっこれは贔屓目に見て言ってるわけではないからね」

 

「はい、あっありがとうございます。えへへ」

 

朝は台風でどうなることかと思ったけど、ひとりちゃん達の頑張りで最高のライブになったようでよかった。ひとりちゃんの家に向かう足取りは軽やかで、心なしか私との距離がいつもより近いように感じた。今日は頑張ったね。




次回 江ノ島行ってきた姪と◯◯

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