side 流星
俺の目的としては最終の場、イギリス。
空港のエントランスでは、俺を待っているいつもとは違う、一人の女性がいた。
「お待ちしてましたわ、流星さん」
いつも着てるIS学園のドレスみたいな服とは違い、七分丈の裾が広がったズボンに黒の半袖とキマった服装をしている。
「似合ってるじゃないか、セシリア」
「流星さんこそ、ロックで整った服装が素敵ですわよ?」
……千束、やっぱりセンスあるな。
んでセシリアの横にいるのは……?
「私はチェルシー・ブランケットと申します……今日はよろしくお願いします」
チェルシーさん、いつも聞いてるイメージと全然違うな……多分お客様の態度になっちゃってるか?
「こちらこそよろしく頼む……セシリアからいつも聞いてるから、そんな堅苦しくなくていいよ」
「……ありがとうございます!」
そう言って彼女の表情が溶ける。うん、人はラフなままが一番だな。
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何百人もの名前を書いた石碑が立っている。その中には、俺の親の名前も2つ……
アルベーヌさんから託された花束と、自分達が持ってきたものをしゃがんでそれぞれその石碑の下に置く。
「親父と仲良くしていたアルベーヌさんから、お礼に渡したいんだとさ……全く、俺もこんなことになるなんて想像も付いてなかったよ」
何人も婚約者ができるなんて想像できたか……?
NTの未来予知でも、そんなこと教えてくれなかったよ。
「……ありがとな、俺を産んでくれて」
5歳の時に、今までの世界の情報が俺にインストールされたときには……もうこの世からいなくなってた。
だから……はっきりとは俺の親については、わからない。
……だが、この世界に産んでくれたこと。それだけは感謝しきれない。
「流星の親は、ここで……」
「……現場はちょっと離れたところに、あるがな」
一夏は一夏で、幼い頃に俺の親が保護したことになにか思うところがあるのだろうか……目をつむって思いを馳せている。
「一夏のお義父さんが、ここに…………挨拶させてもらってもいいだろうか?」
「もちろんだ。息子の嫁さんの顔が見れて、喜んでるだろうな」
俺の言葉を聞いたラウラが、石碑を前に何かをつぶやき始める……その声、届くといいな。
一夏や千冬達を家族に迎え入れてた時、息子と娘が増えたっていって喜んでた……それは、数少ない今の俺の記憶が上書きされる前から覚えているものの一つだ。
「流星さんのご両親も……」
「……そうだな」
今世の両親はここイギリスに、眠っている。セシリアの両親も……そうか。
オルコットさん夫妻の名前も、ここに刻まれている。
「……IS学園でお会いしたときにはすっかり忘れてましたわ……あの時は、あんな態度を取ってしまい……」
「いや、あの時は仕方なかった……家を守るためだったんだろ?」
遺産目当てに、今まで関係が薄かった奴らが突然こちらにすり寄ってくるのだから……
遺産を守るために必死で、その人達と相手しないといけないのだ。
「……あなたには、何も隠せませんね」
「いやなに、俺も同じ状況になったことがあるだけだよ」
「あなたとは……何かと、縁を感じますわね」
「……確かにな」
似ている境遇が多い……こうやってくっつくのも、運命だったのだろうか。
横では……しっかりと親に伝えることができたのだろうか、一夏とラウラがしっかりと手を握っている。
「……俺も、ちゃんと言わないとな。セシリアの両親に」
立ち上がって、石碑に向かい直す。
「かなり……いや、とても罪な男かもしれない」
「流星さん……」
「それでも、宣言させてもらいます……
もう彼女を一人にはさせない……貴方達の娘さんを……頂きます!」
…………これで、届いただろうか……?
だが少なくとも……
「……流星さん、これからよろしくお願いしますね?」
目に涙を溜めたセシリアには、届いたようだ。
「よろしく、セシリア」
風が一つ、吹き抜けていった。
「さっきのお話ですが……先程の親戚の中でも一人だけ、周りの人から守ってくれたお方がいます」
「……今その人はどうしてるんだ?」
「今日は顔を覗かせてくれるみたいですわ」
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「サラ・ウェルキンさん、今日はよろしくお願いしますね」
「いいえこちらこそ……いつも後輩がお世話になってます、流星さん」
次に来たのはオルコット家の庭。
元々ここで待っていたのだろうか、IS学園2年生の先輩であるウェルキンがそこにいた。
「……ここ全部、セシリアの家の敷地なのか?」
「はい。セシリアの家は、イギリスでも名門なので……」
同感だ、一夏…………でかい。ただただ庭がでかすぎる。
ここだけでツィマッド本社(ビル)が3戸建つくらいにはでかい。
「……それはこっちもだ。俺が倒れた時、ずっと看病してくれたのはセシリアだからな」
「あの時から、私は確信してたのです……流星さんが好きだと!」
「……セシリアの熱は、かなり熱いのですね」
ウェルキンさんは顔を赤くしてるが、セシリアは全然恥ずかしがる様子すらない。
対する俺もそんなに恥ずかしくない。むしろ誇りに思ってる……うん、これが惚気だな。
「それで、ここでは何をするんだ?」
集められたのはもはや宮殿の庭。周りには多くの植物や構造物があるから、ここらへんから観光するのか……?
「ロンドン上空をISで飛行する許可が降りてるので、今日は一味違う視点から観光してもらいます」
……なんか思ってたのと違った。
「なるほど……範囲、上昇制限や下降制限は?」
「少々お待ちを…………はい、えぇっ!? ……わかりました、そう伝えます。……特に制約はないそうです。皆さんは高い技術を持ってるので、そのような鎖はつけなくて良いと……」
スマホを取り出したウェルキンさんが、どこかに確認を取った。
下降制限なし……? まぁ人の迷惑にならないようにすればいいか。
というか、一夏にもそれが当てはまるのか……腕を上げて認められた良い証拠だな。
「良かったな一夏。イギリスはお前の実力認めてるようだぞ?」
「……何か言い方良くないな」
「そりゃそうだろ。この中で一番経験浅いの一夏なんだぞ?」
「それは……言い返せない……」
「では早速、準備を勧めますね。まずは私から…………!」
ウェルキンさんのISの外見は、後ろのスラスターがまるで青い蝶のような……
「ティアーズ2号機か……」
ブルーティアーズ2号機のサイレント・ゼルフィス……
ティアーズとは違い、シールドビットが装備されているのが大きな違いか。
「はい。この度、私もイギリス政府より専用機が渡されました!」
ちょっと前までマドカが使っていたISが、ウェルキンさんの専用機になったのか……
マドカ達が此方側になってからうまくイギリスに渡すことができてたようだ。
……ISコアは、違うやつになってるがな。
「……流星さんも、ISを展開してくださいまし」
「ん……おっと、すまない。今から展開する」
周りを見ると、俺以外はもうISを展開していた。
ちょっと一人語りが過ぎたか……
「たしか、尾白さんのISはアレックスで……し……」
こちらをみて、まるで俺がゴルゴンかのように固まるウェルキンさん。
……そういえば、あんまり知られてないんだったな。
「……オオオ、オ、オルコットさん? こここ、このISは!?」
「見ての通り、アレス……世間一般では『白獅子』と呼ばれている機体ですわよ?」
「……えええぇぇぇぇええっ!?」
オルコット家の庭に、ウェルキンさんの驚きの声が響いた。
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side バナージ
ミネバとの旅行、というか国際デートというか……その目的地であるイギリスのビックベンの下にいる。
「バナージ、あそこにISが……」
ミネバの指差す先、複数のISが飛行している。
かなり距離が近い。何かのイベントだろうか……
「結構な数、飛んでるな……」
青い2つのISは、確かイギリスの姉妹機で黒はドイツの軍人が持ってた……確かキシリアさんが言ってた、ボーデヴィッヒさんが乗ってるのかな?
「
白いISは……雑誌に載ってた、白式か? 少し形が変わってたけど……男性操縦者がここに来てるのか。
「織斑一夏くんも、ここに居るみたいだね」
「なら、あれが白式……初めて見ました…………
っ!? 待ってください、あれは……!」
4機のISを追いかけるように、青い光を放つさらにもう一つの白いISが飛んでいった。
「ユニコーン、ガンダム……!?」
それも、4機のアームドアーマーDEが付いてるから……
「やはり……あの流星さんで間違いなさそうですね」
「フランスで見たのは、見間違いじゃなかったんだ……」
またどこかで、会える。
朧気なる確信が芽生えた気がした。
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side 流星
ISを纏ってイギリス上空からの観光を終えて、オルコット邸に戻ってきた。
ウェルキンさんとは庭で別れ、俺たちはセシリア案内の元、家に邪魔させてもらう。
そこで待っていたのは……
「久しいわね、アナトリアの傭兵さん。リリウムは、貴方が来るのを待ってました……理由はお分かりですね?」
一人称がリリウム、それにその二つ名ということは……
「……アーマードコアがある世界にいた、リリウムか」
「まさかっ、叔母様も流星の……!」
リリウムは話してなかったのか。
前世あるっていっても、あまり信用されないだろうからな……
「ここでも名前呼びとは……貴方は変わらないですね」
「リリウムの方が、年上ですよ?」
「そんなもの……俺のほうが長く生きてんだ。有って無いようなもんだよ」
あっちで先に逝っちまったのは、リリウムの方だろ?
それに、リリウムがどうかは分からないが、俺は何重もの世界を渡ってきてるしな……
「……こうやって張り合うのも、変わりませんね」
「セシリアと婚約する流星に向けて、私からは一つ……
姪を、離してはいけませんよ?」
……あんまり俺とのそういう話長くする人いないな。
「承知しました、リリウム」
「依頼受領確認……こんなこと話すのはいつぶりでしょうか」
「さぁな……俺は数えるのが億劫になるくらい前だな」
「そうですか……」と言いながらリリウムは紅茶の用意を始める。
「……今日は私の家で泊まっていってください。おもてなしいたしますわ」
話が一段落ついたとこで、セシリアが伝えてくる。
今日泊まるのはここか……
「ありがとな、セシリア」
そういえば、リリウムの料理の腕はセシリア並ってチェルシーさんが言ってたけど……
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セシリアと一緒に寝るのは、これが初めてか……
そう思いつつ、寝室の扉を開けると、
「お待ちしてました、流星さん」
ネグリジェ姿のセシリアがそこに立っていた。
いや、なんでそこに立ってるんだ……?
「今日からは頂いてくれるのでしょう、流星さん?」
……そういう意味で言ったんじゃないが。
というか、
「いいのか……?」
「もちろんですわ……さぁ、こちらにいらしてください」
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翌日の空港、セシリアとリリウム、チェルシーさんの3人が俺たちを見送りに来てくれた。
「もう行かれてしまうのですね、流星さん……」
「でも、数日後に日本に来るんだろう?」
「その時はぜひお願い致しますわ!」
ハグを交わしてしばしの別れを惜しむ。
もう一つ、なにかしてあげたいな……そうだ!
「最後に……」
軽く唇を重ねる。
「……ありがとうございます…………また、日本でお会いしましょうね!」
「……またな!」
そして飛行機に乗り込み、イギリスを離れる。
次なる地は中国。
今旅行では最期の地で、鈴が待っている地だ。
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一方その頃、日本では……
「対人戦は得意だよ!」
『ほう、そっちの方はなかなかやるようだな……だがこの機体を前にしても同じことが言えるか?』
次に現れた戦闘データは、真っ白な4枚羽を持つ……
「なんでクシャトリヤがグラインドブレード引っ提げてんだよ!?
まて! そのミサイルの量はなんだぁぁぁああ!?」
『口を動かす前に機体を動かせ! もう訓練は始まってるぞ!』
「バルテウスの2倍はあるぞ!? 待て! その物騒なチェンソーをああああああぁぁぁぁ……」
『……リテイク1回目だ』
流星の知り合いがポンポン増えていく……
ついに世界旅行も最後の国に。
そこではガンダムWのあのキャラが……?
敵として出るなら……どれ?
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よう、首輪突き。
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世に平穏のあらんことを
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私こそが企業だ!