私が望むとき、仮面ライダーは蘇る   作:妄想作家

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「ちょ、ちょっとどうなってるの!私が私じゃなくなってる!?」

「落ち着きなさい。悪いけど、あなたをここで死なせないためにも少しだけ体を使わせてもらうわ」

「いやいやいや!それについてもちょっと聞きたいこと色々あるけど、そもそもあなたは誰なの?」

「言ったでしょ。私は緑川ルリ子。あなたと言う魔術師に憑いたことでキャスターの枠に入れたの。」

「…もしかしてだけど〜、あなたってイチローさんの…」

「えぇ、妹よ」

「(どこか人の話聞いてない感じ少し似てるかも…)」


再:会

「キャスター……魔術師のクラスでこの場に現れるなんて、随分と小賢しい真似をしたみたいね」

 

「お褒めに預かり光栄よ、偽物」

 

「あら、それは本物を何から定義するかによると思わないかしら? この体は間違いなくあなたなんだから」

 

「クローンを本人と同一と見做すかに似てるけど、あなたのように完全に中身が別物であればそれは皮だけ似せた別人ね」

 

 キャスターと名乗る藤丸に対して、明確に敵である緑川ルリ子は警戒をしている。

 

 先程まではネズミ駆除のために猫を放つように、本人からの圧を感じなかったのに、今は絶対に逃さない理由ができたと敵意を込めた視線を藤丸に向けている。

 

「アヴェンジャー、手ぬるいことはしなくていい。相手はキャスター。肉弾戦に関してはあなたに分がある。全力で、あの娘を殺しなさい」

 

 指令を受けたアヴェンジャーは、再びその拳に力を込め、藤丸=緑川ルリ子へと歩みを進める。

 

 一歩、二歩。

 ニセモノが笑う。

 

 三歩、四歩

 彼の体から溢れ出る瘴気、一文字と再会したときに彼を覆った影は、彼の心から湧き出る殺意のように漆黒を孕んでいる。

 

『ルリ子さん! 体の操作権渡すのはもうとりあえずいいけど、このままじゃ……!』

 

 このままじゃ、アヴェンジャー"に"殺される。

 

 藤丸立香は、その言葉をぐっと飲み込んだ。彼女は、土壇場で入れ替わったとはいえ急拵えではあるものの半サーヴァントの状態だ。意思疎通はマスターとサーヴァントのそれとは比べ物にならない速さで理解できる。

 

 それ故に、緑川ルリ子が生前に仮面ライダー第1号=本郷猛に抱いていた親愛と信頼を自分のことのように感じ取った。

 

「………………はぁ。やっぱり、少し怖いかも」

 

 ルリ子は、藤丸立香の眼で彼を真っ直ぐ見据える。黒く汚れた、見慣れたマスク。

 

「…………大丈夫」

 

 アヴェンジャーの動きは、何故か精彩を欠いていた。先程の正確に、スナイパーライフルのように急所を穿つ攻撃をしていたのが嘘のように。だが、歩みは止まらない。何度か拳を握り直し、スーツの手袋がぎちぎちとノイズを鳴らす。

 

 あと一つ。踏み込めば命を奪える距離まで近づいた彼は、拳を振りかぶり。

 

 

 アヴェンジャーは、そこから動けなくなった。

 

「……例え復讐を果たす機械になったとしても、あなたの心は残っている。怨嗟の炎に身を焼かれる霊基でも、あなたの心は……自分自身の全てを燃やし尽くされることを許さない」

 

 藤丸の声で、復讐者「本郷猛」へ呼びかける。

 

 マスクの向こうで、なにかに耐えるように漏れ出る声を噛み締める本郷猛。そのマスクの頬へと、彼女は手を伸ばした。その指が血と埃で汚れたマスクを撫でる度に、肩が震え、振りかぶった拳が段々と下がる。

 

「今のあなたは、約束を果たせなかったこと、自身で決めた道を台無しにしたこと、独りぼっちの自分に手を伸ばした彼への後悔」

 

「あなたがそうなってしまう要因はいくつか考えられるけど、その全てに他人が介在している」

 

「あなたは、それでも最後は自分のために戦ってたと思っている。だけど、そうじゃなくて、仮面ライダーはいつだって誰かのために戦ってた。……そのスーツを見る限り、結果は褒められたものじゃないかもしれないけど」

 

 彼女の指が離れると、アヴェンジャーの顔を覆っていた仮面の変形が始まり、ヘルメットの形状に戻った。

 

 アヴェンジャーの脳裏に、たくさんの思い出が駆け巡る。

 

『本郷くん』

 

 自分に力を授けた、ヒビだらけの顔

 

『本郷!』

 

 自分の背中を押してくれた、ノイズ塗れの顔。

 

『本郷さん』

 

 自分に思いを託してくれた、血塗られた顔。

 

 

『僕は人を守りたいと思う。自分の心を信じる』

 

 

「グッ……ッ! ア"ァアァァァ……!」

 

 アヴェンジャーは苦悶の叫びを上げ、膝をつく。それにいち早く反応したのはもう一人のルリ子だ。

 

「アヴェンジャー……! 何をしているの! 早くその女を殺しなさい!」

 

 だが、もはやアヴェンジャーは動けない。彼の中で燃え続けていた過去が、キャスターとなり力が増幅されたルリ子のパリハライズにより破損したまま復元し、再生している。

 

 本来であれば、プラーナの絶対量の差で彼女はアヴェンジャーに対してパリハライズを仕掛けても有効打にはならない。

 しかし今の彼女は疑似サーヴァントだ。器であるマスター「藤丸立香」の強制契約ラインを使うことで、彼女の能力は直接的に干渉することができ、アヴェンジャーの中にある本郷猛に呼びかけることができた。

 

「偽ルリ子さん、生憎だけどその下手な芝居は辞めた方がいいわよ。三文芝居を見ていられるほど私は浪費家ではないの」

 

 偽ルリ子と呼ばれたことに怒りを顕にして、さらにアヴェンジャーへ命令するも、もはや彼は何も答えなかった。

 

「アヴェンジャー。彼にこの皮を被せたのは上手だった。確かに彼の在り方……理不尽に対する復讐心は確かに尽きることのないその身を焼き尽くす炎だった」

 

「可能性を探せば、きっと彼がすべてを失敗して不幸になる世界があるかもしれない。そこをサルベージして、いつものやり口で彼を回収して新しい容れ物に収めれば従順な下僕になる」

 

 ただ、と青い目を輝かせてキャスターは言葉を紡ぐ。

 

「そのために私の影を追わせるのは、結果的に間違い。カウンターとして私というモノホンが来るのだから、最後の一手は私に歩がある」

 

「……そういうこと。英霊としての史実再現性か」

 

 偽ルリ子は苦虫を噛み潰したように、顔をしかめさせ唇を噛み締める。もはやルリ子という人形のフリなど意味を成さないからだ。

 

「英霊として昇華されたのなら、私という存在こそが彼への切り札になる」

 

「仮面ライダーとして顕現させたなら、例え失敗したとしても、彼はその身を捧げて戦い抜いた仮面ライダー第1号、本郷猛なのよ」

 

「彼のことを、舐めないで」

 

 偽ルリ子は、自身が最後の詰めが甘かったことを認める他なかった。

 

 私怨で仮面ライダーにしたことこそが運の尽きだったのだ。

 

「……それなら、しょうがないか。憎き仮面ライダーを悪魔の尖兵として使役するのも面白かったが、ここで終いにしよう」

 

 偽ルリ子は、右手を上げた。

 

 その瞬間に照明が消えて、再び点灯する。

 

 すると、白い顔のない仮面を被った戦闘員と、黄色いマフラーをつけたどことなく第1号や第2号に似た仮面ライダーたちが周りを取り囲んでいた。

 

「ショッカーライダーたち。壊れた人形となり損ないのサーヴァントを殺せ」

 

 

『ど、ど、どうするの!? さっきはとりあえず空気読んで邪魔しなかったけど、これは流石に不味いんじゃ……』

 

「……まさか、プラーナ関係のシステムじゃないライダーがいたなんてね」

 

『ルリ子さん、策はある?』

 

 ルリ子は、中にいる藤丸立香の不安の感情を感じ取った。

 苦悶の叫びを上げた後に、そのまま蹲り倒れてしまった本郷猛の姿を見て、彼女はもう一度部屋の中を見回す。

 

 出入り口は完全に塞がれた。この身の能力ではどうあがいて限界がある。もはや神様にでも頼るか? そこまで考えてから、自身の思考が器に引っ張られてるなと、ルリ子は少し可笑しくなった。

 

「そうね、本来であれば万全な状態で敵地に乗り込むのだけれど……」

 

 そう口にしてから、一度言葉にすることをやめた。

 

 彼女の耳はある音を捉えていた。

 

「まぁ、わざと気付くようにはしてたから、結果オーライね」

 

『ねぇ、この音って……もしかして、エンジンの音……?』

 

 立香がエンジンの音に気づいたときに、音の発生源は壁を打ち壊して部屋に飛び込み、その勢いで何人かの戦闘員を轢き飛ばしルリ子=藤丸立香の側で止まった。

 

 

 白いマフラーを血で汚し、装甲にヒビが入りながらもその複眼の輝きは強く輝く。

 

 

 青い蝶は神の化身とも呼ばれている。そして、それが意味するは幸運の訪れ。幸運の女神は、今まさに彼女たちに微笑んでいる。

 

「……妹に」

 

 バイクのアクセルを吹かせ、威嚇する。

 

「指一本触れさせはしない」

 

 仮面ライダー第0号は、静かに、それでいて強く宣言した。

 

『ライダー! 来てくれたんだ!』

 

 

「俺だけじゃない」

 

 

「あら、みんな間に合ったのね」

 

『みんなって……カドックたちも!?』

 

 イチローの飛び込んできた場所は未だ埃が舞っており、向こう側がよく見えない。しかし、声だけは明瞭に聞こえた。

 

「ん? もしかして、お呼びじゃなかった? これはすまない。白馬の王子を期待したみたいだったけど、残念ながら僕だ」

 

「いること教えてないんだから分かるわけ無いでしょ」

 

「二人とも、頼むからもう少し緊張感を持ってくれないか!」

 

「お前ら、これ以上口を開くなら、頼むから俺の聞こえないところでコントしててくれないか……?」

 

 マスクを被り既に戦闘モードの仮面ライダー第2号と、その後ろで戦闘態勢を整えたカドック。

 

 そんな二人とは裏腹にどこかゆるい空気を漂わせているオベロンとアルトリア・キャスターの姿を見て、体の操作権はないのに立香は涙がこぼれそうになった。

 

「間に合せのパッチワークだが、あの二人のお陰でなんとか消滅は防げた。戦闘を行うのには不安が残るが、救出と離脱を目的とするなら問題はない」

 

「兄……ううん、仮面ライダー、無理はしないで」

 

 立香のもとに全員が集合した。並び立つその布陣は、人数こそ少ないが、これほど頼りがいのあることこの上ない。

 

 

「話には聞いてたが、本当にお嬢さんか?」

 

「ええ、そうよ。第二の男、一文字隼人。元気そうね。足の調子はいかが?」

 

「おい、イチローさんよ。お前の妹、結構根に持つのか?」

 

「器に引っ張られてるんだろう。いいから作戦通りにやるぞ」

 

「カドック、魔力は節約するけど、できるだけ頑張ってね!」

 

「あぁ、わかっている。だが出し惜しみはするな」

 

「りょーかい! よーし、いっくぞー!」

 

「みーんな張り切ってるねぇ。生憎だけど、こういうときのセリフの掛け合い相手は今いないんだよねぇ。ということで、僕のキャラじゃないけど、折角だし音頭を取らせてもらおうかな」

 

 BATTLE、スタートってね。

 

 

 




頭の中で考えてるうちには完璧なストーリーだ…!ってなってるんですけど出力すると、あれ?あれ?となり後から整合性取れてないなと気づくことばかりです。プロットは軽くまとめてあっても、いざ話に起こすと意外とそこから色々実は…ってとこが見えちゃうのでまだまだ精進ですね。

ここまでお楽しみいただきありがとうございます。毎度、誤字報告や感想、評価ありがとうございます。励みになっています。完結までお付き合いください。
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