俺は料理さえできればいい   作:サイリウムぶん回し隊

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君は完璧で究極のアイドル!


始まりの物語 昔ながらのチャーハンを添えて

本日も部活動を始めていこう・・・と思ってはいるが

 

 

「・・・・・」

 

 

ご覧の通りこの部屋には俺以外誰もいない。虹ヶ咲学園に入って男子と一緒に料理を始めたい・・・もとい料理友達を作りたくて部を設立した。最も5人集まってないから仮の同好会という立ち位置になってるけど・・・

 

 

このマンモス校ならきっと料理好きな男子(同性)と出会える。そう思ってたけど誤算だったことがある。それはこの学園、ちょっと前に共学化したばかりで生徒の9割以上が女子らしい。マジで誤算だった。受けた人多かったらしいけど男子全然いないのは定員が少なかったという話だ。

 

だからか、この学園で男子全く見なかったのか・・・・

 

 

しかしここへ早一年、新入生獲得すれば部に昇格できる。さてとチラシを作るべきか、色々考えているがなかなかいい案が浮かばない。

 

 

まあ勧誘のことはさておき今日の部活動を始めよう。ここ男子料理研究部は日々色んな地方や国、基本的なジャンルからマイナーなジャンルまでさまざまな料理をする部活動である。ちなみに調理器具は他の部から交渉して余ったのを借りている状態だ。ちゃんと部になったら部費で申請するつもりだ。

 

 

というわけで今日はこちらを作ります。初心に帰ってチャーハンを作っていきましょう。チャーハンは基本的な料理で作れる人が多いのではなかろうか。ただ単にチャーハンつくって終わりではあまりにも普通すぎる。ここは料理研究会だから例えチャーハンであろうと最高に美味しくなるように追求しなければならない。例えば鍋をふって炒めるときの力加減や火加減、さまざまなズレによって味が変わってしまう。限りなく最高だと思えるチャーハンを作っていこう。

 

 

まずチャーハンを作るためにおいて大切なのはパラパラ感を出すことだ。1回の調理に使う食材はなるべく少なめにして調味料をしっかりと全体に行き渡るようにする。多くても2人分までが限度だろう。とまあ前置きはこんなところだろう。誰に話してるというわけでもないし。

 

 

「まずは基本その1、ごはんだ」

 

 

水洗いしてザルにあげ、ペーパータオルで水分を取る。ここで水のきり方があまいとべちゃっとした仕上がりとなる。

 

 

さてと次はフライパンにサラダ油を入れて全体になじませ、しょうがを加えて強火にかける。

 

ここでワンポイントだがしょうがは『風味づけ』ではなく、油の『におい消し』という理由もある。覚えておくと他の料理にも活かせるぞ。

 

それで油を十分に熱したらあらかじめ溶いた卵を一気に加え、木べらで大きくかき混ぜる。半熟になったらさっきのごはんを入れてしっかりと炒める。ある程度絡んだら塩と胡椒をふってさっと混ぜる。

 

 

 

あとは具材だ、今回はチャーシューとえびだ。具材は好みでいいだろう。ベーコンとかウインナーとか結構色んなもので代用が効く。そこがチャーハンの最大の強みだろうな。軽く炒めて青ネギを散らして最後の仕上げに醤油を垂らしてフライパンで全体に馴染むようにあおれば完成だ。

 

 

丸いお椀に綺麗に敷き詰めて平皿に落す。これでお店とかでよく見る形の昔ながらのチャーハンの完成だ。さてといつもの味見役に連絡でも・・・と思ったらノックの音が鳴った。

 

 

まだ電話してないけど察してくれてもう来てくれたのかなと思いつつどうぞと一声かける。

 

 

「あのーっ失礼します。ちょっと聞きたいことが・・・ってなにこれ!すごく美味しそうな匂いっ!」

 

 

入ってきたのは2人の女の子、リボンの色からして2年生。ということは俺と同い年なのか。

 

 

「侑ちゃん・・・」

 

「おっとそうだった。すみません、探してる部活がありましてスクールアイドル部って知ってますか?」

 

「スクールアイドル部?」

 

 

突然聞いたことない部活動の名前が出てきた。スクールアイドル部か聞いたことないけどアイドルでもするのだろうか。まあ微塵も興味ないけど・・・

 

 

「いや知らんな・・・」

 

 

そもそも同好会だけでも100個以上ある。そんな数の同好会を把握してる奴なんているわけが・・・・

 

 

「そっかあ・・・残念。はぁ、いっぱい動き回ったらお腹空いちゃった」

 

「ちょっと侑ちゃん!とりあえずスクールアイドル部を探さないとでしょ!ごめんなさい、失礼しま・・・」

 

 

 

待てよそう言えば結構前にスクールアイドルの話をしたことはあったな。微塵も興味なかったから聞き流してたけどそもそも生徒全員を把握してるなら部活と同好会も全て把握してるのでは?

 

 

「いやっ、知ってるわそれ」

 

 

 

 

「「えっ???」」」

 

 

 

そう言って2人は驚くような顔でこっちを見た。いやちょっと語弊はあった。

 

 

 

「あっ、すまん。正確にはスクールアイドル部の存在を知ってるやつを俺は知っている」

 

 

同好会だけでも100個以上あるから把握してない奴なんていないのが普通だ。教師陣ですらきっと把握しきれてない。それほどこの学園はバカでかい。けど知り合いに全校生徒の名前を覚えてる化け物・・・じゃなくて生徒を俺は知ってる。そいつなら基本的に生徒の味方になってくれるし力になってくれるだろう。

 

 

「今からそいつここに呼ぶけどいいか?」

 

「お願いしますっ!有力な情報ゲットだね。歩夢」

 

「そうだねっ、侑ちゃん」

 

 

 

というわけで知り合い・・・というより協力関係にある人物を呼び出す。どうせさっきメールで呼び出すつもりだったし丁度いいだろう。この学園で唯一の友人・・・と言えばいいのか分からないが今日の分の感想も聞きたいし呼び出そう。

 

 

「メール返ってきた。仕事が終わったら直ぐに向かうだって」

 

「ありがとうございます、私は2年の普通科、高咲 侑。それでこっちが幼なじみの歩夢です」

 

「同じく2年普通科の上原 歩夢です」

 

 

そう言ってツインテールの黒髪?の女の子が高咲 侑さん。隣にいるのが上原 歩夢さんだ。普通科か、ならあんまり会わないな。選考学科違うし。

 

 

「俺はライフデザイン学科2年の片山 夏樹だ。ここの男子料理研究会の部長をしている」

 

 

ちなみに他の部員はいない。早く部に昇格させるにも現状あいつの力は必要不可欠なところなんだが・・・

 

 

「それで料理を作ってたんだ・・・美味しそう」

 

「ちょっと侑ちゃん」

 

「いやぁ、だってこんなもの見せられたらお腹空いてくるじゃん。歩夢もそう思うでしょ?」

 

「けどだからって・・・」

 

「なら食っていくか?」

 

「いいの!食べたい食べたい!」

 

 

これはいい、いつもは同じ人物からの感想をもらってばかりでマンネリ気味なところがあった。たまには別視点の感想も欲しいと思ってたところだ。しかし俺の分がなくなるのはいいが・・・

 

 

「うーんっ!なにこれパラパラしててすごく美味しい。醤油の風味が引き立ってていくらでも食べられちゃうよ」

 

「侑ちゃん、がっつきすぎだよ」

 

「だってこんな美味しいもの食べたら止まらなくなるよ。歩夢も食べてみなって」

 

「えぇ・・・・」

 

 

高咲さんは自分の思った通りに行動してる反面、彼女は遠慮する性格なのだろうか。まあ材料はまだ1人分残ってるしチャーハンだから直ぐに用意もできるしせっかくだし感想は色んな人に聞けるのがいい。今後の参考にしておきたい。

 

 

「いいよ、上原さんだっけ?材料はまだ残ってるし1人分減っても問題ないよ。それに今から来る奴は真面目で寛大なやつだ。話せば分かってくれるって」

 

 

「・・・それならまあ」

 

 

 

そう言いながら渋々と上原さんはレンゲを受け取って一口頬張る。

 

 

「すごいっ、侑ちゃんの言った通りパラパラしてる。けどこってり感はそこまで強くないからすごく食べやすい」

 

 

チャーハンは他の具材と混ぜることによって味がうつるから変に調味料を加える必要はない。一般では仕上げにごま油を入れることもあるけど今回は醤油がその役目も請け負ってるから必要ない。

 

 

久しぶりにあいつ以外でこうやって喜んでくれる姿を見たな。いつもあいつの美味しそうに食べる表情が大袈裟だなと思ってたけど高咲さんも上原さんも似たような反応を見せてくれる。

 

やっぱりこうやって誰かと食べるご飯は・・・同じ食卓を囲むのっていいんだなと思う。最も自分は今食事してないけど・・・

 

 

 

「ごちそうさまでした。すごく美味しかったよありがとね夏樹くんっ」

 

「っ!!!」

 

「どうかしたの?夏樹くん」

 

「いやっなんでもない」

 

 

こうやって距離をぐいぐい縮めてくるのはあんまり好きじゃないんだよなぁ。けどそんなことを言ったら部室棟のヒーローも距離が近いような気がする。まあそういう話があるらしく俺はまだ会ったことないから詳細は知らないけど・・・

 

 

「侑ちゃん、いきなり男の子に名前呼びもどうかと思うよ」

 

「えーっ、そうかな。ダメだった?」

 

「別にダメじゃないが・・・」

 

 

それにこの先関わるかもわからないからここで名前呼びされてもってところはぶっちゃけある。

 

 

「ごめんなさい、侑ちゃんがグイグイいく性格で。あっ、チャーハン美味しかったです。ごちそうさまでした」

 

「それは何よりで。お粗末様でした」

 

 

さてと米粒一つ残さずに完食してくれて本当にありがたい。そういえば忘れてたけど要件はスクールアイドル部の存在だったよな。時間的にそろそろ来ると思うが・・・

 

 

と思っていたらノックの音が鳴った。どうやら来たみたいだな。

 

 

「失礼します、こんにちは片山さん」

 

「よっ、来たか。中川」

 

 

そうっ、俺が部室に呼び出したのはこの虹ヶ咲学園の生徒会長こと中川 菜々だ。この学園の全てを把握しており全ての生徒および全ての部活、同好会を把握している非常にやばい・・・じゃなくてすごく頼りになる人物である。その特性を生かしてこの部活動に興味のありそうな男子生徒を探す依頼を彼女にしている。

 

その対価として俺が作った料理を中川に食べてもらう。一種の協力関係と言ったらいいのだろうかお互いの利害のためにこの関係を始めて早一年か。

 

 

「今日の料理が完成したと聞いて来たのですが・・・・」

 

「あっすまん、さっきこの子達に食べさせたわ」

 

 

まああと1人分残ってるしメニューもメニューなのですぐに用意できる。許してくれや中川さんやと思って本件を伝えようと思ったら・・・・

 

 

「・・・・・」

 

「あれっ・・・」

 

 

普通なら仕方ないですねと言って許してくれる。俺の知ってる中川 菜々はそういう人物だ。けど実際彼女の反応を見るとほっぺを膨らませて今にも怒り出しそうな勢いだった。

 

 

「あのっ、中川さん。怒ってます?」

 

「・・・なんのことですか?」

 

「そのっ・・・声のトーンがいつもより低くありませんか?」

 

「・・・気のせいじゃないですか?」

 

 

間違いない、完全に今の中川は怒っている。なんで怒ってる?まさかこの2人にチャーハンをあげたから?いやいくらなんでもそれだけであの中川が怒るなんてとても考えにくい。何故だ、何故こんなことに・・・

 

 

 

「あっ、そういえば中川に聞きたいことが・・・」

 

「・・・その前に何か言うことがあるんじゃないですか?私、あなたの料理が食べられると聞いて急いで仕事終わらせたのですよ?それなのにこの仕打ちですか?ええそうですかそうですか」

 

 

気のせいでもなんでもなかったわ。ええっ、中川ってそんなキャラだっけ?確かに呼び出した後にこの2人にチャーハン食べさせたけども。それだけで怒るか普通?そもそも作り直してから呼び出せばこんなことになってなかったから俺にも非はあるかもしれないが・・・

 

 

「それに関しては悪かったって本当に。とにかくチャーハンは今すぐ用意する。その代わりそこの2人の話を聞いてやって欲しい」

 

「・・・普通科の2年の高咲 侑さんと上原 歩夢さんですね」

 

「は、はいっ!・・・ってあれっ?なんで私たちの名前を。会ったことないですよね?」

 

「生徒会長たるもの、全生徒の名前は覚えているものです。改めまして中川 菜々といいます。それで話とは何ですか?」

 

「探してる部活がありまして・・・スクールアイドル部なんですけど」

 

「・・・っ!」

 

 

その瞬間だった。料理しながらだったからちゃんとは見てないけど一瞬だけ中川の顔が曇ったような・・・・

 

 

「・・・そうですか。ちょうど私も部室に用があったのです」

 

「もしかして生徒会長もスクールアイドル部ですか!もしかしたら優木 せつ菜ちゃんのことも!」

 

 

そういえば全生徒把握してるって言ってたな。と言うことは同好会の在籍メンバーも中川ならある程度分かるのかもしれない。

 

 

「・・・少し場所を変えましょう。ついてきてください。ごめんなさい片山さん、すぐ戻ります」

 

 

 

それだけ言って中川は2人を連れて出て行ってしまった。あまり明るい話題では無さそうだけど・・・そして数分後に中川は戻ってきた。右手にはスクールアイドル部のプレートが握り締められていた。

 

 

「中川?」

 

「スクールアイドル部は確かに存在していました。けどメンバー間で揉め事があり部長から廃部にしてくれと言われたのです」

 

「・・・つまり今の学園にスクールアイドル部は存在しないと言うことになるんだな」

 

「そう・・・ですね」

 

 

そう言ってこれ以上の会話がなかった。こんな暗い表情をした中川は見たことない。いつもはうるさいくらい明るい性格(・・・・・)なのに。なんだろう、まるで別人と話してるような感覚だ。

 

 

「まあアレだ。なんて言えばいいのか分からないけど辛くなったらここにこい。作って欲しいものがあったら作ってやるから」

 

 

事情が分からないから俺には今の中川をどうにかすることはできない。深入りしてもきっと話してはくれないだろう。いつか彼女から打ち明けてくれるのかは分からない。けど流石に今の中川を放っておくことはできない。

 

だったら俺は俺のできることをやるだけだ。俺は中川本人には言ってないが割と救われているんだぜ。もし可能ならお前が苦しんでいるなら友として助けてやりたい。何ができるかなんて分からないけどな。

 

 

「ありがとうございます。少しですが軽くなったと思います」

 

「チャーハン食っていくか?」

 

「はいっ、それはもちろん!」

 

少しは元気になったんじゃないかと?思いながらチャーハンをよそう。しかしこの時の俺はまだ知らない。今日の出来事を機にスクールアイドル部に深く関わることなど。






作者からの謝罪。前書きの一文はアイドル違いのOPでした。深くお詫び申し上げます。知っての通り重曹を舐める天才子役とかは本作には出てきません。ご了承ください


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