ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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ご覧になっていただきありがとうございます。

今回はファイナルステージって書いてるのに出てくるのはあの人です。


ファイナルステージと姪とケバブ

未確認ライオットファイナルステージ

 

屋外の特設ステージで昼頃から始まる10代バンドたちのこの天王山に結束バンドがいないのは非常に残念だが、事前に休みを取っていたので来ないのももったいない。ひとりちゃんたちも朝から4人で下北沢に集まってからここに来ているみたいで、今日はお客さんとしてライブを楽しむようだ。ここは私も気持ちを切り替えてファイナルに進んだ実力者たちの演奏を楽しむとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

と、思っていたんだけど…。

 

「お願いおっちゃん!バイト手伝って!このとおり!」

 

今私の目の前には必死に私に拝み倒している廣井さんがいる。廣井さんの後ろにはケバブ屋さんの屋台。何故か廣井さんはこの屋台でバイトをすることになったらしい。

 

「うう…酒が飲めるよって言われたから来たのに借金返すためにここでバイトしろって言われて…ノルマ分売りきらないとバイト代出さないとも言われるし騙された~」

 

「それで何故私にお手伝いを頼むんですか?」

 

「おっちゃんの料理スキルなら余裕でノルマ分売れると思って…」

 

「残念だけど私は副業禁止なので力には…」

 

「ならせめて売り上げに貢献をお願いします!」

 

「それなら喜んで」

 

「ありがとうー早速用意するね!」

 

牛肉を巻き付けてじっくり焼き上げた肉の塊を専用のナイフで削り取り、ケバブ用パンのピタパンに肉、レタス、オニオン、トマトを詰め込んで最後にケバブソースをかけて「完成」

 

「はい、おっちゃんおまたせー600円です」

 

「はいどうも」

本日の(叔父さんの)昼御飯

 

屋台のケバブ

 

「ではいただきます」

 

初めて食べるケバブだけど、廣井さんの作業を見ていた限りほぼ出来上がった物を詰めて出すスタイルか…これなら廣井さんは専門的な調理をする必要がないからお店として成立するみたいだね。さてさてどんな味か……ん?

「…しょっぱい」

 

「あれ?おいしくない?」

 

「いや、肉の味や野菜の新鮮さ、ソースやピタパンとの相性も悪くない…でもとにかく味が濃いかな」

 

「えー言われた通り作ったけどな~…」

 

見たところお客さんは私が最初でこの後昼時でお客さんが殺到してくるだろう…この味の濃さをお店の商品として不特定多数の人に出すのか…うーんそれは…さすがに料理をする人間として看過できないな…。

「仕方ない…廣井さん、ちょっと店の中入りますよ」

 

「えっ?やっぱり手伝ってくれるの?」

 

私はケバブ屋の屋台の中へ入りケバブに使う食材を見直す。濃い味の原因は塩味のある肉とソースとピタパンが合わさっているからだな…調理を終えている牛肉とピタパンはいじれないからソースに手を加えるか。

 

ソース単体の味見をしてわかったことは数種類のスパイスとケチャップとマヨネーズがベースになっている。肉にかなりしっかりとした味が付いているからソースはもっとスッキリとした味わいにするべきだな…となれば果物かな。

「廣井さん、ここって何か果物とかありますか?」

 

「へ?一応レモンがあるけど何に使うの?」

 

「ちょっと失礼して…」

ケバブソースにレモン汁を足して味を調節。ピタパンに肉をさっきの半分の量、レタス、オニオン、残りの肉、トマトを詰めてソースをかけて「完成」

 

「はい、廣井さん味見してみてください」

 

「えっ?」

 

「これの分の代金もちゃんと払いますから」

 

「ま、まあそういうことなら…いただきます。あむ…んっうっ…うまぁ~!!なにこれー!!」

 

一口頬張って絶叫する廣井さんと、その声を聞きつけてこちらの様子を伺う人がちらほら…どうやらお客さんの呼び込みはする必要なさそうだ。

 

「とりあえず廣井さん、このソース使って肉を2ヶ所に分けて入れて出してみてください」

 

「えっあっはい~」

 

図らずも廣井さんの「うまぁ~」発言が宣伝になったのかお客さんが集まり列をなしてきた。さすがにこれを1人で相手するのは大変そうだな…。

 

「おっおっちゃ~んヘルプ!」

 

あーもう…しょうがないな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!ケバブ!ロックフェスに来たらやっぱりお肉ですよね!ここでフェス飯にしましょうよ!」キターン

 

「いいけど結構並んでるね~さすがフェスマジック」

 

「あっ列に並ぶのは…」

 

「ぼっち、私の分も買っておいて」

 

「おい!リョウも並べ!」

 

「えー…」

 

 

 

おや?列の後ろの方にいるのは…ひとりちゃんたちだね。

 

 

 

 

「いらっしゃいませ~…元気だね君ら」

 

「あれ!?廣井さんなんでここに!?」

 

「私もいるよー」

 

「晋作さんも!?なんで!?」

 

行列をさばいて結束バンドの皆が前に進んできた。4人の後ろには新たにケバブ目当ての列が出来ていて、ここのケバブを食べた人たちのリアクションがそこかしこでお客さんを呼びこむ連鎖反応が生まれているようだった。

 

「銀ちゃんに騙されました~」

 

「廣井さんに手伝わされてます」

 

「何故でしょう…この屋台だけやたら行列が出来てる理由がわかった気がします」

 

「だね~」

「晋作オジサンだしね」

「あっですね」

 

皆は何かを納得した様子でケバブを注文し、最終ステージがもうすぐ始まるようなので屋台のすぐ隣で食べ出した。

 

「いただきま~す!んっんっ…ん~♪うまぁ~い!」

 

「おいし~!叔父様効果も相まってフェスで食べるご飯は格別美味しく感じますよね!」

 

「ふむっ…野菜の瑞々しさとソースの清涼感がガッツリした味の肉とベストマッチ!」

 

「あっちょうど良い味で美味しいです」

 

どうやら味変成功のようだね。とりあえずこの行列が落ち着いてきたらお手伝い終了ってことでいいか。

 

 

ごちそうさまでした

 

 

「おっちゃんありがと~!おかげでノルマ分あっという間に売り切れたよ~」

 

「よかったですね。これに懲りたらもう借金しちゃダメですよ?」

 

「あ~い…あっおっちゃん今日のバイト代だけど…」

 

「最初に言ったけど私は副業禁止なので今日の事はボランティアで手伝ったということにしてください」

 

「あ~…じ、じゃあ代わりと言っては何だけどこれ持っていってよ~」

 

廣井さんは1枚のチケットを渡してくれた。これはSICK HACKのライブチケット?

 

「今度やるライブのチケット…ってこれもマズいかな?」

 

本当はグレーなところだけど…まあいいか。

「…ありがとうございます。必ず観に行くのでライブ頑張ってくださいね…機材は壊さない程度に」

 

「っ!うん!めっちゃ頑張るよー!おっちゃんが応援に来てくれるんなら志麻もイライザも喜ぶよ~♪」

 

 

 

 

 

想定外のバイトのお手伝いを終えて今度こそフェスに集中だ。既に何組かのライブは終わっているみたいで今出ているのはSIDEROS。センターでつっきーさんが挨拶をするところだった。

 

「SIDEROSです。観客の皆、暑い中朝からお疲れ様!…今立ってるこのステージを目指したバンドを今回沢山見てきたわ…本当に良いバンドばかりだった!…それに凄いギタリストにも出会えた…でもそれら全てを退けて私たちはここに立ってます!だからその分背負ってるものが半端ないのよ!初っぱなから死ぬ気でトばすから最後までついてきなさい!いいわね!!」

 

そう言い終わるや否や長谷川さんのフォーカウントから繰り出されるSIDEROSの圧巻のパフォーマンスに会場の熱気は瞬く間に最高潮に達した。伊達にファイナルステージまで進んだバンドではないね!私も自然と体が動き出してしまう。ああ…このステージでの結束バンドのライブも見てみたかったな…。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…ただいま」

結局未確認ライオットはSIDEROSの優勝で幕を閉じた。つっきーさんのドヤ顔が印象的だったな。彼女たちの夏もこれで終わりか…。家に帰ってしみじみと再確認する。ひとりちゃんが帰ってきたら何て声をかけようか…ここ数日はずっと上の空って感じだったけど…。

 

 

 

ピロン

 

ん?ロイン…ひとりちゃんからだ。

 

 

 

 

さっきストレイビートというレーベルから結束バンドに興味を持ってくれて今度話を聞きに行くことになりました!

 

 

 

え?レーベル?




次回 はじめてのおつかいと姪と◯◯

レーベル編前にアンソロジーのお話ですよ。

↓おまけ

伊地知虹夏は勘違い男製造機

とある日のSTARRY

今日の受付は虹夏ちゃん

「こんばんは~ドリンク代500円で~す!今日はどの
バンドを観に来られましたか~?ありがとうございます!ライブ楽しんでくださいね♪」





「今の受付の子可愛かったな~」
「それな!何度か目が合ったし俺に気があるかも」
「いや俺にだろ」


「…」
「店長、虹夏が変な男に言い寄られないか心配?」
「いきなり背後から話しかけるな…あと仕事しろ」
「実際虹夏はクラスの男子の殆どが狙ってるよ」
「話聞け…ってそれは盛りすぎじゃないか?」
「事実だよ。例えば…」




「あ、◯◯君おはよう!借りたCD聴いたよ~♪普段聴かないバンドだけど良い曲だね!特にサビ前のバスドラが」

「お、おう。そうだろ?やっぱ伊地知ならわかってくれると思ってたよ」


「△△君教科書忘れたの?じゃああたしの貸したげるよ!あたしはリョウの見せてもらうから気にしないで!」

「えっあっありがとう伊地知さん…」


「✕✕君、この間の手作り弁当の画像見せたらあたしの料理仲間(晋作さん)が誉めてたよ~高校生でここまで作れるのはすごいって!」

「マジで!?伊地知さんに倣って料理始めたけど成果が出てきたみたいだな!」



◯◯&△△&✕✕(あれ?もしかして伊地知[さん]って俺[僕]の事好きなんじゃ…)




「みたいな感じで男子が勘違いしまくってる」
「そ、そうか…我が妹ながら虹夏も罪な女だな」
「一番ヤバかったのはバレンタインで…」




「そんなわけで結束バンドの新曲MV撮影してきたから完成したら是非見てね!」

「おう!他でもない伊地知の頼みなら断れないな!」

「も、もちろん、伊地知さんのバンドなら絶対見るよ」

「でも撮影って外だったんだろ?寒かったんじゃない?」

「そうなんだよ~お金ないからスタジオも借りれないし公園で美大のファンの人たちに協力してもらっての撮影だったんだけど寒くてね~。あ、でも撮影中にあたしの料理仲間が差し入れ持ってきてくれてね~
(第49話 MV撮影の姪とガトーショコラ参照)」

「へぇ~その子も結束バンドのファンなのか?」

「そうそう、いつも応援してくれる“おじさん”でね~」

「「「えっ!?」」」

ガタッ
ガタガタッ

「?で、それが所謂バレンタインの逆チョコってやつでさ~出来立てを持ってきてくれたみたいで温かくて美味しかったな~♪」

「なん…だと?」
「逆チョコってことは…そのおっさんもしかして…」
「俺の弁当を誉めてくれたのもその男?男だったのか…」

ザワザワ
ガタガタガタンッ

「あれ?なんか周りが騒がしくなったね~。まあそんな訳だから新曲楽しみにしててね!」






「って感じで晋作オジサンの知らないところでクラスの男子が勝手にライバル視してて面白かったよ」

「前にも言ったがお前性格悪いな!」






「あ!晋作さん♪こんばんは~今日は結束バンドの出る日じゃないよ?」

「虹夏ちゃんこんばんは。今日はSTARRYの皆に差し入れとこの間のお裾分けのタッパーを返しに来たんだ」

「ありがとう~!そんなに気を遣わなくてもいいのに♪」


結論 虹夏ちゃんのクラスメイトが羨ましいね!

つづく(続くって言ってんじゃ~ん)
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