side 流星
「2時間前、ハワイ沖で試験稼働中だったアメリカ・イスラエル共同開発の軍用IS『
「……」
全員、厳しい顔をして黙り込む。
「織斑先生、まさか俺達に、その軍用ISを止めろとか言うんじゃないでしょうね……」
「そのまさかだ一夏。日本政府からの通達により、我々がこの事態に対処することになった。その際、教員は空域及び海域の封鎖を行う。よって、福音の迎撃は専用機持ちに行ってもらう」
俺はともかく、なんで学生にこんなことやらせるんかね、日本政府はよ……
(『どこの世界でも、正気を疑うようなことをする……』)
「本来なら教員や自衛隊がやる筈なのだがな。本当に申し訳ないと思っている……それでは作戦会議を行う。意見があるものは挙手するように」
「はい。福音とアンノウンの詳細なスペックデータを要求します」
さっそくオルコットが手を挙げて、準備に取り掛かろうとする。
「分かった。ただし、これらは2カ国の最重要軍事機密だ。決して口外するな。情報漏洩した場合、諸君には裁判と最低2年の監視が付けられる。そしてそのアンノウンのことなんだが……」
「それは俺から話す」
さっきうちの衛星から届いた写真と亡国機業で回収したデータを机に広げて、みんなが見えるようにする。
「なに、これ……」
「こいつは開発ネーム『ファンタズマ』。とある秘密結社のデータとこの写真に瓜二つだったことから、こいつである可能性が高い。
このデータを読む限り……数種類のミサイルとレーザー、クローにバリアを持っている。複数人で一体ずつ狩る方法が無難になると思われるな」
「ファンタズマ……そうか」
マドカが苦虫を噛んだような表情になる。彼女、ファンタズマの乗り方を知ってるのか。
「後でタッグを決める。それでは銀の福音のデータを開示するぞ」
そして次に代表候補生達と教師陣は、開示された銀の福音のデータを元に相談を始めた。
「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……ホーミング弾を用いたオールレンジ攻撃が行えるようですわね」
「攻撃と機動力特化ね。しかもスペック上ではあたしの甲龍を上回ってる……面倒くさい奴ね」
「この特殊武装が曲者だね……ちょうどリヴァイヴ用の防御パッケージが来てるけど、連続しての防御は難しい気がするよ」
「……このデータでは挌闘性能が未知数です。偵察は行えないのですか?」
「無理だな更識妹。この機体は現在超音速飛行を続けている。よって、一撃必殺の力を持った者で銀の福音の搭乗者を救出。ファンタズマについてはできる限り無視、最悪の場合撃墜しろ」
これまた難しい注文をする……
(『ただの殲滅なら簡単だが、救出はな……』)
「1回だけのチャンス……ということはやはり、一撃必殺の能力を持った機体で当たるしか……」
山田先生の言葉に、全員がある方を見る。そう、一夏の方を。
「やっぱり俺の零落白夜かぁ……やります、やってみせます!」
がっくりしたかと思えば、すぐに真剣な表情になる。……成長したな。
「いい心意気だ……だがやばいと思ったら、すぐに撤退しろ。あそこは待ったが効かない戦場だ。自分の命を最優先に、考えろ」
「……分かった」
「織斑先生、敵の攻撃はリミッターを解除してると思われます。せめてSEだけでも、最大値で運用してもいいですか?」
「……許可する、ロニィ。そして、誰が向かうかなのだが……」
「それでしたら、わたくしのブルー・ティアーズが、ちょうど本国から強襲用高機動パッケージが……」
「だめだ、外国籍の者たちは待機だ」
なんでわざわざ戦力を下げる……!?
「どうしてですか!」
オルコットが織斑先生に食い下がる。
「代表候補性に万が一があったら困るとのことだ……ほんとに何がしたいのだ、上層部は……!」
「織斑先生、今愚痴を吐いたことで何も変わりませんよ……話を進めましょう」
「そうだな、真耶……では、誰か後付のロケットブースターを持ってるものはいないか? それでアプローチをするが……」
「ちょっと待ったぁ〜!」
……天井から束が降ってきた。文字通り、降ってきた。
「ここは断然、紅椿の出番だと思うんだ」
「何?」
「見て、ちーちゃん。紅椿なら、すぐに超高速機動ができるんだ!」
束がそう言うと、数枚のディスプレイが織斑先生の周りに現れる。
「なるほど……それで束、紅椿の調整にはどれぐらいの時間がかかる?」
「10分もあればいつでも出れるようになるよ。それに一人までなら殆ど速度を落とさずに高速移動ができる!」
「そうか……では一夏を同伴させる。それで、誰か持っている者はいるか?」
拡張領域に入れておいた予備を使えば……シャア、在庫はいくつだ?
(『拡張領域の在庫は3つだ』)
ギリギリ足りたか……
「織斑先生、俺のデンドロビウムとVOBが3基あるのでこれで6人……日本籍全員を連れて行くことができます」
「……よし、では織斑二人と篠ノ之、尾白、更識妹、ロニィは出撃の準備を。その他の代表候補生はISを装着して作戦区域から10キロ離れた場所で待機。IS学園にも応援を要請しておいとく。それでは、頼んだぞ」
────―
side 一夏
俺たち6人は、海上を移動している。先頭に俺と箒が、すぐ後ろに流星、そして流星の後ろで横に広がってマドカ、ロニィ、簪さんがついてきているいわゆる逆Tの形を取っている。
『接敵まであと1分。気引き締めろよ!』
流星から通信が入り、いよいよ戦闘が間近に近づいたことがわかる。
「箒、大丈夫か?」
「……正直言って、少し怖いな。これから行くのは戦場なんだから」
数ヶ月前までは、ただの中学生だった俺と箒……流星たちはただの中学生じゃなかったけどな。
「俺も正直言ってあまり実感が無いというか……それでも、ちゃんと守るからな!」
「……そうか。言ってくれるのは嬉しいんだが……」
『さっきの話、筒抜けだぞ〜兄』
あれっ!? 通信ついたままだったか!?
『やれやれ……ゼロアワーになった! 各機VOBパージ、散開してそれぞれの相手を頼んだ!』
後ろでガコガコと何かが外れるような音がして、流星とマドカ、ロニィと簪がそれぞれファンタズマという流星のデンドロビウムより二回り大きな赤い機体に取り掛かっていく。
「ゴスペルが見えたっ、一夏!」
「いくぜぇぇぇぇぇぇぇ……っ!?」
ヘッドオンヘッドで斬りかかる直前、通信のコールがかかる。
『おい、どうした一夏……通信?』
この通信は……旅館から!?
「……あっ!」
今の一瞬で避けられ、距離を取られたので追跡をする事にする。幸いさっきの急接近で速度を落としたことで、なんとか距離は一定だが……
『一夏! お前の前方右下に、逃げ遅れた民間の船がいる! 一度追跡をやめて護衛しろ!』
「ええっ!? り、了解!」
千冬姉から通信が入り、福音の追跡をやめて海上に目を凝らす。
あれは……船!? 海上は封鎖しているはずなのに……!
船の上には、全員慌てた表情の5人が見える。
『千束……!? なぜいる!?』
しかも、流星の知り合いなのか!?
『一夏! 後ろ!』
背後に福音!?
まずい、油断し──―
────―
side 真耶
『一夏の機体のSEゼロ! 怪我をして意識がない! 現在は箒が持ってる!』
通信機器から時折爆発音が聞こえる中、流星さんの報告が入る。一夏さんが……
「……分かりました。箒さんは一夏さんと一緒に帰還してください」
『……了解です』
「流星さんたちはどうしますか!」
『……俺以外を撤退させる! その船と一夏を守って今すぐ撤退させる!』
「けど、それだったら流星さんが……! 5体の相手なんて……死んでしまいますよ!?」
『俺はここで粘るから、SEが少ないロニィ達を引かせて増援を頼む! そうじゃないと、そっちにこいつらが行っちまう……ぐうっ!?』
今ここで判断しないと、遠く離れた海上で一人頑張っている彼の声を無駄にしたら船にいる5人を含めた8人の命が危ない。
心を鬼にするしか、ない。
「……分かりました。ロニィさん、マドカさん、簪さん、撤退を」
『……了解。行くぞ、ロニィ』
『マドカ! 流星は、流星をおいていくの!?』
『命令だ、撤退するぞ!』
『嫌だ! 置いていくのは嫌だああぁぁぁぁ!!』
ロニィさんの悲痛な声がインカムに聞こえる。
ごめんなさい……ロニィさん。
そして2分後……織斑先生がこちらに情報を伝えるのと、彼のバイタルに変化があるのは同時でした。
「銀の福音及びファンタズマの活動停止! 真耶! 流星は、どうなった!」
「アレックスのシグナル、及び流星さんの、バイタル……ロスト」
同時に外から、爆発音が聞こえてきました。音のする方向は……流星さんのいる場所。
「流星が……」
力なく膝をつく織斑先生。私も、頬を伝う水が止まらなくなりました。
男性登場者のそれぞれの状況
流星:海中で( ˘ω˘)スヤァ
一夏:箒の背中で( ˘ω˘)スヤァ
千束サァンナヅェイルンディスカ!?
それはまた次回に。
敵として出るなら……どれ?
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よう、首輪突き。
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世に平穏のあらんことを
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私こそが企業だ!