IS 白き一角獣   作:どこぞの機械好き

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リコリス回。

シャア、今回もお休みだ。

オタコン、あんたもだ。すまんな。


第19話 ウォールナット

「はやく座れ……今日は俺が任務の説明をする」

 

 がやがやと複数の男が部屋に入って来て次々に座っていく。

 今日の説明はランバがするようだ。

 

「今日の昼、俺たちが行うのは個人的な依頼だ。お前たちはウォールナットは知ってるよな?」

 

 ここにいるすべての隊員が首肯する。

 

「30年前くらいからいたやつだな」

 

「正体不明の天才ハッカーねぇ……」

 

「そうだ。そいつが俺たちに護衛の任務を依頼してきた。経路は……いま画面に写ったとおりだ。今回の報酬は安くないぞ?」

 

 複数の隊員がガッツポーズをして喜ぶ。基本的に一回の出動で手当は約30万はもらっているのだが……

 

「俺たちランバ隊はウォールナットを狙っている別の依頼の奴らを叩くことだ。出会ったらすぐに無力化させろ。

 このまえのストーカーを一緒にとっちめたお嬢ちゃん達との合同作戦だ。恥ずかしい所見せるな」

 

 隊員が立ち上がろうとするがそれをランバが制する。

 

「ちょっと待った、最後に! お前たちに嬉しいニュースをやろう。さぁ、入ってきてくれ!」

 

 隊員のすべての視線が開いていく扉に向けられる。

 入ってきたのはスニーキングスーツを身に着けた……

 

「待たせたな!」

 

 流星、もとい『スネーク』だった。

 部屋が歓声に包まれる。

 

「何が『待たせたな』だ、心配かけさせおって……まぁいい、各自準備をしてくれ」

 

 ────―

 

 side 流星

 

「──―そしてここから脱出、逃走手順は以上です。羽田でゲートに潜ったところでミズキさんに交代……って聞いてますか?」

 

 後ろに座るたきなが説明してたんだが……聞いてたか? 

 さすがに電車内でスニーキングスーツをつけているのは怪しさ満点なのでチャック付きのパーカーとダボダボなズボンを上から履いている。

 

「んー、いらいぬひ……すごうでハッカなんでひょぉ? ほんなひとかなぁ?」

 

「飲み込んでから言え。てかハッカって……」

 

 それ人でも何でもねぇただの植物じゃねえか。

 

「んぐ、ゴクッ……やっぱり眼鏡で痩せて小柄な男とか? カタカタ……パチーンッって!」

 

「それとは限らんだろう……さてはアニメか映画の見過ぎだな?」

 

「そうですね……ってなんで知ってるんですか!?」

 

 駅弁を食べて、お茶を飲みながらしゃべる千束にツッコミをいれる。

 何やら後ろからたきなが人外の目で見てらっしゃるような気がするが……

 

 それはそれとして先程駅のコンビニで買ったものを取り出してたきなに渡す。

 

「ほい、たきなさん。この味で良かったか?」

 

「この味で大丈夫です」

 

「……二人とも何を食べようとしてるの?」

 

「俺はカロリーメイトだが?」

 

「私はゼリー飲料です」

 

「いや、いやいやいやお二人さん!? 今の状況わかってますか!?」

 

 何いってんだ? 

 

「依頼人に会うために俺たちが特急に乗っている。そして昼飯を食べている。ん、これ食うかたきなさん?」

 

 ちなみにランバたちは荷物があるのでヘリコプターで既に現地入りしている。

 

「ありがとうございます……美味しいですね」

 

「バニラ味、結構行けるだろ?」

 

 4本入りを二箱買ったので一本をたきなに渡す。プレーンが一番うまいんだが、やはりたまには別の味を食べたくなる。

 

 軽食をとっている二人を千束は信じられないモノを見るような表情を浮かべてみている。

 

「えー、それがぁ? 特急だよっ!? 駅弁食べようよ~! あ、ちょっと食べる?」

 

「いや、構わんぞ」

 

「結構です」

 

 どちらも即答。

 

「まあまあ、そう言わないで! 煮卵とか美味しいから! ほら、あーん!」

 

 任務前でもいつも軽いのはいいのやら悪いのやら……

 

「あー、んむ……」

 

 千束の押しに負けたたきなは千束が差し出す煮玉子を食べる。

 

「どう? 美味しい?」

 

「……美味しい……です」

 

「はぁい、美味しい!」

 

 ……何を見せられているんだ? 

 

「流星も食べる? ほら、あと煮玉子2つあるし!」

 

「いや、ほんとに大丈夫だ」

 

「いいから、ほら! あーん!」

 

「い ら ね ぇ!」

 

「あーん!!」

 

「だからいrムグッ!?」

 

 ちょっ!? 

 口に煮玉子を突っ込まれた。

 

 口にしたものは仕方ないから、それを食べる。

 

「どぉ? 美味しい?」

 

「美味いが……わざとやったのか? それも人目のある場所で」

 

「あっ……や、やややだなああぁ! べべべつにに他意はないよおおぉ!? やっだなー、意識しちゃうとかお年頃なんですかああぁ!?」

 

 恥ずかしくなったであろう千束は誤魔化すように、冗談を口にする。顔はすでに真っ赤だ。

 

 今彼女がしたのは、異性に対してのあーんである。これちょっと前だったらここで気絶してたな。

 傍から見ればそれは恋人のやり取りでしかないだろう。

 

『ご乗車ありがとうございました。まもなく、北千住……北千住です』

 

 アタフタしている千束を眺めていると車内アナウンスが流れ、目的の駅に近づくことがわかる。

 

「降ります」

 

「はぁ……」

 

「え、もう!?」

 

 

 

「10分足らずで乗り換えだからゼリーを買ってもらったんです」

 

「後ろに同じく。カロリーメイトを買ったのはその訳だ」

 

「そうなのぉ!? 早く言ってよぉー!」

 

 言ったはずなんだがな……

 

 ────―

 

 早速だが、結果を言おう。ウォールナットは死んだ。

 

 千束は完全に落ち込んでいる。……護衛対象を死なせてしまったと思っているからだろう。

 

【あー、こほん。もういい頃合いなんじゃないか?】

 

 あー、さっきのは言い方が悪かったな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()……ややこし。

 

 んで、テロリストは全員ランバがやってくれた。あいつらボーナス弾むか。

 

「あっつううぅぅ……流星、ビール!」

 

「ほい、ミズキさん」

 

 ヘルメットとマスクを外し正体を明かした手でパタパタと扇いでいるミズキさんに、クーラーボックスに入っていた缶ビールを取り出して彼女に投げ渡す。

 

「え、ちょミズキに流星!? え、あ、な、なんでぇ!?」

 

「落ち着け千束」

 

 前から運転するミカさんの声が聞こえる。

 

「う゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛!? 先生っ!?」

 

 そんなに驚くか? 

 

「んぐんぐ……ぷっはああぁぁ! あ、これ防弾性よ? 

 派手に血が出るのがミソね、マジでクッソ重いけど!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!? ウォールナットさん本人はどこへ!?」

 

「そうだよ! どこいったの!?」 

 

『ここだ』

 

「「うぇ!?」」

 

【追手から逃げ切る一番の手段は死んだと思わせること。そうすればそれ以上捜索されないからな……お? おお? 真っ暗だな」

 

 スーツケースがガバッと開き、そこから金髪をした幼女が現れる。彼女がウォールナットなのね。

 

 彼女が喋る言葉が着ぐるみの頭から加工音声として音が出ているから、彼女こそがウォールナット本人だということがよくわかる。

 

「では、わざと撃たれたと?」

 

 ……てかそのキャリーバック、内側から開けれるんかい。

 開けれんと思ってたよ。

 

「ああ、彼の部隊のアイデアだ」 

 

 ウォールナットの視線がこちらに向かったことからこの作戦が俺立案のものだということが千束とたきなの二人に伝わる。

 

「あーあ、最後はハリウッド並みの大爆発を用意したのに無駄になっちゃったわねー」

 

「ま、こっちの予算浮いたしいいんじゃないか?」

 

「そうだな、早く終わるのはいい事だろう?」

 

「想定外の事態にキチンと対処をして見事だったぞ」

 

 今作戦の振り返りをするミカさん、ミズキさんと俺に、千束を評価するウォールナット。

 

「ちょちょーっと待って!? 色々聞きたいことはあるんだけど! つまり、その予定通りで。誰も、死んでない、ってこと……?」

 

「そうだぞ?」

 

「あ……はぁぁぁ……良かったぁ……みんな無事でぇ……!」

 

 千束の問いかけに肯定したミズキ。

 

 それを聞いてへにゃへにゃ、と脱力しながら千束はほっと一息つく。

 

「この娘、めっちゃ金払い良いから命賭けちゃったわ」

 

「それで……銃弾全部弾けて傷が一切ないこれ、どうなってるんだ?」

 

 俺の会社が用意したキャリーケースをコンコンと叩くウォールナット。

 いや、ただの防弾仕様のはずなんだが……

 

「……硬すぎないか、このキャリーケース? もしかしてあいつらガンダリウム合金を……!? 

 

 だとしたらもったいなすぎるだろ! なんだよ、もっと安くできたでしょ!? 

 

「もおぉう……死なせちゃったと思ったし、ああぁぁもおぉう! 良かったああぁぁ!」

 

「うぉおう!?」 

 

「良かったあぁ、無事で良かったあぁ! ほ

 んと、ほんとにぃ……! うぇえええん……」

 

 ウォールナットに千束は抱き着きながら号泣して喜んでいた。

 うぇ? どうしましたかたきなさんや? 

 

「みんな言及してませんが……流星さん、もしかして最初から知ってましたよね?」

 

「……ああ」

 

 そういや二人は知らないんだったな。

 突然こちらに顔を向ける千束。どしたん。

 

「なんで言ってくれなかったのよおおぉぉ!!」

 

「オッゴ!?」

 

 千束に頬を平手打ちされた。いたう。

 

 ────―

 

 翌週の週末、ド○えもんのように押入れに住み始めたというウォールナット、もといリコリコ従業員のクルミが

 

「世界的な企業の社長さんがまさかの闇鍋の長だったとはな……んで、そんな社長に聞くが、何だこれは?」

 

 PCを回転させてツィマッド社IS部門のHPの一番上で流れている動画を見せてくる。

 

 Let's go! という掛け声とともにISたちが突然コミカルな動きを始めたり、目に見えない速度でコジマドムがキモイダンスをしている動画だ。

 

「ブッ……それは……作った奴らに言ってくれ」

 

 この動画に対して、俺の耐性はない。絶対吹き出してしまう。

 今でもなんでアイツラがこんな動画を作ったのか理解できない。

 

「よく見たらこれ、あの篠ノ之束も映ってるし」

 

 ……ほんとだ、ウサ耳ついた束が一緒に踊ってる。なんだこりゃ。

 

「何見てるnブフェッ!?」

 

 千束も吹き出す。これ見たら最初理解できるやついない。

 

「ゴホッ、ゴホッ……あの硬すぎるキャリーケースといい、この動画といい……ほんとにどうなってるの流星の会社は?」

 

「ちょっと変でいい奴らが集まる会社、としか言えないな」

 

「その変のベクトルがおかしくないか……」

 

 ごもっともです、そうとしか言いようがない。

 

 そう思いつつコーヒーをすする。うん、旨い。

 

 横ではPCでループ再生される動画を観ているたきなとミズキさんが宇宙猫になっていた。

 

 

 帰り際、レジを打つミカさんに小声で話しかけられた。

 

「……流星くん、()()の培養は順調かい?」

 

「はい、いま冠状動脈を発達させてるところです。あと4ヶ月半あればいつでも」

 

「……わかった、すまないね」

 




ツィマッド社のLet's go!はyoutubeにあるバトオペのあの動画をISにした版です。

気になった人は見てみてね。

次のリコリスはDA本部かと。

次回より学年別トーナメント編です。サイコシャードを広げてお待ちを。

敵として出るなら……どれ?

  • よう、首輪突き。
  • 世に平穏のあらんことを
  • 私こそが企業だ!
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