なんか急にお気に入りの数が増えてて驚いています。
頑張ってゆるりと長く続けていきます。
ひとりちゃんが風邪を引いた。原因は言わずもがな。初めてのバイトを経験したひとりちゃんは、帰ってくるなりすぐにダウンしてしまった。氷風呂もだけど極度の緊張から解放された反動もあるのだろう、今は部屋で安静にしている。私も同居人が熱を出したため大事を取って自宅待機。会社からの指示だが、看病に専念できるのでありがたい。
朝から昼にかけてひとりちゃんは布団から1歩も出られなかった。たまに風邪薬やスポーツドリンクを飲ませたり、冷えピタを取り替えたりするために起こしたが、それ以外は寝たきりだった…。さすがに兄さん宅に連絡しておかないと…。
「もしもし、美智代さん?」
『あら晋作さん、ひとりちゃんは元気かしら?』
「それなんですけど…ひとりちゃんが風邪を引いてしまいまして…。すいません、私の責任です」
『あらあらそれは大変。気にしないで、きっとひとりちゃんが謎の行動力を発揮したんでしょ?』
「あーそれは…」
流石母親…全てお見通しか。
「まあそんなわけで今週末はひとりちゃんが帰るのは無理そうです。すいません、責任をもって看病しますので」
『わかったわ!直樹さんには私から言っておくから。ひとりちゃんをよろしくね。少しくらいならイチャついてもいいわよ?』
「移るのでしません。いや移らなくてもしませんけど…」
美智代さん直々の指令を受け、再びひとりちゃんの看病に戻った。夕方になり、再び体温を計ると37.9℃の表示。朝計った時よりは大分下がってるけどまだまだ油断ならないね。
「ひとりちゃん何か食べられそうかな?」
「…あ…あ"い」
まだ喉も辛そうだ…。食べやすくて栄養も取れるものがいいよね。…となれば、うどんか。
土鍋に出し汁を引いて酒、みりん、塩、細かめに切った鶏肉を入れて軽く煮る。葱、刻み生姜、人参、椎茸も入れて薄口醤油で味を仕上げる。卵に水溶き片栗粉を少し入れてから溶き卵にしてお汁に投入。さらに汁も少しだけトロミを付けて食べやすくしておこう。冷凍うどんを茹でてザルにあげる。土鍋にうどんを入れてもう一煮立ち。うどんを柔らかめに仕上げたら…。「完成」
本日の晩御飯
ふわトロかき玉うどん
梅干し
「ひとりちゃん、できたよ。食べられそう?」
「あっ…あい」
ムクリと起き上がったひとりちゃんの側にうどんを置き、首元に手を当てる。
「うん、よかった。さっきよりも下がってるね。熱いからゆっくり食べてね」
「あっ…あっいだだぎま"す…」
れんげで汁を掬って一口。「ずず…はふ…ふう」とゆっくり少しずつ飲み込む。いつもなら食べる様子をじっくり見ているところだけど今はそれどころじゃない。替えのタオルや食後の風邪薬の用意もしないといけないしね。
「あっおいじいです…」
「ん、よかった。おかわりもあるから遠慮なく言ってね」
「あっあい」
食欲はあるようなのでもう大丈夫だろう。もう一日安静にしていれば回復するはず。早く元気になったひとりちゃんにご馳走たくさん食べさせてあげたいな。
ごちそうさまでした
時間をかけてうどんを食べ終えたひとりちゃんは心なしか顔色が良くなったように見える。
「あっごちそうさまでした。うどん美味しかったです」
喉の調子も多少ましになったみたいだ。
「うん。後は薬飲んで一晩寝れば治るかな」
「あっおっ叔父さん…すっすいません…わっ私のせいで仕事…やっ休ませちゃって…」
「大丈夫、気にしないで…って言っても無理か。うーん、叔父さん誰かの看病のために一日費やすっていうのが初めてで、変な言い方になるけど新鮮で楽しかったよ?だからひとりちゃんは気にしないでいいよ」
「あっ…はい」
「後は何かしてほしいことはあるかな?何でも言ってね」
「あっ…じゃあ、たったくさん汗かいちゃったので…着替えたい…です」
「あっ、ごっごめんね!気付かなくて、すぐ用意するからね」
私としたことが…ずっと汗ばんで気持ち悪かったろうに気付いてあげられないとは。不覚。
「これ、着替えと濡れタオルね。あっ食べ終わった食器も下げておくね」
「あっありがとうございます…」
「じゃあ叔父さん出てるから終わったら教えてね?」
「あっ叔父さん」
「ん?あっ何か足りないものあった?」
「あっえっと…背中…とっ届かないので…ふっ拭いてもらえますか?」
「えっ?」
今なんと?
「あっむむむむ無理ならいいんですすいませんすいませんゴホッ」
「わかったわかった!だから落ち着いて」
まあ疚しいことはない。姪の背中を拭くだけだ。
「あっ恥ずかしいだろうし電気は消そうか。叔父さん後ろ向いてるから拭けるようになったら教えてね」
「あっはい」
電気を消して私は後ろを向く。しばしの静寂…聞こえる音は時計の秒針とシュルシュルという衣擦れの音。これ、私は部屋から出ていた方がよかったかもしれない…。
「あっ…あの、おっお願いします」
「はい、じゃあ始めるね」
隣の部屋からの明かりに照らされたひとりちゃんの背中は綺麗だった。邪な気持ちなどないが、万が一にもひとりちゃんに不快な思いをさせるわけにはいかない。手早く拭いてしまおう。優しく力を入れすぎずタオルで背中の汗を拭き取る。
「ん…あ…」
タオルを上下する度にひとりちゃんから弱々しい声が上がる。相当恥ずかしいに違いない。選択肢が私しかなかったことに罪悪感を覚える。
「はい、終わったよ。痛くなかった?」
「あっはははいっ大丈夫です」
時間にすれば1分もなかったくらい。あっという間と言うと変な意味に捉えられそうだが。ひとりちゃんは苦痛ではなかっただろうか…。
「じゃあ叔父さんいくからね。おやすみ、ひとりちゃん」
「あっはい。おっおやすみなさい…」
翌日ひとりちゃんの熱は微熱程度にまで下がったが、土日と十分に療養してもらい風邪を完治させた。よかった。
月曜日からは元気に登校できそうだ。バンド活動とバイトも頑張れるかな?
次回 頑張った姪と◯◯