ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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働きたくない姪と蒸しものづくし

「あっいってきます」

 

「はいいってらっしゃい」

 

ひとりちゃんがバンドを始めた。バンド名『結束バンド』

結束バンド?あの束ねるやつ?なんでもバンドリーダーの子が考えたらしく、後で変えると言っているらしい。でも覚えやすいし私はそのままでもいいと思うけどな。今日はそのバンドのメンバーミーティングがあるらしく、昨日ほどではないが遅くなるらしい。私は今日は休日。でも予定はない。強いて言うなら食材探しだが…晩御飯何がいいかな。昨日は揚げ物だったしさっぱり目のメニューがいいよね。まあいつも通り見つけた食材で決めるか。

 

 

 

 

「今日は良い鶏肉が入ってるよ!」

 

ふらりと立ち寄った肉屋の店主が威勢よく勧めてきた。…ふむ、昨日もお肉はあったけど鶏肉ならアリか。いっそ他の食材と一緒に蒸してしまおう。せっかくだから一編に色々作っちゃうか。よし、献立は決まった。

 

 

鶏もも肉を均等な厚さに切り開いてクッキングシートを敷いた蒸し器に並べる。えのき茸、しめじ、人参、蕪、里芋をその下の段に並べる。クッキングシートと蒸し器の穴の部分が重なる箇所に竹串で穴を空けておく。もう1つの蒸し器に茶碗蒸しを入れて鶏もも肉の上の段に重ねたら一番下の段にお湯を張って火にかける。時間はあるのでゆっくりじっくり蒸していく…よし、仕上げはひとりちゃんが帰ってきてからかな。

 

 

 

 

「あっただいま…です」

 

「おかえりひとりちゃん。メンバーミーティングとやらはどうだったかな?」

 

「あっ…それは…」

 

ひとりちゃんは口ごもっている…。詮索するのはよくないか。言いづらかったり都合の悪いこともあるのだろう。まあ秘密にしたいことの1つや2つあるよね。

 

「…ご飯にしようか?」

 

「あっはい」

 

では仕上げだ。蒸し終わった一番下に溜まった鶏と野菜のエキスたっぷりのお湯。余計な脂を丁寧に取り除いてから塩、ニンニク、刻み生姜で味を付ける。最後に春雨を放り込んでひと煮立ち。「完成」

 

本日の晩御飯

 

炊きたてご飯(ひとめぼれ)

蒸し鶏

蒸し野菜(えのき茸、しめじ、人参、蕪、里芋)

茶碗蒸し(蒲鉾、銀杏、巻き湯葉、ズワイガニ)

春雨スープ

 

「では手を合わせてください」

 

「あっはい」

 

「「いただきます」」

 

ひとりちゃんは迷わず鶏肉に箸を伸ばす。別途で用意したポン酢に潜らせてパクり。「あっやわらかいれふ」とモグモグする姿を見届ける時間。プライスレス。

 

「タレも色々あるから好きなもの使ってね」

 

「あっはい」

 

タレはポン酢、甘味噌、油淋鶏風タレ、マヨネーズ等バリエーション豊かに取り揃えた。もちろんシンプルに醤油や塩でも問題ない。

 

「あっ茶碗蒸し…カニが入ってますね。カニ好きです」

 

「缶詰めだけどね。熱いから気をつけてね」

 

「あっはい、はふっあっ…あふっんっあつつ」

 

うん、次からはもう少し冷ましてから出そう。

 

「おいひいです」

 

次にひとりちゃんは春雨スープを啜る。「はふぅ…」と息を漏らし、顔はフヨフヨと綻んで良い意味でだらしない。かわいい。

 

「あっこのスープ、いろんな味がしますね…」

 

「そうでしょ?蒸した食材全部の出汁が出てるからね。ニンニクを切らずに入れたのもポイントだよ。ニンニク臭くないでしょ?」

 

「あっはい、美味しいです…あっあの叔父さん」

 

「ん、何?ひとりちゃん」

 

「おっ叔父さんの仕事って…大変ですか?」

 

私の仕事?ふむ、ひとりちゃんも社会のことに興味が出てきたのかな?

「叔父さんの仕事か…まあ大変かな。家で料理を作る時とは大分違うし好き勝手作れる訳じゃないからね」

 

「えっおっ叔父さん仕事でも料理してるんですか?」

 

「あー言ってなかったっけ?叔父さんの仕事は調理師だよ。と言っても職場は一流ホテルとか三ツ星レストランみたいな大層な所じゃないけどね」

 

「あっそうなんですね…あっあの実は私、ライブハウスでバイトすることになって…」

 

「なるほど、初バイトなわけだね。働くのが不安?」

 

「あっはい…働くのが…社会が怖いです」

 

「そっか。叔父さんから言えることは“案ずるより産むが易し”かな。やってみると意外に何とかなるもんだよ」

 

「そっそういうものですかね…」

 

「そういうものだよー」

まあ実際は入ってきた新人がビックリするくらいお仕事のできないタイプで、周りの人の仕事が増えて苦労した挙げ句、急に無断欠勤し始めてそのまま退職ってパターンとかあったから一概には言えないんだけど…これは黙っておこう。

 

「まあ役に立たなかったり失敗したりすることばかり考えても仕方ないから、それに新人なら先輩がフォローとかしてくれそうだし大丈夫じゃないかな」

 

「先輩…たっ確かにフォローしてくれるって言ってました」

 

「なら、その先輩を信じてもいいかもしれないね」

 

「あっはい」

 

ごちそうさまでした

 

 

ひとりちゃんも高校生になって色々と大人になってきてるんだな。バンドやってバイトまで始めるなんてすごい。

 

「ハタラキタクナイ…シャカイガコワイ…デモ…」

 

うん、バイトはやるかどうかまだ定かではないのか…まあ後はひとりちゃんの決断に任せるしかないよね。こういうことで悩むのも青春ってやつか。頑張れひとりちゃん。




次回 凍える姪と◯◯
(◯◯にはその日の献立が入ります)
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