IS 白き一角獣   作:どこぞの機械好き

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学園祭で1週間位ヘタってました。

たぁ〜っぷりにしましたので……これでご勘弁を……
初めて1話あたり10K超えた……


夏休み編
第39話 お買い物


 side 流星

 

 今日は夏休み初頭の平日。千束とたきなはもう帰ったらしい……

(『なぜ話すの楽しみにしてるんだ……』)

 

 喫茶リコリコにある小さなテレビを見てみると、この前(福音、バルテウス戦)のことがニュースになっていた。

 

 だが、話している内容はというと、太平洋沿岸で爆発音が多く聞こえただの、青い光を見ただの、なにかの破片を見つけただの……これらは花火ということで落ち着いている。

 

 情報処理、頑張ってるようだね……お疲れ様、ラジアータ。

 

 というか……

 

「なぜDAから退避の司令が出てなかったんだミカさん? あの司令が把握してないわけないだろう?」

 

「それが……楠木は私達の状況を知っていたようだが、上から何も言うなと言われたようでな」

 

「上層部、か……」

 

 最近DAがISの抑止力を欲しがっていると巷の噂で聞くようになってきたが……

(『ISは企業や国が管理しているはずだが、まさか暗部で使うのか?』)

 

 IS学園に入らざるを得ない状況を……まさか、な。

 

「まさかあんたが、千束の白馬の王子様だったとはねぇ〜……ちょうど真っ白な機械使ってるし」

 

「……そういう言い方も、あるかもな」

 

 テレビを見ていると、通常運転でお酒をグビグビ飲んでいるミズキから言葉が飛んでくる。いっつもほぼ決まった品種飲んでるが……たまには差し入れしてみるか? 

 

「それで、いつ暴露しちゃうのよ?」

 

 いつ、か……

 

「まだ完全に世間に公表したわけじゃないが、直に広まるだろうしな……そういえば、箝口令は言い渡されたのか?」

 

「あのよくわからない赤い機械(ファンタズマ)流星のIS(アレス)についてねぇ……あの感じだと、赤い方はDAでも確認できたみたいだけど、ISの方まではわかってなさそうね」

 

「まだ知られてないが……10年以上もいたら、どこかでボロが出てもおかしくないし……」

 

「……ということは、10年前の白騎士・白獅子事件から、あのISを使っていたのか?」

 

 この喫茶内にあるお風呂から上がってきたのだろうか、風呂上がり感満載のクルミが先程から話を聞いており、こちらからも質問が飛んでくる。

 

「御名答、クルミ。相方は公表することはできないがな」

 

「お、おぉ……あっさり認めたな……ということは、ISの黎明期から動かせること知ってたんだな」

 

「……まぁな」

 

「叩けば叩くほど情報がボロッボロ落ちてくるわね……」

 

「今更中途半端に隠したところでだ……ちなみに、クルミは10年前、何歳だったんだ?」

 

「……ノーコメントで」

 

 実際、クルミの見た目からしてネットの黎明期からいそう……じゃないよな。

 

 その辺も後々にわかるのだろう「なぁにみんなで辛気臭い話してるの?」か? 

 

 あり? なんで千束がいる? 

 

「んお? なんでいるんだ、そんな可愛い服着て?」

 

「ナチュラルに褒め言葉吐くね……」

 

 事実なんだ……そういうのは言ってもいいだろう? 

(『……誑し』)

 

 うっせぇ。あんたは言えんだろ、ロリコン。

 

「……今日は、もうシフト終わったんじゃないのか?」

 

「忘れ物を取りにね。ほら、このカバン」

 

 そう言ってさっき持ったかばんを持ち上げる。

 

「あ! それとそれと……」

 

 ん? まだなにかあるのか? 

 

「明日、たきなの服を見に行くんだけど……流星ももし良かったら、どうかな?」

 

 そういや海外に持っていく服、新調したほうがいいよな? 

(『そうだな……ついでに済ませるか』)

 

 それよりも、そんな顔で見られたら断ることもできん。

 

「俺もついていこうか。こっちも服買いたいし」

 

「ありがと! ところで……

 

 たきなのパンツって、見たことない?」

 

 いや、いつ見るんだよ。

 

 ────―

 ────

 ──―

 ──

 ―

 

 翌日、北押上駅前で俺と千束はたきなを待っていた。

 

 千束は白のショートパンツに黒のシャツ、ロング丈の赤いアウターを着ている。

 

 対する俺は、デニムパンツに白いTシャツ、黒い薄手の上着を腰に巻いている。ちなみにサングラスで目元は隠している。

 

「お待たせしました」

 

 声がする方に顔を向けると私服姿のたきながいたが……

 私服は私服でも、部屋着。

 

 こりゃぁ買い物に誘われる訳だ。

 

 んでんで、何やら重心に偏りがあるけど……

 

「銃、持ってきたな。貴様」

 

「駄目でしたか?」

 

 そりゃあな。リコリスの服着てる時以外は、普通にアウトだろ。

 

「抜くんじゃねぇぞ」

 

「千束と流星さんは、その衣装は自分で?」

 

「……衣装じゃなくて、れっきとした服だ。日常で着る、な」

 

 目的の道中や洋服店で、周りからすごくすごい目線が刺さってくる…………許せ、男共……

 

 その目線に耐えること数十分、本来の目的を行うために一旦別行動を取る。

 

「適当に服見ておくから、そっちの服とか選んどいてくれ」

 

「うん! また後でね!」

 

 そこから数分……

 

「銃撃戦向けのランジェリーですかぁ……ってそんなもんあるかぁ~っ!」

 

 かなり離れてるはずなんだが……

 あっちは何してるんだ? 

 

 服を選んでいると、シャアから話しかけられる。

 

(『ミラーからメールが届いたぞ』)

 

 オタコンから? 

 

 ──

 

「ブラックマーケットには出回ってない、か」

 

 オタコンから届いたメールを確認すると、それは銃や怪しい薬を売っているブラックマーケットの相場一覧だった。特に春の事件以降変化がないことがわかる。

 

 ……どっかの集団が叩き売りするのか、はたまたばらまくのか……

 

「その通りだよ。何で見せたの私!!」

 

 ……ほんとに何してるんだ? 

 

 ──

 

 目的を終えた二人が戻ってきとたころに、俺からお願いをする。

 

「もしよければ、もうすぐ海外行くんだが……その時の服、一緒に選んでくれないか?」

 

「もちろん、よろこんで!」

 

 その後、自分で候補を上げたものを一緒に選んでもらったり、いろいろな店をまわったが……千束のファッションセンスはかなりあった。

 

 ────―

 

 時は昼。

 

「フランボワーズ&ギリシャヨーグレットリコッタダッチベイビーケイクとホールグレイハニーカムバターウィズジンジャーチップス……流星はどうする?」

 

「俺はこの苺ティラミスのミルクレープ、フランボワーズジャム仕立てでお願いします」

 

 俺たちがそう注文すると店員は「かしこまりました」といい、店の中に入っていく。

 

 というか、なんだ。この長ったらしい名前は。よく一気に言い切れるな。

 

「名前からしてカロリーが高そうですね」 

 

「野暮なこと言わない。女子は甘いものに貪欲でいいのだ」

 

「寮の食事も美味しいですけどね」

 

「あの料理長、元宮内庁の総料理長だったらしいよ」

 

「それってすごいんですか?」

 

 たきなはこの事実がどれだけすごいことかいまいち分かっていないようだが……世界でも指折りの実力者だぞ? 

 

「当たり前だ。モノホンの皇族に料理振る舞ってた人だぞ……つまり、リコリスは天皇皇后両陛下たちと同じ食事を食べてるってことだ」

 

「そう考えるとすごいですね」

 

「わかったか?」

 

「でも、スイーツ作ってくれないからなぁ~。永久にかりんとうだから」

 

 それは……ちょっと損だな? 

(『その者が作る和菓子など、美味いに決まってるだろうに……』)

 

「わたし、あのかりんとう好きです」

 

「そりゃあなた、最近来たからだよ。10年あれだけは飽きるよ~」

 

 そんな会話をしていると俺たちの料理が運ばれてくる。

 

 他のお客さんが少なかったのか、思ったよりも早く運ばれてきたな。

 

「お待たせいたしました」

 

 料理がテーブルに並べられると千束のボルテージが上がる。

 

 甘いものが嫌いな女性はいない。甘いものを我慢できる女性はもっといない。

 

 いや、これは偏見か。

 

「おほぉ~~~! 美味しそう!!」

 

「これは糖質の塊ですね」

 

「そりゃそうだ。旨いものの構成物質は何かと体に溜まりやすいからな」

 

 千束はたきなに軽く頭をぶつける。

 

「たきな! 人間一生で食べられる回数は決まってるんだよ。全ての食事は美味しく楽しく幸せであれ!」

 

 それはそうだ。密林で蛇とか熊食ってた俺に聞かせてやりたい。

 

「美味しいのは良いことですが、リコリスとして余分な脂肪はデメリットになります」

 

「その分走る! その価値はこれにはあるよぉ~。おいひぃ~」

 

 旨そうに食うなぁ……誰かの金で食う飯は旨いって言うくらいだもんな。

 

 俺も料理を口に運んだ時に、後ろの席で欧州系のふたり組がメニューを見ながら困っていた。言葉からしてフランス人……夫婦だろうか? 

 

 千束はそれに気付き、「ちょっと行ってくるね」と俺とたきなに断りを入れてからフランス人たちに助け船を出しに行く。

 

「……あの、流星さん」

 

「ん? どうした?」

 

 テーブルにたきなと二人っきりになったときにたきなが尋ねてくる。

 

「流星さんはどうやってそれだけの力を付けたんです?」

 

「それは……どの分野においてだ?」

 

 CQCか、乗り物(ガンダム、ACなどなど)か……いろいろあるんだが? 

 

「DA本部での模擬戦で、全方位から発射される弾丸を避けることを可能にする異常な身体能力、接近戦の強さ……千束をなぜ圧倒出来る力を持ってるのですか?」

 

「あぁ、それか……

 

 まず、だが……あれは、勘と経験」

 

「それだけ……?」

 

「そう、避けるのは千束と同じように色々見てるからな。勘の方も戦場に何回も放り込まれたら嫌でも身につく」

 

「……それでも、十二分に異常なんですけど」

 

 それは……そうだな。

 

「後、千束にどうやって勝つか、だが……」

 

「どうやって勝つんですか?」

 

「とにかく、相手が思いつかないことやってみな? 所謂逆転の〜ってやつだ。他にも色々ないわけじゃないが……‥まずはそっからだ」

 

「……なるほど、逆転の発想。勉強になります」

 

「うん、そして後は俺がどうやって力を付けたということだが……」

 

 たきなが真剣な目で俺を見ている……ここからファンタジックな事実になるが、受け入れるだろうか? 

 

「……実はな、たきな。俺の記憶には核戦争を何度も止めたり、宇宙で戦争をしたものがあるんだ」

 

 そう言った瞬間、たきなが疑惑の目を向ける。

 

「真剣に聞こうとした自分がバカみたいです。あなたも千束と一緒で映画の見すぎなんじゃないですか?」

 

 そんな見てないんだが……

(『学園の方で簪と結構見てなかったか?』)

 

 oh……ずいぶんとご立腹のようだ。

 

「嘘じゃないんだが……」

 

「……え?」

 

 そんなときに千束が席に戻ってきた。

 

「ふたりで何話してたの? ってたきな? なんか怒ってる?」

 

「千束は流星さんがどうやって今の技術を身につけたか見当がつきますか?」

 

「えぇ~、流星のこと~……私もさっぱり〜」

 

 その言葉の後、「そうですか」とたきなはこれ以上は聞いてこなかった。

 

 少し、空気が悪くなってしまったがそれを千束が手を叩いて打ち消す。

 

「はい! この話しは終わり! 食べ終わったら良いところへ行きま~す」

 

 千束はそう言って自分の料理を口に運ぶ。ホントに旨そうに食べる。

 

 守りたい、この笑顔。

 

 ────―

 

 次に向かった良いとことは、水族館。

 

「いいとこってここですか?」

 

「うん、綺麗でしょ。ここ。私好き~」

 

「よく来るんですか?」

 

 たきなのその問いに千束はポーチから自慢げにあるものを取り出す。

 

「年パス~。気に入ったらふたりもどうぞ」

 

 それねぇ……年に何十回も行くなら買うけどな……

 

 そんなことをいいながら、三人で水族館を回る。

 

 そんな中で、たきなはタツノオトシゴが気になったようだ。

 

「どうしたの?」

 

「これ、魚なんですって」

 

「まじ! ウオだったのか、こいつ」

 

「この姿になった合理的理由があるんでしょうか?」

 

「ご、合理? り、理由? え~?」

 

「何かあるでしょ」

 

「タツノオトシゴはまだ解明できていない部分があって諸説あるがこの姿が、一番プランクトンや小エビといった餌を捕食しやすいからだと言われている」

 

「そうなんですね」

 

「後、味は悪くない。卵持ちなら、最高だな」

 

「……食べたことあるの?」

 

 ウゲッとした顔で見ないでくれ。

 

「その時は食べるもの無かったんだ。許せ」

 

 

 

 次に見えてきたのはチンアナゴだった。たきなはまた、スマホで調べて「これも魚ですか~」と呟く。

 

 勉強熱心だな、たきなは。俺の隣で両手をあげてゆらゆらと揺れているこいつと違って。

 

「……何をやってるんだ?」

 

「え? チンアナゴだけど?」

 

「人が見てますよ、目立つ行動は……」

 

「なんで?」

 

「何でってわたしたちリコリスですよ」

 

「制服来てないときはリコリスじゃありませぇ~ん」

 

 リコリス関係なく、他の客がいる……羞恥心というものがないのか? 

 

「たきな、お前の相棒だぞ。あいつに羞恥心というものを教えてやれ」

 

「……流星さん」

 

「ん?」

 

「わたしはもう既にちょっと諦めてます」

 

 たきなは既にそこまで来てしまっていたのか……

 

 

 別の場所でも、千束はゆらゆらと揺れている。

 

 そろそろ止めてほしい。恥ずかしいから。

 

 たきなはそんな千束に話しかける。

 

「千束」

 

「ん~?」

 

「あの弾、いつから使ってるんです」

 

 あの弾とは……非殺傷弾か。

 

 千束はゆらゆらするのを止めてたきなの隣に座る。

 

 それにしても、たきなはどうした? さっきもカフェで俺のことを聞いてきたし。 

 

「なぁ~に、急に?」

 

「旧電波塔の時は?」

 

「あの時、先生に作ってもらったんだ」

 

「何か理由があるんですか?」

 

「なに? 私に興味あんのぉ? 流星にもカフェで聞いてたし」

 

「タツノオトシゴ以上には」

 

「チンアナゴよりも!」

 

「茶化すならもう良いです」

 

 たきなは呆れたような声で返事をする。

 

 俺がさっきカフェでちゃんと答えなかったことが尾を引いているようだが……いやあれちゃんと答えたよな? 

 

 そんなたきなに千束は自分の気持ちを正直に話し始める。

 

「気分がよくない。誰かの時間を奪うのは気分がよくない。それだけだよ」

 

「気分?」

 

「そう! 悪人にそんな気持ちにさせられるのはもぉっとムカつく。だから、死なない程度にブッ飛ばす! あれ当たるとめちゃくちゃ痛いのよ~。死んだ方がましかもぉ」 

 

 そんな千束の答えにたきなは笑う。

 

「なぁんだよ。変?」

 

「いえ、もっと博愛的な理由かと。千束は謎だらけです。流星さんもですけど」

 

「mysterious girl! そうかぁ、そんな魅力もあったか私ぃ。でも、そんな難しい話しじゃないよ」

 

「したいこと最優先、か?」

 

「そうそう! わかってきたね〜?」

 

 と、ここでたきなから質問が飛んでくる。

 

「千束はどうしてDAを出たのですか? 殺さないだけならDAでも出来たでしょ?」

 

「うん、それもあるんだけどぉ……」

 

「それも? そうしたいって全部それだけ?」

 

「人探しぃ。二人いて、一人はもう横にいるんだけどぉ……」

 

 俺? ……旧電波塔のことか。

 

「……その節はどうも」

 

「……もう一人は?」

 

「その人は、大事な……大事な人。その人を探したくて」

 

 千束は目をつぶり首から下げている梟のペンダントに手を当てながら話す。

 

 その後、直ぐにたきなに梟のペンダントを見せる。

 

「知ってる? コレ?」

 

 それは……アランの。

 

 休憩所で座りながらたきながネットに載っているアランチルドレンのチャームと千束が持っているものが同じであることを確かめていた。

 

 かなり長いこといるので、飲み物を二人に渡している。

 

「確かに、同じですね。何の才能があるんですか?」

 

「わからなぁ~い?」

 

 千束は壁に貼ってあるポスターの女優と同じポーズをとる。

 

 うん、それじゃないのは確かだ。

 

「それじゃないのはわかります」

 

「右に同じ。さっさと座れ」

 

「ウグッ!?」

 

 俺とたきなのダブルコンボをくらった千束はテーブルに伏せる。

 

「自分の才能が何とか分かるぅ~?」

 

「何かあると良いですけど」

 

「そんな感じでしょ」

 

「何言ってんだ。二人共才能ならあるぞ?」

 

「「へ?」」

 

 ふたりが俺に目を向ける。

 

「たきなは正確無比な射撃だろ?」

 

「いえ……あれは、訓練したからであって才能というわけでは……」

 

「いいや、あれだけは正確な射撃は並の練習じゃ手に入らない。相当、訓練を積んだと思うし、何かに一生懸命になれることはそれ自体が才能だよ」

 

 実際、腕は今まで見てきた中でも、最上位クラスだからな。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 たきなの顔が少し紅くなっている。

 

 何だ? 風邪か? 

 

「ねぇ、流星! 私は!」

 

 千束が目をキラキラさせて聞いてくるが……

 

「千束の才能は、バカ正直なところか?」

 

「なっんだと~!」

 

 まぁまぁ、そんなむきにならなくても……

 

「……というのは冗談で、目の良さじゃないか? 筋肉の動きを服越しで見れる人ってそうそういないし」

 

「そっか、やっぱりその部分なのかな? ……あーあ、ほんとにどこにいるんだろ……」

 

 千束がぐで~となった時、たきなはおもむろに立ち上がり、水槽の前で両手を合わせてつき出すように前にだし、片足を後ろに上げ魚のポーズをとる。

 

「さかなぁ~!!」

 

 千束を励ますためだろうか。そんなたきなに千束は近づきたきなの隣でチンアナゴの真似をする。

 

「チンアナゴ~~!!」

 

「ほらほら、流星も一緒に!」

 

 俺もか? それなら……

 

「イッカク!!」

 

 ISの頭部、それもアンテナの部分だけを展開して魚の方のイッカクをまねてみる。

 

(『……使用方法を間違えてるぞ』)

 

 ……何してんだ俺は。

 うん、思った以上に恥ずかしい、がなぜか笑みが溢れる。

 

 千束も笑っているようだ。

 

 そんな俺たちに釣られてたきなも笑顔になる。

 

「それ、隠さない方がいいですよ」

 

「え? そう?」

 

「えぇ、めっちゃ可愛いですよ」

 

 どこか別の場所で千束が言ったことの意趣返しか、千束がその言葉に反応する。

 

「あぁ~! こぉいつ~。ほら! ペンギン島いくぞぉ!」

 

「ペンギン!?」

 

 千束の後にたきなは続く。

 

「流星も~! そんなとこにいないで早くぅ~!」

 

「今いく」

 

 ……ユニコーンッ! って何でかわからんが、言いたかったな。

 

 ────―

 

 水族館からの帰り道、あることに気づいた。

 

 ……リコリス? それも、サードばかりでセカンドやファーストは見当たらない。

 

 千束とたきなの顔も険しくなっている。

 

「リコリス?」

 

「何だか多いですね」

 

「駅が使えんな」

 

 ISでひとっ飛びするか? 

(『問題しかないぞ』)

 

 駅が封鎖されてることで駅前に人だかりができているがその時、地下から爆発音が響いた。

 

「何かあったんでしょうか?!」

 

 たきなが私服のまま事件現場へ行こうとするので千束が止める。

 

「私服で銃出すと警察に捕まるよ。制服来てないときはリコリスじゃないって言ったでしょ。今日は帰ろう。ほら、戦利品も多いし」

 

 爆発音と共に地面が揺れ、入り口から粉塵や瓦礫が吹き出している。

 

「大丈夫、なのでしょうか……」

 

「大丈夫さ……

 

 ダグザ達がいるからな」

 

 ────―

 ────

 ──―

 ──

 ―

 

 side ダグザ

 

「あ、あの……ここまでする必要ってあったんでしょうか?」

 

「……正直言って、わからない」

 

「えぇ……」

 

 俺と隊員、サードリコリス達が乗っている、地下鉄車両の壁が異常に盛り上がっている。うちの技術者(変態共)が作った強化フレームらしいが……俺も正直これがいるのか疑問だ。

 

 だが、流星の勘が間違ってることは少ない。

 

 目標のいる駅に近づき始めたのか、列車が減速を始める。

 

 窓ガラスは蜂の巣になり……かと思ったらすぐに砕け散って車両にはフレームだけが残る。

 全員扉の横や座席の下で、これをやり過ごすのは織り込み済みだ。

 

 敵の一掃射が終わったところで、俺達は身を乗り出して目標に発砲する。

 

「何っ!? ()()()()だけじゃないのか!?」

 

 次々に倒れていくつなぎを着た男が血を吹き出しながら次々に倒れていく……しかしコートを着た緑髪の男が、腕に被弾しながらも柱の後ろに逃げ込んだ。

 

 ……グレネードでも放り投げるつもりか? 

 

『隊長、上を……!』

 

 あれは……リモコン爆弾! 

 

「各員、車両に逃げ込め!」

 

 その言葉を聞いた部下は、周りのリコリスを引き連れて車両に駆け込む。

 柱の向こうにいる男はその言葉を聞いてボタンを押したのか、天井が炸裂する。

 

「何呆けてる!? 巻き込まれるぞ!」

 

「……きゃっ!?」

 

 呆然と立っていたサードリコリスの腕を引っ張って俺も車内に転がり込んだ。

 さっきまでサードのいた場所に、天井が落ちてくる。この世界では、できる限り死体は見たくないのでな。

 

 もちろん、俺達の入り込んだ列車の上にも砕けた天井が降ってくる……が、

 

『こいつ補強してなかったら、今頃ぺしゃんこになってましたね……』

 

「……ああ、そうだな」

 

 列車の一部が凹んだだけで、サンドイッチになることはなかった。

 

「……ありがとうございます。引っ張ってもらえなかったら今頃……」

 

「それはすべて終わってから聞く。ここから撤収するぞ」

 

 作戦は失敗、目標を完全に仕留め切れなかったようだが……

 

『こちらブラボー! 華が一輪も潰れることはなかったぞ(殉職者ゼロ!)! ちょっとだけ傷んだやつもいるが……そっちはどうだ?』

 

「こちらアルファ。こっちはほとんど傷がない。負傷者の手当をしておけ」

 

 ランバ隊から死者なしと報告が入ったのでこちらも死者なしと報告する。

 

『ブラボー了解! お前たち、動けるやつはリコリスの手当をしろ! 慎重にな!』

 

 生きて帰って何が起こったか報告することができる……どうやら、今回も流星に助けられたようだ。

 

 ────―

 

 side no one

 

 同時刻 BAR Forbiddenにて……

 

 吉松シンジは旧友であるミカと行きつけであるこのバーで待ち合わせていた。

 

「何故戻ってきた?」

 

 ミカの問いにシンジ冗談交じりに答えるとミカは直ぐに本題を切り出してきた。

 

「ミカに会いたかったからさ」

 

「からかうんじゃない。千束だろ?」

 

 シンジはまだ幼かった頃のあの子達の顔を思い浮かべる。

 

「千束も私を覚えていなかったな」

 

「千束はあの時一度見ただけだ。無理もない。シンジ、何故言ってやらない? 千束はずっと君を探してるんだぞ」

 

「アラン機関は支援した対象に関わることを禁じている。話したろ」

 

「矛盾してるじゃないか。それなら店にだって来るべきじゃない」

 

「消えろ……と」

 

 その言葉にミカは慌てて否定する。

 

「そう言うつもりじゃ……」

 

「……ミカ、約束は守れているのか?」

 

「あぁ、もちろんだ」

 

「天才は神からのギフトだ。必ず世界に届けねばならん。類希なる……殺しの天才をな」

 

 シンジは、ミカの店で出会った成長した彼女の顔を思い起こす。

 

 そして……

 

「尾白、流星か……彼も、類稀なる才能を数多く持っているようだ」

 

「……流星にもアランの施しをかけるのか」

 

「いや、まだ決まってはないがね」

 

 ────―

 ────

 ──―

 ──

 ―

 

 side 千束

 

 翌日 喫茶リコリコにて……

 

 私はたきなのロッカーを漁る。いや、漁っているという言い方には語弊がある。たきなのロッカー内にある男物のトランクスを処分するために、朝早くから出勤し、たきなの許可も得て処分しているところだ。私は次々にたきなのトランクスをごみ袋に入れていく。

 

「はい、捨てま~す。捨てま~す。これも捨てまぁす。捨てま~す。捨てま……す~」

 

 

 最後の一枚を手に取ったときにたきなのセリフを思い出す。

 

(これ、いいんですけどね。通気性もよくて動きやすい)

 

 ……別に、いいよね? 

 

 今、はいているパンツを脱ぎトランクスを履く。

 

「おぉ~、これは!!!」

 

「良い!」と言う前に更衣室のドアがミズキによって開けられた。

 よりにもよってミズキに。

 

「千束~! サボってないd」

 

 私はなんとか言い訳を出そうとするが……

 

「いやあの、これは」

 

 これには深ーい理由がありましてね? 

 

「いやぁぁぁぁぁ!! ハァレェンチィィィィ!!!」

 

 違うと何度も訴えるがミズキは私の首を締めて何かを吐かせようとする。

 

「おまっ!! 男のとこに泊まってきたな。流星だろ!! やっぱりあんた達、もうそう言う関係でっ! あたしへの当て付けか!? そうだろ、あたしより先には行かせないからっ! 不潔よ~、不潔!!」

 

 ミズキの勘違いをどうやって解こうかと思っているとたきなが私の前に現れた。こんな時は正直に言う他ない。

 

「たきなの! たきなのだから!」

 

 私はそう言いたきなを指差す。

 

 それを見たミズキはたきなの方に向かい遠慮なくスカートをたくし上げた。

 

「可愛いじゃねぇか」

 

 たきなは早速、昨日買った下着を付けているのだろう。それは嬉しい限りだが、この瞬間だけはトランクスを履いていて欲しかった。

 

「いや、だから、それを昨日買っt……?」

 

 どこに行くの!? 

 ミズキは店の方に移動してしまう。

 

「え? あっちょいちょいちょいどこへ?」

 

「みなさぁん、このお店に裏切り者の嘘つきやろうがいますわよぉ~」

 

「うわぁぁぁぁぁ、止めろ止めろ止めろ止めろ!」

 

 そう言いながら走ってミズキを止めようとするがミズキにかわされてしまい、スカートをまくられる。

 

「ひらり、らっしゃいやせぇ~」

 

 今度は羽交い締めに合い、目の前に扇風機をクルミに置かれ風でスカートが捲れる。

 

 お客さんにも見られて恥ずかしい中、喫茶店の扉が開かれ特徴的な黒髪が見える。こういうときに頼りになる彼がやってきた! 

 

「おはようございます、今日は早めに……」

 

 挨拶をして流星は店に入ってくるなり私たちに目を向ける。

 

「流星! 早く助けて、お願いします!!」

 

 流星はそんな私を見て、数回瞬きした後、

 

「……おじゃましました」

 

 店に入らずにそっと扉を閉める。

 

「いやいやいやいや、なんで!? 助けてよ!! たきなも笑ってないでさぁ~!!」

 




次回からは挨拶回りの世界旅行パート始まります。お楽しみに。

敵として出るなら……どれ?

  • よう、首輪突き。
  • 世に平穏のあらんことを
  • 私こそが企業だ!
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