私が望むとき、仮面ライダーは蘇る 作:妄想作家
藤丸のもとにカドック達が到着する前の話だ。
彼らは、アヴェンジャーの急襲によりイチローが敗北し、一文字も膝を付く結果となった。
そうして、多少は体力を回復し目が覚めたあとにアルトリア・キャスターと妖精王オベロンがカドックたちの前に現れる。いつものようにやや真面目なようで、やや斜に構えている喋り方のオベロンに一文字は内心辟易としつつ、カドックと彼女たちのやり取りを聞いていた。
「つまり、今の外の状況は藤丸と僕が昏睡状態になっていて所長がプチパニック。特異点の揺らぎが僕らの脳波から検出されてさらに大パニック。昏睡状態での脳波から、原因は夢の中と暫定的に判断して、夢の世界に潜り込めるカルデア側で選抜されたオベロンとキャスターが介入できた、と」
「あぁ、その通り! 本当は夢といえばってことでフォーリナーのアビゲイル・ウィリアムズたち夢にまつわる逸話を持つサーヴァントたち、それに加えて案の定モルガンがまたもやレイシフトの応用だ〜とかで、突撃しようとしたんだけども……」
「珍しく千里眼持ちのサーヴァントたちに加えて、その、ええと……あの、セイバーの私が止めたんです。どうやら彼女のスキル【輝ける路】が、モルガンを行かせるのは不味いと察知したみたいで……。本来なら橋を渡さなきゃいけないところを、モルガンの協力と有識者の力を借りてここに来れた、ってわけ」
なるほど、とカドックは頷く。サーヴァントのプロフィール、スキルについては資料としてまとめられており、カドックもある程度は頭に叩き込んでいる。
真名アルトリア・ペンドラゴンの持つスキル【直感】は、本来既に完成された身であるサーヴァントでありながらも、カルデアの魔力供給と再臨技術の復旧及び改修によりスキルが変化して【輝ける路】へとなった。
これにより既に未来予測とも例えられるほどの直感スキルがさらに強化され、自身の歩む路のみならず彼女"達"の歩むべきルートを悟るものになっている。
そういった経緯について知らないわけではないからこそ、仇敵であるアルトリアの忠言について、合理主義者としての思考を持つモルガンが無視をできなかった、と言う訳だ。
「ダ・ヴィンチや所長が、最終判断として2人なら切り抜ける、解決できる道があるとしたから、藤丸と僕の夢の中へと送り込んだというわけか」
「大きすぎる期待をどうもありがとうって感じだけどね」
「でも、実際オベロンがいなかったら不味くはあったのは確かだ」
カドックはそう言って、後ろでキャスターから治療を受けているイチローを見る。
「あっ、ちょっと! 動かないでください! A・Aならまだしも、自分で言うのはなんですが、こっちの私はあるていどはできても本職みたいにそれほど器用ではないのでジッとしててください。今やっているのもなんちゃっての霊基修復なんですから! 基
「……あぁ、治療に関しては助かっている。礼を言う。……助かっているんだが、ああいった経験は、正直二度とはしたくない」
傷が癒えていくのを感じながらイチローは先程までの光景を極力忘れようとした。
あのアヴェンジャーとの戦いでイチローが生き残った理由は簡単だ。
派手に死んだと思わせて、地味に隠れたのだ。
アヴェンジャーの文字通りの必殺のキックを受ける時、アルトリアの爆発を起こす魔術をベストタイミングで割り込ませ、爆風によりイチローを強制移動。オベロンの指揮で木の葉に擬態した昆虫とその幼虫の大群がイチローの体を覆い偽装して、表面上は枯れ葉の散った地面に見せかけた。
アヴェンジャーは、その時点で姿が見えなくなったイチローの追撃よりも今もまだ立ち続けている一文字への襲撃を優先してイチローから目を逸らすことに成功したというわけだ。
代償として、イチローの目が覚めたときの視覚と触覚が訴えるものは彼の記憶に消えない傷となったのだが……。
「命よりも大事なもんはないと思うけどなぁ」
「は、はは。あ、あの、他に方法がないとはいえ、あの……うぅ、ごめんなさい……」
若干罰の悪いアルトリアを見て、一文字はここで大事な疑問を二人にぶつける。彼がこれから戦いに赴く前に、定義づけておきたい大事なこと。
「……よくわからないが、二人がカルデアから送り込まれた切り札ってことでいいんだな……?」
彼にとって、二人はどういう立ち位置かつ、何を目的として今ここにいるかだ。
一文字にとって、戦場で気兼ねなく戦うためにはこういったハッキリ言葉にされてないが、雰囲気で察せることに対しても、引っ掛かりをなくしておくことは重要なことだ。
アルトリアはその点、はっきりと物申してくるタイプで好感がもてる。しかしオベロンは違った。
「悪いけど、切り札っていうほどのものじゃない。準備も布石も打てないし、ここを夢と定義した上で経路を逆流して、出口から迷い込むという無茶をしたのが僕たちだ。あまり無茶をすると、弾き出されて消えてしまうというのが現状さ」
その答えがはぐらかされてるように聞こえたこと、そして自分の疑問に答えたのが、オベロンだったことの2つで一文字はまた苛つきを隠せなかった。
「ライダー……落ち着いてくれ」
そんな彼を制したカドックは、藤丸の日頃の苦労を感じ取り無意識にため息をついた。
「オベロン、そしてキャスター。君たち以外のサーヴァントではだめだということと、無茶をすると消えるという今の話、それを纏めると、この世界ではサーヴァントという存在自体がまるで免疫のように排除されるってことか?」
「うーん、ちょっと違うかな? モルガンじゃないからそこまで詳しく読み取れないけど、この世界が何というか、ルールを持っている……何か共通点を持ってるというか……適正があれば誰でも入れるけど、その上での力の行使に変な制限がかかってるって感じ」
キャスターの言う適正と制限が何か。カドックの中では、これがこの世界における反撃への手掛かりのように思えた。
実際、サーヴァントとしてライダー二人はここに存在して、その力を発揮して戦えている。
つまり、彼らは適正もあり制限の掛からない何かを持っているということだ。
「ま、それが分かれば苦労しないけどね。分かったとしても直接戦闘はあんまり出来ないし僕のスタンスはあまり変わらないから」
「……内心マスターのことかなり心配してるくせに」
そうやって話してるうちに、イチローの治療が粗方終わり、全員行動ができる状態となる。
「それじゃあ暫定で悪いが、僕の方である程度指揮をさせてもらうけど……いいか?」
カドックの問いかけに対して、四人は頷く。
「当面の目標は、藤丸の救出だ」
「仮面ライダーの名前を背負っといて、野郎に惨敗状態だ。完璧に助け出してやる。そうすりゃ、ある程度はスッキリする」
「……あぁ、勿論だとも」
一文字がグローブに包まれた手を再度握り込む。対して、イチローは一度解いていたマフラーを再度蒔き直し身なりを整え戦意を滾らせた。
「とりあえずサポーターとして色々補助はできるから、後ろは任せて!」
「ま、あんまり期待しないでおくれ。僕は色々根回しした上での戦闘こそが本領発揮だから」
カルデア組の二人は、そう言ってカドックを見やる。
「あぁ、オベロン。だからこそ出番がある」
「ん? なにか考えがあるのかい?」
その目は、こちらを試すように、瞳の奥底で笑っている。オベロンとは短い付き合いだが、それでもこういう手合いがやりそうなことは、カドックもよくわかっているつもりだ。
「どうせ付けてるんだろ?」
カドックのその問いかけに対して、オベロンはニヤリと笑う。
「あぁ、よく気づいたね。君も、僕のことを少しはわかってきたようだ」
オベロンの指に一匹の蛾がとまる。それを全員の目線の高さまで上げて、中に放ると翅を広げ飛び立ち、どこから現れたか段々とその後ろに連なって蛾の群れが空を飛んでいった。
一文字はその光景を見て呆気に取られる。
「さぁ、ヒーローの時間だ。お姫様を助けに行こう」
小さくなり蛾に飛び乗ったオベロンに続き、アルトリアとカドックはライダー二人のバイクの後ろにまたがる。
まるで劇の語り部のように言うオベロンの声に続いて、ライダー二人は頷くようにアクセルを思いっきり捻り、バイクの唸らせた。
エンジンの轟きが森に響き渡り、街の方へと消えていく。
そうして、森の中からハイウェイにのり風を切り駆け抜ける。ハンドルを握るライダー達は、藤丸の場所へと導く虫の群れがある場所を指し示していることに気づく。
「一文字! この先は……!」
「あぁ! 奴らはあの場所にいる! 間違いない!」
ライダーたちの声をかろうじて聞こえたカドックは、行先に心当たりがある一文字へ声をかけた。
「ライダー! この先に何があるのか知っているのか!」
「あぁ、知っている。忘れられるわけがない」
ヘルメットのくぐもった声からもわかる何かを悔やむような声に何かを察したカドックは、それ以上何も聞かなかった。
そしてたどり着いた先は、とある工場地帯。
カドックにはここが何の工場かはわからないが、人間の背丈ほどもある口径のパイプ、見栄えではなく耐久性に重きを置いた構造物が敷地いっぱいに敷き詰められたこの場所に不思議と高揚感がわいてきていた。
「…………」
「一文字」
工場地帯のある一点を見ながら、彼は風に揺れるマフラーを締めなおす。
「すまない、先を急ごう」
一度バイクを停めていた一行は、再び駆ける。
「ちょっと止めて!」
アルトリアが叫ぶ。一文字とイチローはブレーキをかけてバイクを停めた。
一行が突然声を上げたアルトリアに注目すると、彼女は蛾の群れが飛んでいく方向のさらに先へと目を向けていた。
「ごめんなさい。あの、なんか今、マスターの魔力反応があったの」
「つまりこの先にいるのが間違いないってわけか」
「なるほど、それで何か問題があったのか?」
「えっと、それが、なんていうか。……この距離で感知できるはずがないのに、マスターの魔力が急に増大して反応が拾えたの。そしたら、まるで周波数を変えるみたいにしてその反応が変わったというか」
「反応が変わる? 増大ならまだしもそんな礼装や技術はないはずだ」
「ということは、何らかのイレギュラーが起きたってわけだ。それじゃ善は急げだ。早く向かおうか」
彼らはさらに工場地帯を走り抜け、とある建物にたどり着きバイクから降りるとイチローの様子が変わった。彼だけがバイクに跨ったまま或る一点を睨みつけている。
「一文字、悪いが先に行く」
「は? おいお前何言って!?」
「ルリ子……ッ!」
バイクに乗ったまま建物の中へと消えていくイチロー。一文字は、アルトリアの感じた違和感、この場所に残る因縁、イチローの残した言葉から連想される可能性を考える。
「……カドック後ろに乗れ! アルトリア、オベロン。悪いが先に行く!」
「えっ!? ちょっとバイクに勝てるわけないんですけど!?」
「あちゃー、なるほど。そういう縁ね」
「オベロン何わかったような顔してるの!? ってちょっとライダーもカドックもみんな行っちゃってるし、ってオベロンもいないし!」
うがー! と叫びながら追いかける。
そして時は戻る。
イチローは、ルリ子のプラーナを感じ取り、おおよその方向に向けてバイクを走らせていた。
彼の眼には今ほかのものは見えていない。妹を失ったこの場所で、再びその鼓動を感じ取ったのだ。
あの時、彼は妹に後を託して消えた。だが、そこまでの過程で彼は妹が死ぬ事象を認めてしまった。本郷の説得に重ねてルリ子の願いを聞き届けた彼は、二度と手に入るはずのなかった二度目のチャンスで妹を再び失うわけにはいかないのだ。
そして、戦闘音が聞こえた壁に向かって、彼はハンドルを握りしめ、勢いよく飛び込む。
破砕音が鳴り響き、視界が開けた先には、妹がいた。……否、妹のプラーナを宿したマスターだ。
そして取り囲むは見覚えがあるようでない仮面ライダー達。
イチローの感情は、その光景を目にして怒りへと振り切れる。どこの誰kは知らないが、自分の前で、二度と妹を悲しませるものかと。
マスターの目を見る。青い瞳。顔は違っても、その笑みから感じられるのは確かな思い出中の笑顔と同一だ。
一文字たちも追いついたことで、突然の乱入により一瞬の混乱状態だった敵もこちらに拳を構えてくる。
「兄さん、来てくれたのね」
「……あぁ」
一言だけ返すと、彼もバイクを降りた。
「来てくれると思ってた。最後に本郷猛を信じてくれた兄さんなら。仮面ライダーを名乗ってくれた兄さんなら、必ず」
「それが、兄というものだろ?」
「ふふ、そうかもね。よく知らないけど」
世間一般でいう兄弟関係とは遠い二人だが、それでも言葉を交わせただけでも闘志がみなぎる。
「やぁお嬢さん。元気そうだな?」
「一文字隼人、来てくれてありがとう。この娘の中から見ていたわ。来てくれてありがとう」
「その顔でしゃべられると頭がバグりそうだぜ。ま、こうして再会したんだ、ばっちり助け出してやるさ!」
一文字はそう言って、傍らに倒れこんでいるアヴェンジャーをみる。
お前も、助けるぜ。本郷。
一文字はそう決意を新たにして、殴りかかってきたショッカーライダーにカウンターパンチを食らわせる。
マスクに直撃した拳はその勢いのまま装甲を拉げさせて、吹き飛ばす。
イチローは相手の攻撃を受け流し、まるで同士討ちをさせるように、舞うように敵を倒していく。
カドックはアルトリアとオベロンに指示を出しながら、脱出経路について考えを巡らせる。一文字の後ろに乗りながら経路にマーキングをしてきたが、今の敵の数ではまずその道にたどり着くことが難しい。
ここにいる仲間たちが戦っている中で、カドックはふと何か虫の知らせを感じて、アヴェンジャーの方へ目を向けた。今の彼は、藤丸の体を借りたイチローの妹であるルリ子に抱き起されている。誰もが、彼は今意識を失っていると思っていたが、カドックの目はアヴェンジャーの複眼が怪しく、ほのかに光ったことを見逃さなかった。
書いては書き直してを繰り返していると元の構想から離れてしまって頭を抱える羽目になったり、むしろ前よりも納得行く言葉が見つかったり描写が生まれたり、投稿するまでに原稿データのファイル名が「初稿」とか「ver3」だとか「最終」とか「最終yyyymmdd」でデスクトップが面白いことになったりします。あるあるかな、あるあるだったらいいな。
感想ありがとうございます。私の言葉を受けて解釈を述べてくれたのを見てとても嬉しかったです。
また次回もお付き合いください。