ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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誤字脱字報告もありがたいありがたい。

アニメ12話に突入。タイトル回収してるけど最終回じゃないですよ?あと書きたいこと書きまくってたら長くなってしまって申し訳ない。


ロックな姪と食べさせたい叔父さん

文化祭ライブ。結束バンドの1曲目『忘れてやらない』

虹夏さんのフォーカウントから始まったアップテンポで明るめな曲調。喜多さんも手拍子で観客を煽っていく。高校の文化祭で披露するのにもってこいの素敵な曲だ。それに音楽素人の私から見ても明らかに全員の演奏技術が上がっているように感じる。

 

1曲目が終わり、会場全体から割れんばかりの歓声と拍手が起こった。私もそれに続き惜しみない拍手をおくる。皆スゴくカッコいい!月並みな表現だけど、ステージの上で皆キラキラと輝いている。

 

「すごいですね」

 

「ああ、結構盛り上がってるな」

 

「…ですねー…」

 

あれ?廣井さんの歯切れが悪い。星歌さんに関節をキめられたままの体勢だが、いつものおちゃらけた言動は鳴りを潜め、大きな目を見開いてひとりちゃんを見ていた。

 

「何か気になるんですか?」

 

「うーん、ちょっとね~…」

 

私もひとりちゃんを観察してみる。確かに様子が変だ。しきりにギターの頭(?)の部分をいじってる。微かに「カチッ」という音が聴こえたような…大丈夫だろうか。

 

「聴いてください。2曲目で『星座になれたら』」

 

喜多さんの曲紹介から2曲目が始まった。さっきとはガラリと雰囲気の違う曲の『星座になれたら』これも良い曲だ。…ただ、ひとりちゃんの表情がどんどん曇っていく。とてもライブを楽しんでいるようには見えない。私の想像もできないような不具合が起きているのかもしれない。

廣井さんはそれに気付いているようだけど…。

 

 

 

バツン

 

 

 

あっ弦が…切れた!?

「ひとりちゃん…」

あれじゃまともな演奏はできないんじゃ…。ひとりちゃんはなんとか持ち直そうとしてるけど、この演奏中はさすがに時間が足りない。どうする?どうすれば…私には見守ることしかできないのか?ああ…サビが終わる。ひとりちゃんはまだ動けない。頑張れ…頑張れひとりちゃん!

 

絶望的状況を打ち破ったのは喜多さんだった。サビを歌いきってすぐにソロでギターを演奏している。おそらくこの部分は本来ひとりちゃんが演奏する所なのだろう。ひとりちゃんも驚いて喜多さんの方を向いている。喜多さんもひとりちゃんの方を向いてアイコンタクトをしてる。きっと諦めちゃダメだと伝えてるんだ。喜多さんのソロが終わるかというタイミングでひとりちゃんが動く。いつの間にか足元に転がってる何かを手に取ってそれをギターの弦に当ててギターを弾き始めた。あれはカップ酒?

 

「この土壇場でボトルネック奏法とか普通やるか?」

 

「あれならチューニングずれてても関係ないもんね♪」

 

「ボトルネック?そんな演奏法があるんですね」

 

「そだよ~まあ先輩が言ったけど、こんな土壇場で簡単にできるようなもんじゃないんだけどね~。それをやっちゃうぼっちちゃんがスゴいんだよ」

 

「そうなんですね。ひとりちゃん…カッコいいな」

ひとりちゃんはソロパートをボトルネック奏法で乗り越えた後、残った弦で『星座になれたら』の演奏をやり遂げた。すごい、すごいよひとりちゃん!最高にロックだよ!会場の拍手が鳴り止まず、私も手が止まらない。

 

 

「えっえ~…本当は次の曲にいく予定だったんですけど…」

 

虹夏さんが機転を利かせたMCでライブを終わりにもっていく。お客さん達もひとりちゃんの状況はわかっているようで、ひとりちゃんにたくさんの言葉をかけてくれた。

皆あったかいな…。

 

しかしこれだけでは終わらなかった。ひとりちゃんに声をかけてくれたお客さん達に何か一言、と喜多さんがひとりちゃんにマイクを向けた。ひとりちゃんフリーズ。かと思えばフラフラとこっちに向かって歩いてきた。え?え?

ひとりちゃん?なんでこっちに飛び込んで来るの?あっ!受け止めないと!と思って動いてはみたが、私はろくに運動もしてない30代後半のおじさんだ。反応速度に至ってはおじいちゃんだ。私なりに大急ぎで手を出して受け止めようとしたが、それがよくなかった。

 

 

 

 

モニュ

 

 

 

 

もにゅ?両手にやたら柔らかいナニかが当たったような…

ガンッ!

「オウフッ…」

あっひとりちゃん石頭なんだね…。叔父さん一発でKOだ。

 

「後藤さん!?叔父様!?」

 

「ひとり!晋作!大丈夫かー!?」

 

「あひゃひゃひゃ!ぼっちちゃんサイコー!おっちゃんだっせぇ~!」

 

「プフッ…ぼっち、オジサンも最高にロックだぜプフゥ」

 

「お前ら少しは心配しろ!」

 

「本当だよ!!」

 

「うちのおねーちゃんとおじちゃんがすいません」

 

私の意識はそこで途切れた。

 

 

 

「おじちゃーん!おきてー!」

 

誰ですか、かわいい声で私のおでこをペシペシ叩くのは。

今良いところなんです邪魔をしないで下さい。ほらもうすぐひとりちゃんのギターソロがやってくるよ。

 

「おじちゃーん!」

 

痛い痛い、いやいやだめだって。まだとっておきのパフォーマンスが残ってるんだ。ひとりちゃんのダイブが…

 

「おーじーちゃーんー!」

 

ダイブ?ダイブならさっき終わったような…その時私はちゃんとひとりちゃんを受け止めて…受け…止め…てない!

「ひとりちゃん危ない!!…あれ?」

 

「あっおじちゃん起きた」

 

「大丈夫か?晋作」

 

「あっあれ、ここは?」

 

「体育館の外だよ。このまま起きないようなら救急車呼ぼうかと思ったけど…大丈夫そうか?」

 

「あっうん、ちょっと頭がジンジンするけど大丈夫…あっひとりちゃんは?」

 

「おねーちゃんは保健室行ったよー」

 

「気を失ってたけど、晋作が受け止めてくれたおかげで大した怪我はしてないみたいだったし、すぐ目を覚ますだろう。ありがとな晋作」

 

「あっいや私はそんな大したこと」

 

「あっ!おじさーん!気が付いた!?」

「オジサンしぶといね」

 

起き上がった私に駆け寄ってきたのは虹夏さんとリョウさん。私を心配して様子を見に来てくれたのだ。優しい。ライブが終わって今はひとりちゃんが目覚めるのを待ってるそうだ。

 

「喜多ちゃんが付き添ってるから連絡待ちだね」

 

「ぼっちが起きたら店長達と打ち上げに行く予定」

 

「そっか。あっ2人ともライブとても良かったよ。最高にカッコよかった」

 

「えへへ~ありがと!あたし達も楽しかったよ!」

 

「最高にロックなぼっちとオジサンも見れたし」

 

リョウさん、それは言わないで下さい。その精神攻撃は私に効果抜群です…。

 

ピロン

「あっ!ぼっちちゃん起きたって。怪我もなくて少ししたらこっち来れるみたい」

 

「本当かい?良かった…あの、虹夏さん」

 

「ん?何?おじさん」

 

「1つワガママを言ってもいいですか?」

 

 

 

校門前でひとりちゃんと喜多さんと合流。ひとりちゃんと私は目が合った途端お互いに土下座。

 

「叔父さんごめんなさい!」

 

「いや私こそちゃんと受け止めなくてごめんなさい」

 

「いやわっ私があんな暴走したのが悪いので」

 

「いやいや大人として男として私がしっかりと」

 

「いやいや」

 

「いやいや」

 

「いやもういいから!ぼっちちゃんもおじさんも頭上げて!こんな往来で恥ずかしいでしょ!」

 

虹夏さんに怒られてしまった…。謝罪合戦はこれくらいにして話を進めよう。

 

「ひとりちゃん、今から叔父さん達買い出しに行ってくるから、皆と叔父さんの家に行っててくれるかな?」

 

「えっ?おっ叔父さんの家ですか?」

 

「うん、叔父さん、ひとりちゃん達のライブに感動しました。最高にカッコよかったです。なので、叔父さんは最高のおもてなしでそれを労いたいと思います」

 

「あっはい」

 

頑張ったひとりちゃん達にたくさん食べさせたい!

「結束バンド秀華祭ライブ打ち上げIN叔父さんの家です」

 

 

 

 

「ただいま」

 

「あっおかえりなさい」

 

兄さん達との買い出しを終えて家に着くと、既に皆が待っていた。ふたりちゃんとじゃれあっている喜多さん。皿やコップ等を用意してくれている虹夏さん。普通に自分の家のように寛いでいるリョウさん。…あと既にパック酒飲んでおっ始めてる廣井さん。

 

「あのバカ…すいませんアイツもこっち(買い出し)に連れてくるべきでした」

 

「いえいえ、今日くらいはいいですよ。それよりも買い出し手伝ってくれてありがとう星歌さん」

 

「これくらいいいですよ。打ち上げの場所提供してもらったし、虹夏達もこっちの方が楽しそうだし」

 

「買い物してる晋作さんと店長さん、仲の良い夫婦みたいだったわ♪」

 

「だな!なかなかお似合いだったぞ?」

 

「兄さんと美智代さん、あんまりからかわないで下さい。星歌さんに悪いから」

 

「いや、私は別に…大丈夫なんで」

 

星歌さんも虹夏さんに負けず劣らずの優しい人だな。

いや、この星歌さんあっての今の虹夏さんなのかな。

 

「よし、それじゃあやるか晋作!」

 

「そうだね。叔父さんいつも以上に張り切っちゃうよ」

 

「おじさん、お姉ちゃんおかえり~、あっ手伝うよ!」

 

「お母さんの腕の見せ所ね♪」

 

「ありがとう。じゃあ皆でパパっと用意しちゃおうか」

 

 

 

本日の晩御飯

皆で作ったオードブル

 

「では手を合わせて…いや違うな。虹夏さん、ここは結束バンドリーダーとして乾杯の音頭を」

 

「えっ…よし!じゃあ皆、文化祭ステージお疲れ!なんか色々ハプニングもあったけど、結果として良いライブになったと思うよ。今日はいっぱい食べていっぱい飲んで

騒ぐ…のはおじさんの家だから程々にして、とにかく楽しんじゃおう!じゃあ、カンパイ!!」

 

「「「「「乾杯!」」」」」

「「「「「カンパーイ!」」」」」

 

今日は総勢10名の大所帯。こんなに家に来てくれたのは初めてだ。兄さんや虹夏さんも手伝ってくれて助かった。

塩麹唐揚げやフライドポテト、厚焼き玉子にエビチリ。

野菜スティックや果物等思い付く限りの惣菜を揃えた。

 

「おとーさんの唐揚げおいしー!おじちゃんの玉子も好きー!」

 

「んっんっ…うむうまい。ご飯が欲しくなる味」

 

「この打ち上げの様子、イソスタに上げておかないと♪

あっひとりちゃん、こっちのエビもおいしいわよ♪」

 

「あっはい」

 

いつもよりも賑やかな食卓。この時間の幸せをしっかりとかみしめる。思えばひとりちゃんが家に来る前はこういう時間を過ごすことはなかったなぁ…。ずっと1人でご飯を作って1人で食べて満足してたけど…もうあの生活には戻れないかもなぁ。皆たくさん食べてくれて本当に良い子達ばっかりで「おっちゃ~ん!飲んれる~?」

 

そういえば廣井さんいるんだった。

 

「はい飲んでますよ。今日は解禁日です」

 

「いいねぇ今日のぼっちちゃん最高に良かっらよれぇ?」

 

かなりできあがってるね。

「ですね。カッコよかったですね」

 

「おっちゃんはダサかったけどれぇー」

 

「それは言わないで下さい…」

 

「まあ飲みなよ~ほらほら~」

 

「あっはい」

 

 

 

ガタン

 

「えっ?おっちゃん?」

 

「えっおじさん大丈夫!?」

 

「しまった忘れてた!」

 

「えっお父さん忘れてたって?叔父さんどうしたの?」

 

「いや、晋作は酒飲めない訳じゃないんだけど…酔うとちょっとな?」

 

「……廣井さん」

 

「えっ?何?」

 

「廣井さんはスゴいです!」

 

「え」

「ライブでひとりちゃんの不調にすぐ気が付いたしそもそもひとりちゃんに文化祭ライブに出る勇気を出させてくれたのももっと遡れば初めてのチケットノルマの時も協力してくれて」

「あの、おっちゃん?」

「えらいです!」ナデナデナデナデ

「わひゃああぁ…」

 

「晋作は酔うと誉め上戸になるんだよ。あとナデ魔」

 

「晋作さんのこの姿久しぶりに見たわねぇ」

 

「まあ目を合わせなければ基本無害だから」

 

「おっ叔父さんにこっこんな一面が…」

 

「普段の叔父様から考えたらすごいギャップね!」

 

「触らぬオジサンになんとやら」

 

「おじさん!あたしはどうですか!」

 

「えっにっ虹夏ちゃん!?」

 

「…虹夏さんは、頑張り屋です!バンド活動にバイトに学校に家庭のこと全部を頑張ってますひとりちゃんをバンドに誘ってくれました優しくて面倒見がよくて可愛らしくてきっと将来素敵なお嫁さんになるでしょう」ナデナデナデナデ

 

「あ…えへへありがとおじさん」

 

「叔父様!次、私も!」

 

「あっわっ私も…あっやっぱり…いやでも…」

 

「ふたりもー!」

 

その後、叔父さんによる誉めちぎりショーが始まった。

 

「喜多さんは明るくて元気で友達もたくさんいてこんなおじさんの私にもフレンドリーに接してくれてでもちゃんと努力もしてて今日のギターとてもうまくて感動しました!素晴らしい!」ナデナデナデナデ

 

「ありがとうございます♪」

 

「リョウさん、いつもモリモリ私の料理を食べてくれてありがとう寡黙だけど時おり見せる微笑みは堪らなくかわいいですリョウさんの作曲した曲はどれも神曲だと思いますすごい才能です!」ナデナデナデナデ

 

「オッオジサンこれ以上のおさわりは有料だよあわわわ」

 

「ふたりちゃんはかわいいです元気いっぱいでこっちまで明るくなります叔父さんのご飯もおいしいおいしいと言って食べてくれますかわいいです!」ナデナデナデナデ

 

「わーい!」

 

「星歌さんは」

 

「えっ私はいいよ」

 

「STARRYという立派なライブハウスの店長さんで結束バンドの居場所を作ってくれてひとりちゃんをバイトで雇ってくれて少し怖い印象も本当は優しくて可愛らしい性格の人ってことがわかると」ナデナデナデナデ

「もういい!もういいからぁー!」

 

 

「ひとりちゃんにはスゴく感謝しています」

 

「あっはい」

 

「ひとりちゃんが私に誰かにご飯を食べさせる喜びを教えてくれました私の料理を美味しそうにモグモグする姿を見ていつも癒されていますひとりちゃんのギターのファンです結束バンドという推しのバンドもできました私も毎日が楽しくて仕方ないです全部ひとりちゃんのおかげですありがとう」ナデナデナデナデ

 

「あっうっありがとうございます…」

 

そうしてひとしきり誉め(ナデ)終わったら叔父さんは寝てしまいました。お父さん曰く、こうなったら明日の朝まで起きないんだそうだ。お父さんが叔父さんをベッドに運んでいった後、皆で片付けて打ち上げはお開きになった。帰り際私を含めて皆の顔がホワホワしてたのは多分気のせいじゃない。

 

 

ごちそうさまでした

 

 

翌日

 

「…」

 

「あっおっおはようございます叔父さん」

 

「…やってしまった…」←酔ってる時の記憶が残るタイプ

 

「あっ大丈夫です。みっ皆喜んでました。わっ私も嬉しかったので。おっ叔父さん!」

 

「あっはい」

 

「わっ私も叔父さんには感謝してます。叔父さんのご飯毎日おいしくて楽しみで、すっ好きです。叔父さんは優しくて、結束バンドの一番のファンで…なのでこっこれからもよろしくお願いします」

 

「…ありがとうひとりちゃん。これからもおいしいご飯作るからね」

 

 

ロックな姪と食べさせたい叔父さんの日々はまだ続く




次回 30万持ってきた姪と◯◯

次でアニメ一期分が終わります。終わるかな?
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