ゼルダの伝説 外伝 ~流浪の料理人~   作:クラウディ

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飯テロ2回目





バスの香草塩焼き

 

 

 

――「リンク」……それが君の名前か……。

 

「うん。はぐっ……んー……ん、おかわり」

 

金髪の少女の要求に応えるように、私は追加の串焼きキノコを焼いていく。

そして出来上がった串焼きを、空気でも食っているのかと言いたくなるほどの速度で串焼きキノコをほおばっていく少女がいた。

 

そんな私の食事を横取りした少女の名前は「リンク」。

今から数日ほど前に謎の声とともに訳の分からないところで目覚め、なおかつそれ以前の記憶を持っていない、俗に言う「記憶喪失」となってしまったらしい。

覚えている記憶も自身の名前と基本的な知識だけらしい。

 

そんな中、名も知れぬ老人と謎の声に導かれ、あることを知らされたそうなのだ。

 

「……おじいちゃんは、"厄災"を抑えている"お姫様"を守ってた"騎士"……それが私で、私は100年前に戦えなくなったけど、すごい祠でその間眠り続けて……あとはあなたに話した通りにここまで来たの。このシーカーストーン? っていうすごい板ももらって、最近は試練の祠っていう場所も頑張って終わらせてきた」

 

――なるほど……。

 

何とも重い話ではあるが、リンクは串焼きを食べ続けながら話しているため緊張感がない。

だが、こんな陸の孤島ともいうべき場所にいるのには納得がいった。

 

リンクの話に出てきた老人――ハイラルの最後の王様曰く、彼女には"厄災"を倒さなければならないという使命があるというらしい。

そして、本来であれば厄災に対抗するための手段――"ガーディアン"や"神獣"は、その倒すべき存在である厄災に乗っ取られ、それを操っていた各種族の代表――"英傑"はその時に命を落としてしまったと……。

リンクはそんな状況の中でも、今なお厄災を抑えている"お姫様"をたった一人で守り抜いた。

だがあまりにも傷ついてしまったがために、彼女はこの台地にある祠にて100年の眠りにつき、お姫様は厄災を抑えに行った……というわけか。

 

――……話してくれてありがとう。リンク。君はこれからどうするんだ?

 

「ん? んー……おじいちゃんには、私の事情を知ってる人がいる"カカリコ村"に行った方が良いって言われたから行くつもり。あなたは?」

 

――そうだな……。私はまたどこかへと旅に出ようと思う。私は"あるもの"を追い求めているんだ。

 

リンクからこれから先の予定について聞かれたのだが……正直、私は行き先などどうでもいいと思っている。

だが、私としてはあるものを追い求めていた。

この台地に来たのもその一環である。

 

「あるもの……?」

 

私のその言葉に興味を持ったのか、リンクが首を傾げながら聞いてきた。

その姿はやはり無垢な少女というべきか、期待感のこもった眼差しを向けてきたである。

 

期待されては仕方がない。

ならば話してあげよう。私の求める"もの"を。

 

――そうだ。……時にリンク、君は"究極的に美味しいものとは何か?"と、考えてみたことはあるか?

 

「究極的……なんかすっごく美味しいものってことだよね?」

 

――如何にも。まるで天にも昇るが如き体験を"食事"でもって到達すること……それが私の追い求めている"美食"だ。

 

そう、私が求めているのは――「真の"美食"とは何か」ということを追求する。ただそれだけだ。

 

あらゆる生物が生命維持に必要な行動の一つとして、食事というものは存在している。

だが、生命維持に必要なだけだからと言って、何の感情もなくただ栄養素を摂取するだけでは、面白味なんてものはない、まるで白紙のような行動を繰り返していただろう。

だからこそ、生物の中でも抜きんでた"人類"は食事に"悦楽"を見出したのだ。

 

そして人類は進化するとともに、素材、味付け、見た目、香り、様々なことで食事に"色"を与えてきた。

人類の中でも、さらに"食"に関して抜きんでる者達を"料理人"と言い、"美食"の道を極めようとしている。

 

もちろん私もその一人だ。

故に美食の道を進んでいる私にとって、厄災とやらが世界を滅ぼそうが正直知ったことではない。

 

……まぁ、その厄災とやらが美食の道を邪魔するのであれば少し痛い目を見てもらおうとは考えているが……。

 

そんなことはさておき、私は究極の美食を作り出し、それを自身で食することを目的としている。

しかし、自身の理想が高すぎるせいなのかそれの片鱗すら見えていないのだがな……。

 

――私自身、美食というものは何なのか常日頃から考えているのだが、いかんせん進歩が見えない……故に、私はこれからも美食を追い求めるため、旅をするつもりだ。

 

「んぐ……ふぅ……そうなんだね……私は、まだそれが分からない……お姫様を助けろって言われたけど……」

 

私の目的を聞き、食事を続けながらもリンクはそう呟いた。

その瞳には自分の内側にある空虚さを感じたもの悲しさが宿っている。

 

……彼女が記憶を失う前がどのような人物だったかは知らないが、自分が何者であったのかさえ分からない状態に背負わせるものではないのは確かだ。

だが、彼女としてはその使命ともいえるものを背負いたいとは思っているらしい。

その不安に揺れながらも折れそうにない青い瞳が語っていた。

 

…………料理人とは笑顔を届ける存在。

それがたとえ知り合って間もない相手だったとしても、食事で以て笑顔にさせなければならないのだ。

 

ならば、私がかけるべき言葉は1つ。

 

――リンク。君が良いのであれば、私もその旅へ同行させてもらえないだろうか?

 

「……え? ついてくる……ってこと? で、でも……あなたには無関係じゃ……」

 

――そうだ。正直に言えば使命やら厄災やらなど、私自身にはこれっっっっっ……ぽっちも関係ないのだが、君の旅路には興味がある。それに君は普通なら考えつかない数奇な運命をたどってきた。なら、その数奇な運命の中に私の求める"美食"というものがあるのかもしれない。それに……

 

「それに……?」

 

――……リンク、君は料理の仕方を知らないだろう? せいぜいが大鍋に食材を放り込んで焼くか煮る程度だ。

 

「うっ」

 

――図星だろう? だから私もついていくんだ。素晴らしい食材を下手に扱われて無駄にされるのは正直腹に据えかねる。君自身、今よりももっと美味いものを食べたいだろう? これからただ焼いたものしか食べられないのは嫌だろう?

 

「!!! し、仕方ない……そんなに言われちゃったら断れないね……」

 

――契約の優位性としては君の方が上でいい。私は食以外はさして興味がない。強いて言うなら……調理をしていることに関しては邪魔をしないでもらえると助かる。うっかり捌いてしまってはいけないからな。それを抜きにしてしまえば、私は君の従者として動こう。獲物を見つけたら教えてくれ。頼まれたら料理の手ほどきをしてもかまわないぞ?

 

「あ、あはは……よ、よろしくね、えっと……」

 

――ふむ、そういえば名前を言っていなかったな。まぁ、私としては名前など興味がない。……まぁ、"料理人"とでも呼んでくれ。リンク。

 

「……料理人さん、よろしくお願いします」

 

――交渉成立だな。

 

リンクから差し出された手を取り、料理人とその主としての契約を結ぶ。

存外面白そうな伝手を手に入れてしまったものだ。

しかし、彼女についていけば面白そうなことになるだろうという、料理人としての直感がささやいていたのである。

 

彼女とそれなりに話し込んでいたからなのか頂点にあった日は傾き、おおよそ2時から3時の間であることを教えてくれていた。

 

――さて、早速だが、今日の夕飯の調達だ。

 

「え、もう行くの?」

 

――あぁ、事前に食材を集めておくとその後の食事の計画を練ることができる。取りすぎたとしても、燻製などの保存方法を用いれば餓死の危険性もなくなる。何事も即時即決が一番だ。では遅れるなよ。

 

「ま、待ってー!」

 

そうして足早に歩いていく私の後を慌てながらリンクは追いかけてきた。

 

目指すは川だ。

 

 

 

 

 

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――……どうしたリンク? そんなにも息を切らして……

 

「あ、あなたが……あ、歩くのが……は、速すぎる……から、でしょ……」

 

――当たり前だろう? 早くしなければいつ獲物が出てくるか分からない。なら早く移動し、目的の場で獲物を狙い、もし外れたとしても残った時間のうちに別の場所で見つけられればいいのだからな。

 

「そ、それはそうだけど……なんか違う気が……」

 

リンクが何かつぶやいているがそこは私の知ったことではない。

食材というのはいつも同じ時間、同じ場所、そして安定して手に入れられるとは限らないのだ。

故に、思い立ったらすぐさま行動し、獲物を待ち構え、極上の食材を手に入れるのである。

 

「ところで……何を作ってるの? トゲ? みたいだけど……」

 

――見て分からないのか? 釣り針だ。

 

「釣り、針……?」

 

リンクに何をしているのかと尋ねられ、普通に答えた私は、食材を手に入れるための道具――今回は魚を手に入れるための道具である"釣り針"を作っていることを話す。

大雑把なサイズとしては約10センチ。

形状としては一般的な釣り針と違い、本来なら魚の顎に引っ掛けるため曲がっているはずの針は真っ直ぐに伸びていた。

これが釣り針だということを証明するのは、針の先端に付いた"返し"くらいなものだ。

それ以外はもはやただの縫い針と思ってもらっても構わない。

 

それを荷袋から複数本取りだし、先端を研ぎながら私はリンクに答えたのだ。

 

「……えっと、私が泳いで獲ってこようか?」

 

黙々と作業を続ける私を見て、リンクが何やら気を利かせて提案してくるが……。

 

――いや、下手に泳がれると魚がおびえて出てこない。気づかれる前に一斉に仕留めた方が楽だ。

 

「た、確かに……ならバクダンで仕留めた方が良い?」

 

――なぜ爆弾漁をしようとするのだ……魚が木っ端みじんになるだろう……。だが、爆弾があるのならいずれ役に立つ。今は置いておいてくれ。

 

「そ、そうなんだ……」

 

自分の役目が完全に無いようで落ち込んでいるリンクは、すぐそばの岩に腰掛けて私が作業しているのを眺めている。

まぁ、彼女もこの技術を使えるようになれば、彼女一人でも魚程度は獲れる様になるだろう。

 

――……出来上がったぞ、リンク。いつまでも落ち込むな。魔物の餌になるぞ?

 

「……落ち込んでないし。自分を放っておいて料理しか目にない料理人さんに言われたくないし」

 

――はぁ……まぁ、見ていなさい。私なりの食材の獲り方を。

 

こちらをジトッとした目で見るリンクの視線を受けながら、私は研ぎ終わった釣り針を持って構える。

持っている釣り針には、研いでいたの反対側に糸を通し、その糸の根元には腕に通された糸巻きに収束している。

そんな状態で、私は針を持った腕を大きく振りかぶった。

狙いは川の中を泳ぐ魚……その急所であるところ――!

 

シュッっと風を切るような音を立てて放たれた釣り針は、水中の魚めがけて突撃し、その急所を貫通する。

 

そしてすぐさま糸を手繰り寄せることで、魚が水中から飛び出してきた。

 

放物線を描いて宙を舞う魚は、そのまま重力に引かれながら落下し、自身が持っていた荷袋へと入っていく。

 

「……へ?」

 

何やら間抜けな声が聞こえたが、気にせず川の中へと釣り針を投擲していく。

1匹、2匹、3匹と、次々に魚が荷袋へと入っていった。

 

やがて30秒ほど経った頃には……。

 

――よし、大量だな。

 

「…………」

 

荷袋から飛び出しかけているほど魚が取れているのであった。

 

あまり獲りすぎないようにはしたが、意外にも獲れてしまって私自身も少々驚いている。

 

だが小川程度でこれなのだ。大河や海洋に出ればもっと獲れるだろう。

 

それを満足げに確認しつつ、私は陸に上げられた魚のようにパクパクと口を動かしているリンクへと向き直った。

 

――さて、このようにすれば魚を下手に動かさず、一瞬で締めることもできる。一瞬で締めることができれば、下手に動かれて肉が熱を持つのを防ぐことができるため、君もいずれは――

 

「無理無理無理無理無理無理無理無理! あんなの出来ないって!」

 

――……これができれば食材が美味くなるのだが……。

 

「うぐっ……と、とにかく! 今の私じゃ無理だからっ、少しずつ教えてもらえると嬉しいですっ!」

 

――……なら、今からでも……。

 

「き、今日はとりあえずお腹が空いたから……」

 

――……仕方ない。明日からだ。

 

「せ、せっかちだなぁこの人……」

 

……確かに急所を突くのは難しいが、投げて引き上げるくらいはできるだろうに……だが、契約主の意向だ。また明日にしよう。

今は食事の準備だ。

 

 

 

 

 

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太陽が赤く染まる時間になった頃、パチパチと燃える火を前にして、私は膝に置いたまな板で、釣れた魚――"ハイラルバス"を捌いていく。

"バス"と名が付くように、この魚はこのハイラルに来る前の世界にも存在したバスと同じような成長を遂げた種だろう。

 

前の世界でのバスは、スズキ目に分類される魚で、釣りをした際の引きの強さから「ゲームフィッシング」の対象とされている。

調理すれば普通に食用として食べられるので、ある国に輸入されたものの繁殖力の強さ、獰猛さ、悪食さから既存の生命体バランスを崩壊させる恐れがあるため、キャッチ(獲る)することは許可されていても、リリース(放す)することは禁止されている。

この世界でもバスは様々な地に存在するようだが、この生命の息吹が感じられる大地だ。そう簡単にバスに食い荒らされるような生命は存在しないだろう。

 

話がそれた。

今回調理する"ハイラルバス"はこの台地に生息しているためなのか、あまり泥水臭さなどは感じられない。

バスは嫌に生命力が高く、20センチ先は見えないほほど濁っている水の中でも貪欲に獲物に食らいつく。

そして悪食であるがゆえになんでも食らうため、その身にはかなりキツイ臭いがついてしまう。

 

しかし、このバスからはそんな悪臭はさほど感じられなかった。

おそらく、この川の源泉となるものが、雪解け水から成っているためであろう。

雪解け水が大地という自然の濾過装置で純水となり、大地に流れる川となる。

 

なるほど、ここまでのバスができるのに納得がいく環境だ。

 

……おっと、調理前だというのに思わず食欲が湧いてきてしまった。早く調理を終わらせよう。

 

まずは鱗を全部こそぎ取っていく。

初心者が初めて魚を裁くために、鱗をとろうとするにはそれ専用の道具を使ってもいいが、慣れてきたら包丁一本で済ませられれば洗いものも少なくて済む。

特に胸ビレと腹ビレの周りには鱗が残りやすいためちゃんととっておく。

おっと、このバスは鱗がかなり硬いようだ。これが一つでも混じっていたら、完璧な食事が崩壊してしまう。絶対に取り除かねば……。

 

鱗を取り除いた次は、腹を開いて内臓を取り出していく。

食材を調理する上で、内臓というのは落ちにくい臭みを出す怨敵だ。

調理して食えなくもないが、相当な苦みがあるため別個で調理した方が良い。今回は取り除いていく。

 

そして内臓を取り終えれば、次は三枚におろしていく。

私としてはそのまま食らいついてもいいのだが、今はリンクがいるため、下手に骨を残すと彼女には食べづらいものとなってしまう。

そのため、身だけを食べられるようにする"切り身"にするのだ。

 

こちらに関しては問題ない。

今まで何度も見ては体に染みつかせてきた技法で捌き、身に残った骨を丁寧に抜いていく。

 

……よし、処理は完璧だ。あとはリンクが無事に目的のものを持ってきてくれるといいのだが……。

 

「よっと……これでいいの料理人さん?」

 

――……あぁ、それでいい。よく育っている"ハイラル草"、それと"岩塩"だ。

 

考えているとちょうどよく戻ってきたリンクが脇にたくさんの植物――"ハイラル草"と"岩塩"を抱えていた。

リンクには事前にこれらを集めてきてほしいとサバイバルガイドを渡して周囲を捜索してもらっており、彼女は無事に集めてきてくれたようである。

 

そんな彼女が集めてきてくれた"ハイラル草"は、このハイラルではハーブ(香草)として料理に用いられている。

ハイラルの多くの土地に自生しており、入手はとても簡単だが、料理に使うと食欲をそそる香りを料理に纏わせる。

 

そして"岩塩"。

海底が地殻変動のため隆起するなどして海水が陸上に閉じ込められ、あるいは塩湖が水分蒸発により塩分が濃縮し、結晶化したもののことであり、陸地でも取れる貴重な塩分の塊だ。

塩というものは味を付けるだけでなく、水分を飛ばすことで保存性を高めたりできる古くから存在する調味料。

内陸ではそう簡単に手に入らないのだが、この台地にはまだ人の手が入っておらず、大量の岩塩が採掘できると踏んだ私はリンクに集めてもらったのである。

 

そんな今回の献立は"バスの香草塩焼き"。単純だが少しのミスで完璧からズレてしまう料理だ。

 

「バスの香草塩焼き……美味しそう……!」

 

――同感だ。しかしまだ完成していない。油断するんじゃないぞ。

 

「うん……」

 

そうして私はリンクの持ってきた"ハイラル草"をまな板で切っていく。

 

「あれ? 今から作るのって"香草塩焼き"なんだよね? どうやって焼くの?」

 

――いい質問だリンク。そうだ、普通なら香草の香りを付けながら焼くなどできないだろう。だが、今回するのは蒸し焼きのようなものだ。火に直接当てて焼く必要はない。

 

「???」

 

訳の分からないといった顔のリンクだったが、これは見てもらった方が分かりやすい。

 

私は荷袋から金属製の箱を取り出し、その側面にある取っ手を引っ張る。

現れたのはまるで引き出しのような箱だった。

それに気づいたのか目を輝かせるリンク。

 

「あ! この箱に入れれば香草の匂いを付けられて魚も焼くことができる!」

 

――そうだリンク。これは"燻製"を作るための道具。このような使い方もできるんだ。

 

そうして引き出しの中に香草を敷き、その上に塩を練りこんだ魚の切り身を置いて、枝で組んだ台に箱を吊り下げ、底の部分に火を当ててじっくりと焼いていく。

 

「これで出来上がるのは?」

 

――軽く見積もって1時間「え!?」……だが、ここは少し火力を上げていく。リンク、この大きな葉で風を扇いで薪を燃やしていくぞ。

 

「そ、それでどのくらいになるの……?」

 

――早ければ20分。遅ければ倍以上かかってしまう。だが、食事というものはこのような困難を乗り越えてこそ得る価値がある!

 

「……! そうだね……なら私も頑張らなきゃ!」

 

そうして2人で薪に火を送り続けていく。

 

やがて出来上がったものは……

 

「こ、これが……」

 

――あぁ……これがバスの香草塩焼きだ……!

 

食欲をそそる香りを漂わせた魚の塩焼きであった。

 

 

 

 

 

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「「いただきます」」

 

出来上がった食事を前にして、私達は食事への感謝をささげる。

 

今回の食事はバスの香草包み焼き単品。

本当ならここに握り飯や吸い物を用意するのがセオリーなのだが……あいにく、今回は使い切ってしまっている。

水を汲んで煮沸し、消毒した水と魚で吸い物を作っても良かったのだが、流石に時間が足りなかった。

 

なので、今回はこれだけで我慢する。明日はまた別の場所に行くのだ。

その際に馬宿にたどり着ければ行商人から食材を買うこともできてある程度は調理の時間も短縮できるだろう。

今度からは計画的に行かねば……。

 

おっと、せっかくの食事が冷めてしまう。早く食べなければ。

 

「はーむっ………………」

 

我慢できずに私より先に食べ始めたリンクは、一口かぶりついた状態で固まってしまう。

……毒は入れてないはずなんだがな。

 

再度バスの香草塩焼きを眺める。

ふっくらと焼きあがった身からは食欲をそそる肉の香りが立ち上り、香草の爽やかな香りが鼻を突き抜ける。

遠熱で焼き上げたからなのか焦げ目はなく、視覚でも嗅覚でも「これは確実に美味い!」と訴えてきた。

 

これは堪らず、私もリンクに続いて香草塩焼きにかぶりつく。

 

「お、美味しい! なにこれ!?」

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………美味い。

思わず食べる手が止まらない。

 

日中に食べた串焼きキノコと違って調味料がある分、とても美味いどころの話ではない。

川で育った魚はそこまで塩味があるわけではなく、あっさりとした味わいが多い。

それが強みではあるのだが、塩をかけることでどっしりとした味わいを持たせるとはなんと犯罪的。

しかし、これだけで食べるのは勿体ない気がしてしまう。

 

ホクホクとした身に、味に深みを持たせる岩塩、鼻を楽しませてくれる香草の香り。

まさに三位一体。これがこのような秘境で食べられるとは……やはり旅をしていてよかった、そう思う。

 

思わず二人で夢中になって食べ続ける。

ありきたりな食材でここまで美味しいものができる、この事実に震えそうになるが、だが私の求める美食はまだまだ先にある。これからも精進が必要だ。

 

こうして、出来上がった食事は30分と経たずに私達の胃袋に収まったのである。

 

 

 

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