IS 白き一角獣   作:どこぞの機械好き

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たきなを撃った、灰色の男は一体……


第56話 escape

「あれ、この時間流星とテレビ電話する筈だけど……連絡来ないな? 楯無さん、流星と連絡が取れないんですけど……」

 

「いま取り込み中なんじゃない? もうちょっと、待ってみたらどうかしら?」

 

「……もう10分待ってみます。それまでちょっとVRMMOの話でもしませんか?」

 

「あ、それ気になる……! 聞かせて頂戴!」

 

 ────―

 ────

 ──―

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 ―

 

 side 流星

 

「ブラックグリントの解析結果がでたよー!」

 

「お……どうだった主任?」

 

 学園祭の数日後の週末、ツィマッド社で業務をしていると、青い機械のヘッドをつけたツィマッド社技術部代表……通称『主任』が、ある数枚の報告書を手渡してきた。

 かなり前(幕間)から登場していた主任は、時には今のように白衣を着ていたり、時には開発した覚えのないロボット(ハングドマン)だったりする……正直、正体がはっきりしてない。

 

「ロニィちゃんのIS、三次移行の際に変化したジェネレーターなんだけど……その粒子から、コジマ粒子とサイコフレーム粒子のハイブリットであることがわかったぞ!」

 

 渡された資料をめくると……ロニィのISの三次移行(サードシフト)で、色々出てきた謎の内の一つが判明した事が書かれていた。

 

「となると、ロニィのサイコフレームのパーソナルカラーは紫か……コジマ粒子の毒性は?」

 

「今のところは確認されてないね。だけどなにかの拍子に切り替わって、黒い鳥みたいになる可能性も……あるかな?」

 

「……わかった。続けて、サンプルを取りながら調査を進めてくれ」

 

「はいはーい……おや、忙しそうだね、そんなに机の上に別の資料広げて。もしかして夜も忙しいからかな? ギャハハ……ア゜ッ!」

 

「心配してくれるのは嬉しいが、紛らわしいことまで言わなくていい……!」

 

 頭を何故かその場にあったハリセンで叩くと、主任の頭の装甲の一部が吹き飛ぶ。

 ツッコむ時に毎回思うんだが……そんなに強く叩いてないのに、どうしてすぐにダメージを受けるんだ? 

 まさか……そんな見た目して、物理攻撃には弱かったりしてな……

 

「機体がダメージを受けてマース」

 

 そう言いながら、トボトボと持ち場に戻っていく主任。

 まぁ……いつもの如く、気づいたら治っているだろうし、問題ないだろう。

 

「……はぁ」

 

 だが……主任に言われたとおり、最近の業務が忙しくなっていることに違いはない。

 学園祭にだしたVRゲームの報告書に然り、学園祭のために後回ししていた書類に然り……これだけではなく、もっとある。今日寝れるか……? 

 

 そして何よりも優先しないといけない、一番の課題は……

 

「三人の……専用機、か」

 

 ロニィの報告書をファイルに直して、元々広げていた資料に目を配る。

 色々な方面から……篠ノ之博士がいるなら、すぐに作れるよな? (意訳)と急かされているので、期限は言われていないものの……もう半月もない今月中に作らないといけないだろう。

 

「そうポンポン作れるものじゃないんだってのに……」

 

 原材料の調達はもう済ませて、コアも束と一緒に作ったが……キリト達本人の意向を聞いて、フレームを作らないといけない。それをまだやっていないので、このあとにテレビ電話をする必要がある。

 

「それは30分後か……眠いな。ちょっと寝るか」

 

 机にある時計のタイマーをセットし、仮眠をしようとざくのモノアイが書かれたアイマスクを被せ……れなかった。

 止めたのは……

 

「何かあったのか、マ?」

 

「流星、なにか手伝えることあるか? 例えばその横の決済の書類などは……?」

 

「いや、これは後でやる予定のやつだから気にしなくていい」

 

 この書類を終わらせれば、今日の仕事は終わるし……概ね9時に終われば御の字だろう。

 

「やることがなくて困ってるんだ。部下がやることなくてコーヒーを飲んでいて、上司だけがブラックというのもな……」

 

「じゃあ……この資料捌いてくれ。頼む」

 

 テレビ電話の後にしようとしていたものを、彼に任せるとする。

 暇になった分、今日は家に戻る予定があることから、木綿季たちとゆっくりしようと考えてみた。

 

「頼まれた……本来なら、私や他の者がする作業なんだがな……どうしたんだ主任? さっきで報告が終わったんじゃないのか」

 

 なにかいい忘れてたことでも、あるのか? 

 どんどんと仮眠の時間が削れていってるから、はやく終わらせてほしいが……

 

「今度は何だ、主任……できれば手短に頼む」

 

「そりゃ無理だ、申し訳ないけど。だって……()()()()、さっきから鳴りっぱなしだからね? もしかしなくてもやばいんじゃない?」

 

「……何だとっ!?」

 

 主任の指の方向には、俺の机の上に乗ってる赤い受話器についているランプが点滅しているた。

 まずいな……普通はこれ鳴らないはずなのにっ! 

 

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「誰からの通信だ!」

 

「クルミと名乗っています!」

 

「クルミ……こっちに直接繋げっ!」

 

 ブリーフィングをする余裕がないので、すぐにISの換装をできるようにしている。一体何があった……

 内容が分かり次第ですぐに出撃できるようにな……ISを使うのはあまり良くないが……すでに束からもこの方に使う旨は伝えてある。

 

『流星! 千束と、たきなが!』

 

 少しのノイズがしたとかと思えば、最近聞き慣れた声がつけているインカムから聞こえた。

 その声は憔悴しており、いつもの様子とはまるっきり違っている。

 

「……何があった。落ち着いて、ゆっくり話してくれ」

 

『ああ……っだがそんなゆっくり話している時間はない! 二人は今襲われてるんだ!』

 

 二人が襲われている……想像しがたい話だが、現に起こっているのか。

 恐らく大多数による飽和攻撃、もしくはその大多数を囮に使った意識外からの攻撃を狙って……

 

「場所はわかるか?」

 

『携帯を落としているから、具体的な場所はわからないんだ……』

 

 恐らく襲われた直後に落としたか……ならば。

 

「携帯の位置はわかるか?」

 

『それなら……』

 

 ここだ。と、HUDの一部に出てきた地図に点が示される。

 ここは……近くに公園がある? この近くの公園をまずあたってみるか。恐らく千束とたきなの戦闘スタイルだと、ここで闘っている可能性も高い。

 

「これだけでも上等だ……もう一つ、千束たちと連絡がつかなくなってから何分経つ?」

 

『……もう、10分は』

 

 10分。すでにどちらか……いや、どちらも負傷していてもおかしくない。

 

「主任! IS搭載用CURE改良型(緊急手術対応型対人治療セット)と輸血の在庫は!」

 

「たーっぷりあるよ。いくつ持っていくんだい?」

 

「2セットと千束とたきなの血液型と同じ型をそれぞれ20単位(140ml×20)を医療部の在庫から引っ張ってこい!」

 

「了解したけど……問題が起きてない?」

 

 主任が即座に運んできた人の胴体くらいあるコンテナを拡張領域にインストール……できない!? 

 どうしてか……原因は容量不足だと……!? 

 

「いつもの装備を拡張領域に入れたままだと、それ運べないよ?」

 

 思わぬ弱点を指摘されつつ、瞬時に対処法を考える

 

「非殺傷弾搭載のライフルは全部外付けで対応させる! DACの今いるメンバーに喫茶リコリコの周辺半径5キロを、重点的に警戒するように通達!」

 

「りょーかーい。んじゃぽいーっと」

 

 取り出したアームドアーマーSB、VN、ビームマグナムを主任に投げ渡し、今度こそコンテナを収納した。

 代わりにフランジル弾(非殺傷弾)の詰まったISのアサルトライフルを両手に持つ。

 

 後は、試験場方面に向いているカタパルトを、目的地に向けて「流星、私もいい?」……今のは? 

 

「あれれ、流星だけで行くの? ロニィちゃんも行きたそうにしてるけど……」

 

 さっきまで主任と、ISの調査をしていたロニィもいつの間にか臨戦態勢で、少し後ろのカタパルトにいた。

 

「これに関与すると、裏に片足突っ込むことになる……それでもか?」

 

「いいの。元々裏から生まれてきたようなものだし……それよりも、はやく千束達を助けないと……!」

 

 ロニィもこっちに来てしまうのか……なら、これからより一層お互いに守ったり守られたりすることが増えるだろう。

 

「あ、そうなんだ。それじゃあ頑張ってー!」

 

 主任がそう言いながらカタパルト発射ボタンを押す。

 

「間に合ってくれよ……!」

 

 レールに一瞬の紫電が走り、2機のISは一瞬にして亜音速まで加速した。

 

 ────―

 ────

 ──―

 ──

 ―

 

 side 真島

 

「まーじまさーん! はやくトドメ刺しちゃってくださいよ!」

 

「真島さんに勝つなんて、100年早いんだよ赤服!」

 

 周りからの聞き流しつつ、

 

()()()()の方も動員していたら、もうちょっと損害少なかったんじゃないか?」

 

 青服を赤服の方がかばうようにして倒れている状態に目を配らせながら、スナイパーライフルを持ちながら喜びの顔を見せているそいつに問いかける。

 実際、あの化け物出したらこっちの何人かは気絶することはなかったし、何台かの車も潰れることはなかっただろう。

 

「いや、あれだしたら関係ない人まで被害及ぶからね……今回は休んでもらってる」

 

「変なとこで律儀だな、お前は……じゃあ誤射した青いほうはどうするんだ?」

 

 その話題の主はというと、赤服がかばうように覆いかぶさっているそいつの下を中心に赤い池が広がっている……今すぐ手当をしなければ手遅れになるであろうダメージを負っている。

 

「ほっといていいよ、時間が経てば失血死するだろうし」

 

 こいつの射撃センス、もうちょっと見たかったんだがな……せめて手くらいは合わせてやるとしよう。

 なにかの才能ではないかと思うくらい、射撃が正確だった。

 

「私……君とは、面識がないんだけど?」

 

 青服の上に覆いかぶさっている赤服、殴った後意識飛んだと思っていたが、まだ意識があったのか。

 よくもまあ……さすがはかつて一度しか見たことのない希少種というだけある。

 

「……なくて当然だろうね、直接的に被害を被ったわけじゃないし。だけど君が引き起こしたことに違いはない」

 

「私になにか恨みがあるかもしれないのはわかる……けど。なんで、たきなも……?」

 

「いや、あれほんとに誤射だよ……それは謝っておく」

 

 こいつもこいつで、どこかおかしいよな……ただ復讐のために、他人のことはどこか無頓着になるところ。そして、一つの目的にいかなる手段を使うことをためらわないことが。

 

()()……早く赤服にケリをつけるなら、さっさとつけろ。これでお前のステップは一つ進むだろ?」

 

「わかって……あれ、これは……()と真島も同じの持ってたよね?」

 

 あいつがリコリスのつけているフクロウのペンダントを指差す。

 こいつも……アラン機関の「真島さん、上と横から何かきますっ!」あ? 

 

 横から来ているのが赤い乗用車、そして上から飛んできているのは……

 

「なっ……いきなりISだと……!?」

 

 報告したやつから赤い煙が出て倒れたかと思うと、周囲のやつが次々と撃たれて倒れていく。

 こいつらも、よりによって非殺傷弾を……そして、さっきの拳銃のときとは違い、一発一発が強力になっているのが嫌でもわかる分、余計に当たりたくないなおい……! 

 

「どうしてここで出てくるんだよっ!」

 

 海外の紛争地域の平和維持活動で、動いてるのを何度か見たことあるやつが見えた。その時はほぼ自衛用の装備しか持っていなかったが、こいつは……完全に武装している。

 飛んできているのは2機……一つは紫色の何かを纏っている黒いもの。あれは見たことがない。だがもう一つのところどころ青く光っている、白いものは……

 

「おい消星、黒い方は全然見たことないが、白い方って……」

 

「ああ……間違いないよ、あれは白獅子。パイロットは尾白流星……僕の第2の目標だ……そうだよっ! まさか、本当に赤服と関係があったとはね……!」

 

 話すにつれて興奮するこいつは、スナイパーライフルを構えて白獅子に向けて何度も撃つ。

 だが悲しいな。見た目通りに装甲が弾を弾いて、絶対防御なるものが発動している素振りもない。

 

「流石IS! 待っていたんだ、この時を!」

 

 スナイパーライフルを投げ捨てて、やつの懐に持っていたグレネードの安全ピンを引き抜き、レバーを握った消星は赤服に吶喊する。せめてこいつとだけでも心中するつもりか……!? 

 

「ゴハァッ……ずるいだろ、それ」  

 

 だが相手は俺たちの何倍も早く機動することができて、自立兵器も動かせるIS。消星の今からやることそうはさせまいと、白い人の大きさほどある、飛び回っている盾がやつにぶつかって消星が吹き飛ばされた。

 その時に別の方向に飛ばされた手榴弾は少し離れた所で、その手榴弾は爆発する。

 

「グエッ!?」

 

「な、何なんだよ、こいつ!」

 

 黒い方のISはすでに赤服のもとにいて、その赤服と青服をかばいながら、この前位にいる城獅子と同じく非殺傷弾で俺たちの部下をのしている。機体を見るに、これは専用機……あまり名を知られていない精鋭を連れてきたのかよ……

 

「『……』」

 これはなにかの縁なのか……白獅子の進行上の真横だったようだ。そのパイロットとバイザー越しで目が嫌でも合う。たしかこのパイロットの名前は……

 

「尾白……だったか。日本は、ISをこんなために使っているのか?」

 

『……俺達は、政府の走狗なんかじゃない。自らの意思で来ただけだ』

 

 黒いISのパイロットは赤い服のリコリスを抱えたまま、やってきた赤い乗用車に転がり込む。それを確認した白獅子はこの短いやり取りの後、盾を背中に移して青い服のリコリスを抱えると一瞬で空に飛び上がった。

 

「……追いかけなくていいのか、真島?」

 

「いや、追わない方がいい……もう警戒を強めている筈だ」

 

 飛んだ後を確認できるから、追いかけれないわけではない……だが、ツィマッドといえば……裏の人間が真っ先に連想するのは会社直属の傭兵部隊。こいつに目をつけられていて、生き残ったやつは俺の知る限りいない。

 おそらくここにも、裏で名を馳せているツィマッドの実働部隊がやってくるかもな。

 とどのつまり、俺たちも悠長にしていられないっていう話だ。

 

『ちょっと真島!? ドローンがいきなり全部つかなくなったんだけど、どうなってブツッ』

 

 かかってきた電話の通話ボタンを押した瞬間、ロボ太のうるさい声が飛んできたのですぐさま切る。

 大体ここに来るまでに全部壊してから来たんだろう。

 

「うちのハッカーの目も全部潰されたようだしな。追いかけるのは難しい」

 

「ふーん……こういう感が鋭い、あんたの言葉を信じるよ」

 

 そう二人で話しながら夜の闇に溶けていく。部下はそれにひょこひょことついてきた。

 青服は死ぬかもしれないが、赤服の家は知っているし、生きているだろう……今度訪ねてみるか。




実は、『照星』ではなく『消星』という名だった青年。
なぜ……千束と流星に恨みを持っているのか、これからお楽しみに。

敵として出るなら……どれ?

  • よう、首輪突き。
  • 世に平穏のあらんことを
  • 私こそが企業だ!
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