えっちがしたいTS欠損強化人間少女はえっちができない   作:大利トーリ

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どきどきわくわく事情聴取

 

 

――――ねぇファオ……()()、なんとかなんないの?

 

(うん、なんない。……たぶん)

 

――――なんないかぁ……じゃあしかたないね。

 

(それにさ、このほうが庇護欲そそるじゃん? 多分だけど)

 

――――そそるなら……いいのかなぁ?

 

 

 

 私が軟禁部屋から脱走し、相棒(テア)を掻っ攫って無断で出撃し、独断で救難信号発信源へ向かい【魔物(モンステロ)】駆除を行った件に関して。

 あからさまに『形だけは整えました』といった雰囲気の査問会が開かれ、重要参考人たる私はお偉方たちの前へと引っ立てられ、色々とお話を聞かれているわけなのだが。

 

 まーね、私じゃなくても見て理解(わか)るだろうってくらい……彼らは私を罰する気が無いようだ。

 

 

 

 その理由とはまぁ、私達の手によって救われた輸送隊長からの証言であったり、また小隊長さんから『日頃の生活態度が従順であった』との弁護の声であったり、それらのおかげであることは疑いようも無いのだが。

 それに加えて、私達が自覚している理由として……先方の質問に対する私の態度と、私の身体の状況が挙げられるだろう。

 

 

 

――――わたしとはこんなに『おしゃべり』できるのにね。

 

(だってテアだもん。テアは平気だけど……他の人に声聞かれるのは、なぁ……)

 

――――ずーっと『しゃべらないで』してきたもんね、ファオ。

 

(うん。…………身体に染み付いてるんだろうな、そういう演技っていうか)

 

 

 

 朝に目が覚めてから夜眠るまで……いやむしろ私が眠っている間も、絶えず研究者どもの視線に晒され続ける日々を送っていた私達。

 異分子である『私』の存在を秘匿するため、またコミュニケーションを取るべき相手がそもそも存在していなかったため、これまで『声を出す』という行動を取ることはほぼ無かったのだ。

 

 他に誰も居ないことが明らかな場では、生まれ(変わっ)て初めての開放感とともに饒舌になっていた自覚はあるのだが。

 他人に声を聞かれるような場では……なんというか、身体が勝手に『しゃべらない』状態を取ろうとしてしまうのだ。

 

 

 つまるところ私は、とてつもなく(こじ)らせた『コミュ障』なわけで。

 

 加えて……世間一般の常識に当て嵌めればまだ『子ども』であろう私が、片手と片目を喪っていること。

 このことが、少なくない憐憫の情を向けられる直接の理由であろうことは、もはや想像に難くない。

 

 私本人の――というか元はテアのものであった――この身体が、なまじ容姿が整っていること。

 それが今現在の状況に……彼らの私に対する感情に、より拍車を掛けてしまっているのだろう。

 

 

 まぁ実際、現在の私の状況を第三者視点から見たとするならば……そりゃ確かに、どこからどう見ても『かわいそう』なことこの上ないだろう。

 

 

 

――――ファオが、おしゃべり苦手、ってわかると……みんな、かなしそうな顔するね。

 

(そうだね。多分、っていうか間違いなく……私達のことを『心に深い傷を負った子』って思ってるだろうし)

 

――――さっき、手錠つけようとしたひと。すごく、苦しそうな顔してた。

 

(そーね。手首ないもんなぁ、今の私)

 

 

 

 幸いだったのは、私の『やらかし』に対するお咎めがほぼ無さそうであること。

 軟禁部屋からの脱走に関しては、その手口やらその後の行動やらに対するネタバラシを求められたものの。

 やはりお偉方のほとんどが、私達に対して『同情』と……そして『感謝』の念を抱いてくれていた点が、とても大きかったように思う。

 

 しかし一方で、私にとって不幸だったのは。

 良い意味でも悪い意味でも、私が丁重に扱われようとしているということに、気が付いてしまったこと。

 

 

 つまるところ……このままでは、誰も私とえっちしてくれなくなってしまう。

 そういった空気が広まってしまう可能性が、極めて高いわけなのだ!

 

 

 

――――ぇえ……結局それ?

 

(もちのろんよ。マズいなぁコレ、心の距離が離れすぎた。もっと積極的に距離詰めて……グイグイ行かないと)

 

――――まぁ、いいと思うよ。なんかゆるされたっぽいし……がんばって。

 

(うん、がんばる)

 

 

 

 目指すは、この拠点のマスコット……(けん)用心棒的な、いわゆる愛され万能キャラ。

 

 テアから譲り受けたこの身体、控え目に見ても愛らしい容姿を活かし、一人でも多くの人に好いてもらう。

 また……クソッタレ帝国謹製の機動兵器たる【V−4Tr】(わたしたち)の性能を遺憾なく発揮し、帝国空軍に【魔物】の群れにと大活躍を魅せる。

 そうやって『好感度』を上げてきゃあ……いずれはフラグが建ち、やがてはえっちのお誘いが掛かるってぇ寸法よ。

 

 

 最初はどうなるかと思ったけど、なんだかんだで概ね希望通りの方向に進んでいるのだ。

 めくるめく桃色えっち生活を目指して……この調子で頑張ってこう。ぐふふ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 重要参考人たる少女が退室し、さほど広くない聴取室が静寂に満たされる。

 先程までの重苦しい空気は、査問会の終結を経てもなお霧散することなく……それどころか、より一層の重みを増しているようにも感じられる。

 

 その原因とは……今更言うまでもない。今しがた退室していった『あの娘』である。

 

 

 つい先日、この基地所属の小隊が鹵獲してきた大型機甲鎧……幾度となく我軍の空を侵して回った、通称(コード)凶鳥(キャサリウス)】。

 同時に捕虜となった搭乗者、我々にとって仇敵とも呼べるその者は、しかし。

 

 操縦室内を自らの血で染め、片目と片手を喪い、全てを諦めたかのように無気力な……未だ幼さ残る、少女だった。

 

 

 

 小隊長であるゼファー大尉の指示により、捕虜に対し最優先での救命処置が施され。

 結果、彼女の命を繋ぐこと()出来たのだが。

 

 その一方で、技術部の解析によって得られた情報とは。

 機体ならびに血液や肉片や残骸から掻き集められ、導き出された『仮説』とは。

 

 搭乗者である少女が味わってきたであろう『悪夢』とは……想像を絶するものであった。

 

 

 

「…………確かなのだな? ()()の信憑性は」

 

「残念ながら、な。機体の制御紋の解析には未だ時間を要すであろうが、あの機体が『どのようなモノ』であるかは……ははっ。見ての通りだ」

 

「…………信じ難い……いや、信じたくは無いがな。単機で機甲鎧大隊に匹敵する戦闘能力、などと」

 

「あの【凶鳥(キャサリウス)】めが最初から本気を出しておれば……我々はとっくに敗走していた、ということですか」

 

「恐らくは、な。滞空姿勢制御の安定性といい、断絶障壁の出力といい、光学投射兵装の完成度といい……認めたく無いが、アレはそれ程の代物だよ。技術部の総意だ」

 

「………………ぞっとしない話だ」

 

 

 

 あの機体と搭乗者の『鹵獲』に際し、その経緯はゼファー小隊長からの報告によって共有が為されている。

 あの捕虜……いや、彼女は積極的に攻撃しようとせず、機体性能からの予測と反した()()()()()()()()のみを齎し、最終的には味方であった(はず)の【禿鷲】を背後から撃ち、その後は無抵抗で投降した。

 

 ……見るも無惨な彼女の大怪我(ケガ)は、恐らくそのときのものなのだろう。

 鹵獲機――ヨツヤーエ連邦における識別コード【凶鳥(キャサリウス)】――の操縦室内には、医療処置を受けた彼女本人と生命情報が一致する血液や肉片、更には骨片までもが飛散しており……搭乗者に脱走防止措置として仕込まれていた爆弾が起爆したのだ、との結論に辿り着くには充分過ぎた。

 

 

「頭蓋内……恐らくは眼球、義眼に仕込まれた、遠隔起爆式の爆弾。…………なんと、なんという……」

 

「左手……であったと思われる、その……破片、ですが……明らかに、ヒトの骨とは異なる硬質な『人工物』の存在も、確認されたとのことで……」

 

「……ぅ、ッ」

 

 

 なお……機体と操縦室の見分を担当し、また搭乗者の姿を目撃していた調査官は……あまりにも衝撃的過ぎる惨状と、搭乗者の受けた仕打ちを直感的に悟り。

 嘔吐を堪え切れぬ者や、更には気を失う者まで現れたという。

 

 

 これまで連邦軍に対し、甚大な被害を与えられた(はず)の兵器を持ちながら、しかしその『本気』を我々に向けることをせず。

 古巣であったイードクア帝国に対し明確に弓を引き……その結果、幼い身には酷に過ぎる『破壊』を、その身に受けることとなった少女。

 

 そんな被害者、ましてや補給部隊を危機から救ってくれた少女に対し、罰など与えられるわけがない。

 機体を奪い返し、この基地を内から破壊することも出来ただろうに。逃げようと思えば逃げてしまえるだろうに。

 

 

 ……確かに、脱走までの手際の良さには、思うところが無いわけでもないが。

 ああも言葉少なく、大人しくて無感情で、従順過ぎるほどに従順に振る舞う様子を見せ付けられてしまっては。

 

 当基地における最高責任者、シレーヤ・エライネン大佐の権限によって……戦時における『特例』の一つや二つ、振るわれても仕方ないことなのだろう。

 

 

 

「大前提として、今後もあの子…………いや『捕虜』には、監督役を付けさせる。ゼファー大尉」

 

「はっ。エアリー少尉には引き続き、あの子の面倒を見させます。またオブライエン少尉も併せて、こちらは補助要員として残します。……丁度といいますか、二人の【アラウダ】も修理が必要とのことですので」

 

「すまんな。……第三空隊の面々には、(しば)し苦労を掛けるが……あの子を、頼む」

 

「はッ!」

 

「それはそうと、司令。あの子……いえ、『捕虜』ですが……今後の処遇は、どうなさるおつもりで?」

 

「…………取り敢えずは、(キズ)を癒して欲しいものだが……こんな場所では難しかろうな。可能な限り、好きなようにさせてやれ」

 

「例の機体、解析には時間を要するであろうが……整備と補給のほうは、どうするね? あの娘がいつでも使えるよう、整えておいたほうが良いのではないか?」

 

「……機体もだ。いつでも動けるように、整えておけ」

 

 

 

 あの子が反旗を翻すというのなら、既にその好機を逃している。

 この段階になっても尚動かないというのなら……それは『害意が無い』のか、或いは『いつでも容易く行動を起こせる』か、そのどちらかであろう。

 

 絶大な戦闘能力を擁する機体と、それを使いこなす彼女と敵対するのは、得策とは言い難い。

 また……損得勘定を抜きにしても、あの子とは戦いたくない。

 

 

 心と身体を傷だらけにして、それでもなお我々のために動いてくれた……名も知らぬ少女。

 本来であれば、あのような『得体の知れぬ小娘』に気を許すなど、あってはならないことなのだろうが。

 

 

 残念(幸い)なことに、軍規に(のっと)り厳格に捕虜を戒め、罰しようとする者は……この場に、そしてこの基地には居ないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

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