えっちがしたいTS欠損強化人間少女はえっちができない   作:大利トーリ

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私の秘めたる野望のひとつ

 

 

 ひと晩の休息をはさんで、また併せて道中補給拠点のデータを簡単にではあるが取得して……私達率いるキャストラム行き交易遠征部隊は、作戦の二日目を迎えようとしている。

 

 ヨーベヤ大森林、エマーテ砦近辺の今日の天気は……霧。はっきり言って視界は悪い。

 とはいえ陽が高くなるにつれて次第に晴れてくるだろうし、幸い雨が降りそうな気配も無い。この視界の悪さも一時的なものだろう。……まあつまり、午前中は殊更の警戒が必要ということだ。

 

 

 とはいえ『警戒せよ』とは言ったものの、ひときわ目がいい私達の機体(特務機)がバッチリ護衛を務めているのだ。

 特務機が3機も構えていれば、奇襲を受けることなどほぼ無いだろう。……なんならコッチから奇襲を掛けることだって容易いというか、むしろ普段は割とそんなノリだもんな。

 

 

 

「……と、ゆ、わけ、なのでっ!」

 

≪ぇえ……嫌な予感……≫≪今度は何だ……≫

 

「イーダくん、と、エーヤせんぱいっ! 私達、あいや、私が、手ごろの【魔物(モンステロ)】探す、ので……先行して、【ラディアトル】の、実戦訓練! んういや、試験、ですっ!」

 

≪やっぱりかァー≫≪……だろうな≫

 

 

 進行方向含め、接触の可能性の高いエリアをパパッと走査し、このあたりがちょうど良さげな練習環境であることを確認。

 3機の【リヨサガーラ】と、あとは【エルト】と【セプト】の2機を直掩として残し、この5機は巡航速度でそのままの航行を指示しておく。

 広域走査を行ってみた限りでは、襲われる可能性も危険性も少ないと判断したし、万が一にも何かに襲われたとしてもシスとアウラなら大丈夫だ。

 

 もう一方の、我々3機……私達の【グリフュス】と、イーダくんとエーヤ先輩の乗る【アラウダ】の特殊仕様機。

 こちらはちょっと『寄り道』して、高度を落としつつ先行し、ほぼ進路上に居る【魔物(モンステロ)】の集団にちょっかいを掛けに行く作戦である。通り魔的犯行ってやつだな。

 

 

 マノシアさんのひらめきと知識と技術によって、我々の【アラウダ】に(もたら)された新装備――暫定呼称【ラディアトル】ユニット――の実戦テストを行ってしまおうという作戦であり。

 つまりは……進路の安全確保のための交戦という名目で、新しい『おもちゃ』の試し斬りを行うつもりなのだ。

 

 

――――わたし知ってるよ、これ『チョッテンマンヨー』っていうんでしょ?

 

(職権乱用かな? まぁ自覚はあるけど、大筋としては安全確保の一環だし……隊の安全性向上に繋がるし、まあ無罪でしょ)

 

――――まあ……ファオがそれでいいなら、それでいいけど。シスとアウラがのこってるなら、そっちも安全だろうし。

 

(だね。一本だけど(魔法出力器)持たせてあるし……その状態の【エルト・カルディア】が付いてれば、よっぽどでもなきゃ大丈夫だよ)

 

――――器用だもんね、アウラは。

 

 

 攻撃は勿論、隠蔽や防御や欺瞞や撹乱などなど……(魔法出力器)を手にしたアウラ(【エルト】)が持つ手札は、相当に多い。

 ちょっとやそっとの戦力差で押し切られるようなことなど無いだろうし、ちょっとやそっと以上の戦力差の場合は、シス(【セプト】)が擦り潰してくれる。

 派生型の【ラディアトル】ユニットを実装し、更にすごくなった【セプト】の近接制圧能力は……ちょっと、かなりすごい。私でさえ押し切るのは難しい域に踏み込みつつあるのだ。

 

 

 そんなわけで、()()()のほうは心配いらない。()()()は安心して『テスト(試し斬り)』に臨もうと思う。

 

 

 

「つーまんせる、を、意識するの。ふたりで、お互い、お互いをカバーする。ひとりの隙を、もうひとりが塞ぐの。……わかった?」

 

≪まぁ……言わんとしていることは理解した≫

 

≪おうよ。機甲鎧(この)サイズでやるのは前例無いだろうが……な!≫

 

「えっと、なにかあった、ら、私がフォロー、なので……落ち着いて、かかる。いいね?」

 

≪了解した≫≪オーケーオーケー≫

 

「ん、じゃ……状況、開始っ」

 

≪行くぞ、ッ!≫≪っしゃァ!!≫

 

 

 隊長である私の指示によって、2機の【アラウダ・ラディアトル】が急加速。既にこちらを視認し、向かってきていた【魔物(モンステロ)】の編隊へと突っ込んでいく。

 敵は【蜻蜒種(セントリー)】と【響騒種(クラッカー)】、それぞれ直接物理攻撃と全周音響攻撃が特徴の兵科であり、ナメて掛かると痛い目を見る奴らだ。

 

 厄介なのは、【響騒種(クラッカー)】の音響魔法。効果範囲はそこまで広くないとはいえ、音波に魔力を乗せることで周囲全方向の大気を揺さぶり、機甲鎧の内側や搭乗者に直接被害を与えてくる。

 対策としては、同じ座標に留まらない。音響魔法による影響を一箇所に留めず、破壊効果を生じないように立ち回ること。……もしくは――

 

 

≪嘘ォお!? 当たったァ!?≫

 

≪何故そこで貴殿が驚く!?≫

 

 

 音響魔法の効果範囲外、もしくは効果の減衰するギリギリの距離から、射撃武器にてぶち抜くこと。

 

 空戦機標準装備のアサルトライフルが火を吹き、穴だらけにされた【響騒種(クラッカー)】がバラバラに四散する。

 音響魔法による『削り』を期待し後方に控えていた【蜻蜒種(セントリー)】であったが、その『削り』担当が役目を果たすことなく塵となった以上、無傷の機甲鎧との戦闘を余儀なくされる。

 

 長大な四枚羽を活かし、そこそこ以上の立体機動能力を誇る【蜻蜒種(セントリー)】だが、その攻撃手段はいずれも近距離に限ったもの。

 体当りしたり、(あし)で拘束してきたり、口吻で噛み付いたり……機甲鎧の装甲さえ噛み千切る【蜻蜒種(セントリー)】だが、しかし投射系の攻撃手段を一切持たない。

 

 必然的にゼロ距離での戦闘となるわけだが……私の従順な部下ふたりが駆る【アラウダ・ラディアトル】は、その距離こそが得意とする間合いである。

 

 

 

≪――抜剣ッ!≫

 

≪おっしゃァ!≫

 

 

 腰後ろに追加された物々しい装備から、手頃サイズの筒形パーツを引き抜く両機。イーダミフ機は右側の一本、エーヤ機はユニット両側の二本を、それぞれ手に携える。

 直後、追加装備【ラディアトル】の動力機関が唸りを上げ、それと同時に引き抜かれた筒型部品(グリップ)から、青白い光が立ち上る。

 

 イーダミフ機の構えたものは、機甲鎧の全高に届かんばかりの直剣状。持ち手を二本構えたエーヤ機は、半分程の長さのものが……右と左で一本ずつ。

 

 腰後ろの機構本体で構築された光条魔法は、その出力を分離したグリップ部へと『転移』させ、高収束光条魔法(レーザー)による刀身を形成する。

 動力機関を直接組み込むのに比べれば、当然魔力のロスも大きい。更に『転移』魔法の発現にも出力を消費するわけで……出力や切断力は【ベイオネット】に及ばないし、また遠距離射撃モードも搭載していない。

 

 

 しかしながら、機甲鎧の装甲(に匹敵し得る強度のヨーベヤ産巨木)や【魔物(モンステロ)】に有効打を与えられる程度の、充分といえる出力確保に成功したそれは……私の思い描いていた『レーザーソード』の、完成形と言って差し支えないもの。

 

 取り回しのために『やむを得ず』といった感じでの『動力分離構想』だったが……出力転移有効距離の兼ね合いから、グリップを落としたり奪われたりしたら光条魔法(レーザー)の発振が停止する、という特徴も併せ持っている。

 そのため、この強力な装備が奪取され、敵に使われてしまうことを未然に防げるので……これはこれで、とても良かったと思う。

 

 

≪うーわ、すーげぇわコレ。……機甲鎧で剣術、意外とイケちまうもんだな≫

 

≪……だな。この取り回しで、【魔物(モンステロ)】相手にこの『斬れ味』は……確かに、馬鹿にならん≫

 

≪つっても、当たり前だが【魔物(モンステロ)】に近付かなきゃなんないわけで……まー、そこは『男の見せ所』ってコトなんだろうが……≫

 

≪それに、自傷の危険性もな。……刃先を立てる必要も無い、この斬れ味を自身に向けてしまえば……十全に振るえるようになるまでは、少なくない修練を要するだろう≫

 

 

 動力部分を機体そのものに装備させることで、手持ち部分の圧倒的な軽量化に成功したとはいえ……イーダくんの言うとおり、扱いにはそれなりの『慣れ』が必要となる。

 剣の『(みね)』部分が存在しない(=刀身部分に触れれば自身も大ダメージを負う)こともそうだし、刀身を形成するほどの光条魔法展開による物理的な反作用も、僅かとはいえ常に生じているのだ。

 

 ただ……そのへんに慣れさえすれば、リターンも大きい。これまではあまり重要視されていなかったが、近距離戦闘によるメリットももちろん存在する。

 流れ弾の危険が無いので、要守護対象が近かったり、居住地の上空であっても【魔物(モンステロ)】の制圧が可能だったり。

 大量の予備弾を持ち運ばなくて済むので、機体の軽量化に貢献できたり……あるいは、継戦能力が大きく向上したり。

 

 これまでは『有効打となる武器が限られる』ことから、あまり発展してこなかった分野なのだろうけれど……私達による『機甲鎧の剣術試合カッコいいでしょ』ロビー活動を始めとする働きかけによって、寛容な雰囲気にはなりつつある(気がする)のだ。

 そこへこの『軽量かつ高威力の近接武器』が加われば、大きな流れを引き起こせるかも知れない。……そのためにも。

 

 

「んー…………忌憚のない、意見、は……うれしい。あとで、報告書、の、協力……おねがいしたい、ですっ」

 

≪あぁ、心得た≫≪りょーかい≫

 

「大丈夫、ちゃんと、私、お礼……しますっ」

 

≪………………≫≪………………≫

 

「なので、お礼、なんでも言っ――――」

 

≪さて!! じゃァ駆除ってか実戦テストも無事に終えたし! 早いトコ本隊と合流すっか!!≫

 

≪了解した! 危険は少ないとて、絶対では無いからな! 急ぎ合流すべきだろう! 隊長殿!≫

 

「えっ? あっ、そ、そう。そう、でしゅ」

 

 

 テストも良い結果で終わったし、時間的なロスもほぼ無い。今からアウラたちの本隊と合流して航行を続けて、それでも予定通りに到着できるだろう。

 進捗はきわめて順調、しかもプラスアルファの成果も持ち帰れる。これはいっぱい褒めてもらえるぞ、まちがいない。

 

 

 うれしい予感に心躍らせた私は、とりあえずおシゴトを無事にやり遂げて帰るために……みんなで一緒に作戦を成功させるために、改めて気合を入れ直すのでした。

 

 

 

 


 

 

 

――――ところで、ファオはあの【ラディアトル】つかわなくていいの?

 

(なんかね、住めば都っていうかね。長距離射撃モードもあるし巡航形態でも発砲できるし、なんだかんだ【ベイオネット】も結構いい子だなって。あと【グリフュス】は腕が長いから、なんかコッチのほうが振り回しやすい気がする)

 

――――そう? じゃあいいのかな。まーじっさい【ラディアトル】積むにしても、わたしのおしり(テールコンテナ)に収まるように調整しないとだもんね。整備のひとに迷惑かけ…………ファオのえっち! 変態!!

 

(ま、まだ何も言ってないでしょう!!)

 

――――考えたでしょ! わたしのおしりに収まるって聞いて変なこと考えたでしょ! もう! わたしわかるんだからね!

 

(えへへ…………)

 

 

 

 

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