私が望むとき、仮面ライダーは蘇る   作:妄想作家

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 カーテンの隙間から差し込む光は、藤丸に覚醒を促す。

 

 少し不思議な気分だ。ソファーに寝転がって、今こうして起きなきゃと身を起こす行動が、もはや彼女にとって叶わぬ日常の一コマだったからだ。

 

「朝か……」

 

 起きぬけの第一声は、乙女としては人に聞かせたくないガラガラ声。若干乾燥していたのか、寝ている間に喉が乾いて引っ付いてるような引きつった感覚がある。

 

 昨夜の記憶を思い返すと、ソファーで眠ったあと、そのまま本当にぐっすりと眠ってしまって朝を迎えてしまったようだ。何も食べてないからお腹も空いている。このままだとお腹の虫も存在感をアピールし始めそうだ。

 何か食べようと思って立ち上がったときに、ようやく自然と手で折り畳んでいたものに意識が向いた。

 それは白いコートだ。汚れはなき、穢れを知らないよう白。

 

「イチローさんかな。あの人も、やっぱり優しい人だ」

 

 人を思って行動できる人は、その芯に優しさが宿っている。

 

 藤丸立香が旅の中で学んできたことの一つだ。

 

 どんな英雄にだって狂暴性、残虐性は存在している。しかし、ちゃんと見つめれば、その中にだって優しさはあった。目に付きやすいものだけを見るのではなく、その人の中にあるものすべてを見ること。

 

 彼女のこの精神性は、英雄たちから見ればきっと、儚くて弱くてされど強く折れない眩しい光だ。

 

 だからこそ、彼女は彼女の中の一面を見ることはできなかった。

 

 もしかしたら一人、いや三人かもしれない。カルデアの仲間では気づいているかも知らなかった側面を、彼女は目を向けられない。

 

 前に進むことしか彼女は知らない。

 

 立ち止まれることはあっても、彼女に逃げることは許されなかったのだから。

 

 

「そうだな、言葉にするならそう、反吐が出るね」

 

 

 誰かの呟きが、誰にも聞かれずに、風に流れた。

 

 

 

 

 

 

 

「藤丸!」

 

「マスターッ!」

 

 一文字とイチロー、そしてカドックはセーフハウス近くの森林地帯にいた。

 

 ここにいないもう一人のマスター、藤丸の捜索だ。

 

 彼女をソファーで休ませたあと、一文字とイチローに一悶着があった。その時までは確かにいたはずだった。

 

 しかし、カドックが部屋に入り目を離したときに彼女の姿はなく、代わりに窓ガラスの割れる音が響いた。そして、一文字にとってはあまり聞きたくなかった声が聞こえた。

 

「できればザクッと行きたいところだが、今回はオレたちのボスの命令が一番だ。それが終われば相手してやるから首を洗って待ってろ、裏切り野郎どもぉ!」

 

 セーフハウスの偽装部分である生活スペースには、ガラス張りの引き戸がある。下手人はセーフハウスへ侵入して目的を達成、そのあとは迅速な脱出のために窓ガラスを破りショートカットした上で逃走を図ったのだ。

 

 一文字とが真っ先に飛び出し、イチローも続いて外へと駆ける。カドックも遅れて外へ出る。通常、サーヴァントの身体能力に一般の魔術師が追いつくのは至難の業ではあるが、現在変身を解いている二人の脚力なら、カドックの身体強化でも追いつけたのは、カドックにとって嬉しい誤算ではあった。

 

「おい、何なんだあいつは!」

 

「やつの名はK.K.オーグ。俺がSHOCKERにいた頃に開発された人、カマキリ、カメレオンの三種が合成された初のオーグだ」

 

「記憶が正しけりゃあいつは透明マントで姿を消して、死角からナイフで急所を狙ってくる! タイマンなら負けることはないが、逃げに徹されたら面倒だ!」

 

「油断したな。バッタオーグがいて、K.K.オーグがいるということは他のオーグたちもいると見るべきだ。想像の更に上の地獄かもしれないなここは」

 

 人間離れした五感を駆使していても、彼女の姿は見つからない。

 木々の間に紛れ込んだものを探すのは街なかを探すのとはわけが違う。まして、相手は透明なのだ。彼らの改造された五感を持ってしても、不利な状況は変わることはない。

 

 そう、彼らだけならば。

 

「奴の足取りを辿るには、あまりに手がかりが少ない。どうする、どうする!」

 

 カドックは必死に考えを巡らせていた。

 

 この世界に迷い込んでから、カルデアからの援護は期待できない。今の自分の手札で勝負をするしかない現実に、彼はひとり立ち向かうしかないのだ。

 

 カドックは考える。K.K.オーグは透明で目に見えない。後を追おうにも、カドックたちには追うための手がかりがない。ライダーたちの運動能力、バイクという機動力の圧倒的なアドバンテージを活かそうにも肝心の行方が分からなければ話にならない。

 

「くそっ……どうすればいいんだ……」

 

 藤丸がいなくなる、つまりはその命が失われたとき。それは世界の詰みを意味する。

 

 カドック一人では生き残っても意味がない。彼女が生きていなければ。

 

 そのとき、彼の脳裏にある言葉が思い浮かんだ。

 

 

 

 

『Elementary, my dear』

 

 世界で最も有名な探偵の名言、それはシャーロック・ホームズの言葉だ。

 ひと目見たときに万人が謎と形容する事象を、名探偵は一つ一つ事実を解きほぐしていき、真実を探し出す。

 

 そして、傍らの至上の友人に答えるのだ。

「初歩的なことだ、友よ」と。

 

 カドックは一度シャーロック・ホームズと短い間だが旅をした。彼にとってそれは忘れがたい記録だ。

 彼の初めての旅でもあり、最後の別れでもあった。だからこそ、それは彼の心に深く楔を残していたのもまた必然。あの出来事の後の彼は、少しの間雰囲気が重かった。

 

「カドック、物事を難しく捉えすぎるところあるよね」

 

 藤丸とのシミュレータでの訓練終わりに、唐突にそんなことを言われた。

 

『なんだ、反省会でのお返しか? ……まさか、お説教でも始める気じゃないよな?』

 

「あぁ、ちがうちがう。そうじゃないよ。ただ、もったいないと思ったんだ。これでも、敵として相対したときのカドックのことはちゃんと記憶しているし、カドックが何を考えて必死に走れたのかは、他ならないカドックから教えてもらったしね。その上でもったいないと思った。君が卑下していたそれ、私から見たらそれは君の長所なんだよ」

 

『……僕はただ、できることをやるしかなかっただけだ。あのときも、そして今でも追いつくためにはそうするしか』

 

「あぁ、その通り。カドックもよく理解していると思う。実を言うと私もね、その気持ちはわかるんだ。なんせ私は補欠だからね。正直、私が生き残ったから私じゃなきゃなくなっただけで、いなくても良かったとも思うことはあった」

 

 それは、カドックのとってはハンマーで殴られたような衝撃だ。自分よりも優れていると思ってしまうような彼女の口から出る聞き覚えのある言葉。それは自身が心に秘めていた言葉と似ていたから。

 

「ただね、私の隣にはいつもマシュがいた。世界とかはどうでも良くて、結局のところマシュがずっと隣で私を先輩って呼んでくれたから、それで腐らずに今まで走れたと思う。だからね、思うんだ。それはきっと、君のそばにいた……いや、きっと今も見守ってくれている人もそう思っているだろうって」

 

『……』

 

「ピンチをチャンスに! 昔教えてもらった言葉なんだけど、これって私達にぴったりだと思うんだ。ようは思考を逆転させる。短所は長所に、窮地は好機に!」

 

 カドックは目を伏せた。分かり切っていたことを、目の前の少女から言われるのが、なんとなく悔しかったのだ。この一歩を踏み出せなかったその差を見せつけられてるようで。

 

「どうして、お前はそんなふうに走れるんだ……原動力はわかっても、そこからどうやって走り続けられるのか、僕には理解しきれない」

 

 おもわずそんな言葉が口をついて出てしまった。後悔した。彼女の気になる? 気になる? というキラキラした目が正直ウザかった。これは未だに自分の中で消化しきれなかった残り滓の本音だった。藤丸にだけは言いたくなかったし、知られたくなかった本音だ。

 そして、彼女は真面目な顔になり口を開く。

 

「君がホームズと最後に旅をしたから。きっと君はあの旅のことを好きだと思う。最初で最後の彼の旅にいたのは私じゃなくてカドック。正直私はまだあの光景が焼き付いて消えないよ」

 

「ホームズが最後に笑顔でいた。あれはきっとカドックといたからできた笑顔でもある。だから、カドックがあの旅のことでなんとなく後ろ向きになってるのがちょっと"許せなかった"」

 

「君はあのシャーロック・ホームズと旅をしたんだ。だから、カドックにはそういった思い出を大事にしてほしいの」

 

「君はもうカルデアの二人目のマスターなんだからさ。ほら! もっと胸張ってよ。それにさ、私が柄にもなくこういうこと言うのは、実は簡単なことなんだ」

 

 

 初歩的なことなんだよ、先輩。

 

 彼女の笑顔に、冬の国で見た彼女の笑顔が重なって見えた。

 そう思うと、なんだか肩が軽くなった気がした。

 

 

 

「あぁ、そうだな。そうだったな、後輩」

 

 カドックが立ち止まり一人呟いたことに気づいた一文字が振り返る。

 

「なんだ? 何かわかったのか!?」

 

 少し先を走っていたイチローもこちらへ駆け寄ってきた。

 

「策があるのか」

 

 カドックは笑う。ここに来て、初めて笑ったかもしれないな、と彼は思った。

 

「あぁ、一つだけある」

 

 それは、と続けた彼の言葉に二人は感心する。

 

 簡単なことだが、だからこそ二人には思いつかなかった方法だった。

 

 そして、気になって尋ねるのだ。

 

 

 どうやって思いついたんだ? と。

 

 

 答えは決まっている。

 

「世界一の名探偵とお節介な後輩のおかげだ。初歩的なことさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一つだけ忠告をしてやる。見誤るなよ」

 

 K.K.オーグである彼は、ボスからの言葉に自信満々に答えた。

 

「当然ですよぉ、今更俺のことを見抜けるやつなんかいるわけないんですからぁ……」

 

 端的に言えば、彼は奢っていた。

 自然界でもひときわ優れた隠密性能と捕食者としての攻撃性能を持つカメレオンとカマキリの要素を取り込んだ彼は、はっきり言えば並のオーグとは一線を画す画期的な発明だった。

 

 完全に背景と一体化するマントを羽織り、カマキリのような静かな動きでセーフハウスに忍び込むのは、あまりにも簡単すぎて、実はこれは指令を装った性能試験なのではないかと疑ったほどだ。

 

 見知らぬオーグたちに、ガリ勉みたいな白髪頭。そして、ターゲットである小娘。

 

 皆が皆、俺に気づいてない。このK.K.オーグの鎌がその喉笛を引き裂く瞬間まで気づかないだろう。だが、これは指令だ。小娘を組織のもとに連れてくることが重要事項だ。期限は今日中だから、今から組織に赴けば昼には終わる。

 

 あぁ、完璧だ。やはり俺は優秀だ。こんなに迅速な遂行能力は、あのバッタもどき共には真似できない。これも全て、俺の性能の高さゆえの成果。

 

 時間が余るし、これなら奴らの首を改めて採りに行って持ち帰ることも容易い。

 

「……あはっ」

 

 あぁ、だめだ。もう堪えられない。

 

「あはっ、あはは、ははははっ!」

 

 セーフハウスに潜んでたときからずっと我慢してたんだ。もうすぐ森を抜ける。奴らも追ってこれまい。

 

「はっはっはっは! やはり! 俺こそが最強のオーグ! 見てくださいよぉ、ボォス! SHOCKERで最も優秀なオーグはやはり俺らぁっが!?」

 

 

 そして、彼は顔から地面に突っ込んだ。

 マントもめくれてしまい、土と落ち葉でその色鮮やかで醜悪なスーツが茶色く汚れてしまっている。

 

「あがっ……ら、らにが……? 頭が……重い、なんでこんな、各器官のメンテナンスは100パー大丈夫だったのにぃ……?」

 

 まるで、病を患ったかのように体が言うことを聞かない。先程背中に受けた衝撃が原因なのは明白だった。だが、何を食らった? それが彼には分からなかったが、答えはすぐにわかった。

 

「藤丸を返してもらうぞ」

 

 彼が目を向けた先には、戦力にならないと吐き捨てたカドックが、こちらに指を向けて立っていた。

 

「白髪頭……なんでお前がここまでぇ……」

 

「お前の隠密能力はたしかに高い。だから普通に探せばまず見つけられない。だが、彼女の魔力まではお前に隠せなかったんだ」

 

 重い頭を振りながら彼は立ち上がる。

 

「魔術……? 魔力だぁ?」

 

「僕は彼女の魔力を追った。そうすればあとは自動的に藤丸を抱えてるお前に追いつける。簡単なことだよ、虫野郎」

 

 なんとか立ち上がり、腕のジッパーを開けて鎌を広げたK.K.オーグは、ナイフも引き抜き目の前のカドックを八つ裂きにするべく歩みを進める。

 

「おい」

 

「とりあえずもっかい寝とけ」

 

 が、彼の後ろから声が掛けられた。

 

 思わず振り向けば、彼の目の前には固く握りしめられた拳が迫ってきている。

 

 もちろん、回避などする暇もなく、彼はそのまま仮面を割られながらもう一度地面へと叩きつけられた。

 

「おぉ、俺の、サイコーにイカす仮面がぁぁぁああ!」

 

「改めて見ると趣味悪いぞ、それ」

 

 一文字は地面に落ちた半分に割れた仮面を踏み砕き、脇に抱えていたヘルメットを被る

 

「クモのことを先輩と仰ぎながら詰めが甘い」

 

 既にヘルメットを被っているイチローは、振り抜いた拳の調子を確かめるように握り直しながら、両腕を胸の前でクロスさせる。

 

 

『変身』

 

 

 ヘルメットが裏返り彼らのもう一つの顔が浮かび上がる。

 仮面ライダー第2号と仮面ライダー第0号が、K.K.オーグを討ち倒さんとその拳を握った。

 

 

「ぁぁあああ! 皆殺しだ! 八つ裂き、八つ裂きだ! お前ら3人ともぉ!」

 

「お前、あのときの奴よりも見苦しいぞ」

 

「遅い」

 

 刃物を振り回しながら突進してくるK.K.オーグに対して、第2号は正面からその鎌とナイフを掴み取った。

 そこへ第0号の手がK.K.オーグの胸に翳され、そのまま軽く押し込まれ拍子にK.K.オーグの体に衝撃が走る。

 

「それ効くだろ。俺も何発も食らったからよくわかるぜぇ」

 

「魔力で代用できるとはいえ、やはり消耗は大きいか」

 

 彼らの体はプラーナと呼ばれるもので稼働する。それは魂であり、エネルギーであるというものであり、プラーナが尽きることは彼ら二人の死を意味する。サーヴァントとしての恩恵で、これは魔力に置き換えられ、第0号はベルトの2つの風車から生み出されるエネルギーで賄いきれないものを供給されている魔力で持って維持している。

 

「おい! 今ごっそり魔力持っていかれたんだが!?」

 

「すまないな、少し加減を間違えた」

 

 カドックからしたらいい迷惑である。

 K.K.オーグを転ばせた魔術、藤丸立香の礼装に登録されたガンドを彼の魔力で起動させて打ち込んだのだが、あまり使うことのない魔術であることに加えて、自分ではない魔術回路に合わせたチューニングが施された礼装の強引な起動。この2つにより彼の多いとは言えない魔力を無駄に消費してしまっていた。そこに事前に結んだパスから第0号へ魔力が供給されてしまったことで、今のカドックは疲弊した体に鞭打たれるような状態になってしまっている。

 

「おぅおぅ、マスターに怒られる前にチャッチャッと終わらせるか」

 

 そうして、またも真っ直ぐ突っ込んできたK.K.オーグに第2号は赤い拳を撃ち出した。

 撃鉄を叩き銃弾を発射するかのように、K.K.オーグの鳩尾を正確に捉えたその一撃は、K.Kオーグにとっての致命傷となり、それきり彼は起き上がることもできず、体の末端から泡になる。

 

 

「俺を……俺を……誰か、認めてくださいよぉ……」

 

 

 そうして、彼は溶解した。

 

 もはや彼が生きていたという痕跡すら残さずに消えていくのを見て、カドックは言葉も出なかった。

 風が吹き抜けるような音がすると、仮面ライダーたちはヘルメットを脱ぎ、藤丸の安否を確かめる。

 

「おい、マスター。生きてるか?」

 

「起きる様子がないな。睡眠薬を使われたか?」

 

「これが、マシュの言っていたレムレム状態か……全く」

 

「まぁ生きてるならとりあえず戻るか、拠点変えが必要だ。案のあるやつは手を上げろ。残念ながら、俺は根無し草だったんでな。当てはない」

 

「僕にもあるわけ無いだろう。そもそも日本の街に縁がない」

 

「SHOCKERの施設なら当てはあるが」

 

「行くなら一人で行け」

 

 多少の蟠りはあれど、なんとなく距離は縮んでいるライダーの二人を見て、カドックは少し安心していた。

 藤丸の言った通り、あんまり納得したくないがなんとかなったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヴェンジャー、いる?」

 

 いつものようにカツカツと音を鳴らしながら暗闇から現れた黒尽くめの男に対して、橙色の髪を仮面に収めた女が命令を与える。

 

 この世界が始まってから幾度となく繰り返された光景だ。

 世界中の人間が旅立ってしまい、取り残された人間は狂ったSHOCKERの手ですべて改造されてしまった。その時から、彼女はアヴェンジャーと呼ばれる男と二人きりで戦い続けてきた。

 

「……」

 

「新しいオーグが確認された。それも二人」

 

「……」

 

「今のSHOCKERに造れる限界値を超えたプラーナの保有量、観測機器の故障であってほしかったけど、残念ながらこれは現実。私達にとって最大の脅威となる」

 

 彼女の周りには多くのデバイスが青白く外装の隙間から光を漏らしており、壁一面に繋がれたディスプレイの群れは地図を写してある一点を拡大して表示していた。

 

「K.K.オーグがこの場所でロストした。実戦経験はなくとも、あれはSHOCKERにおける最高戦力の一つでもあった。それを簡単に倒してしまうのなら、今ここで倒す必要がある」

 

「……彼らの名は」

 

 男が問うと、彼女は仮面で覆われた口からため息を付き、うつむいた。そして、悲しげに告げる。

 

「……ライダー」

 

 息を呑む音が小さく響く。

 

「えぇ……そうよ、彼らの名は仮面ライダー」

 

 アヴェンジャーと呼ばれた男の右手が強く握られる。自身の握力で持って拳を握り壊さんばかりにギリギリと音がなっていた。

 

「アヴェンジャー、あなたのその手、随分と黒くなってしまったわね」

 

「……構わない。これが僕の、唯一の贖罪だから」

 

 彼女は、うつむいた顔を上げて男を真っ直ぐ見つめる。

 

 彼の顔を常に被り続けている仮面のせいで表情を伺えない。

 でも、きっと今も、その仮面の下では涙が傷のように頬を伝い跡を残しているのだろう。

 

「アヴェンジャー、こんなことをあなたにお願いしたくはなかった。それでも、わたしたちの目的のためには必要なことなの」

 

「あぁ、僕のことは気にするな。覚悟はいつだってできている。君は僕の性能を信じてくれ。君の願いは、僕の願いでもある」

 

 その言葉を聞き、彼女は気持ちを切り替え心を押し殺す。二人の願いのために、鬼になる。

 

「SHOCKERの新たな最高戦力、仮面ライダー第0号及び第2号の殲滅をお願い」

 

 さぁ、もうあと一歩だ。

 

「仮面ライダーを名乗る以上は、油断できない。だから殲滅が目的だけど、生き残ることを第一にして。矛盾しているかもだけど、わたしたちが負けたとき本当にこの世界は終わるのだから」

 

「大丈夫だ。今度も僕はここへ帰ってくるさ」

 

 男は、そう言って部屋を出ていった。

 

「あぁ、今度も必ず勝つ。それが、それだけが僕に許された贖罪であり取りこぼした人たちの復讐なのだから」

 

 例え、同じ名を持つ者であろうとも、必ず討ち取る。

 

 

 

 

 

 

 




一応月イチ更新で頑張ってるんですが10月になってしまいました。

感想と評価本当にありがとうございます。物書きとして、言葉をいただけるとやはり嬉しいものですね。

読んでくれてありがとう。
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