第30話 買い物デートと残留思念
side 流星
学年別トーナメントの後日、ISのオーバーホールと代休を兼ねた平日の休日、ロニィが俺に頼んだことがある……それは買い物を一緒にしたいということだった。
いわゆる買い物デートというやつだな。
「おまたせ流星!」
デニムパンツに薄手の長袖を着たロニィがやってくる。
彼女は保護してからすぐにこっちに来たので、これといったオシャレな服は持っていない。この服も前の休日に俺が選んで渡したものだ。
「それじゃ、行きますか」
今日はかなりの量を買うことが見込まれるので、モノレールで移動する。バイクはお休みだ。
モノレールの車内、今日は何を買うかという話をしている。
「今日は何買いたいんだ?」
「えーと……新しい服と、流星の持ってる丸いロボットがほしいな!」
「ハロか。それなら電気屋にもいかないとな」
現在、隣り合わせに座っており、さり気なくロニィが俺の手の上に滑らかで小さな手を載せている。
周りには学園関係の人……ほぼ生徒がおり、いろいろな目で見られているが、今日は我慢だ。
────―
モノレールの終点、お台場にある複合型ショッピングセンター『レゾナンス』にていろいろな服を見回っている。
「この店とかどうだ?」
「この服着てみたいな!」
ロニィが指差したのはある店の店頭に並んでいる服の一つだ。
「んじゃ、試着してみるか?」
「うん!」
店に入って店員に試着すると伝え、ロニィが試着を始める。
2分くらいたったところで、前の試着室の扉が開く。
「ど、どうかな……///」
これは……綺麗だな。
「すごく似合ってるぞ。俺が払ってプレゼントする」
「ほんとに!? ありがと流星!」
同じ店で、随分とメタルなペアルックも買った。デザインはペンキをぶち撒けたような奇抜なものだ。
回った店が10を超えて、持っている紙袋が増えてきた頃、何やら簪やセシリアなどがこそこそとこちらを見ている……今日は純粋に買い物させてくれよぉ……
スマホを取り出し、各々のメールに今度同じことしてやると送る。
願いが通じたのか、彼女たちはこの場から去った。
「そういえばもうすぐ臨海学校だったよな……水着も買っとくか?」
「そうだね……見に行こっか!」
そう言って水着売り場に向かう。この時、空いてる手でさりげなく手を繋いでいた。
そしてその場には……
「む、流星か。今は……ロニィのエスコート中か?」
「尾白くんこんなとこで合うなんて奇遇ですね!」
千冬と山田先生の教師陣も同じ場所に買い物に来ていた。
「まぁ……そんなところですかね」
手をつないでる現場を目撃されかけたが、紙袋でなんとか隠せている。
あっぶねぇ……
「私色々着てみるね!」
「ゆっくり選んでこいよ。俺はここらへんでうろついてる」
ロニィがいくつかの水着を持って試着室に消えていく。
俺は自分の会社が作ったやつがあるが、なにかいいものがないか探す……が、なかなか男性の水着は女性物より少ない。やはり、女尊男卑の影響か?
「流星、これならどちらが私に似合ってると思う?」
そんな中、千冬が白と黒の水着を持ってこちらに聞いてくる。
どっちも似合うと思うんだが、どちらかと言われれば……
「黒、ですかね?」
「ほう……なぜだ?」
「千冬は白より黒のほうが、大人の女性ってかんじがよく出ると思いますよ?」
「そうか……ならこちらを買うとしよう」
そう言ってレジへ歩いていく。
あれ、決定権俺が持ってたの?
(『女性が気になる男性に選んでもらったというのは随分と嬉しかっただろうな』)
なるほど。
「りゅーせいこっちに来てー!」
カーテンから顔だけを出してこちらを呼んでいる。
そちらに向かうと腕を引っ張られて試着室に引きずり込まれる。
中で見たものは、白のレースがついた大人びた水着を着たロニィが立っているものだ。
「うん、すごく似合ってるぞ」
「わかった、これにするね!」
そう言って水着の紐をってちょおおぉぉ!?
とっさに後ろを向き、視界を壁だけにする。
この場から出ることも一瞬頭によぎったが、それならロニィが外に晒されるのでその考えは捨てた。
「別にりゅーせいなら見てもいいのに……」
この場でやることですかぁ!?
ちょっとトラブルはあったが……大体のものは買えた。箱に入ったハロも脇に抱えている。
「そろそろ昼だな……喫茶店、カフェに行かないか?」
「カフェ!? 行きたい!」
それではあそこへ行くとしよう。
────―
週末にいつも訪れている目黒区の下町にある喫茶店の扉を開く。
「いらっしゃいませーって流星!?」
「ども、買い物のついでに昼飯食べに来た」
「へーん、ほんとは私に会いに来たかったくせにー」
「言ってろ」
……ま、半分は間違ってないんだがな。
「おや、流星くんの後ろの子は?」
「今日一緒に買い物してた同級生ですよ」
「こ、こんにちは、ロニィです!」
「元気があっていい子じゃないか。それで、今日はどうするんだ?」
「まずは……ナポリタンを2つもらえるか? コーヒーは食後で」
「わかった。たきなー! ナポリタン2つだ!」
「はーい!」
店の奥からたきなの声が聞こえる。厨房で料理を作っているようだ。
「何この子!? 可愛すぎない!?」
「あぅ……むにゃぁ〜」
いつの間にかいたミズキにほっぺたをむにむにと揉まれるロニィ。
「この子、私がもらってもいいかしら!?」
「やめろ。せめて彼氏作ってからにしろ」
別の道を開いた27歳独身にロニィを渡すわけにはいかん。
「それ全部ロニィちゃんのもの!?」
「全部いるものだったからな。俺が買った」
千束が座布団の上でナポリタンを食べている俺の後ろに置かれた、大量の紙袋を指差しながら驚いている。
ロニィはモキュモキュと口を動かしながらそれを聞いている。
「にしても臨海学校かぁ……海行きたいな〜」
「ははーん、流星と海でデートしたいんでしょ?」
「な、何に行ってんじゃいミズキぃ!?」
顔を真っ赤にして、ミズキをチョップする千束。ここにもいたんか……
「ケプッ……ごちそうさまでした///」
げっぷが少し出て、顔をあからめながらごちそうさまとロニィがいう。
「やっぱ、お持ち帰りしたら……」
「だめだ、諦めな」
そう言いながら、クルミが持ってきたコーヒーを飲む。
「んで、いつからその臨海学校とやらに行くんだ流星?」
「あと2週間くらいあとだよ。でも貸し切りだから来ることは難しいと思う」
「そうか……釣りしてみたかったな……」
「夏休みにみんなで行こうか?」
「それならまた予定をおしえてくれ」
その後釣り道具の話に発展し、たきながサメを釣りたいなどと言い出した。釣れないことはないが……
その日の夜、ベッドで悶絶するファーストリコリスとブリュンヒルデがいたそうだ。
それに対して、俺は奇妙な夢? を見た……
────ー
「……ここは?」
目の前には燃え盛るヨーロッパのような街が映っている……
『恐らくロニィのISコアの深層空間だろう。だがこの惨事は……』
「ん……! あれは……ロニィ⁉︎」
道の真ん中に人影を確認した。
駆け寄ってみると、二人確認できる。
『地面で寝ているのがロニィか……? ではもう一人は一体……』
《……誰だ? よくここまで来れたね》
ロニィを見下ろしていた少年? がこちらを向く。
「俺は尾白流星。ロニィの相棒だ」
《……へぇ~。アンタがこの子の相棒かい》
『君は一体誰だ? ISコアの人格か?』
《いや? ジョシュア……ISコアは現在おねんね中だ。僕は……なんて言ったら良いかな…….残留思念?》
「……どういうことだ?」
《正確に言うと、僕は一度死んでこの子の身体に憑依した一般転生者だよ》
「……ファッ⁉︎」
久々にこんな声出たわ! 一般転生者って何だよ⁉︎んでもロニィからそんな感じはしなかったな……
『では何故自身を残留思念と表現した?』
《うーん……中々答えづらい質問してくるじゃないかシャアさん。簡単に言うと、僕の転生前の記憶と脳を弄られたダメージに元の子が、耐えられなかったんだよね。それを緩和する為に記憶やらを統合した結果、君たちの言うロニィが出来上がったワケ》
「ほう……資料で見た通り、結構アレなんだな」
《ここにいる僕は死にかけのロニィを繋ぎとめるだけの杭さ。何時消えるか分かんないけど……僕がまだ残っていたらまた話そうよ》
「そうだな……ってかまだ出られる気配が無いがな」
『そうだな。君は、何と呼べば良いかな?』
《えぇ~? 僕の名前? 前世の名前なんてもう忘れちゃったしなぁ……適当にゼンセさんって呼んでよ》
安直すぎないか? でも実際記憶の殆どを忘れてるらしいから仕方ない……か?
《……そろそろ彼女が目を覚ますようだよ。先に起きて待ってなよ》
体が引っ張られる感覚がする……
俺とシャアの体が薄くなっている。
『……潮時か。すまんな、勝手に来てしまって』
《いやいや、逆にありがたいぐらいさ。久々に僕が僕として形を保てたんだから》
「また会えたら話そうか?」
《いいね! アンタ、ACやってたんだろ? ACの話でもしようや!》
リアルでリンクスやってたって言ったら、びっくりするだろうな……?
(『恐らくな……』)
────ー
目が覚める。外を見ると、七月の頭で日が登るのが早いはずだが、まだ地平線から少し頭が出ているだけだ。
横では一昨日またあった部屋替えで、同室となったロニィが昨日の夢でも見ているのか時折「えへへ……これどうかな……」などと寝言を言いながら気持ちよさそうに寝ている。
ロニィの過去の経歴、千冬に話すとするか……理解者が多い方がいい。
(『……そうだな』)
次の日から、ロニィは買った服を制服の上から着るようになって話題になった。
というわけでロニィの話、続きます。
敵として出るなら……どれ?
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よう、首輪突き。
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世に平穏のあらんことを
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私こそが企業だ!