「出来た!」
MAGES.のラボでも、扇風機を回し始めた日の事だった。
「どしたの?MAGES.」
「また新しい発明を世に生み出してしまった……自分の才能が恐ろしいよ……」
「何作ったの?」
「惚れ強め薬だ」
「……何それ?」
カプセル状の、一見ただの飲み薬にしか見えない錠剤を載せた右手を突き出す。
「これを一粒飲むとだな、飲んだ人は一番好きな人に今すぐにでもキスしたいというほどの感情を持つようになる……恋心のブーストをかける、といったところだ」
「それって……びやk」
「アイドルがそんなことをはっきりと言うな」
MAGES.は流れるような動きで冷蔵庫からドュクプェを取り出し、プシュッと心地よい音を立て一気に半分ほどを飲み干してしまう。
「で、何に使うの?」
「それは今考えているところだ。だがそうだな……好きな子に告白する勇気がない人には売れるかもしれないな」
「ふぅん……」
カプセルを手にとって、まじまじと見つめる5pb.。しばらくすると、おもむろに口を開け……
「あーんっ」
ごくんという音を立て、薬を飲んでしまった。
「って、5pb.!?」
ソファでふんぞり返っていたMAGES.が、慌てて5pb.のそばに駆け寄る。
「な、何ともないのか?というか5pb.の好きな人って……」
「うーん……」
その紅い瞳は、とろんとしたままMAGES.を見据え……
「ふふっ、MAGES.!」
「ひゃあっ!?」
胸元に抱き着き、ソファに押し倒した。
「ふふ、MAGES.、焦ってるの?」
「ア、焦るににに、き、ききき決まってるだろ!?なんでこんな…………まさか5pb.の好きな人って!?」
「う~ん?そんなのMAGES.に決まってるよ?」
「はああああっ!?」
「う……嫌……?」
口の前で両人差し指を合わせ、上目遣いの目線。MAGES.、陥落寸前。
「い、い嫌ってわけじゃないんだが、こ、こここ心の準備というかだな……」
「じゃあ良いでしょ!MAGES.、キスしたいな!」
「キス!?!?!?」
「ほら、来て…………」
5pb.は瞳を閉じ、急にラボ内が静まり返る。聞こえるのは扇風機の羽音と、自分の心臓の音のみ。
「あ…………え…………」
数秒しかたっていないのだろうが、あまりにも長い数秒だった。普段のMAGES.なら相対性理論がどうとかの理屈を脳の氷嚢にするのだろうが、その余裕はもちろん存在しない。
(や、やるしかないのか……?)
最大の風量で扇風機を浴びているはずなのに、体は熱く、汗は間欠泉のように勢いよく噴き出す。惚れ強め薬の効果は絶大で、自分の欲求が満たされなければその効果はほぼ一日継続する。逆に欲求を満たせばそこで効き目は切れてしまう。
(や、やるぞ!)
MAGES.は、これに一日中耐える自信が無かった。
軽く、しかし確かに二人のそれが触れ合った。
「ふゎぁ……」
蕩けたような表情で、5pb.が深く息を吐く。
「う、うわぁぁぁぁっ!」
「MAGES.!?」
それと同時に、MAGES.はラボから逃走。逃げる様子を見た人によると、青い瞳すら真っ赤に見えるほどだったとか……
「うーん、やり過ぎちゃったかな、ぺっ」
ティッシュに錠剤を吐き出す5pb.。
「でも、柔らかかったな…………それはともかく、戻ってきたら正直に言おう、うん、そうしよう」
「それにしても、バレそうになかったな、今度ケイブさんに演技の仕事もしたいって、言ってみようかな……」