IS 白き一角獣   作:どこぞの機械好き

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リコリス回、後半です。

……この作品、できれば評価を付けてください。
それがモチベに直結するので……どうか……(承認欲求のイレギュラー)


第48話 護衛任務②

 side 流星

 

「ありがとうございました……」

 

「また学校でな」

 

 ラウラが会計をし、シャルが店先まで見送りをしてくれた。

 終始、どちらもドギマギしていたな……

 

「まっさかあの子が働いていたなんてねぇ……ん? 通信? 

 

 もしもし先生? なにかあった〜?」

 

『のんきにメイドカフェ行ってるんじゃない……追手が現れた! サイレント・ジンだ!』

 

 サイレント・ジン……? なにかのコードネームか? 

 初めて聞く名である以上、何を使ってくるかわからない。

 なので有識者……いや、裏に詳しい()()()に右耳に付けているインカムを使ってCALLをする……

 時間外労働だが、出てくれるだろうか……? 

 

 ──プルルップルルッ……ガザッ

 

【なにか知りたいことがあるのか、流星?】

 

【イーライ、いきなりだがサイレント・ジンについて教えてくれ】

 

 出てくれたCALLの相手はイーライ。結構世界を飛び回っているあいつは今は国内にいるらしい。こういった事情にはあいつ詳しい……

 

【サイレント・ジンか……中々に厄介なやつだな】

 

【ほう……それで、なぜその名前になってるんだ?】

 

【サイレント・ジン。その寡黙な暗殺がそのまま異名になるほどの口無しっぷりらしい。15年前までは警備会社の裏稼業をしていたみたいだが……】

 

【……実力の程は?】

 

【裏では結構有名らしい……もしかして、そいつが来ているのか!?】

 

【そのもしかしてだ……面倒なことになった】

 

【本当に面倒だな……今リコリスと任務中だっけか?】

 

【ああ、ファーストとセカンド一人ずつで老人の護衛中だ】

 

【……なら、今すぐ安全な場所に逃げろ。加えて一人、殿をしたほうが成功率は上がるだろうな。お前の実力を知ってない訳では無いが……護衛対象がいるなら、分が悪い】

 

【わかった、注意して対応する。それと……松下という老人について調べてくれ。ALSで会社の重鎮らしいんだが……なぜジンに狙われてるか、気になるしな】

 

【松下、だな。カズに聞いて、データバンクを参照しとく】

 

【こちらからは以上だ。急にすまなかったな】

 

【問題ないさ、兄弟】

 

 ──

 

『……ミズキと連絡が途絶えた。ジンが仕掛けてくるぞ』

 

 イーライとの通信を終えると、クルミがこちらに悪い知らせを寄越してきた。

 ミズキが……MIA(行方不明)、ジンにやられたのか……? 

 

 ミカからの報告で、千束の気が引き締待ったことがよく分かる。MIAのミズキが無事だと思いたいが……最悪のケース、であったとしても今は感傷に浸っている場合などではない。任務はまだ続いており、脅威はこれからやってくる。

 ならば千束とたきなにはリコリスとして、何より松下の安全を預かる者としてやるべきことが残っている。

 

「────私に任せて下さい」

 

 たきなは、まず問題の根源を叩くことを望む、か……

 答えとしては一つ、間違ってない。

 

「ちょっ、たきな!」

 

 サプレッサーを銃に取り付けたたきなが、駆け出す。

 一方向ということは……ジンの居場所をクルミあたりにでも、聞いているのだろうか。

 

 その後、それが答えであるかのようにサプレッサーの付いた銃特有の音が、響いた。

 

 ────―

 ────

 ──―

 ──

 ―

 

 side たきな

 

『たきな、朗報だ。ミズキが生きてた。今依頼者を迎えに東京駅に向かってるから、それまで持ち堪えてくれ』

 

「っ……分かりました!」

 

 防弾コートを着たジンを追いかけている最中、クルミから朗報が入る。

 ミズキが生きてる。素直に安心した。

 

 しかしこれでミズキが松下の護衛に付いてくれれば、千束、もしくは流星さんと合わせて二対一。もしくはどちらも参戦して三対一……ジンを追い詰める事ができる。

 それまで、自分はジンを千束達から引き離すように立ち回りつつ、かつ千束と合流しやすい場所へと誘導できれば。

 

『ジンの動きが止まった。十五メートル先の室外機の裏に居るぞ』

 

「止まった……!」

 

 その報告と同時に足を緩め、音を立てないよう別の室外機から覗き込む。真夏に全身黒装備という特徴的な身なりの為、室外機の先ではみ出る黒いコートがよく見える。

 

 様子見か、休憩か……立ち止まっている理由は何でもいい。千束や誉の方へジンが向かう前に、ここで決着を付ける。

 

 たきなは銃を持って、静かに回り込む。クルミにジンの動向を監視してもらいながら、移動してない事を確認し、奴の背後にまで位置取り、気取られる前に角から飛び出して、その拳銃を突き付けた。

 

「なっ……!?」

 

 そこには、ジンの羽織っていたコートだけが取り残されていた。思わず拳銃を下ろす。慌てて近付いて見れば、コートの襟首に光る小さな粒が……恐らくミズキが付けた発信機だろう。

 

 ……まずい、発信機を気取られ、脱ぎ捨てられたのだ。発信機の付いたコートはダミーとしての役割を十二分に果たされ……完全にジンを見失った。

 

「クルミ! 見失いました! コートだけです!」

 

『……分かった。千束達は東京駅の近くだ。アイツにも情報は伝えとく。たきなも急いでくれ』

 

「くっ……!」

 

 歯軋りしながらも、その身を翻して駆け出す……目の前だと思っていたのに、逃げられた。

 ジンが標的である松下の位置を既に知っているなら、千束や流星さんの居る東京駅へと向かうのが必定。クルミの指示は的確だった。

 

 それに松下は車椅子……だけど千束はおろか、流星さんの実力は計り知れない。

 

 だが、こういう任務は、いつも襲う側が有利。油断はできない。

 

 ミズキが二人を迎えに行く前に狙われでもすれば、千束が護衛対象を守り切れる確証がない。単独行動が完全に裏目に出てしまった。

 

 急げ…………急げ!! 

 

 ミズキがジンにやられてしまったかもしれないと、そんな報告を聞いただけでも鳥肌が立つほどに恐怖したのだ、千束と流星さんの訃報を聞いたりなどすれば…………そう考えるだけで心臓が煩い。そんな事させるものかと脳裏が警報が鳴り響く。

 

 失う事に、これ程までに恐怖している。千束と流星さんの顔ばかりがチラつく。

 これが……流星さんの恐れていること。いや、もっと彼は怖いのかもしれない。

 

「…………ぁ」

 

 ふと……私の視線は、ある方向で固まった。

 

 東京駅の屋根の上。改修工事途中で鉄骨などの骨組みで出来上がった足場の先……巨大な時計の真上で、長髪を風に揺らしながらサプレッサー付きの拳銃を下に向けているジンの姿を視認する。

 

 その拳銃の先には……

 千束と、流星と、彼女たちに向き合う車椅子の依頼者、松下の姿。

 三人ともジンがいることには気づいていない。

 

 ……ドクン、と心臓が音を立てたように強く、脈打つ。

 

 目を見開き、足を懸命に動かしながら、両腕を上げて拳銃を構えて……咄嗟に、叫ぶように、その名を呼ぶ。

 

「千束、流星さんっ!!」

 

「……っ!?」

 

 放つ、ただ一撃を。

 

 それはジンの拳銃をピンポイントで直撃し、同時に放ったジンの弾丸の軌道を僅かに逸らす。松下の頭蓋を貫くはずだったその弾は、車椅子の取っ手に直撃し、弾かれ火花を散らした。

 

 たきなは思い切り床を踏み抜き、その体勢を崩す程の勢いでジンの腰付近にその身をタックルさせる。そして上体をよろめかせ、床を踏み外したジンと共に、東京駅の屋根から落下していく。

 

「たきなああああぁぁぁああっ!!」

 

「受け身を取れ、たきな!!」

 

 千束の叫び声が遠くなっていく。それでも、彼女と流星を守る事ができた事の安堵の方が大きかった。何枚もの床板を重力によって貫きながら、下へ下へとジンと共に落ちていき────重ねられた工事現場用土嚢袋の山をクッションに、その身一つで激突した。

 

「……ぐっ!」

 

 受け身を取れって……すぐにはできない。土嚢でなんとか衝撃は吸収されたものの……

 痛みで足が縺れ、身体を地面に打ち付けた。

 

 掠っただけでも動けなくなるほどの痛みに、その表情が苦痛に歪む。

 

 転んだと同時に足も捻ったのか、痛みですぐに起き上がれない。その間も、敵からの銃弾の雨は止まず、たきなの息の根を止めに来る。たきなは慌てて上体を起こし、動かない足を庇いながらどうにかコンテナへとその身を隠す。

 

 …………いたい

 

 痛い、どうしようもない程に。

 

 すぐに動かなくてはならないのに、足が動かない。この場で迎撃する為の攻撃手段も先程落としてしまった。チェックメイトが、死神が足音を立てて近づいてくるような幻覚が視界を襲う。

 

 こまめに場所を変更しながら千束、もしくは流星さんが来るまでの時間を稼ぎ、どちらかが来たタイミングで落とした銃を回収して二人で攻める……はずのプランだったが、そんな追いかけっこにジンは付き合う気は無かったようだ。

 

 此方が拳銃を使わず逃げに徹していることから、予備の拳銃が無い事も理解しているのだろう。最後の方は、ジンは隠れもせずに此方を追いかけてきていた。

 

 ……まずい、このままでは死ぬ。

 

 それだけじゃない、千束がジンを見失えば松下が狙われる事は見えている。それに流星さんも……それだけは、それだけは絶対に阻止しなければならない。

 

 しかし、そんな考えも潰されるかの如く、鉄骨を踏み抜き床を駆け抜く音がした。

 

「…………っ、ぁ」

 

 ジンは、改修工事によって組み立てられた鉄骨によって敷き詰められた床を利用して上を取り、物陰に隠れた私を視認して、銃口を向けていた。

 足を貫かれて動けずに隠れていた事も予測済みだったのだろうか、ここに来るまでの行動に迷いの一つも見られない。

 私はそれを見上げながらも、反撃の術が無い……それを眺める事しかできなかった。隠れようにも、もう間に合わない。外して貰える様な距離じゃない。

 

 その銃口が、私の頭蓋を見据える。

 

 ジンの手に持つ拳銃の引き金が、段々と引かれ始める。

 

 弾が放たれるその銃口が死神の眼のようで、それに何故か魅入られて……固まり、視界が揺れる。

 

 私は……ここで…………あと数秒で……

 

 

 

 

 

 

「たきな!!」

 

 

 

 

 

 

 その声と同時に、ジンの銃声が響いた。

 

 私とジンの前に躍り出る黒い影が、私に覆い被さるように現れて、そのまま私を抱えて飛ぶ。

 

 その人物は私を抱いたまま二人して転がり、ジンの銃弾の死角になる場所まで移動する。

 

 土煙が舞い、ジンからも、そして此方からも互いを視認できないようになって漸く……自分を抱える存在を見上げる事ができた。

 

「見たところ……左大腿部の銃創と、落下時の打ち身だけだな?」

 

「流星、さん……さっきまであそこにいたのに……」

 

「たきなが落ちるの見て、ここ登ってきたんだ」

 

 いつの間にか、全身が特徴的……まるでタイツに装備を加えた服装になっている。

 そんな彼の左の手の平から、血が滴って……

 

 あの時に……

 

「流星さん、血が……」

 

 この言葉で自覚したのか、彼はガーゼでその部分を強く巻いた。

 それでも、彼の巻くガーゼが赤く染まる。

 

「俺は掠っただけだ。たきなのその怪我に比べたら、どうってことない……神経もやられてないしな」

 

 ……そんなわけない。私とおなじくらい、痛いはずなのに……

 

「手当をする……ちょっとしみるぞ」

 

「つっ……やってから言わないでください」

 

 流星さんはポーチから取り出した消毒薬を私の患部に吹き付け、ガーゼを巻きつける。

 ……処置が、速い。

 

「すみません……出しゃばった真似を、して……」

 

「いや、よく頑張ってくれたよ……護衛対象はもうミズキに任せて安全な場所に逃げることができた。ありがとう、たきな」

 

「っ……はい」

 

 彼がこちらに少し微笑む……そして何故か、身体が少し熱くなる。

 これは…………なんで熱くなるんだろう? 

 

 いや、それよりもなんで敵の前で私の手当を……

 

「ジンの相手は……?」

 

「千束が牽制している……もうすぐリロード挟みにこっちに来るだろう」

 

 千束もここに……? 

 

「たきなっ! 大丈夫!?」

 

 これが噂をすれば、というものか。

 千束がマガジンを落としながら、こちらに転がりこんできた。

 

「流星さんに処置してもらったので、なんとか……」

 

 その場所を見せると、千束はふぅ……と、少し息をつく。

 

「なら、引き続きジンを……」

 

「待て千束、たきなを頼む……選手交代だ」

 

 そう言って流星さんがどこからともなく取り出した大型拳銃……

 

 デザートイーグル……50AE……! 

 まさか……

 

「殺すのはナシね!?」

 

「わかってる……俺のお目当ては……」

 

 まばたきした瞬間、すでに物影から飛び出ていた彼の狙ったのは……

 

 

 バチィィイインッ!! 

 

 

「なっ……!?」

 

 ジンの持つ得物(拳銃)だった。決して遠くない距離で大口径の弾丸を食らったら、金属の塊でもひとたまりもない。

 スライド部分を破壊されたそれは誰が見ても使い物にならなくなる。

 

「これだよ……これで脅威度が非常に下がる」

 

「ふぅ〜ん……やるねぇ……」

 

 流れるように、次は投擲武器のなくなったジンに近づく。

 だが、相手はプロの暗殺者。殴打武器、または刃物を持っているに違いない。

 

 それにも関わらず、彼は恐れることなくジンに近づく。

 相手が武器を出す前に近づき切った流星さんは……

 

「ジン、これで詰みだ……投降しろ。ミカの友人と聞いてる……手荒な真似はしたくない」

 

 千束と同じ弾丸を詰めたコルト1911をジンの脳天に突きつけて、ジンの動きを完全に封じた。

 

「…………投降する」

 

「喋れたんかい……一応拘束するからな」

 

 このやり取りだけで、この場の空気がどっと緩んだ。

 そして流星さんがジンに縄を巻いていると……

 

『────殺すんだ!』

 

 ────―

 ────

 ──―

 ──

 ―

 

 side 流星

 

『────殺すんだ!』

 

 ジンを拘束していると……ふと、離れた距離から機械音声の声が響いた。

 

 たきなはそちらに顔を向け、千束も振り返る。そこには、安全な場所に逃げたはずの松下が此方に向かって車椅子を動かしてきていた。

 

 よく見たら後方には疲弊し座り込んでいるミズキの姿もある。

 

『そいつは私の家族の命を奪った男だ。殺してくれ!』

 

「殺し、た……って」

 

 たきなは初耳なのか……情報に目を丸くする。千束は何も言わずに近付いてくる松下を見て悲しげに目を細めた。

 

 千束はジンがやったことを知っていたのか……

 

『本来なら、あの時私の手でやるべきだった。家族を殺された二十年前に……!』

 

 以前、松下の家族を殺したのも、目の前で項垂れ意識を失っている黒髪長髪の暗殺者だという。そこにどれだけの信憑性があるかは分からないが、彼を殺し、家族の仇を討つのが松下の目的だったのだ。

 

 なるほど、日本に来たのは暗殺に特化したリコリス、及びDAに助力を乞う事が目的だったのだとすると確かに辻褄が合う。

 

 アメリカでのボディガードでは自分の身は守れど反撃はできないと踏んで、リコリスの中でも最強と名高い錦木千束に暗殺者を手にかけさせようと……

 

 という、よくできたカバーストーリーを考えれたものだな。

 

『君の手で殺してくれ。君は『アラン・チルドレン』のはずだ!』

 

「松下さん……」

 

 ……アラン・チルドレン。

 

 彼……いや、そいつが今口から出た言葉で、たきなのもとへ来る前に来たイーライからの調査結果が嘘ではないことがわかった。

 

『何の為に命を貰ったんだ! その意味を良く考えるんだ! 早くその男を殺せ!』

 

「待て松下……いや、()()()()()?」

 

『「「っ!?」」』

 

 この言葉で、首を傾げるたきなを除いて全員が息を飲む音がする。

 

「まずこいつから臭う特徴的な……千束、あいつはポン中だ。ALSなんか患ってない」

 

「……ポン中? どこの中学校?」

 

「覚せい剤中毒者。ALS患者にしては、まだ肉付きが良かった」

 

 ちなみにポンは昔のヒロポンのことを指す。

 知らない人が多いのは、世代交代が進んでいる証拠だろうか。

 

「じ……じゃあ、この人は……」

 

「この世に、会社の重役という肩書を持つ松下なんて人は居ない。

 それに、絶え間なくこの車椅子がどこかとやり取りしているようだな……?」

 

『何を言っ……千束、それではアラン機関は君をっ……その命をっ……!』

 

 男性のその言葉を遮るように、遠くからサイレンの音……このサイレンはパトカーか。恐らく此処でのやり取りを目撃した第三者からの通報が入ったのだろう。

 

 ミズキは音源の方向へと振り返って、焦った様な顔で呼び掛けた。

 

「うわヤバ……面倒な事になる前に逃げちゃお、ほらほら!」

 

「たきな、立てるか?」

 

「ありがとうございます……」

 

 千束は振り返り、男性に向かっていく。

 

「あの、取り敢えず場所を変えて一度落ち着……あ、あれ松下さん?」

 

「千束……?」

 

 呼びかける千束の反応がどこかおかしい。たきなと顔を見合わせ千束の方へと歩いていくと、そこには物言わぬ松下が項垂れていた。

 

 ……逃げたか。

 

 ────―

 ────

 ──―

 ──

 ―

 

 翌日、クリーナーから男性が病棟から逃げ出した男性で違いないということを知らされた。

 今は虫の息だという。

 

 人を利用してまで、アラン機関は才能を……

 

「なぁにいつまでもムスッとしてるのよ流星!」

 

「いや、昨日のことでな……」

 

 あの喋っていたやつの言葉から考えるに……彼女は、アラン機関に殺しの才能を見出されている。

 千束自身は、不殺を貫いているというのに……

 

「あのことならもう大丈夫だよ! 流星もさっさと立ち直りなって! ほら、千束スペシャル奢るから!」

 

 そうして目の前に置かれる、甘味の集合体。

 

「ありがと……ポジティブっていいな」

 

「そうだよ、人生ポジティブが一番だからね!」

 

 それはそうかもしれんな……どうしようもなく、絶望しているときでもそれを持ってれば……案外どうにかなる。

 

 一年戦争と2年前の俺に教えていやりたい。

 

「それで、次はなんでケータイ見てるの?」

 

「千冬から依頼が来てな……それでどうしようかと思ってるんだ」

 

「あのモンド・グロッソ初代優勝者の人から?」

 

「海の時にいただろ? 代表候補生達と一夏に怒ってた人」

 

 まぁ……あの後に彼女たちがやること(プロポーズ)を知っていたのか、結構手短に終わったけどな。

 千束はこのことを知らない。

 そろそろ発表されるはずだが……

 

「あぁ〜! あの人か! それで、どんな内容なの?」

 

「もうすぐIS学園で学園祭をするんだが……飲食店がどうも集まらないらしくてな」

 

「もしかして、私達臨時収入のチャンス!?」

 

「……そんなとこだ」

 

「先生〜! 9月にIS学園で出張店しない〜?」

 

「IS学園で? ……楠木司令が許したらな」

 

「いよっしゃぁーっ!」

 

 千束がピョンピョンと飛び跳ねる……まだ確定じゃないんだがな。

 店内に目を傾けると、昨日まで暗殺業(サイレント・ジン)をしていたジンがコーヒーを運んできた人……シャア・アズナブルに目を開いている。

 

 ……あんな細目で、よく開くな。

 たきなは大事を取って今日は休んでいるが……今日この場にいたらどうなってただろうか。

 

 ──―カランカランッ

 

「おはようございます。もう怪我は大丈夫なの……ジン!?」

 

 あっ……これデジャヴュ(既視感)が……

 

「たきなステイ!! 今その人敵じゃないから!! 銃構えないで!!」

 

「落ち着けたきな……ジンはただの客だ」

 

「ですがそいつは……!」

 

 たきなの続きの言葉は、あるテレビの音が聞こえるとともにか細くなっていく。

 

『……速報です! ISの男性操縦者の重婚が適用される法律が、国会で承認されました! 

 それを受けて各国が次々と男性操縦者との婚約を発表しています! 

 確認されただけでも、イギリス、ドイツ、フランス……』

 

 ……どうして、天はカオスな状況を作るのが好きなのだろうか。

 

「なっ……!!」

 

「はぁっ!?」

 

「こやつっ……ハーレムを!!」

 

「えっ!? どどどどっ……どっ!?」

 

「……ラウラさんが流星の!?」

 

「はぁ……やっぱりこうなるか」

 

 ジンに向きかけていたヘイトが視線とともに、すべてこちらに向いてくる。

 テレビェ……なんで今なんだよ。

 

「……いや、ラウラは一夏だ」

 

「そうだとしても、流星……何人、すでに決まってるんだ?」

 

「聞いて驚くなよ、クルミ……

 

 

 何故か7人だ」

 

 それもこれから増えるかもしれん。

 

「「「「7人っ!!?」」」」

 

 

 

 東京の下町に、驚きの声が響き渡った。




さてと……次回、ひっさびさの幕間をします。
そしてやっとこさ、夏休み編……終了となります。

次は学園祭編ですが……

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=305106&uid=427875

出し物、みんなで決めましょうか。

敵として出るなら……どれ?

  • よう、首輪突き。
  • 世に平穏のあらんことを
  • 私こそが企業だ!
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