ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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いよいよ文化祭。叔父さんがおもてなしされる回&晩御飯
いつもより少し長めです。


メイドの姪とオムライス(冷凍食品)とへぎ蕎麦

秀華高校文化祭1日目

私はひとりちゃんのクラスの出し物であるメイド喫茶へ赴くために遙々やって来た。ひとりちゃんはしきりに「1日目は来なくても大丈夫です」と言っていたけど、せっかく休みが取れたことだしチラッと見に行くくらいは問題ないよね。《第31回秀華祭》と書かれた門を潜ると、幾つもの出店とたくさんの学生や一般の人が入り交じっていて

非常に賑やかだ。

 

さて、ひとりちゃんのクラスはどっちだったかな。

 

 

「あれ?おじさんじゃん!」

 

1年生のエリアを適当に歩いていると私のことを呼ぶ元気な声が聞こえてきた。声のする方に顔を向けると、そこにはヒラヒラの可愛らしいメイド服に身を包んだ虹夏さんがこちらにブンブンと手を振っていた。

 

「やっぱりおじさんだ!おじさんも秀華祭来たんだね。ぼっちちゃんのクラスはこっちだよ」

 

「虹夏さん?なぜ虹夏さんがメイド服を?」

 

「えへへ~なんか流れで着ることになっちゃって。…にっ似合うかな?」

 

「うん、とても似合ってるよ。かわいいです」

 

「かわっ…えっえへへ、ありがと!じゃあ1名様ごあんなーい!」

 

虹夏さんに先導されひとりちゃんのクラスにたどり着く。中へ入ると何人かのメイドさん達から「おかえりなさいませ~」と挨拶された。皆笑顔でキラキラしているね。

 

「叔父様、おかえりなさいませ♪」

 

「喜多さんもか…ということはリョウさんも?」

 

「おかえりオジサン、もてなすからこのコップ持って」

 

椅子に腰掛け、足を組んでふんぞり返っているリョウさんはやや高い位置から水を注いでくれた。

 

「あっありがとう、皆似合ってるよ」

 

「ありがとうございます♪ほら、後藤さんも叔父様の接客しないと!」

 

「あっいや、わわわわっ私は、むむむむむ…」

 

喜多さんの影に隠れてむむむむしてるひとりちゃんも当然の如くメイド姿。喜多さんに背中を押されて私の前まで来たことで観念したようで、ぎこちない笑みをうかべて接客してくれた。

 

「あっおっ叔父さん、メッメニューですどうぞ。へへ…」

 

「うん、ありがとう。ひとりちゃんもメイド服とても似合ってるよ」

 

「あっどっどっどうもです。あっメニュー選んでください」

 

「うん、えーと…へぇ、いろんな種類のオムライスがあるんだね」

メニュー名が長くて独特なのが気になるけど。ゆめかわ?やみかわ?

 

「あーおじさん、それ名前は違うけど全部同じオムライスだよ」

 

「えっそうなの?」

 

「あっはい、メイド服作るので予算なくなったそうです」

 

「まあ、そういうのも文化祭らしくていいよね。じゃあこのふわ☆ぴゅあとろける魔法のオムライスにしようかな」

 

 

本日の(叔父さんの)昼御飯

ふわ☆ぴゅあとろける魔法のオムライス

 

「ではいただきます」

 

「あ!待って叔父様!この『美味しくなる呪文』を後藤さんにお願いしてみませんか?」

 

「へあ!?」

 

「ぼっち、オジサンは今神様だよ」

 

「むむむむ…」

 

「へえ、そういうのもあるんだ。本格的だね」

でもひとりちゃんにそれをやらせるのは拷問に近いのではないだろうか。ほら言わんこっちゃない。喜多さんの隣で「あうあう」言いながらプルプル震えてるよ。かわいい。

 

「ひとりちゃん、無理しなくていいよ。その服装で接客してくれただけで大満足だから」

 

「あっいや、やっやっやります」

 

ひとりちゃんはスーハーと深呼吸し、両手を胸元に当て…

 

「ふっふわふわぴゅあぴゅあみらくるきゅん、オッオムライス…さん、美味しくなぁれ…へ」

 

ひとりちゃんはぎこちないハート型を作り、美味しくさせようという気概が微塵も感じられないテンションで呪文を唱えた。アレ?なんだかひとりちゃんの手元から紫色のブヨブヨした物体が生み出されているように見える(幻覚)あ、発射された。オムライスに命中したそれはベチョっと音を立てて(幻聴)消えていった。

 

「ぼっちちゃんさっきよりうまくなったね」

 

「私がお手本を見せた甲斐がありましたね♪」

 

なるほど。前のはもっと酷かったんだね。

 

「あっどっどうぞめっめしあがれ」

 

「あっはい。いただきます。…んっうん、うん、しっとりねっとりしてて素朴な味わいでおいしいよ」

まあ、この味は冷凍食品かな。最近のは美味しく作ってあるよね。企業努力万歳。あ、真ん中は少しぬるい。

 

「あっよっよかったです。へへへ…」

 

「オジサン冷凍食品でも満足なのか。神様か」

 

「皆にメイド姿で接客してもらったから満足だよ。皆ありがとう」

 

 

ごちそうさまでした

 

 

「じゃあねひとりちゃん。皆も明日のライブ頑張ってね」

 

「あっはい」

 

「おじさんも絶対観に来てね!」

 

「また明日ですね叔父様♪」

 

「オジサン、明日の打ち上げ飯期待してる」

 

私はオムライスを食べ終え、メイドの結束バンドに見送られながら秀華高校を後にした。大変癒されました。

 

帰りのついでに買い出しを済まし自宅に到着。ひとりちゃんはSTARRYで練習してから帰ってくるみたいだし、明日の活力になるようにご馳走たくさん作っておこう。けどあんまり腹にドカンとたまるメニューは避けるか。ちょうど取り寄せてたアレがあるし。ひとりちゃんが帰ってきたら仕上げるか。

 

 

 

「あっただいまです」

 

「おかえり。お疲れ様、今日は大変だったね」

 

「あっはい」

 

「すぐにご飯にするからね」

 

たっぷりのお湯に生蕎麦をバラバラとほぐしながら入れて茹でる。火加減を調節しながら2分ほど茹でたら蕎麦をザルにあげる。茹でるのに使ったお湯はめんつゆで味を付けておく。蕎麦を冷水でしっかり洗い、滑りを取る。へぎ(木の板を食台にしたもの)の上に1口分ずつ取り分けて盛り付けて「完成」

 

本日の晩御飯

へぎ蕎麦

いなり寿司

野菜のかき揚げ、レンコン、さつま芋、ししとうの天ぷら

キュウリと白菜の漬物

蕎麦湯

 

「では手を合わせてください」

 

「あっはい」

 

「「いただきます」」

 

新潟県のご当地蕎麦のへぎ蕎麦。果たしてひとりちゃんの口に合うだろうか。ひとりちゃんは1口分ずつにキレイに盛られた蕎麦を箸でつかみ、めんつゆに浸してチュルチュルと啜る。かわいい。

 

「あっこの蕎麦、普通の蕎麦と違う味ですね」

 

「へぎ蕎麦っていう新潟県の蕎麦だよ。布海苔っていう海藻をつなぎに使ってるんだって」

 

「そうなんですね。こっこの風味…好きです」

 

そう言うと1つ、また1つと蕎麦を食べていく。どうやら気に入ってもらえたようだ。

 

「あっおじさん、きょっ今日は来てくれてありがとうございました。あとおっお見苦しいところをお見せしてしまってすいません」

 

お見苦しい?メイド姿のことを言ってるのかな?

「ううん、スゴく楽しかったよ。私こそ慣れないのに接客してくれてありがとう。明日は大一番だね。頑張ってね」

 

「あっ…はい!」

 

 

ごちそうさまでした

 

 

「そっそそれじゃ、もっもう少し練習してきます」

 

「うん、おやすみひとりちゃん」

ひとりちゃん緊張してるなぁ、無理もないか。私もなんかつられて緊張してきたな。明日は全力で応援するからね。

 

 

翌日

 

秀華高校文化祭2日目

「いっいいいってきます」とド緊張の中先に出ていったひとりちゃんに遅れて数時間、私は金沢八景から家族総出で来た兄さん達と合流して一緒に秀華高校へ向かうことになった。

 

「おじちゃーん!今日はみんな一緒だね!」

 

「そうだねー。皆でひとりちゃんを応援しようね」

 

「うん!」

 

「晋作さんもバンドTシャツ姿で張り切ってるわね」

 

「そう言う美智代さんもその団扇、ジミヘン柄ですか」

 

「そうよー。ジミヘンは連れてこられないからその代わりにね♪」

 

「なるほどかわいいですね。そして兄さん、そのカメラは」

 

「娘の晴れ舞台だぞ!一瞬たりとも見逃さないように準備はバッチリだ!昨日練習もしたしな。はい、ふたり!ここで決めポーズだ!」

 

「うぇーい!ばいぶすあげてこー!」

 

ふたりちゃんは兄さんの号令に合わせてピョンピョン飛び跳ね、後ろでは美智代さんがニコニコしながら手拍子してる。ほのぼのするね。

 

 

秀華高校に着いた私達は4人で秀華祭の門をくぐり、会場となる体育館へ向かう。早めに到着したのでまだ人は少ない。文化祭ステージに出演するグループを確認すると結束バンドの出番は4番目。13:30頃から出てくるみたいだ。

 

「ひとりちゃんはもう少し後に出てくるみたい」

 

「まあ早めに入って一番前の場所で見てよう。ふたりも前の方がステージ見えるしな!」

 

「うん!体育館ひろーい!」

 

ふたりちゃんが言うように確かに広い。STARRYの3倍、いや5倍くらいの許容量がありそうだ。ひとりちゃんがずっと出るかどうか悩んだのもうなずける。

 

体育館にはポツポツと人が増えてきた。その中に見知った人が入ってくるのが見えた。STARRYの店長さんで虹夏さんのお姉さんの星歌さん。もう1人は…。

 

「あれぇ?おっちゃんじゃ~ん。おっちゃんもぼっちちゃんのライブ観に来たの?じゃあ一緒に観ようぜぇ」

 

「叔父さんどうも。一応こいつは私が見張ってるんでこいつの言うことは気にしないでください」

 

マズイ、廣井さん…この人はふたりちゃんの教育上大変よろしくない。側に居させる訳にはいかない。

 

「そうですねあっちで一緒に観ましょうか。あっ星歌さんすいません御一緒させていただきますね」

 

「えっあっまあいいですけど」

 

「そーこなくっちゃ!あっ、おっちゃんも飲むー?今日は奮発してカップ酒なんだ~!」

 

もう既に酒臭い。非常識な客としてここから叩き出してやろうか…。いや、廣井さんのおかげでひとりちゃんは文化祭ステージに出る決心がついたんだし、その勇姿を見届ける権利はあるか…。あるのか?

 

とりあえず後藤家から少し距離を空けた場所に移動。それからすぐ文化祭ステージが始まり、あっという間に結束バンドの番になった。ふと後ろを見るといつの間にか体育館いっぱいの人が集まっていて、幕が上がった途端各所からキタチャンコールが起こる。喜多さん大人気だね。ひとりちゃんは強張った顔をしてる。まだ緊張してるみたいだ。

 

「おねーちゃん!がんばれー!!」

 

一際大きな声でふたりちゃんが声援を送る。その声に気付いたひとりちゃんの顔が一気に明るくなった。

 

「ぼっちちゃ~ん!」

 

今度は廣井さんが声援を…廣井さんも良いところあるんだな。いや違うなこれ、酔って悪絡みしてるだけだ。「オラオラ~」とか言ってるし。さすがに止めようと思ったら

星歌さんが絞め技で強制終了してくれた。ありがとう。

私ではそういう止め方はできないからね。

 

「アハハ…えー私達結束バンドは…」

 

気を取り直して喜多さんが挨拶を始める。

 

「今日は私達にも皆にとっても良い思い出を…」

 

ひとりちゃんがいつでも始められるように構えてる。そこに不安や怯えは微塵もない。

 

「それじゃ聴いてください!」

 

いよいよ結束バンドの

 

「結束バンドで…」

 

ライブが始まる…!

 

 

 




次回 ロックな姪と◯◯

タイトル回収回だけど最終回ではないよ?
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