後半少しシリアスのあとに……
side 流星
『お────せい! ば──―う―ど──こい!』
『りゅ──んむちゃ────もうそ──―しな──―いい──!』
通信から聞き慣れた二人の声が聞こえる。
しかし今はそれらに対応している暇もない。ただひたすらにソラに登っていく。
こっちのこいつ等の制御と俺自身の操作に必死なのだから。
なんとしてでも
オキロ! オキロ! アサダゾ!
「っ…………またか」
……久しぶりに
……なにか伝えたいことでもあるのだろうか。
午前5時、家庭用に作られたハロのアラームで起きた俺は日課をこなすべくパジャマからジャージに着替える。
ふと横のベッドを見るとこの部屋の同居人がいない。周りを見渡してもいない。……どこに行ったのだろうか。
教材などを置いているところを見ると、まだ戻ってくるのだろうか。
彼女も代表候補生で色々と忙しいのだろう。彼女の使っている机の上に冷蔵庫から取り出した缶コーヒーを置いとく。
────―
「朝から精が出ているな流星」
「なぁにただのリハビリの一環ですよ織斑先生」
朝のランニング、同じようにジャージを着た織斑先生……あっ今は千冬か。次からそうよぼう。
と会って今は横になって話しながら走っている。
「と、言いつつも昔から続けてるではないか」
「昔よりだいぶ速度も落ちてますからほんとにリハビリなんだけどなぁ……
あれは……」
と言いつつ走っているととある建物の前を通り過ぎかける前にあるものがケースに入って保管されているのが見えて、思わず立ち止まる。
「……あのときの一部こんな所にあったんですね」
「あいつの使ってたやつだ。解析してもただのブラックボックス……というか何も分からなかったからな。
なぜあれだけの出力が出せていたのかも」
そこには
一部が黒く焦げている白い盾が2枚飾られていた。
「ま、今日も授業がんばりますかね! 千冬さん!」
「……スルーしているがこういうときは最初からそう呼んでくれ」
「ジン!?」
軽めに頭をポカッと千冬に叩かれた。……あれ、なんで威力低いの?
────―
時は昼、俺と一夏、箒は食堂にてご飯を食べていた。
俺は温玉生姜うどんと塩おにぎりで一夏と箒は和食セットB(煮物)をいただいている。
「決闘の特訓どうしようかなぁ……アリーナも予約いっぱいだって言われたし……」
一夏が来週のことについて頭を悩ましている。
「あなた達が噂の一年生?」
そう呼びかけてきたのは見知らぬ人二人。服の色が違うあたりこちらよりも学年が高いのか。
「……噂とは?」
データを取りたがっているとわかりきっていることだが、一応事実かどうかの確認をする。
「世界で二人だけの男性搭乗者が代表候補生と決闘するって話。代表候補生は少なくとも300時間は搭乗時間あるわ。そういえばあなた達の搭乗時間は?」
「え、えっと……」
「そんな考えなくてもいいぞ、電子生徒証に書いてる。ほら、こんな感じに。乗った時間は勝手に増えていくんだとさ」
そう言って俺の電子生徒証の搭乗時間を見せる。
そこには「
「あれ? もうそんなに乗ったのか流星? 俺は……お、あったあった。1時間だってさ。やっぱり少ないよなぁ」
「いや、俺は
「それで? 私達が一緒に教えてあげましょうか?」
何も知らない人がこれを聞いたらただのお人好しになるのだろうがこの状況においては俺はデータ取りたいとしか思えん。
「いいですよ。篠ノ之束の妹である私が教えるので」
なんつーパワーワード。
「そ、そうなのね。それじゃあ」
その言葉に思わず日和って立ち去る二人。
「できるのか箒!?」
「あ、ある程度ならできると思うぞ! 姉さんに教えてもらったし今も連絡してるから」
すこし頬を赤らめて答える箒。……といってもIS使った訓練はアリーナで予約しないと実機を使った訓練はできないんだがな。だが今回は、
「今日ちょうど俺名義でアリーナ借りてるから一緒にどうだ?」
「ほ、本当か!? 座学と剣道だけじゃ不安だったから良かった。ありがとう流星!」
ISの実技なかったのかよ……
「じゃあ5時半に第2ISアリーナの第2ピットで待ってるぞ」
……あぶねぇ。指で隠してたけど
────―
午後5時半より少し前、予約していたアリーナに一足先についた俺は、
「お、りゅーりゅーだー!」
「あれ!? 尾白さん!?」
「こんにちはー!」
「ども、相川さんに佐川さん、それと本音さん。あんたたちも訓練か?」
相川さんに佐川さんとのほほんと出入り口でバタリと出会った。
「ううん、今終わって帰るところだよー」
「あ、私すこし忘れ物したから先に帰っててね―」
先に二人を帰すのほほん。こちらを向いて……なにかあるのか?
「りゅーりゅー……いや、尾白くん。手伝ってほしいことがあるんだ」
……ん? 急に名前呼び……重要なことか。
「(うそ!? もうそんな仲に!?)」
「(いや、本音のお姉さんと分けるためだったはず……ハズ)」
そうではない。……ないよな?
「……聞こう」
────―
司令室に向かった俺が見たのは
「……心配か?」
「……うん」
心配そうにある飛行中の一機を見つめているのほほんだった。
……あの機体は何だ? 打鉄のようにも見えるが……そうか。簪の乗ってる例の専用機か。
のほほ……布仏さんが言うには元々今見てる機体は打鉄二式……倉持技研が開発していた機体だそうだ。それが一夏の機体を作るため彼女に未完成の機体と資材をわたしただけでほっぽりだしたそうだ。
……何やってんのあいつら。
この学校では機体を整備課がオーバーホールしたりするようだがそれの手に頼らずに一人で作っているそうだ。というのもこの学校にいる姉と少しいざこざがあったんだとか。……その姉も何やっちゃってんの。
まだ飛行も難しいと言われてたが……いつの間に。
「そりゃぁそうだろうな、わからんでもない。
──―なんせ彼女、剣を振り回す世界でも結構無茶してたからな」
「……え? どうしてりゅーりゅーがそれw『打鉄二式に異常発生! 付近の生徒はピットに退避してください!』かんちゃん!?」
横にいた今日の監視担当の教員が、警報を出してアリーナ内をISで飛んだり歩いていた生徒が慌ててピット内に入っていく。
一部のスラスターから黒煙が吹き出して飛行が不安定になっている。こういうときはパイロットはパニックを起こしている場合が多い。
『残ってるスラスターでゆっくり地上に降りてくるんだ! いいか! 絶対慌てるなよ!』
その場にあった教師が使ってない横のマイクで指示を出す。
少し制御が安定してきたか。
そう思ったのも束の間
『かんちゃん!!』
機体は推力がなくなった上にPICも作動せずに地面に墜落した。
side 簪
……ねむたい。
昨日整備室で機体の追い込みでなんとか飛行できるまでにはこぎつけたけど……今日の授業起きてれるかな……
午前8時に部屋に戻って来たけど誰もいなかった。……もう校舎に向かったのだろう。私も授業に必要な教材の準備を始める。
「……ん?」
私の荷物の横に缶コーヒーが置かれている。
同居人の人が気を利かせてくれたのだろうか。
────―
放課後、私はアリーナで作っている途中の機体で試験飛行をしていた。
……今のとこいい感じ。これなら期限に間にあ
『第1・4スラスターに異常発生、推力が低下していきます』
え。
打鉄二式から警告が発せられたかと思うと思わずバランスを崩してしまう。
スラスターより黒煙が吹き出す。
未だ作りかけであるこの機体にはフライ・バイ・ワイヤが搭載されていないので、飛行が不安定になっていく。
どうしようどうしようどうしよう。
『残ってるスラスターでゆっくり地上に降りてくるんだ! いいか! 絶対慌てるなよ!』
司令室から尾白さんがが指示を出している。そうだ。落ち着かないと……
『第2・3メインスラスターオーバーヒート。停止します』
「っ! そんな!」
機械からの無機質で冷酷な宣告が告げられる。
まだ辛うじて動いていたスラスターもついには動かなくなり、
「だめっ!」
スラスターをすべて失った打鉄二式は
『かんちゃんっ!!』
本音の声が聞こえる……
と思うとすぐに地面に激突した。
────―
整備室にて地面に激突して何一つ言わなくなった打鉄二式と向かい合っている。
まだ機能が万全ではなかったSEがうまく作動しなかった。絶対防御の方はどうにか作動したようだけど……
スラスターは焼け焦げているか、制御装置がグチャグチャになっており、もはや取り替えるほうがてっとり早いほどだ。
それだけなら良かった。
一部しかつけていなかった装甲は破損または脱落。フレームも歪みに歪み、一部は断裂している場所もある。
無傷なのはISコアだけ。
結論を言うと
この機体はもう復活できない。
当の私本人は、体を少し痛めた。まだ湿布を貼っている肩や脛がヒリヒリする。
あの後の夜に目を覚まして今に至る。
「最後にこいつは身を挺して守ってくれたんだ。こいつは頑張った」
「……」
ここには、本音や整備科の人たち、そして……なぜ尾白さんがいるのだろう。
「……で、事情は多少知ってるが、布仏さんや他の見てた整備課が心配してたぞ。学校始まる前からずっとここにこもりっぱなしで一人で作業してたって」
尾白くんがそう話す。大体本音あたりから聞いたのだろう。
「……フレームも装甲も予備を使っても足りない。この子は直せないし、作り直すこともできない。だから政府からの命令で……っ」
「そ、それじゃあ……」
「期限になったらこの学校を出ないといけない」
整備室内の空気が凍る。
整備科の人たちの顔が驚愕や悲壮な顔に染まっていく。
「あんなに頑張ってたのに……」
「後輩ともうお別れか……」
……そっか。みんな見てくれてたのか。
「……かんちゃん」
本音の目に涙が溜まっていく。
「……ごめん。私が一人で突っ走っちゃったから……」
「……そんなことないよかんちゃん! だって、たっちゃんでも一人であんなことできないんだよ!」
本音がそう話すが、あながちう「ちょっとこれ見てみな」え?
そう言って尾白くんこちらに複数の名前が書かれた紙が渡される。その名前の中には姉の名前も入ってる。
そしてその名前は
「……ロシア第三世代IS製作者名簿?」
「……話はだいたい聞いてる。そのたっちゃん? が作ったISでもこれだけの人が関わってるんだ。
この短期間でこんだけ出来るやつは俺の知る限りだと……俺と束くらいか?
なんか姉のほうがどうのとか言ってるけど、俺は簪のほうがすげぇようにしか見えんよ」
姉より評価してくれたのは嬉しい。なぜ篠ノ之博士の名前が出てくるのかはわからないが、それだけの実力があるって認めてくれたことは分かる。嬉しい。
今までそんなこと言ってくれるのは本音くらいだったのだから。「……あ、今の資料はここだけの話な。ちょっとまずいから」機密資料出しちゃだめじゃん!
でも……
「今更そんなこと言ってくれてももう遅いよ……」
「で、ここからが本題」
この話は誰も知らないのだろうか。整備室にどよめきが起こる。……ここから何をできるというの?
尾白くんが真剣な目をこちらに向けて
「もともと整備科と俺、のほほんと一緒に簪の専用機作る話だったんだがああなっちまったからな……
そこで! 簪の機体、俺達に任せてくれないか?」
「「「「「「「……ゑ?」」」」」」」
思わず口に出てしまった。周りも言葉の意味がわからずハモる。
彼が少しキョトンとしていたがすぐに
「いや、少し言い方が悪かったな。
簪の専用機、俺達の
「「「「「「「……えええぇぇぇ!!」」」」」」」
そんな軽く決めていいものなの!?
────
一方その頃
「……ほんとうに流星どこ行った?」
「誰かを保健室に運んでたな。あいつから先生に話しといたから使っていいと聞いてる。
うん、歩行はだいぶ様になってきたからもういいだろう。では次は飛行の練習だ。やるぞ一夏!」
「ああ!」
こっちはこっちで箒が頑張っていた。
敵として出るなら……どれ?
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よう、首輪突き。
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世に平穏のあらんことを
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私こそが企業だ!