それでは何故か早く投稿できた最新話を、どうぞ!
「運が悪かった……としか、言いようがないわ。それにタイミングも」
ーーー聞こえない。
「案の定彼女は、人里では良くない方向で噂をされ続けていたの。あれだけ噂をされ続ければ、今の緊迫とした人里の状態じゃあ、いつ幽香ちゃんが過激派の連中に手を出されてもおかしくない状況だったの」
ーーー聞こえない。
「実際彼女は、手までは出されてないにしても、人里に帰ってからはそれなりにちょっかいを出されてたみたいで……けれど、彼女は耐えていた。自分が手を出せばどうなるか、あの子はわかっていたから」
ーーー聞こえない。聞こえない。キコエナイ。
「それでも、『あるもの』を奪われてから……彼女は豹変したかのように、ひどく激昂した。それも、傘で殴りかかってでも奪い返したくらいだったもの。けれど、そのせいで……危害を与えてしまったことによって、噂を真実だと思い込んだ過激派の連中は彼女をーーー」
ーーー嬲り殺したわ。
❁❀✿✾
「……ねぇ、幽香ちゃん」
目の前で『眠っている』幽香ちゃんに話しかける。けれど、返事は返ってこない。目を閉じたまま、幽香ちゃんは微動だにもしない。
全く、これだから寝坊助は困るよね。何時ものように涎は出てないのが、幸いかな?まあ、起きたあとに涎出てたよ、と嘘をついてからかうのだが。だから、
「ほら、いい加減寝たふりはいいからさ、起きて?ちゃんとわかってるんだよ?」
そう、幽香ちゃんがこの状態で紫に連れてこられてから、実に八時間が経つ。幽香ちゃんは規則正しい生活を好むため、睡眠時間は一日八時間と決めているのだ。まあ、それでも幽香ちゃんは人間だから、寝坊したりすることもあるけどね。涎垂らしてさ。
まあ、とにもかくにも、今の幽香ちゃんは目が覚めてもおかしくない状態というわけだ。だと言うのに、今日の彼女はやけによく寝る。疲れてるのかな。それとも、寝たふりかな。
でもいい加減起きてくれないと困るなぁ。だって、花達の水やりが溜まってるんだ。もちろん君の花にも水やりが溜まってる。まったく、最後まで責任もって育てないとダメだよ、幽香ちゃん。
それに、
「もう何年も君と一緒に畑の世話をしてたから、急に一人でやるのはしんどいんだよ。僕ももう歳だからさ」
まだ向日葵の咲く頃である。つまり、夏はまだ始まったばかり。まだまだこれから大変なんだよ?だからもうちょっとだけ頑張ってよ幽香ちゃん。疲れてるのはわかってるんだけどさ。
「ははっ、なに?僕がいつもからかって遊んでるからおかえししてるの?幽香ちゃんも酷いなぁ」
返事は返ってこない。
「あ、そうだ聞いてよ幽香ちゃん。この前紫のやつがさーーー」
返事は、返ってこない。
「でさ、僕言ってやったんだ。いや、君に友達なんていないでしょ?って。そしたらあいつ、懇願するかのような顔で、私たち友達よね?ね?なんて言ってきてさ。あっはは、あれは今思い出しても爆笑ものだよ」
……返事は、返ってこない。
「あ、ははっ……ほら、爆笑ものの話をしてるんだからさ、いつもみたいに笑ってよ、幽香ちゃん。何静かにしてるのさ。そんなの、君に似合ってないよ?」
幽香ちゃんの頭を撫でながら、力なくそう語りかける。……相も変わらず、幽香ちゃんは目を覚まさない。
「ほんとに、死んだように眠るね、君は」
ーーーいや、違う。
「……死んでるんだね」
幽香ちゃんが死んでから、半日……よくやく僕は、幽香ちゃんが死んでいるという事実を、認めた。認めてしまった。
何をやってるのだろうか、僕は。彼女が目を覚ますわけがないじゃないか。僕がいくら笑い話をしても、いくら話しかけても。彼女が答えることは、一切ないのだ。あるはずがないのだ。
だって彼女はーーー『もう死んでいる』のだから。
「……」
幽香ちゃんの頭を、優しく撫でる。緑色で美しく、それでいてさらりとした髪の感触が、僕の手のひらに伝わってきた。
……まったく紫も、変なところに気を遣うやつだ。ほんとは幽香ちゃん、もっとボロボロだったろうに。綺麗にして、さらに体も腐らないようにして僕に渡してくるなんて。
あとで何かお礼言っとかないとなぁ、なんてぼんやり考えながら、幽香ちゃんを見つめる。
「……」
『私の名前は風見幽香。風見鶏の風見に、幽なる香りと書いて風見幽香よ!』
ーーー君に救われた。
「……ねぇ」
『とても綺麗よね、ここの向日葵達は』
ーーー君に支えられた。
「今だから、君に言いたいことがあるんだ」
『だって、だって私達……ーーー友達でしょ!?』
ーーー君に感謝した。ここが僕の居場所だ、って。初めて、そう思えたんだ。
人間に否定され続けていた僕は、本当は認めてほしかった僕は。僕という名の向日葵を、認めてほしくて……僕を振り向かせる、『太陽』が欲しくて。
「……幽香ちゃん、君は、僕にとっての太陽だったんだよ。居場所だったんだよ。君が僕を、初めて認めてくれた人間だったんだから」
ーーー君のために、僕は咲いていたんだ。
そう呟いた後、幽香ちゃんの頬に、一滴の水粒が落ちた。……あぁ、そうか。
「僕は、泣いているのか」
大妖怪たるものが、たった一人の人間のために泣くなんて……いいや、たった一人だけど、されど一人であった人間ーーー風見幽香のために、僕は泣いているんだ。
「今までありがとう、幽香ちゃん……僕の、『太陽』である人間。そして、
ーーーさようなら」
❁❀✿✾
「待ちなさい、日向」
「……なに?」
幽香ちゃんの体を向日葵畑の真ん中に位置する場所に埋め、別れを終えた僕は、とある場所に向かっていた。……が、そこで紫が現れ、僕を呼び止める。
「何処へ、行くつもり?」
「何処って……決まってるじゃないのーーー『人里』だよ」
仇討ち、とは思っていない。そんなの幽香ちゃんも望んでいない。だから、これはただの……『僕の趣味』だ。そう、趣味を行うために、人里に向かっているだけなのだ。
「ーーーそんな殺気を纏っておいて?」
「……」
やだな、僕ってそんなに顔に出てる?あぁ、妖力に出てるのか。全く、僕ってば単純だなぁ……でもね、紫。
「止めないでくれるかな?じゃないとーーー君と殺り合うことになるよ?」
嘘じゃない。僕は今、紫を殺す気でいる。だから、出来れば邪魔をしないでほしいんだ。……あと、
「幽香ちゃんが必死に守っていたもの……それは、なに?」
「……残念ながら、それは破かれて、壊されてしまったわ。それでも、あの子は破片だけでもと、必死で守った。蹴られても、殴られても」
最後に気になってたことも聞けた。中身、すごく見たかったけど。破かれて、壊されたねぇ……紙か何かだろうか。まあ、今となってはもうーーーどうだっていいか。
「それで、殺るの?」
「……いいえ。今回私は、忠告をしに来ただけです。『幻想郷の生みの親』として、『妖怪の賢者』として。ーーーいい?日向。確かに今回人間達はとても酷いことをしたわ……これについては、私が後で処罰をしておきます。ですが、このまま人里へ向かい、襲うと言うのであれば……私たちは、友人ではなくーーー正真正銘の『敵同士』になります」
紫の、凛とした顔から出てきた敵同士という言葉には、とてつもない重みがあった。上級妖怪ですら震え上がるほどかもしれない。
「それでは、私は行きます。ここでやめるも、私の敵となるも、それはあなた次第……けれど、日向。ーーーそれで、あの子は喜ぶの?」
最後に僕の心に刺さるような言葉を残して、彼女はスキマを開いて消えていった。本当に、人の心を揺さぶるのが上手いやつだ。僕と似ている。類は友を呼ぶ、かな。
……けどね、紫。
「もう僕はーーー我慢できないんだよ!!」
こんなことをした所で、幽香ちゃんは帰ってこないし、喜んでもくれない。けどね、それでもさ。ーーー幽香ちゃんが殺されたのに何もしないってことが、僕にとっては我慢ならないんだ。
誰しもお別れというものは、とても辛いものです。それを、どうやって乗り切ればいいのかわかんなくて、むちゃくちゃする人だっています。つまり、人それぞれです。
と、いうわけで。この話もあと少しになりました。更新遅れたり不定期で本当に申し訳ありません。
それでは次回、お楽しみに待っててください!感想や評価などあれば、もっと頑張ります!誤字脱字、ここおかしいなどあれば気軽にお願いします!
P.S.日間ランキング二位になってました!評価くださった方々、本当にありがとうございます!!こんな小説を評価してくださって、本当に!