私が望むとき、仮面ライダーは蘇る   作:妄想作家

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単純な物書きなもので、赤ゲージついたら嬉しくて構想が普段よりどんどん溢れてきています

感想と評価ありがとうございます




 仮面ライダー第2号の駆るサイクロン号、まさに台風の名を冠するに相応しいスピードに体が置いてけぼりにされそうな感覚に陥る。

 

 だが、風を切るサイクロン号の後方からは、甲高いエンジン音を轟かせて黒い影が追い縋ってくる。

 

 一台に二人で乗り、後部席のバッタオーグがその手に武器を握っている。

 

「ライダー! 後ろから来てる!」

 

「あぁ、分かっている!」

 

 最初は距離を離していたが、段々と追いついてきている。

 

 

 もう一度バッタオーグの方を振り返り見た立香の目に映ったのは、彼らと同じように黒く輝く無骨なライフルであった。

 

「ライダー!」

 

 叫ぶよりも早くトリガーが引かれる方が早かった。しかし、放たれた弾丸は彼女たちの体を貫くには至らず、アスファルトに弾痕を残すだけだった。体が慣性に引っ張られて危うくライダーから腕を放してしまいそうになる。

 

「お嬢ちゃん、今から君には無茶をさせることになる。先に謝っておくぞ!」

 

「えっ!? どういうこと何する気!」

 

「さぁ、風になるぞ……!」

 

 ライダーがアクセルを思いっきり回すのが見えた。これからさらにもう1段階速度が上がると予想してさらに体をライダーに寄せるが、それはライダーが体を起こすことでキャンセル。

 

 不意を突かれた立香は顔をライダーの背中から顔を上げる。

 

 その時、彼女の視界の隅で大きく広がるものが見えた。

 

 それは、サイクロン号のマフラーだった。

 まるでジェットエンジンのように炎と煙を吹き出していたマフラーがまるで生き物のように基部から可動して下を向いたのだ。

 

「流石にこれは初めてなんですけどぉ!」

 

 ライダーの若干楽しそうな声に私は今このときに何を笑ってるんだとなってしまうが、いくつもの世界を渡り歩いてきた彼女の感性は即座に楽を見出す方向にシフトしてしまう柔軟性を持ってしまっていた。

 どちらかといえば、危機的状況によるアドレナリン分泌かもしれないが、そんなことを考える暇などなくバイクは地を離れ、その前輪は高く空へ振り上げられた状態で風を切っている。

 

 下からは相変わらず銃声が聞こえているが、やはりそれは空を切るばかりで掠りもしない。

 

「衝撃に備えろ! 乗り上げるぞ!」

 

「乗り上げるって何!? あぁもうどうにでもなれ!」

 

 そして乗り上げた先は、道路を跨ぐように建造された橋、そこに敷設されたレールの上であった。

 

「わばばばばばば」

 

 当然、そこは電車のレールでしかなく、そこはバイクが走るために舗装はされていない。

 立香の口からはもはや言葉にもならない叫びと壊れたおもちゃのような記号が発せられ、舌を噛まないように幸運を祈り耐えることしかできることはなかった。

 

 そして、もう一度サイクロン号の大跳躍。線路から飛び降りた先はまた大通り。しかし、後ろから追いつくものはもはや誰もいない。

 

 線路上に踊り出たあたりから後ろを見ることはなかったが、これは振り切れたと見ていいのだろうか。

 

「これ以上追っても今は意味がないとでも判断したんだろう」

 

 大通りの真ん中でバイクを停めるという、ドラマや映画でしかない体験に密かに心躍らせている中、ライダーはそんな風に自身の経験に基づく推測を述べた。

 

「お嬢ちゃんだけなら適当に人海戦術でどうにかなる。が、俺という矛があるなら肝心の人員を減らされる。今しばらくは時間を稼げる。誰かしらリーダー級のオーグが出るか、それよりも多い戦力を引っ張ってくるか」

 

「とりあえず今は一休みできるってことだね」

 

「あぁ、そういうことだ」

 

 ライダーはそう言って、立香がバイクから降りるのを見計らって自身もバイクからその身を降ろす。

 

 黒いコートが翻り改めてその体が顕になり、改めて彼の全身を観察する。

 

 

「どうした? 俺のことが気になるか?」

 

「うん、気になるよ。だって、私のサーヴァントなんだから」

 

「そうだな……、そしたら少しお勉強と行くか」

 

 彼はベルトのレバーを下ろすと体から粒子が吹き出され、先程まで感じられた存在感がどんどんと身近なものに変わっていった。

 

 少し歩きながら話そう。とは、彼の提案だった。

 

 彼のバイクも少し輪郭が小さくなり、二人の後ろをついてくる。

 

「俺は、厳密に言えば奴らと同じバッタオーグ、SHOCKERによって産み出された改造人間だ」

 

「なんというか流れで納得したふりしてたけど、改造人間とかオーグってどういうことなの?」

 

「ようは、人間を弄り回すのさ。俺は元々のお手本になるやつが居てな。先代バッタオーグとでも言うべきか、まぁ、そいつを参考にグレードアップしたのがこの一文字隼人こと仮面ライダー第2号ってわけだ」

 

「人を弄り回すって、そんなこと……」

 

 どうして? なぜ? が尽きない。

 

 デミ・サーヴァントという実例が自身の大切な後輩にいることから、余計に彼女の中では疑問符が消えなかった。

 

 あの娘は、そうあれかしと造られた命だった。

 

 しかし、話を聞けば、彼らオーグというものは人の在り方どころかカタチを変えてしまうものだ。

 

「お嬢ちゃん、SHOCKERってのはな、わかりやすく悪だ」

 

 断定的に言う口調に、立香は思わず俯いていた顔を上げた。

 

「自身の考えうる最大幸福のために好き勝手するような超個人主義な連中、それが奴らさ」

 

 さらっと彼は言ってしまうが、言葉の節々から、抑揚からそんなにあっさり言えるような雰囲気じゃないことが伺えた。

 

 幸福のためなら何をしてもいいと言ってしまうような恐ろしさに背筋が冷えるが、私の中にはもう一つ疑問があった。

 

 

「2号ってことはさ」

 

 

「ん?」

 

 

「仮面ライダーは二人いるの?」

 

 

 先代、グレードアップ、第2号。

 

 どれも先駆者がいるからこそのワードだ。

 

 つまり、彼には仲間、あるいはそれに近い存在がいたのではないかと立香は推測した。

 

 そして、彼かの返答は、返ってこなかった。

 

「3人だ」

 

 

 抑揚のない、感情の起伏の薄い声音。まるで全てがどうでもいいと断じてしまうかのようにも思える雰囲気を纏わせ、そこに第三者が割り込んだ。

 

 そして、ライダーの顔が険しくなる。

 

 声の聞こえる方向に目をやると、そこにいたのは、

 

 

「訂正しよう。今はもう2人だな。仮面ライダー第2号、一文字隼人」

 

「……一応敵ではないみたいだから、その殺気を収めてくれると、その……助かるのだが」

 

 

 知らないおじさんと、知ってるカドックがいた。

 

 

 

 

「久しいな一文字隼人。そうやって女を連れて歩いていると本郷を思い出す」

 

「口を開くな。お前とよろしくするつもりはない」

 

「それもそうだな。至極当然のことだ。だが、お前に引き寄せられて召喚されたのも事実だ。お前にそのつもりはなくとも、体裁だけは取り繕うのが彼ら二人のためじゃないか?」

 

「今度はその顔を真っ二つかち割るか……」

 

「お前にされなくとも、変身すれば割れるさ」

 

 

 

 すごーく、相性が良くない。とは立香の評だ。

 

「おい、あの二人何とかできないのか?」

 

 あっ、今小さくクソって言った。

 

「……藤丸、流石に頼みの綱の戦力がこれだと不安でしかないんだが」

 

「うーん、そうだねぇ」

 

 立香の返答にカドックは頭を抱える。

 

「仲裁は、しないほうがいいと思うな、私は」

 

 頭を抱えたカドックを、さらに負のスパイラルへ叩き込む立香言葉に、彼も今回は反論してしまった。

 

 

「肝心なときに分断したままだと危険じゃないか? 協力するべき場面で取れる手が限られるんだから、それこそ生き残るための手札を自ら捨てていくようなものだぞ」

 

「別に仲良くしなくていいって言ってるわけじゃないよ。ただ、私はあの二人はそこまでして歩み寄ろうとしないわからず屋じゃないと思ってるだけ」

 

 その根拠は? と問う。納得できるかと言われたら、今の話は推測でしかないし、それでこの街から生還できなくなるのは御免だとカドックは思っているからだ。

 

 だが、彼女はまたもカドックのそんな考えを晴らすかのような笑顔で何でもないように言った。

 

 

「だって、赤いマフラー、ヒーローの色。彼らは仮面ライダーなんだから」

 

 まぁ、片方は白だけどバイク乗りの証だし! と言いあははと笑う彼女を視界から外した。

 

「はぁぁぁぁ……」

 

 

 せっかく敵はいなくても、精神的な負担はあまりなくならなそうだ。

 

 カドックは、後ろで聞こえる言い争いを無視して空を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

「おい」

 

 イチローが急に立ち止まる。

 

「あのマスター、はなんだ」

 

 イチローの問いかけに一文字は苛つきを隠そうともせずに振り返る。

 

「今度はお嬢ちゃんにケチつける気かお前。足手まといになるならさっさと帰りな。せいせいする」

 

 

「違うそうじゃない。あいつはなぜ」

 

 

 

 

 

 

 このマフラーが、バイク乗りの証だと知っている。

 

 

 

 

 

 

 一文字の頭を駆け抜けたのは、彼女の面影。

 

『私は、常に用意周到なの』

 

 

『魂の自由を、取り戻して』

 

 

 

『あなたも、ライダーになって彼を助けて』

 

 最期に託された、彼女の願い。

 

 

 

 

「お嬢さん……?」

 

 

 

 

 

 彼ら二人の視線は、先を歩く少女に向けられていた。




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