短編置き場   作:鯨蓮根

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今日はMAGES.ちゃん、並びに株式会社MAGES.の誕生日です。
おそらく14歳だそうですよ。君も祝おう。


モーソー・スニーク

199x年、ゲイムギョウ界滅亡の危機――

 

 「MAGES.、早く逃げないと!」

 

 建物が崩れ、そこら中から火の手が迫る。5pb.は逃げ惑う人々の中、ただ一人逆の方向へと踏み締めるように歩く従姉妹のMAGES.へ必死に叫ぶ。しかし、

 

 「すまないな5pb.よ、それは無理な話だ」

 

 MAGES.は申し訳なさそうにはにかんで、また彼女に背を向けて歩き出した。その背中には迷いなどなく、心なしか帽子も普段より大きく見える。

 

 「む、無理だよMAGES.!あんな大っきい奴ら相手に!」

 

 5pb.の言う通り、暴れ続けるダークメガミは身長四十メートルはあろうかという巨体。いくらMAGES.の魔法や発明が強力と言えど、その圧倒的なサイズ差の前では、平手一発で叩き潰されて終了……そんな未来が5pb.の脳に浮かんでしまう。

 

 「ふっ、私を誰だと思っている。まさか無策で挑むとでも?」

 

 距離が少々離れた為、聞こえるように少し声を張り上げたMAGES.。5pb.も両手をメガホンのように使い、聞き返す。

 

 「何か、作戦があるの?」

 「ああ、よく見ておけ5pb.、これが私の最高傑作だ、いでよ!」

 

 威勢のいい彼女の掛け声と共に、地鳴りのような音が響く。それに怯んだ5pb.の後ろから、戦闘機のような飛翔体が迫る。

 

 「な、何あれ!?うわっ!?」

 

 低空飛行で5pb.の頭上を通過すると、そのままダークメガミの一体に体当たり。音速を優に超えている物体が直撃すれば、巨大な破壊兵器と言えど無事で済むはずは無かった。まるで命を刈り取られたかの様に動きを止め、仰向けで倒れ込んで起き上がらなかった。

 

 「さあ、一体残らず倒してやる。そっちからかかって……あれ?」

 

 いつの間にかコックピットに乗り込んでいたMAGES.が見栄を切ろうとしたその時、周囲の景色がテレビの砂嵐を纏ったようになる。

 

 「あー……電力不足か。はあ……」

 

 パチンと何かのスイッチをMAGES.が落とすと、砂嵐は一層濃くなり、徐々に晴れると何の変哲もないビルの一室に変わる。勿論、窓の外から見えるビル街からは、火の粉一つ上がっていない。

 

 「いい所で終わってしまったが……妄想を現実にする私の新作、超次元ガジェットNo.071、『超誇大妄想実現機(ギガロマニアライザー)』の素晴らしさは理解してもらえただろう?」

 

 MAGES.が誇らしげに、巨大な懐中電灯の様な機械をぽんぽんと触る。

 

 「まあ……確かに凄かったね。爆風とかも、本物みたいだったし……どんな仕組みなの?」

 「ふふふ……これは対象者の妄想を拡張し、まるで現実の様に妄想を体感させるんだ。まずこのヘルメットが脳波をキャッチして、それをこっちの増幅装置に……」

 

 べらべらとMAGES.が喋り続けるのに、5pb.は芸能界で培われた脳死笑顔で対応する。しばらく彼女の語りは止まらず、MAGES.が喉の渇きからドュクプェを二回口にするまで続いた。

 

 「と、いう訳だ。凄いだろう?」

 「ん?あ、終わった?うん、凄いと思うよ」

 「…………そして今日は、これを高値で売りに行こうという訳だ。話は粗方ついているが、私一人では少々不安の残る相手だから、証人代わりに頼む」

 「一人じゃ不安って……それ本当に大丈夫なの?」

 「まあ、会えばわかるさ……」

 

 発明の自慢をしていた時とは異なり、どうも歯切れが悪い彼女に、5pb.は首を傾げた。

 

 

 

 

 

 「商品はこれだ。説明書も中に」

 「……確かに。五十万クレジットだったよね?はい」

 「どうも。これで取引成立だな」

 

 ラステイションの工業地帯の、暗い通り。MAGES.が不安がっていた客は、艶のある黒髪がよく目立つ、小柄な少女。とてもMAGES.の言う様な人物には思えず、実際取引は何事もなく終わろうとしていた。

 

 「ところで、それを使って何を妄想する予定だ?」

 「……貴女には関係ない」

 「そうか。少し聞いてみただけだ、気を悪くしないでくれ」

 「……それじゃ」

  

 そうして二人が互いに背を向けた次の瞬間、取引相手の少女がMAGES.目掛けて発砲する。あまりに一瞬の出来事だったため、5pb.は恐怖する間もなく、ただ空気を爆発させるかのような音が、彼女の耳をつんざく。

 

 「め、MAGES.!?」

 

 慌ててMAGES.の方を向く。この距離で直撃すれば、無事では済まない。更に少女の銃の扱いは、その筋ではずぶの素人の5pb.から見ても、異様に手馴れているように見えた。そんな奴が撃ったのだから、良くて重傷、悪ければ……不思議な事に悪い妄想の方が人は得意なものであり、頭をよぎる最悪の結末。

 

 「……作戦成功の様だな、コードネーム『K』」

 「ええ、ちょっと良さげな情報流したらすぐ寄って来るんですから、私笑いをこらえるのに必死でした」

 

 しかしMAGES.からは血の一滴すら流れておらず、それどころか少女と親しげに話している。混乱する5pb.の視界へ、彼女らの次に映ったのは、右手を抑え苦しむ黒服の男だった。

 男は一人だけではなく、五、六人の怪しい男たちが、サングラスの上からでもわかる様な動揺の表情を浮かべている。

 

 「ど、どういう事……?」

 

 困惑する5pbの肩.に、MAGES.が優しく手を添えて言う。

 

 「詳しい説明は後だ。あいつらを痛い目に合わせるから、協力頼む」

 「きょ、協力って……」

 「歌って私と彼女にバフをかけてくれればいい」

 「よ、よくわかんないけど……歌えばいいんだね」

 「はい、お願いします。5pb.さん」

 「用意は整った様だな。では……行くぞ!」

 

 

 

 

 「さて、と……これで全員か」

 「案外少なかったですね。それでも、5pb.さんの歌は心強かったですけど」

 「あの、そろそろ、説明してくれる?」

 

 傷だらけの男達を麻縄で縛りながら、自分たちだけの世界観で会話を続ける二人に、5pb.が尋ねる。

 

 「ああ、一件落着した所だし、そろそろ話しても良いな。こいつらは、ケーシャ?」

 「はい、この人たちは私が追っていた、犯罪組織の一味です」

 

 ケーシャと呼ばれた少女は、男達を侮蔑の表情で指さしながら言った。5pb.はケーシャと呼ばれた少女と、犯罪組織という言葉が上手く結び付かなかったものの、何とか男達が悪い奴で、それを懲らしめるケーシャにMAGES.が協力していたのだと理解する。

 

 「こいつらをおびき寄せる為、発明品の取引というシナリオで一芝居打った訳だ。しかし名演技だっただろう?この狂気の魔術師MAGES.、銀幕デビューの日も近いな」

 「演技の話はともかく……ボク、必要だった?」

 

 5pb.が聞くと、MAGES.は笑いながら言った。

 

 「人手は多い方が確実だろう?それに、こいつをケーシャに渡す前に見せておきたかったからな」

 

 ケーシャが両手で抱える超誇大妄想実現機(ギガロマニアライザー)を、彼女は誇らしげに叩いた。

 

 「あっ、やめて下さい、壊れたらどうするんです。これはもう私の物なんですから。この人たちの身柄を引き渡した後、じっくりと……ふふふ……」

 「…………」

 「…………なあケーシャよ、もう一度聞くが、何を妄想する気だ?」

 「だ、か、ら、乙女の秘密です。でもそうですね……愛、とだけ言っておきましょう、それじゃあ!」

 

 どこか見る者を不安にさせるような笑みを浮かべ、ケーシャは男達を引きずりながら去って行く。その後ろ姿を見たMAGES.と5pb.の二人は、共に微妙な表情で顔を見合わせるのだった。

 

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