来てくれてありがとう
「今日からお世話になります、MAGES.です。一週間よろしくお願いします」
「よろしくにゅ……って、短期バイト、お前かにゅ」
生まれたての朝日がサンサンと照らすビル街に佇むゲーマーズプラネテューヌ店。今日から一週間のセール期間を迎え、それなりの高給に釣られた者が一人。
「お前はブロッコリー!?なぜここに?」
「口の利き方には気を付けるんだにゅ。ブロッコリーはここのバイトリーダーにゅ」
「成程……で、仕事内容は何だ?店長さんからはバイトリーダーに聞くように言われているのだが」
「ならまずは、入り口の掃除にゅ。掃除用具はそこのロッカーに入ってるにゅ」
「わかった、では早速……」
「せいぜい馬車馬のごとく働くんだにゅ」
ロッカーからモップに箒、チリトリと雑巾バケツを取り出し、早速最初の業務に取り掛かるMAGES.。時折大きなあくびをしながらも、ガラス窓、ショーウィンドウ、入り口のフローリングと手早く片付けてゆく。
「ふう、終わったぞ」
「じゃ次は配達にゅ、全部この近辺だから、歩いて行ってくるにゅ」
「……初日の奴に配達やらせて良いのか?」
「魔〇の宅急便にゅ、ロマンにゅ」
「?」
首をひねりつつ、MAGES.は台車を押して配達に向かった。
「も、戻りました……」
「遅かったにゅ」
日頃の運動不足で鈍った体を、重い荷物を抱えての階段上り下りが痛めつける。途中からMAGES.を動かしていたのは気合いであった。
「じゃ、少し休憩するといいにゅ、あつ〜いお茶でも飲むにゅ」
「……」
冷たいドュクプェが良かった……とも言えず、大人しく湯呑みを受け取る。爽快感こそ無いが、ゆっくりと沁みるような心地。
「お前、なんでこれに応募してきたにゅ?」
ゲマの上でお婆ちゃんのような雰囲気のブロッコリーが尋ねる。
「え?そりゃあ、お金が必要だからだ」
「なんで必要かを聞いてるにゅ」
「あー、うん、ちょっと、な……」
「怪しいにゅ、さては借金かにゅ?」
「は!?」
「競馬、パチンコ、カジノ、株、FX……好きなの選ぶにゅ」
「違う違う!」
「そして最後はプラネテューヌの寒空の下をのたうち回るにゅ、すてきなサムシングにゅ……」
「待て待て待て!私はある人に贈り物をしたいだけだ!」
「やっと本当のことを吐いたにゅ」
「あ」
「ある人が誰かは言わなくてもいいにゅ。いつも尊大なお前がプレゼント渡す人なんて、一人しか知らないにゅ」
「え」
「さあ、そろそろ休憩も終わりにゅ、お仕事再開にゅ」
「あ、ああ……」
ゲマから降りて、売り場へと向かうブロッコリーの後ろをついて行く。
「じゃ、次はこれに書いてあること全部やるにゅ」
回れ右をして、ペラ紙一枚を渡してくる。そこには直視したくないほどの業務内容が。
「ブラックバイト……」
「出来ないというのは、嘘つきの言葉にゅ。給料は少し上乗せしてくれるらしいから、歌姫様のためにも頑張るんだにゅ」
滅入りそうな気持ちを、深呼吸の後自分で両頬を叩いて奮い立たせる。
「フッ、この狂気の魔術師MAGES.、闇の住人として
「早くやれにゅ」
「……はい」
夕日がユラユラと沈んでくまでどのくらいか。そんな事を考える暇もないほどの戦場に向かうMAGES.であった。
帰れ