side 流星
簪と入れ替わりでデュノアが同室となって2日目……デュノアと俺はベッドで向き合って座っていた。
違う点があるとすれば、デュノアが男装を解いてる点だろうか。
どうしてこうなった……
話は30分前に戻る。
────―
放課後、生徒会室で作業していた。
何故か楯無が俺を副生徒会長に任命し、生徒会長の仕事の補佐をしてほしいというものだ。
しかし、肝心の生徒会長が高確率でいない。
学校関連でよく先生と相談していることはよくわかる。
だが、かんちゃんの様子を見に行ったりするのは終わってからにしてくれませんかねぇ……
今日は珍しく、横で資料の整理を一緒にしている。
「いつもありがとね! 三人でやってたときよりも、作業効率がとんでもなく速くなったわ!」
「それはやるかいがあります……で、なんで紙媒体での作業なんですかね?」
ふと疑問に思ったことを口にする。
今どきの会社はIT化がすすんで、今書いてる予算折衝のものもパソコンで打つ時代のはずなんだがな……
(『宇宙世紀では逆に諜報の対策として紙を使うことがあったから、それと同じかもしれんな』)
たしかに、紙ならデータと違い管理を徹底すれば情報が漏れる心配はないだろう。
それでも全部はおかしくない?
「予算をちょっと生徒会に振って、パソコン導入したほうが断然いいかと思うが……」
そうこぼすとこちらにその手があったかのと驚愕の表情で見る3人。
今まで思いついてなかったんかーい!
「そこは盲点だったわね……」
「なんで気づいてなかったんですか…………おし、こっちは今週中に出さないといけないやつ終わりましたよ。そっちはどうですか?」
積み上げられた紙の束をトントンと叩いて整理し、提出と書かれたBOXに入れる。
「私と虚はあと5分くらいで終わるから、先に帰ってもいいわよ」
楯無と3年生の虚先輩の机の上にある紙も一桁まで減っている。
そしてこの中で一番の年下であるのほほんは……
「おいひ〜」
こちらは作業が終わってスイーツを堪能している。
最近作業にエンジンが入ってきたようで、姉である虚も嬉しいとのことだ。
「んじゃ、お先に失礼します」
そう言って生徒会室から出る。
外は日が長くなったのでまだ夕方かのように思われるが、時計を見ると7時を指していた。今日の作業は今までで一番多かったからな……
というのも、学年別トーナメントが近づいてきた。
今年は例年と違い、タッグマッチで行うそうでそのエントリーの処理もする必要がありかなりの時間を使う羽目となった。
「……寮に戻るか」
食堂は7時半までで使えるといえば使えるが、ゆっくり食べたいから部屋においてる食料を食べるとしよう。
誰とタッグを組もうかと考えつつ、自室に入る。
昨日から同じ部屋になったデュノアがいない……
だいたい訓練してるか、一夏と飯食ってるんだろうな。
自分のPCを立ち上げて、会社からの通知を確認する。
……デュノア社から動画が?
送られてきた動画を再生する。
(『これは……やはり集めた証拠の裏取りとなるが、一体なぜこのようなことを?』)
なぜこの学校にデュノアが来たのか、そしてなぜ男装をしていたかという動画とともに一言が付いてる。
【娘を頼んだ】と。
あの温厚な社長があんな状況になってるとは、これまた面倒なことになった。
とりあえず今は飯食べて頭の中整理するとしようか。
手を洗うために洗面所に向かうと……
「「えっ」」
バスタオルを巻いたデュノアが髪を乾かしている場面だった。
サラシを巻いてたのか、いつも見る体とは思えないほど圧倒的に女性とわかる部分が出ている。
「キャアアァァァァッ!?」
「ハルユニット!?」
そして顔に桶がめり込み、後ろに倒れる。
これなんてデジャヴ?
────―
話は現在に戻る。
「……んで、俺もさっき知ったばかり何だが、なんで男装なんかしてたんだ?」
「それは……」
「もうバレたんだ。洗いざらい全部話したほうがスッキリするぞ?」
一応釘を差しておく。
「……わかった」
曰く、彼女は父親であるデュノア社長と愛人の間に出来た子であり、母親が亡くなった2年前にデュノアに引き取られ後にIS適性が高いことが判明し、会社の非公式テストパイロットになったそうだ。
んでこれはよく耳にしてたんだが、デュノア社はヨーロッパの第3世代機開発作戦『イグニッション・プラン』に参加できる機体を未だに製造できずに、EUからの支援金が打ち切られそうということで会社の株も不安定になって営業不振に陥ってるそうだ。
それを打開するために一夏又は俺の専用機のデータを盗むため、一夏もしくは俺と接触しやすいように、わざわざ男装して学園へと来たという。
つまるところ……
今みたいにバレたら、経歴詐称してIS学園に不正入学した罪で強制送還のち牢屋にポイ。
成功したらそれはそれでただのスパイ。どう転んでも犯罪者になる道しかない。
「バレた以上、もうこの学園にいることはできないよね……はは。
まぁ、ここに来る前に本妻からも『この泥棒猫め!』って言われたし……私はもう用済みかな」
まるで人生を諦めたかのように目に見えて気力が失われていく。
そのことは間違ってるんだがな。
「……それは建前だってこと、知ってたか?」
さっきの動画が本当なら、彼女が聞いた内容は
「……どういうこと?」
「この動画を見てくれ……さっき来たやつだ」
彼女の前にパソコンを持ってきて、先程見ていた動画を再生する。
『この動画は、きっと尾白くんが見ていると思う。今から伝えることはシャルロットのことについてだ』
『彼女は男性として入学したものの、もう君なら、気づいてるかもしれない。……ああ、今はそっちよりも大事なことを伝えないといけないな』
『どのみちデュノア社はもうすぐ潰れる。いますぐに、シャルロットが尾白くんのデータを寄越しても第3世代機の開発には役立たないからね』
『会社が潰れたら、私と妻は借金取りに追いかけ回される未来が目の前まで来ている。シャルロットに同じ目を合わせたくないから、IS学園に逃した。そっちにある特例事項とやらで少なくとも3年はシャルロットの身はあんぜんだろう。その後、そっちで保護をしてくれたら非常に嬉しい』
『私の妻は、先天的に子供が産めなくてな……シャルロットが生まれたと聞いたとき、すごく喜んでいたよ。ああやって言ったのはここに未練を残さないためだった。今でもすごく凹んでるよ、ほら』
『わがままだけど……いつか、あの子に伝えてね。あのときあんなこと言ってほんとに悪かったって』
『私も君の親と仲の良かったおじさんのわがままを聞いてくれ。一人の女性を愛することもできない親父で娘のことをちゃんと見ることができなかったが……私は、シャルロットを愛してる。娘をよろしく頼む、流星くん』
ここで動画は終了し、画面に大きく停止のマークが現れる。
(『……娘思いでいいやつだな』)
「と言うわけだ。面と向かって言えない、不器用でいいお父さんじゃないか」
シャルロットの顔を見ると、目に涙をためて……
「……ぱぱあぁぁ!」
彼女が両手を顔で覆い泣き出し、指の隙間から涙がこぼれていく。
今まで父親からも嫌われていたと思っていたのに、急にあんなこと言われたらそうなるだろうな。
「おっと……」
子供のように泣きじゃくる彼女がこちらに顔を埋めて抱きついてくる。
服が濡れるが……これが男の勲章というものだろう。
「……よかったな」
嗚咽する背中をトントンと優しく赤ちゃんをあやすようにたたく。
泣き止むまで20分くらい経っただろうか。
泣き腫らした顔は先程とは違い、かなり生き生きとしたものとなった。
「ごめんなさい、服が汚れちゃった……」
「何着か替えあるから大丈夫だよ。気は落ち着いたか?」
服に関しては別にいいぞ。なんなら背中が焼けた服もあるしな!
「うん……でも父さんたちが……」
あんな風に愛してるなんて言われたら、かえって心配になるだろうな。
「それについては……明日の放課後、すぐにここに戻ってこれるか?」
「別にいいけど……」
「一つ、考えがある」
すこし、不器用なアルベートを手助けしてやるか。
デュノア社救済ルートに入りました。親子の仲こじれたまんまっていや……いやじゃない?
敵として出るなら……どれ?
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よう、首輪突き。
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世に平穏のあらんことを
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私こそが企業だ!