今回、時間軸が結構進んでたりします!
時の流れとは、誠に早いものである。
......なんて、お爺さん臭いセリフ言ってるけど、実際僕って数百年以上生きてるから、こういうことを発言したところで何ら問題ない。
まぁ、ある時ふと、こう思ってしまうものなのだ。特に、幽香ちゃんがもう十三歳になったという、今現在みたいになるとついついそう思ってしまう。
「ほんと、最初の頃に比べて成長したよね、幽香ちゃんも」
「な、なによいきなりそんなこと言い出して......」
ほんと、めまぐるしいほどの成長だね。お父さん、感激。まあ、僕はお父さんでもないし、そもそも幽香ちゃんの両親は、とっくの昔に他界してしまったらしいけどね。今は親戚の家に居候させてもらってるんだっけか。何年か前に幽香ちゃんが熱を出して見舞いに行った時に、家の人に聞いた記憶がある。
おっと。成長の話だったのに、何故か親の話になってしまったね。まったく誰のせいだろうか。......僕か。
「いやいやほんと、すごく成長したと思うよ?胸とか、胸とか、胸とか」
「よしそこに正座なさいこの変態妖怪が」
はっはっは。こういったジョークが通用しないのは、昔とは変わらないけどーーーあ、ちょっ。痛い痛い。いい加減その日傘をどうにかしよう。相変わらず、護身用として持っていてはいけないくらいの代物だよそれ。
「セクハラ妖怪には妥当の待遇ね。感謝なさい?」
「最近幽香ちゃんがサディストになってきてつらたん……」
お父さん泣いちゃう。お父さんじゃなくても泣いちゃう。きっとエリーだ。エリーのせいなのだ。あの鎌娘め、許すまじ。
「なんか変なこと考えてるわね、日向」
「オーソンナコトナイヨー」
「あ、エリー。久しぶり。去年の夏ぶりね」
確かに久しぶりね、などと幽香ちゃんに返す、いつの間にか背後に現れていたエリー。背後に現れるだけならまだしも、まさか、首筋に鎌を押し当ててくるとは。衛生上よろしくない。こんなことばかりしてるから幽香ちゃんがサディストになっちゃうんだ。ぷんぷん。
「何かしら、無性に日向を殴りたくなってきたわ」
「奇遇ねエリー。私もこいつをぶん殴りたくなってきたのよね」
「ぼうりょく、だめ、ぜったい」
冗談よ冗談、なんて君たちが言っても信用ならないからね?その証拠にエリーは僕の首筋に当てている鎌を未だに離してくれないし。怖いよ。普通に命の危機を感じるよ。刃物突きつけられて平気でいられる人が居たら、僕はそいつを神と崇めてやろう。……あ、僕妖怪だった。平気だった。
なんてことを考えていると、僕は今現在の自分の置かれている状況を把握した。否、してしまった。
「巨乳に囲まれている、だと?我が人生に一遍の悔いなし。……どっちかというと妖生?」
「そんなことは、どうでもいいわよね?」
「ええ、心底どうでもいいわね、エリー。今重要なのは……」
―――このクソ妖怪を、どうやっていたぶるか、でしょ?
そんな言葉を聞いた瞬間外に飛び出た僕のことを責められる人は、いないと思う。
❁❀✿✾
「さて、このセクハラ、どうしましょうか」
「そうねぇ……このセクハラを縄で縛って人里に放置、なんてどうかしら?」
「お願いします、どうか名前で呼んでください」
そして人里に放置も勘弁してください。ストレスで禿げます。僕にそんな趣味はありません。
「やめてよ日向、そんな泣きそうな目で上目遣いなんてしないで。ゾクゾクするから」
「確かにゾクゾクするけど、それと同時にあなたがやるとキモいわ」
「……」
あれ、なんだろ。目から汗が出てきたよ?おかしいなぁ。どんどん溢れてくるよ。
まあ、そんな冗談は置いといてだね。今重要なのは、どこで幽香ちゃんの教育方針を間違ってしまったか、ということだ。……対して重要そうじゃないかもしれないが、うん、そこは考えないことにしよう。あれもこれも全部エリーのせいだ。エリーが変なことばかり幽香ちゃんに吹き込むから。
「何かしら……すごい理不尽を感じた気がするわ」
「気の所為じゃないかな?」
わざとらしく咳払いをして、その理不尽を僕だと気付かれないように話題をすり替えようと考える。ものすごい怪訝そうな目で幽香ちゃんに見られた。いや、やめて。ゾクゾクしちゃう。
「さて、幽香ちゃん。幽香ちゃんも晴れて十三歳。立派なお年頃だね」
「ええ、そうね。立派なお年頃ね。だからいい加減そのちゃん付けをやめなーー「やめときなさい幽香ちゃん。こいつにそんなこと言っても、聞いてくれるわけないわ」ーー……確かに、それもそうね」
何故だろうか。僕は今とてつもない理不尽を感じている気がする。いや、これはどちらかと言うと差別なのだろうか。僕のちゃん付けはダメなのに、エリーのちゃん付けはいいだなんて。
「そんな幽香ちゃんは、どうして今もこうしてこの向日葵畑に来るのかな?友達いないのかな?ん?」
「エリー、そっち持ってて。こいつを埋めましょう」
「承知したわ、幽香ちゃん。一緒にこいつを埋めましょう」
「オージョウダンダヨー。ソンナニオコラナイデヨー」
最近僕の扱いが雑になってきているような気がする。いや、気がするのではない。そうなのだ。雑になっているのだ。昔は幽香ちゃんをからかって遊んでいたのに、今では少しからかうだけでこんなに問答無用でやられるなんて。理不尽極まりない。
「はぁ、あなただけじゃ向日葵畑が心配だから来てるのよ」
「普通に大丈夫に決まってるでしょ。現に君がここに来る前までは僕が全部世話してたんだし。君、あれだろ?暇人ってやつでしょ?」
「あなたはほんっとに懲りないわねぇ……!」
懲りるって何かな。おいしいのかな。僕は今、君をからかうことに猛烈に喜びを感じているのだ。
「随分と悪趣味ね!?」
「何を馬鹿な。趣味なんかじゃなくて、幽香ちゃん限定だよ」
「尚タチが悪いわ!!」
肩で息をしている幽香ちゃんに、まあまあと宥めるための声をかける。あれ、おかしいな。宥めたはずなのに、こみかめに青筋が立っている。なぜだ。
「目を瞑って、自分の胸に手をやり考えなさい」
「いやん、胸に手をやれだなんてセクハラだよ幽香ちゃん。しかも目を瞑って、だなんて……きゃっ」
「遺言はそれでいいかしら……?」
ちょっとからかっただけでこれか。全く、平常心というものを知らないのかね最近の若い子は。え?エリーも知らない?さいですか……あ。
「知らないって言って、自分を若い子にしたいの?全く、素直じゃないなぁエリーちゃんは」
「遺言はそれでいいわね……?」
しまった。からかう相手を間違えた。そう後悔したが、時すでに遅し。エリーの隣の幽香ちゃんは愛用の日傘をまるで剣のように扱っている。準備は万全ということか。でもな、へい、幽香ちゃん。それ、日傘。日を遮るためにある。OK?NOですか。さいですか……。
視線を戻すが、エリーはすでに鎌を構えている。……かまだけに。と思った瞬間、僕の部屋の温度が下がった気がした。おかしい。夏だというのに、ここの気温は冬並みに下がっているぞ。
「「さて、覚悟はいいかしら?」」
「あえて言うなら、ごめんなさい」
またまたこうして、僕たちの夏の思い出が追加されていくのであった。
はい。というわけで、幽香ちゃんが幽香さんになりました!これからさらに話を重ねる毎に幽香さんから幽香様になっていって、最終的にゆうかりんになるんですねわかります(錯乱)。
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