ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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御覧になっていただきありがとうございます。

今回は結束バンドファンの集いからの晩御飯
古参ファン特有の悩みってあるよね。



ファンの葛藤と姪と海鮮釜飯

今日は休日。私はいつもと違う趣向の晩御飯をひとりちゃんに振る舞うために新宿へと足を運んでいた。渋谷に行くことも考えたが、再び結束バンドを宣伝するぶっ飛びコスプレの美智代さんと遭遇するのは御免被るので、ネット投票が終わるまでは行くのを控えておくことにしている。

うん、懸命な判断は大事だよね!

 

 

 

意気揚々と新宿駅付近を散策していると、見覚えのある女性2人の姿が見えた。つい「あっ」と声を出すとそれに気付いた2人と目が合う。するとあちらも「あっ!」と反応を示しお互いに歩み寄る形に。

「どうも」

 

「あ~やっぱり3号さんだ」

 

「こんなところで奇遇ですねー」

 

結束バンド、そしてひとりちゃんのファン1号さんと2号さん。私のことを3号さんと呼んでくれる美大生の子達だ。この子達が作ってくれた結束バンドのMVも再生数が伸びてて好評のようで、同じファンとして嬉しい限りだ。

 

「3号さんはお仕事ですか?」

 

「いえ、今日は休日なので何かいい調理器具がないかと思い付きでここまで来てブラブラしてたところです」

 

「それってひとりちゃんのためですかー?」

 

「そうですね、ひとりちゃんに美味しい晩御飯を食べさせたくてついここまで来ちゃいました」

 

「そうなんですねー…」

 

あれ?2号さんのテンションが急に低くなった?

 

「あー…3号さん、今時間あります?」

 

「時間?まあありますけど」

 

「よかったらファン同士少しお話ししません?」

 

なんと1号さんからの突然のお誘い。結束バンドのファン同士で語り合いたいのかな?

「私は構わないけどいいのかい?こんなおじさんと一緒になんて」

 

「好きなバンドのファンに男も女も老いも若いも関係ないですよ!それに」

 

1号さんは、私だけに聞こえるように耳打ちしてきた。

 

ちょっとこの子の愚痴も聞いてあげてほしいんです!こんなこと3号さんくらいにしか頼めないんですお願いします!

 

「あっはい」

2号さんをよく見ると少し元気がないようにも見える。結束バンド、とりわけひとりちゃんを熱心に応援してくれているこの子を、私が話を聞くことで元気づけられるなら吝かではない。

 

「決まりね!じゃあ適当に近くの喫茶店にでも行きましょうか!」

 

という訳で1号さん2号さんと共に喫茶店へ移動。席に着き注文した飲み物が運ばれたくらいのタイミングで1号さんが話を切り出した。

 

「3号さん投票してますか?」

 

「もちろん。毎日結束バンドに入れてるよ」

 

「ですよね!私達も入れてるよー。ね!」

 

「うん…」

 

「ネット投票を突破できれば次はいよいよライブ審査!いや~っ、ついに結束バンドもこんな所まで来ちゃいましたね~!」

 

「うん…」

 

話を盛り上げようとしている1号さんとは対照的にテンションが低いままの2号さん。ファンとしては喜ばしいことのはずなんだけど一体どうしたのだろうか。

「そうだね…2号さんは何か思うところがあるのかな?」

「…聴いてくれますか3号さん」

 

ん?何か2号さんの空気が変わった?

 

「これから結束バンドがどんどん認知されて新規ファンが増えていくんでしょうね。それはそれで嬉しいことなんですけど…動画サイトで一番再生数の多い曲聴いただけでファンですとか名乗ってそんな人がライブに来るからチケットも入手困難になって…」

 

「うん…」

 

「今まではゼロ距離で観れてた皆も豆粒程度にしか見えなくなって遠い存在に感じちゃうんでしょうね…新規参入によって民度は低下してそれに対して私達が少しでも苦言を呈そうものなら老害とかバンドを潰すのは古参ファンとか袋叩きにされて腫れ物扱いされちゃうんですよ…」ブツブツブツブツブツブツブツブツ

 

「うっうん…」

2号さん、相当溜まってるみたいだね。

 

「私達だけが知ってる秘密のバンドだったのに~!」

 

「あんた着実に拗らせファン化してるわよ!」

 

「気持ちはものすごくわかりますけど、あの子達がバンドを続けていくには新しいファンが増えるのは大事なことですよ?」

 

「わかってます…わかってますけどぉ~!」

 

2号さんは「わーん!」と声を上げながら思いの丈をぶつけてきた。1号さんが言っていた2号さんの聞いてほしい愚痴ってこの事か…なんかポイズンさんが似たような事言ってたな…古参でも新規でも同じファンであることには変わらないけど、人気が出てきたら今後は今までみたいな接し方ができなくなっちゃうのが寂しいってことかな。

 

「2号さん、もしも結束バンドが大人気の売れっ子バンドになったとして、その時ひとりちゃん達が一番最初のファンであるお二人を蔑ろにすると思いますか?」

 

「そ、それは…ひとりちゃんはそんなことしないと思います」

 

「そうね、それは間違いないわね!」

 

「ですよね。1号さん2号さんもそんなひとりちゃんだから応援しようって思えたのでしょう?」

 

「…うん」

 

「この子なんか最初の路上ライブでひとりちゃんに『がんばれー』って声かけちゃったくらいだしね」

 

「ああ、それひとりちゃんから聞いたよ。演奏中に励ましてもらって路上ライブを楽しめるようになったって私に嬉しそうに話してくれました」

 

「ひとりちゃんが?…そうなんだ」

 

「1号さん2号さんが思ってる以上に、今やひとりちゃんにとってお二人はかけがえのない大切な存在なんです。これからもひとりちゃんを応援してくれると私も叔父として嬉しいです」

 

「「3号さん…」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はありがとうございました!3号さんに話したらなんだかスッキリしました!」

 

「お互い投票頑張りましょうね!」

 

 

「はい、また結束バンドのライブで会いましょう」

最初2号さんの取り乱した様子を見てどうなることかと思ったけど、元気が出たようで何よりだね。1号さん2号さんは満足気な顔をして駅の方へ歩いていった。さて、当初の目的を果たして私も帰ろうかな。ひとりちゃんにとっておきのご馳走を食べさせるために。

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

お目当ての物を手に入れて無事帰宅。ひとりちゃんはまたバイトとバンド練習、きっと疲れて帰ってくるから美味しいご飯でお出迎えだ。

 

 

米(たかたのゆめ)は洗ってから30分浸水しておく。釜飯用の釜に米、水、刻んだ冷凍椎茸、ベビーホタテ、タコ、アサリ、エビを入れて軽くかき混ぜる。酒、みりん、塩、醤油で味を付けたら蓋をする。

 

よし、後はひとりちゃんが帰ってくるのを待つだけだ。

 

 

 

 

「あっただいまです」

 

「おかえりひとりちゃん。ご飯にする?お風呂も沸いてるけど先に入る?」

 

「あっ先にご飯でお願いします」

 

「ん、了解」

 

釜飯用の釜の下に固形燃料をセットし点火。手を洗い席に着いたひとりちゃんの目の前に置く。

「固形燃料が燃え尽きるまで待っててね」

 

「おお…こ、高級旅館で出てくるご飯みたいですね」

 

「でしょ?中身もすごいから楽しみにしててね」

 

「あっはい」

 

ひとりちゃんは固形燃料が燃える様をじっと見つめていて

私はその間に残りのおかずを並べていく。出来上がるまでもう少しだけかかるからこっちを先に食べてていいよと言ったら「あっせっかくなんでもう少し待ちます」と釜から目を離さなかった。よっぽど楽しみなんだね。釜からはグツグツと音が鳴り蒸気が吹き出す。暫くすると火の勢いが収まってきて…

 

 

 

「固形燃料の火が消えて蒸らしも終わった頃だからそろそろだね。ここで仕上げをします。ひとりちゃん、蓋を取ってくれるかい?」

 

「あっはい」

 

ひとりちゃんが蓋を取ると、たちまち極上の香りを纏った湯気が立ち上る。湯気は釜を覗き込んでいたひとりちゃんの顔を掠めてその香りをダイレクトにお届けした。炊きたての釜飯の香りを堪能したひとりちゃんは、堪らず目を細めて「んぐぅぅ…」唸り出す。かわいい。

 

「あっ…すごくいい匂いです。お腹…鳴っちゃいそうです」

 

「うまく炊けてるみたいだね。それじゃあ最後にイクラと三葉を散らして…完成!」

 

本日の晩御飯

叔父さん特製海鮮釜飯

豆腐と茄子の二色田楽

空芯菜の青菜炒め

胡麻入り紅白なます

フワフワかき玉汁

 

「では手を合わせてください」

 

「あっはい」

 

「「いただきます」」

 

新宿で仕入れてきた御一人用の釜。見つけた途端に叔父さんに電流が走った!これ一つでまるでお店や旅館に来たようなご飯が作れる優れもの。ありったけの海鮮を詰め込んだ旨味が詰まりに詰まった釜飯。ひとりちゃんの反応はどうかな?

 

ミニしゃもじで器用にご飯をよそって箸で一口分を取ってパクリ。その瞬間見えるパァッとひとりちゃんを包む幸せオーラ…まっ眩しい!

 

「ん~っ…おいひい…♪あっ…です」

 

満面の笑みでモグモグしていたのが恥ずかしかったのか顔を真っ赤にして「へへへ」と照れ笑い。かわいい。

「よかった~初めて作ったけどうまくいったみたいだね。遠慮しないでドンドン食べてね」

 

「あっはい」

 

「そういえば今日1号さんと2号さんに会ったよ」

 

「えっお姉さん達と?」

 

「うん、3人で結束バンドに投票を続けてライブ審査まで繋げましょうねって話をしたよ」

 

「あっありがとうございます…」

 

「虹夏ちゃんもリョウさんも喜多さんも宣伝に力入れてるし、ネット審査もきっと突破できるんじゃないかな」

 

「そっそうですかね?…へへへへ、あっこの勢いなら首位とか取っちゃったりして…」

 

「あーありえない話じゃないね。それで一気に知名度が上がってライブ審査前にスカウトからも注目されたりして」

 

「うへへへ…スカウト…うへへへ」

 

ものすごく浮かれてる…。体全体をフヨンフヨン揺らしてひとりちゃん嬉しそうだな。結束バンドが脚光を浴びる日がくるのもそう遠くないと本気で思うしネット投票の結果を見るのが楽しみになってきた。

 

 

ごちそうさまでした

 

 

ピロン

晩御飯を食べ終わり、片付けも終了したくらいにロインの通知がきた。どれどれ…星歌さんから?珍しいな。

 

 

 

もうすぐネット投票の中間結果発表があるんですけど、その日に叔父さんのご飯と私からもお祝いのケーキとか振る舞いたいんですけど協力していただけませんか?

 

 

ほほう…中間発表か。というか星歌さん、もうネット審査は突破した気になってるね。私もだけど。返信。

 

 

 

はい、喜んで協力させていただきます

 

 

どんな料理を出そうかな…楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回 中間結果発表と姪と◯◯

よくしゃべる叔父さんが見られるよ(多分)

↓おまけ
タグに一部原作改変を付けている理由


とある日のSTARRY

「そういえばさ…」

「ん、どしたのリョウ?」

「最近またカップサイズが一つ上がったよ」ドヤッ

「何だ?ケンカか?今体力有り余ってるから買うよ?」

「そういう虹夏だって大きくなったじゃん」

「それは…まあそうだけど…リョウ程じゃないよ」

「やはりこれはオジサン飯の力か」

「なんでそこで晋作さんが出てくるの?」

「あっおはようございます…」

「おはよーございまーす♪何の話してるんですか?」

「オジサン飯は偉大だなって話だよ」

「あれ!?そんな話だったっけ?」

「私と虹夏にその成果が現れてるから間違いないね」

「へー…ひとりちゃんあっちでお話ししましょうか」

「えっあっいやっはい」

「待って、この中で一番オジサン飯の恩恵を受けてるであろうぼっちに聞きたいことがある」

「えっあっはいなんでしょう?」

「ぼっちのここ今何カップ?」ツンツン

「ぴぇ!?」

「リョウ知ってる?同性同士でもセクハラって成立するんだよ?」

「そうですよリョウ先輩!ひとりちゃん、答えたくないならハッキリ言わなきゃダメよ?」

「あっはい」

「じゃあ二人は気にならないの?ぼっちがこの一年のオジサン飯でどれほど育ったか知りたくないの?」

「そ、それは…」

「全く気にならないと言えば嘘になりますけど…」

「えっ」

「という訳で何カップかだけ教えて。悪用とかしないから結束バンド内だけの秘密にするから」

「それ絶対悪いこと考えてるやつ!」

「あっでもさすがに恥ずかし…」

「アルファベット一文字だけ…ね?」

「う……ぜっ絶対言いふらさないでくださいね」

「約束は守る」

「えっと…ゴニョゴニョです…」

「えっ!?嘘でしょ!?」

「なん…だと?ぼっち…ちょっと写真を一枚」

「ダメですよリョウ先輩!でもひとりちゃん…いつの間にそんな遥か高みへ…私なんかでは到底…」ペターン

「ほっ本当に本当に秘密にしてくださいね!?」

「えーと、つまりぼっちは…A‥B‥C‥D‥E‥F‥G‥H」

「かっ数えないでください!!」

この物語のキャラ達は叔父さんご飯の謎パワーによって概ね(オオムネ)育ってます。

つづく(続けさせてくださいお願いします)
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