私が望むとき、仮面ライダーは蘇る   作:妄想作家

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血:戦

 仮面ライダー第1号、第2号、第0号がついに揃い立つ。怪人との睨み合いの末、ついに彼らの反撃が始まった。

 

「薄汚いマスクを塗り直したところで何になる、そんな銀メッキ剥がしてやる!」

 

 蜘蛛男は威勢よく第1号に飛びかかり、その剛腕を振るうが、難なく受け止められ、鍔迫り合いの距離まで両者の空間が縮まる。

 

「お前が銀メッキと呼ぶこの輝きは、人々の自由と平和を守るために戦い続けた英雄の軌跡、紡がれた歴史の輝きそのものだ! それをメッキとしか見れないお前に、今の僕が負ける道理はないッ!」

 

 仮面と異形の額をお互いにぶつけて啖呵を切るも、先に攻勢に出たのは蜘蛛男。組み付いている腕を解き後ろに飛び退きながら、目潰し代わりに第1号へと糸を放つ。

 

「これが、仮面ライダー1号の力なのか」

 

 第1号が自身の性能に驚くのも無理はない。第1号のステータスは、彼本来の姿でありながらもう一人の英雄が彼の存在をブーストしたことにより、吐く糸が豆鉄砲のように見えるほど彼らの間には大きな能力の差が開いていた。

 同じ仮面ライダーを名乗った英雄たちも、同じように絶望し、戦うことを恐れていたことだってあるのを彼は知った。

 だが、それでも仮面ライダー達は、その足で立ち上がって、最後まで仲間達と戦ってきた。この世界の本郷猛があのダムで名乗った仮面ライダーという名前。たくさんの思いと願いを込められてきた歴史は、折れてしまった自分という存在には眩しすぎるが、現に今彼らの紡いだ思いがこの身に宿っている。その事実は間違いなく彼に残された最後の希望なのだ。

 

「仮面ライダーとしての復帰戦が蜘蛛だとは、これも運命か……!」

 

「何をボソボソと! 減らず口ばかり、そんな雑音ばかり鳴らす喉笛ごとその首へし折ってやる!」

 

 何度も蜘蛛男は糸を出すが、その全てを第1号は射線からわずかに体を動かすことで躱していく。そうして隙となった蜘蛛糸を掴み取りながら、蜘蛛糸を使い綱引きのように蜘蛛男と力比べをするも、勝負にもならずに蜘蛛男は引っ張られ第1号の方へ引き寄せられる。第1号は、ロデオが牛を避けるように半身を翻しながら引き寄せた蜘蛛男に蹴りを入れて背面の壁へと蹴り飛ばした。

 

 

 

 

「ァァあぁ……なぜだ、なぜ我らショッカーの怪人が貴様らなんかにぃ!」

 

「貴様らと同じにするな」

 

 蜘蛛男の惨状を見て悔しがる蜂女の言葉を、第0号は冷たく切り捨てる。

 

「そんな下品な改造を行い、世界を支配するなどと抜かすショッカーが、SHOCKERと同列に語られるのには虫酸が走る」

 

「蝶ごときが! 私に口答えするんじゃあないよ!」

 

 蜂女の振り回すサーベルを最小限の動きで躱す第0号に段々と苛立ちが募る。

 

 先程までは完全にこちらの有利な状況で戦場が廻っていた。なのに、たかがバッタ男が一人増えただけでなぜ逆転される? 

 

 蜂女にはわからない。ショッカーから与えられたこの素晴らしい身体は、何者も追い縋ることはできないと彼女は信じていたから。

 

「確かにSHOCKERも悪ではあったが、その根底には幸せを願う純粋さがあった。方向性を間違えたことは認める。しかし、貴様らのような加虐性から始まる独善と一緒にするな!」

 

 振るうほどに冷静さをかくサーベルの剣先を避け、第0号は蜂女の懐にするりと潜り込む。サーベルの握り手を抑えながら肘を鳩尾へと叩き込み蜂女は堪らず体をくの字に曲げ痛みに呻いた。

 

「ぐぇ……ッ! くそ……クソクソクソッ! 絶対に、絶対に許さない……!」

 

 第0号の一撃をもろに食らった蜂女は怒りで顔を歪めながら、サーベルを握り直し、痛みに耐えながら第0号を睨む。

 そして、彼女は駆け出そうとしたとき、その一歩目をなにかの一撃で崩されて身体が動かせなくなった。

 

「な、に……! これは……、一体!」

 

 危機的状況に冷静になった蜂女はそこでようやく気づいた。忌々しいマスター二人の姿が見えない。先程までは仮面ライダーたちの背後で生意気にもこちらに反抗の意志を見せていたあの面がどこにも見えない。

 

 そこまで思考が走ったところで、彼女の後ろから声が響く。

 

「思ったよりも怒りで周りが見えなくなったおかげで簡単に成功したな。残念だが、これでチェックメイトだ」

 

「私の友達と同じモチーフってだけで虫酸が走るのよ。だから、これ以上の反撃なんて許さない」

 

 そして、その一瞬をカドックとルリ子が見逃すわけがない。カドックの対獣魔術による気配消しによる不意打ちと、キャスターの降霊により性能が上がったガンドが組み合わさり、蜂女に致命の隙を作る。

 

「行くぞ」

 

 そして、完全に動きを止めた蜂女へと第0号の猛攻が始まる。

 

 掌底。薙ぎ払い。蹴撃。そして、彼の得意とする内部へ浸透する防御不可の貫通攻撃。

 

 蜂女の損傷した体内へ更にダメージを与え、彼女の持つ機能を物理的に停止させていく。

 そして薄れゆく意識の中で、蜂女は僅かに残った意識でふと気づく。視界の隅に残った割れたショッカーライダーの仮面。なんで、私は……自身を蜂女だと思っていたんだろう? と。

 彼女の視界が程なくして光を失ったのは、迫る第0号の掌底で塞がれただけではないことが、何者かであった「彼」の最後の思考だった。

 

 

 

 

「さっきはっ、よくもっ! やってくれたなぁ!」

 

 一方、第2号の方は積極的に蠍男へと殴りかかりにいった。

 

 ヘルメットのダメージは魔力供給による修復でもまだヒビが入っており、そのヒビの数だけ第2号の怒りもまだまだ残っている。

 

 しかし、蠍男も黙ってはいない。第2号のラッシュに対してガードしつつも隙を見てはその手の鋏を振るう。

 

「残念。それは防がせてもらうよ」

 

 しかし、オベロンが虚空から呼び出す槍に鋏が止められ、第2号の拳が再び蠍男の顔面に叩き込まれる。

 

「いいアシストだ、オベロン。お前意外と働くじゃねえか」

 

「本当なら極力前に出たくないんだけどね。……蜂女を見て気が変わった。ちょっと僕にも、思うところができたんだよ」

 

 

 今までカルデア側は数の暴力に苦戦を強いられていたが、今は違う。彼らには、仮面ライダー達には背中を預けられる仲間がいるのだ。

 

「よくも散々ボコボコにやってくれたな! 倍返しにしてやるから覚悟しろ!」

 

 アルトリア・キャスターが杖を地面に突き立てると青い波動が走り、蠍男の足を止める。これがサーヴァント戦なら少しはダメージが入るところだが、足を止めるだけでしかなかったため、蠍男は狙いを変えることにした。

 

「見た目の割に、たかが足止めか小娘。お前から血祭りにあげてやる!」

 

「ばーか! 普段ならノーダメで悔しいって思ったかもしれないけど、今は足止めだけでいいんだよっ」

 

 蠍男が駆け出すも、彼女はそれでも笑みを浮かべ、煽る。

 

 蠍男は浅慮な選択をした。アルトリアの放った波動は目線を逸らすためのものだ。派手な攻撃で注意を引くのが狙いだったのだ。

 第2号が隙を見てタイフーンの風車をフル回転させてプラーナを圧縮し、渾身の一撃を放つ準備を始めていたことに気付かなかったのだ。

 

「俺から目を外したのが命取りだったな」

 

 突然視界に飛び込んできた第2号に蠍男は目を見開くことしかできない。蠍男は、朱い拳を正面から喰らいそのままの勢いで吹き飛んでいく。

 

 

 

 

「蠍……! それに蜂も……」

 

「あぅ……私は……、俺は、一体……頭が割れそう……」

 

「蜘蛛男、このダメージは、まずい……」

 

 

 蜘蛛男達は仮面ライダーから受けた損傷を冷静に分析すると、撤退することを決めた。ショッカーの怪人としての誇りからすれば、敵である仮面ライダー達に背を向けるなどあり得ない話だ。しかし、彼らの中の誇りよりも自己保存を優先するよう思考回路が切り替わり、ついに仮面ライダー達に向けて背を向けるという意思決定を下す。

 蜘蛛男が言葉を発するよりも先に、第1号の言葉のほうが早かった。

 

「蜘蛛男、蜂女、そして蠍男! ここで、決着をつける!」

 

 第1号を中心に並んだ仮面ライダー達は再び構えを取りプラーナを圧縮させ、力を溜める。

 

「黙れ! 所詮は被捕食者でしかない貴様ら飛蝗や蝶なんかに押されているなど、認めたくはない……認めたくはないが、現状は形勢逆転、クソっ! 二人共立てッ! 一旦ここは立て直す!」

 

 ショッカーの怪人たちは、迅速に逃げの一手を打つ。

 

 その剛腕を以て壁を壊した蜘蛛男は、即座に瓦礫をクモ糸で絡め取り、仮面ライダーたちへと投げた。

 

 蜘蛛男の狙い通りにクモの巣状に広がり繋がる瓦礫を避けることは、仮面ライダー達の性能であれば容易いが、彼らの後ろにはマスターがいる。よって瓦礫を受け止める壁となるため、仮面ライダー達は足を止め、瓦礫からマスターを守るために行動した。

 

 第1号は藤丸を、第2号がカドック。そして第0号がアルトリアを抱えてその場から飛び退くことで瓦礫の巣から逃げおおせることができた。

 

 瓦礫の隙間を小さくなることで一人だけ先んじて退避していたオベロンが彼らの元に近寄る。

 

「あいつら、壁の穴から工場側に逃げたみたい」

 

 オベロンは瓦礫の隙間から抜け出たときに彼らに向けて蟲を一匹差し向けていた。

 

「オベロンのつけた蟲の反応からするも……今ならまだ遠くない」

 

「行けよ、ライダー。マスターには僕たちが付く。すぐに追いかけるさ」

 

 アルトリアとオベロンが彼らの背中を押す。

 

「オベロンの言う通りだ。今ここで決着を付けないとまたあいつらが来るかもしれない」

 

 カドックがオベロンに続く。彼の目はまっすぐ仮面ライダーを、第2号を見据えている。

 

「ここで決めてスッキリして戻ってこい、一文字」

 

 カドックの言葉は、一文字の心を奮わせ、背中を押す。

 

「きっと彼らは、ショッカーの怪人ではあるけど、その実彼らの被害者でもある。だから、ここで眠らせてあげて。それが同じSHOCKERによって作られた仮面ライダーであるあなた達にできる手向けよ」

 

「あぁ、わかっている」

 

「大丈夫、僕はもう迷わない」

 

 仮面ライダー達は、それぞれの相棒に跨りエンジンを蒸す。タイヤが床を削り白煙が漂い、エンジンの嘶きが轟く。

 蜘蛛男たちが逃げ出した壁の穴を、バイクとともにくぐり抜けた彼らの背中はすぐに見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 資材コンテナが並ぶ港で彼らは傷ついた体を引きずりながら走り逃げる。

 

 なぜだ、どうして俺たちは逃げている。

 

 ショッカーの怪人は、あんな奴らに負けるなんてありえない。

 

 俺はショッカーライダーとして…………。

 

 ショッカーの怪人として……………………。

 

 俺は何だ? 

 

 

 怪人の脳裏に浮かぶのは、ショッカーライダーとしての記憶。いや、ショッカーの怪人の記憶だ。

 あのとき俺は真っ黒な第1号に喉笛を食いちぎられた。

 

 いや、仮面ライダーに会ったのは初めてのはずだ。違う、仮面ライダーに歴史上初めて敗北したショッカーの汚点蜘蛛男だ。

 

 違う違う違う!!!!! ちがう! オレは俺だ! 

 

 

「頭が割れる……! なぜだ、なんだこの記憶は! 違う記憶ではない。これは記録か? 俺はどこから来た……! なんでこんなとこに……!」

 

 横を見れば蠍も頭を抑えて歩みが止まっている。おかしい。何かがおかしい。

 こんな記憶、知らないはずなのに。なぜ知っている? 俺はなんで……。

 

 

 その時、エンジンの唸り声ともにブレーキ音が響く。

 

「仮面、らいだぁ……!」

 

「ここまでだ、蜘蛛男」

 

「終わらない……俺たちはまだ……!」

 

 蜘蛛男はもはやこれ以上逃げる場所はないと悟り、蜂と蠍に戦うように促す。二人も頭を抑えて立っているのがやっとのようだが、それでも戦うしか彼らに残された道はない。

 

 精彩を欠いた彼らの攻撃は、仮面ライダーに当たることはなかった。むしろカウンターを許してしまっている。

 

「こんな! こんなことが……!」

 

「私をこんな目に合わせて許さない……許さない……でもこれは私なの? 僕はそんなこと……あぁ、なんだこの記録は!」

 

 これ以上は見ていられないと、仮面ライダー達はお互いに頷き、彼らの攻撃を受け流しながら一箇所にまとめて投げる。

 

「一文字、イチローさん!」

 

「……あぁ、なんかスッキリしねえが。ここで引導を渡してやるのがあいつらのためな気がするぜ」

 

「こちらは準備万端だ」

 

 ダメージが抜けきらずにふらつく怪人たちを見据えて、仮面ライダーが跳ぶ。跳ぶ。跳ぶ。

 

 蜘蛛男はその目で彼らの影を追うが、太陽の逆光で最後まで追うことはできなかった。

 

 そして、気づけば、彼の体を衝撃が襲った。

 

 傍らの二人はもはや手の届かない距離で倒れている。蜂女は思考回路が壊れたのか妄言を吐きながら体のの端から泡へと変わっている。蠍男は……どうやらもういないようだ。

 

 そうして、蜘蛛男は自身の思考領域で叫び続けている自己保存の自己暗示命令よりも重要なタスクを考えることにした。

 

 

「仮面ライダー……憎き……憎き仮面ライダー! なんなんだ、お前たちは! いや、この感情は何だ……。俺は、俺は……!」

 

 口と頭はもはや別の生き物。蜘蛛男にとっては何が真実で何が記録がわからない。

 

 ここでようやくマスターたちが追いついた。彼らは息を整える間もなく、異常な蜘蛛男の様子に驚きを隠せなかった。

 

「おい、様子がおかしいぞ。どうなってる?」

 

 カドックは、蜘蛛男を見て、何か得体のしれない恐怖を感じていた。

 

「まるで洗脳が解けたときの錯乱状態……、いや洗脳じゃない、封じていたのが解けたか」

 

 ただならぬ様子の怪人の様子に第2号と第0号は思わず顔をしかめる。

 

 しかし、その二人とは対照的に、第1号は歩みを進めた。

 

「この世界にあるものは全てに何かの仮面が被せられている。彼らショッカーライダーは、黒幕が聖杯を利用してショッカーライダーという仮面を幻霊に被せたことで生まれたハリボテだ」

 

 プラーナを放出し仮面を外した本郷が蜘蛛男へと向ける視線に映るのは、なんだろうか? 一文字も同じく仮面を外しながら蜘蛛男に目を向けた。

 

「そして、怪人の画面を上書きして、破壊衝動で自我を騙して使い捨てる……シンプルだが合理的だ」

 

「じゃあその仮面っつーのは何なんだ。こんなのは洗脳とかそんな類のもんじゃないことぐらい俺にだってわかる。これはもっと悍ましい」

 

「あぁ、洗脳なんかじゃない。ましてや改造でもない。これは……」

 

 一文字の疑問に本郷が答えようとしたとき、別の声が響いた。

 

 

「そう、これは洗脳なんかじゃない。自我の塗り潰しだよ」

 

「ッ! お前は……ッ」

 

 蜘蛛男の背後からいつの間にか姿を表した人物。

 

 

「仮面ライダーの失敗から学んだ結果、我々ショッカーは自我を塗りつぶすことにしたのよ」

 

「出たわね偽物、人の顔借りパクしといて、早く返しなさい」

 

「嫌、この身体の性能は気に入ってるの。だからまだ、使わせてもらうわよ。ルリ子さん?」

 

 蜘蛛男の脳天から指を突き入れ、脳回路を物理的に破壊したもうひとりのルリ子は、瞳を黄色に輝かせながら、一同に微笑んだ。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。個人的にかなり難産な部分になりましたが、次話もまたお付き合いください。

感想・評価とても励みになりました。本当にありがとうございます。
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