IS 白き一角獣   作:どこぞの機械好き

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エヴァグリイイィィイン


第60話 ラインの乙女

 side 詩乃

 

 空を飛び、障害物を右に左に避けていく。最高速度の方は問題なくだせるようになった。そして次が問題…………ある瞬間に、機体を急旋回させて的に狙いを……今回も命中せず。

 ふう……と一息ついて的のリセットを実行する。

 

 GGOとは違い、空中での戦闘が主体になる……大半の場所では遮蔽物のない空域で戦うことになってわかった課題が山積みだけどまずは……

 

「ふーむ……やはり空中での射撃時に手がぶれてしまうことが、課題になってますわね」

 

 横で今の訓練を見ていたセシリアさんから、いかにもな意見が飛んでくる。

 

「地上戦ばっかり経験してたから、筋肉の使いとかがあんまり……わかってないのかも」

 

「ならば一度、わたくしが実践してみます……さぁ、技術をどんどん吸収していってくださいまし!」

 

 次々に的に命中させていくことを実演してくれるオルコットさん。自立兵器を動かしながらも、狙いが正確なオルコットさんはどれくらい練習してきたんだろう……

 

「……すごい」

 

 GGOで見てきたプレイヤー達の本職はほとんど知らなかったけど、眼の前で舞う彼女は……国の代表になりうる実力を持っている人。

 そして……きっと流星の横に恥じなくいられるように頑張っているのだろう。

 

「いかがでございましたか?」

 

「これをただで見ていいのかって思えるくらいだよ。なにかお礼をしたいくらい……」

 

 一通りの演習をしてくれたセシリアが前に降り立って感想を尋ねてくる。私が思った事を伝えたら彼女は少し考える仕草をした後、次のように聞いてきた。

 

「ならば……僭越ながら私としては、そのライフルが気になるのですが……詩乃さんの銃はマルチスナイパーライフルとおっしゃっていましたが、具体的には……どのような機能がありますの?」

 

 とこのように。手の内を明かすことになるけど明日結局見ることになるし、問題ないか。そう結論付けて、彼女にヘカートⅡの説明を始める……といっても。

 

「ん、これのこと? ……まぁ見てもらえたらわかるよ」

 

 実弾、GN弾、そしてレーザー・プラズマ複合弾を順番に発射する。地上から静止して撃つなら、問題なく弾丸が的に吸い込まれていく。

 

「いま撃ったみたいに3つのモードがあって……これらを掛け合わせることができるって」

 

「7通りも撃てるのですか!?」

 

「チャージの時間が長くなるし、その後の排熱も同じことになるけどね……」

 

 実弾と掛け合わせるのはまだ早く済むけど、ビームとプラズマ……もしくは全部合わせたときのその時間はチャージに2秒と冷却の5秒をを合わせて7秒かかるという説明を前に受けた。その分、流星のISでさえも当たれば大丈夫じゃない火力は保証されてるらしいということも。

 

「……使い所を選びますわね」

 

「一長一短……機体製作に選ばれなかったAC部門の人達が、威信をかけて作ったみたいだよ?」

 

 その人達が他にもリクエストがあれば作ってくれると言ってたけど、流星は「あいつらの作るグレネードは気をつけてくれ」とだけ伝えられた。

 

「あら。その部門の方々は、確かマドカさんの武器も作っていらしたような……ってええ!?」

 

「逃げても無駄だぞ!」

 

「いやあああぁぁぁっ!?」

 

 セシリアが考え始めた途端、悲鳴を上げながら逃げ回る白いISに乗った簪を追いかける青いIS。簪に向かってひきりなしに巨大な砲弾……じゃなくてグレネードが飛んでいく。

 

「……セシリア、あれは」

 

「あれはマドカさんが注文した試製の火力特化型の装備らしいのですが……随分と気に入ったようですね」

 

 マドカの乗るISの両手、両肩のすべての装備がキャノンになっていた。かろうじて羽のような場所についているワイヤー付きの自立兵器だけはビームを撃って、一応ISとは思えるけど……あれを外して、戦車の足をつけると何か(ガチタン)が完成しそうだという謎の直感を感じた。

 そしてどういうわけか「メーリメリメリメリ!」と聞こえてきそうな風貌をしている。

 

「あれ……グレネードの、ガトリング?」

 

「ですわね……」

 

 そして特に異彩を放っているのが右手の巨大なガトリング状のナニカ。そこから本来連射されてはいけないはずのものが大量に打ち出される音がする。

 ついにグレネードのシャワーに飲み込まれた簪。その爆炎からでてきたのは、目がぐるぐるになって地面に倒れる彼女だった。

 できれば明日、あれの正面には立ちたくないな……

 

 ────―

 ────

 ──―

 ──

 ―

 

 side 流星

 

「「「大会に出れない!?」」」

 

 大会当日、「なんで準備してないんだ?」と着替えない俺に築いた一夏に聞かれた所、理由を説明すると着替えていた和人と一夏につまみ出された。

 その旨を伝えたらこうやって全員から一斉に……耳が痛い。

 

「どういうわけで、ドタキャンしたのよ?」

 

「前々から言おうと思ってたんだがな──―」

 

 ────―

 ──―

 ―

 

「りゅーくんは来週のキャノンボール・ファストでちゃだめだよ」

 

「……どうしてそうなった?」

 

 機体の調整をしようと思って、整備室に向かっている途中にばったり会った束と出会ってまず放たれた言葉は、キャノンボール・ファストの出禁発言。

 いきなりにも程がある、と言いたいところだが……次に出したのは織斑先生と学校長のサインが書かれた正式な紙。

 

「強すぎで出来レースになっちゃうからね〜……そこのところの自覚があるでしょ?」

 

「それは、まぁ……だが理由にしては弱くないか?」

 

「自分が一番わかってるはず。今の状態が悪い方に向かってるってことは…………この前の夜中の話も知ってるし」

 

 誰もいなかったはずなのに、どこから聞いていた地獄耳……という言葉は、束にとって無用に等しいので言わないでおこう。

 

「まだ心臓の替えが無い状態でこれ以上の無茶をすれば……もう……」

 

「いつ心不全でポックリいくか分からないってか?」

 

 束が言い澱んでいたことを、すんなり話すと彼女は首を縦に振る。

 

「ちーちゃんとかロニィちゃんのためにも、ここは我慢して」

 

「その手札を切られるとなぁ……」

 

 ────―

 ──―

 ―

 

「──という訳だ。実質ドクターストップだよ」

 

 だから実は和人の訓練の時も、俺自信は初歩的な飛行とかに抑えていた。これを聞いた和人や明日菜、一夏達は驚きや困惑の表情を見せる中、

 

「……やはりお兄ちゃんは心不全を患っていたのか」

 

「最近の感じがおかしくて、そんなところだろうと思った……」

 

 楯無とラウラは最近の行動が控えめになっていたことに薄々感づいていたらしく、やれやれと言った表情を見せる。裏とか軍にいた人は、やはり分かるんだろうな。そして一方……

 

「流星の、いない……世界なんか」

 

「まてまてまて、早まるな!? ……俺はここにいる」

 

 うるうるしながらとんでもないことを言いかけるロニィ。ロニィの人類種の天敵とか見たくないぞおい。

 

「まだそうなるかもっていう段階で分かったからな。もう手は打っている……半年後に、一旦人工心臓に置き換える手術をするって決めてるから」

 

「……ほんとに?」

 

「ほんとだ。だからそんな悲観するなって……」

 

「ん……」

 

 ロニィに軽くハグをして、過呼吸になりかけていたのを落ち着かせる。

 

「まぁ、人工心臓ができ次第とっかかることになってるがな」

 

「人工心臓って軽々しく言うけど……失敗のリスクとか、わかってるの?」

 

「知り合いに一人、人工心臓のやついるし……その時はそいつの助言でも借りるさ」

 

 後、ウチの変態共の技術は知ってのとおりだと簪に加えておいく。突貫工事で3ヶ月後に手術を始めれると言われたが、会社の業務を優先させた。それでも早急に作ると言われた時は目に来るものがあったことは記憶に新しい。

 

 にしても、半年…………それまでにガタが来ることは……ないとは信じたいが。

 

「その話は一旦置いとくして、この後どうする? 今日一日暇になったの?」

 

「もちろん、みんな活躍を間近で見たいから、遠隔操作で出る……運営の方でな」

 

 体を動かさなければ、心臓を酷使することもない。つまり道中の生徒の相手をする教師に混じって、よりレースを複雑に、盛り上げる一員として参加できる。

 

「「「えぇ……」」」

 

 別の意味を含んだであろう、ため息に近い落胆の声が聞こえてくる。これはまたどうして……

 

「……体を動かさないからリスクはないだろう?」

 

「そう……だけどそうじゃなくってだな!」

 

「実質流星と戦うってのが……」

 

 遠い目をした男勢が俺と戦うことを憂いている。

 遠隔操作の方には誰も突っ込んでくれないことに、少ししょぼんとした。そっちの方には鈍くなったのか、もう慣れてるのか……ともかく。

 

「いい経験だと思って頑張ってくれ」

 

 ────―

 

「今回は、白獅子で出るの?」

 

「できなくもないが……今回はツィマッドからの試作機を頼まれた『ラインの乙女』というやつで相手する」

 

 人の乗ってない状態のISは、中身をくり抜かれた甲殻類みたいなものだ。別に普通に動きはするが……剛性の観点では人は乗っていた方がいい。

 

「俺だけみんなのISの情報を知ってるのも、不公平だから……情報を今見せるな」

 

 武装や加速力、旋回半径などを記したデータを空中に投影する。一度目は通してるものの……コイツの構造はまだわかる。なんせもとACだったからな。だが……

 

「四脚……にしても、速度のところだけとんがりすぎてない? 絶対お金かかってるよね……」

 

「理論上の最高の速度を求めた無人機だ。ゆくゆくは有人機にしたいらしいが……確かにコストが馬鹿にならんから、まだ先になるだろうな」

 

 データを見ていた詩乃の口からごもっともな意見が飛んでくる。コイツを量産しようものなら、本当に会社が傾きかねない。これ壊れたらもう知らんぞ……

 

「でもアレスも、一度マッハ4で飛んでたような……」

 

 マドカのつぶやきに、マッハ4!? と驚く和人。大丈夫だ和人。お前が今の段階で到底出せる速度じゃない。

 

『スペックでそんな速度は出ないはずなのに、どうして流星はそんな速度を出せたのですか?』

 

「サイコフレームで斥力かさ増ししてたんだ、ユイ。それに自分が乗ってなかったら、そんなにサイコフレーム発動しないし、あれは曲がりにくい……その点、こいつは機動力では洒落にならない能力を持ってるぞ?」

 

 明日奈と詩乃のISもいずれは量子テレポートとかできるようになったら、それが一番になるんだが……

(『アレスでも、それくらいはできるぞ?』)

 ……うそだろ……一応それは内密に頼む。

 

『なるほど……ならばママとどっちが上手に操縦できるか勝負ですね!』

 

「頑張れよ、ユイ」

 

『はーい!』

 

「私の紅椿の持ち株を、殺しに来てないか……」

 

「こいつの武装は限られてるし、展開装甲はついてない。箒の工夫次第で十分に勝てる相手だぞ?」

 

「一夏……努力はする」

 

 頬が引きつった箒に寄り添う一夏。二人がお熱い雰囲気に……

 

「ンンッ! さて、まずは量産機部門だから本音の相手を……あれ?」

 

 わらわらと生徒が準備に向かい始めているのを確認して、己もぼちぼち移動を始めようかと腰を上げて一瞥し……最初から今まで、来てない人が一人いることに気づいた。

 

「……シャルは?」

 

 

 

 

 

「呼んだ、流星?」

 

「そのISは……!?」

 

 シャルがストライクフリーダムを纏って降り立つ……だが、ドラグーンは見当たらない? 

 

「……だが先に量産機の方するから、説明は後でな」

 

「ちょっと!?」




シャルのISとは……そしてキャノンボールファスト開幕なり。

新規参加形式、作ったので是非ご覧を。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=309874&uid=427875

敵として出るなら……どれ?

  • よう、首輪突き。
  • 世に平穏のあらんことを
  • 私こそが企業だ!
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