俺は料理さえできればいい 作:サイリウムぶん回し隊
死活問題が起きてしまった。プライベートに使うお金が底をつきそうなのである。と言っても今の俺には料理以外の趣味はほとんどない。料理以外の出費といえば雑誌を買うことくらいで男子にしては珍しく?ゲームする趣味も漫画やアニメを見ることもあまりない。
今まではわけあって臨時収入があったのだがそれももう当てにならない。となると・・・
「バイトをするか」
高校生にもなって早1年とちょっとなのだが意外なことに俺はバイト経験がない。将来は料理に携わる仕事がしたいなと思いながらもどういう系統がいいのか分からない。ファミレスとか喫茶店とか色々あるけどできればホールでなくキッチンスタッフが好ましいが・・・
とりあえず色々聞きたいことがあるのメールすることにした。こういう時に頼りになるのはあいつしかいないだろうと思いながら。昼休みの集合場所は部室にする。そして授業を終えて別の問題が起きた・・・・
「うっ、そういえば今日、調理実習だったのすっかり忘れてた」
のにも関わらず弁当を作ってしまった。いつもは忘れないのだけど本当にうっかりしていた。さてとどうしたものか・・・まあそれは後で考えるとしてそろそろだろうかと思っていたらノックの音が鳴る
「こんにちは、夏樹くん」
「来たか・・・中川。と・・・・」
中川の後ろにもう1人女の子がいた。確かこの前、ねこと交渉してた時に出会った情報処理学科の・・・
「天王寺だったか?」
「・・・正解。璃奈ちゃんボード、グッジョブ!」
この前会った天王寺 璃奈だ。常時ボードを持ち歩いてるなんとも感情表現が独特な子である。
「さっき、そこで出会って一緒にお昼でもと思ったのです。もしかして璃奈さんいたらまずかったですかね?」
「いやっ、むしろ天王寺にも聞いてもらった方がいいだろ」
「どうかしたの?」
「夏樹くんが私に相談があるらしくて」
そう、相談するために呼び出したのは生徒会長こと中川 菜々だ。バイトをするに当たって学校の申請とか諸々の情報を確認しておくのとあとはどんなバイト先があるのか。俺の地元はもっと遠い場所だからこの辺りの知識はそこまであるわけでもない。
バイト先の相談なら天王寺を交えても問題ない。少しでも人数は多いに越したことはないからな。
「実は色々あって金欠気味でな。バイトをしようと思ってるんだけど中川、この学園ってバイトの申請いるんだっけ?」
「そうですね、バイトなら申請さえしてしまえば問題ないですよ」
元々、虹ヶ咲学園はバイトをしてる人が多い。だが俺はあまり知人と呼べる人がいないから確実な答えが返ってくるであろう中川に聞くことにした。向こうはどう思ってるが知らないが一応中川は女子の中では信頼のおける人物だと認識している。色々助けてくれたしな。
「それで問題はそのバイト先なんだよなぁ。この辺でいいところあったら教えて欲しいんだ。できれば飲食店の・・・・」
ぐぅぅぅぅぅぅうううう
「・・・・・」
「・・・・・」
中川が顔を真っ赤にしてお腹を抑えた。なんか申し訳ないことをしてしまった。お昼時間だしお腹空いてるよな。
「ち、違うんです夏樹くんっ、璃奈さんっ。これはそのっ、朝は生徒会の仕事があって早く出たのでそのっ・・・時間なくて朝食食べていなかったものですから」
「・・・うんっ本当に悪かった。とりあえずお昼を交えながら話を進めていこう」
「うん・・・・」
「そんなかわいそうな目で見ないでください」
というわけでとりあえずなんとか中川を宥めた・・・天王寺が。それぞれ2人はお昼を取り出す。中川は弁当を持ってきてるみたいだが・・・
「天王寺・・・その菓子パンは?」
「お昼ご飯だけど・・・」
天王寺の取り出したのはなんと菓子パン1個だけだった。なにそんな当たり前のこと聞いてるの?というのやめてほしい。まじで菓子パン一個なのか・・・
「お弁当とか作らないのか?」
「私は料理得意じゃないし・・・親も仕事が忙しくてあまり帰ってこないから弁当とか作った料理を食べる機会がない」
「・・・そうか」
そう言いながら天王寺は袋を開けようとする。無表情ではあるがどこか寂しそうなそんな・・・まあ俺にはどうでも・・・
「もうずっとこのスタイル。3〜4年近く続けてるから問題ない」
「いや待て!それは問題あるだろうが!」
「夏樹くんっ、どうしたんですか!いきなり」
「びっくりした・・・・」
思わず大声をあげてしまった。いやっ、人様の家庭など正直どうでもいい。知られたくないことや聞かれたくないこともあるし、何も明るい話ばかりでもない。そういうことに関してはとやかく言わないが問題なのはその生活を3、4年近く続けてるということ。
「菓子パンだと栄養も偏るし力もあまり出ないだろ。それに天王寺はスクールアイドル部だったよな?中川」
「はいっ、最近ではありますが新入部員が
となると身体は動かすだろうしアイドルのことは詳しくないが柔軟やトレーニング、ダンスの練習とか色々するだろう。となるとスクールアイドルもどっちかといえば内容は運動部よりだ。
「だったら尚のこと体調管理には気をつけないといけないだろう。料理ができなくても今の時代はそれを改善する方法がある。がそれはそれとして・・・」
俺は持ってきていた弁当箱を取り出した。料理、栄養学等の専門知識を身につけてる俺の前で栄養失調とかで体調を崩されると後味が良くない。今日はたまたま調理実習もあったし俺はお昼を食べる必要がない。授業終わり前に済ませてるしな。
「とりあえず料理や栄養学を学んでる俺の前でそんな食事をしてるのは見てられない。てなわけで取引だ天王寺、そのパンとこれを交換しろ」
「けどそれは片山さんの弁当・・・」
「心配するな、さっき調理実習あったからお昼は必要ないんだよ。それにお弁当はナマモノだ。このまま放っておくと腐ってしまう。けど菓子パンなら数日は持つだろ」
まあ実際に菓子パン食べることなんてあまりなかったから少し興味があるのだがまあそれはそれだ。
「だから心配するな」
「・・・分かった。ありがとう片山さん」
そう言って天王寺は素直に交換を受け入れてくれた。もっと頑固なところがあるのかと思ってたから少し意外だ。なんというか天王寺は遠慮しそうなイメージあったから。
「美味しそう・・・璃奈ちゃんボード、ごくりっ」
「本当に美味しそうですね。夏樹くんの弁当」
「せつ菜さんと片山さんはよく一緒にご飯食べたりしないの?」
「そういえばお昼一緒にするのは何気に初めてですよね」
「そうだな・・・中川はいつもお昼どうしてるんだ?」
「仕事や打ち合わせも兼ねてだいたいいつもは生徒会室で食べてますね。ですが今日は朝のうちに仕事を済ませたのでたまには同好会の皆さんと一緒に食べようかと思ってたのですが・・・」
「・・・なんかすまん」
俺が相談なんて持ちかけなければ中川は同好会のみんなを誘うつもりでいたらしい。けどその前に俺がメール飛ばして相談なんてお願いしたばかりに・・・
「天王寺はどうなんだ?」
「私は愛さんとよく食べてるけど今日は愛さんはバスケ部の助っ人の打ち合わせで今日はいない。どうしようかと思ってたら途中でばったりせつ菜さんとあって・・・」
「とりあえず夏樹くんの相談もありますし昼休みは長くはありません。早く食べましょう!」
「それじゃあ片山さん、いただきます」
「おうっ」
そういえば誰かとお弁当食べるなんていつ以来なんだろうな。小学校の給食の時以来なのかもしれない。まあ俺はお腹空いてないんだが・・・
「この卵焼き・・・すごく美味しい。程よい塩味が効いてる」
「あれっ・・・この前作っただし巻き卵は確か甘いやつだったような・・・」
「お前が甘い卵焼き好きって言ったんだろうが。俺は甘いものは好まないから本来は塩で味付けしてるんだよ」
「そ、そうでしたね。あはは・・・」
「せつ菜さん、顔真っ赤だけど大丈夫?」
「だ、大丈夫ですよ」
そう言いながら中川は少しペースを早めて食べている。ゆっくり食べるタイプだと思ってたけど意外だ。そんなにお腹空いてたのだろうか。
「本当に美味しい・・・この前のバナナのパウンドケーキも美味しかった。愛さんすごく喜んでたよ。今度お礼したいって」
「別にいいんだが・・・」
「誰かの手料理を食べたのは久しぶり。ありがとう片山さん」
そう言って天王寺は真顔のまま食べ進める。美味しいのならいいのだがまじで表情筋動かないから不安になる。そうなると何がなんでも俺の料理で表情を崩したくなってくるな。リサーチでもしてみるか。
「あのっ夏樹くん。私も・・・」
「お前は自分のあるだろ」
「そうでした・・・」
「そういえば中川は自分で作ってるのか?」
「いえっ、作れる時間がないので朝はお母さんに用意してもらってます。けど夏樹くんの作ってるお弁当も気になって気になって」
「いろんなおかずあるけど特にこの唐揚げが美味しい。カラッとあがってるけどもしかして唐揚げも作ったの?」
「ああっ、唐揚げは好物の一つだから得意だぜ。めちゃくちゃ研究したからな。どうやったら冷めてても美味しい唐揚げ作れるかを。まあいつか出来立ても食べさせてやるよ」
「それは楽しみ・・・」
「出来立てですか!私も食べたいです」
「お、おうっ・・・」
それはいいのだがさっきからテンションめちゃくちゃ高くて見た目は中川 菜々なのに話してるのが優木 せつ菜みたいで感覚バグりそうである。というよりむしろこっちの性格も本来の中川なのかもしれないけど。
「それで片山さんの相談の内容だけど・・・」
「そうでした、バイトの件でしたよね」
「ああっ、実はバイトをしようかと考えていたんだけどあんまり外出とかしないし色々タウンワークとか見たけどいまいちピーンと来なくてな、なんか飲食店でいいバイト先とかあったら教えてくれるといいんだけど」
できればホールではなくキッチン募集のところとか。
「うーんっ、そうですね。色々ありますけど夏樹くんの料理の腕ならキッチンの方がいいですよね。少し調べてみますがすぐに見つかるかどうか・・・・璃奈さんはどこか知ってますか?」
「・・・知ってる」
「そうですか・・・やはりそう簡単には・・・璃奈さん今なんて?」
「知ってる。飲食店でいいところを。ちょうどバイトを1人探してる。それもキッチンのスタッフ」
「本当ですか!?」
思わず中川と同じ反応も俺もした。なんと意外なことに天王寺が知っているらしい。詳しく聞くと和食をメインに扱う個人店らしい。一応短期という形ではあるが人員が不足してるので1人募集をかけてると天王寺は話した。
「和食のお店で中でももんじゃ焼きを専門としている」
「もんじゃ焼きか・・・」
そういえばもんじゃ焼きの発祥もこの辺だったよな確か。東京のローカルフードって言われてるけど地方出身なので実際食べたことないんだけど。お好み焼きと似た粉もののジャンルだっけ。作ったことはないがお好み焼きと似たような感じだったら問題ないだろう。
「もんじゃ焼き・・・それってもしかして」
「そうっ、愛さんが今ウチでバイトしてくれる人を探してるらしい。これだけ料理の技術あってなおかつ栄養学とか履修していて時間にある程度融通が効く。これ以上にいい物件は他にないと思う」
「そうですね!そうと決まれば愛さんに伝えましょう!そういえば夏樹くんは愛さんとはまだ会ったことなかったですよね」
「そういえば何回か名前が出てきてたな。どちらさんだ?」
「宮下 愛さん、璃奈さんと同じく情報処理学科で学年は夏樹くんと同じ2年生です。部室棟のヒーローって言えば分かりますか?」
「まあ噂くらいなら」
コミュ力おばけな上に運動神経抜群で色んな部活で助っ人をしているとか。男子の中でもすごく人気のある生徒で告白が絶えないという噂がある。部室棟のヒーローって言ったら俺でも聞いたことがある超有名人だ。実家が飲食店なのか。
「そして璃奈さんと一緒に入った。もう1人のスクールアイドル部のメンバーです」
「そういえばさっきそんなこと言ってたな」
それがどうやら彼女ということか。正直あんまり女子と話すのは得意ではない。中川や控えめな性格である天王寺はいいけど高咲さんみたいにグイグイ来られるのはあまり得意ではない。というより優木 せつ菜の時のこいつも性格違いすぎて未だに困惑している。というよりなし崩し的に名前呼び許してしまったけどまあ何気に付き合い長いしいいかと思って諦めた。
そして宮下 愛というのは恐ろしくコミュ力高いらしい。俺は果たして無事に彼女とやりとりできるのか不安すら覚える。
「お弁当のお礼にとりあえず私が愛さんに話を通してみる」
「なんか悪いな。天王寺」
「久しぶりに美味しいお弁当食べれて嬉しかったから問題ない。それに基本的に男の人は苦手だけどあなたなら大丈夫」
「う、うんっ。それは褒められてるのか?」
「褒めてる、最初はヤバい人だと思ってたけど」
「そのことは忘れてくれ・・・」
そうなると俺と天王寺って出会いは最悪という形になるのか。まあ自分が拾った猫に対してあんな顔で迫ったら警戒されるよな。自覚なかったけど。
「とりあえずバイトが決まったら報告お願いしますね。バイトの許可申請を受理しておきますので」
「おうっ」
そんなわけでバイト先はなんとかなりそうだ。履歴書とかいるかな?とりあえず色々用意しないと。あとスーツ、じゃなくて学生だから虹学の制服でいいか。とりあえず準備だけはしておかないとな。
「それで片山さん。また一緒にお昼食べてもいい?」
「私も迷惑でなければご一緒してもいいですか?」
普通なら断るけどこの2人とはそれなりに有効関係築けてきてるし天王寺ははんぺんとの件もある。あの可愛い白猫を触るためにも天王寺とは仲良くしておく必要がある。けど・・・
「中川はともかく天王寺。お前にはひとつ条件がある」
「条件?」
「少なくとも俺がみてる前で昼飯を菓子パンで済ませるのは許さない。さっきも言ったがスクールアイドルをやってるなら少しは体調や健康管理にも気を使うべきだろう」
「・・・善処はする」
と言っても天王寺は料理できないしコンビニ弁当も栄養面での心配もあるしきっと天王寺だと食べきれないだろう。見た感じ少食なのは分かったし。
「だから・・・一緒に昼食べる時は前日に俺に連絡しろ。天王寺の弁当も用意してやるから」
「えっ!?」
そう言って驚いたのは天王寺でなく中川だった。天王寺ならともかく中川、なんでお前が驚くんだよ。
「いいの?」
「少なくとも俺がみてる前での話だ。お昼の菓子パンも別にたまにならいいけど天王寺はその生活を3、4年続けてるとなると流石に心配になる。食費折半でいいなら天王寺の弁当も作ってやるよ」
本当は食費も出せればいいんだけどバイト探すレベルでお金に困ってるので勘弁してほしいところだ。実際弁当作るなら2人分でも3人分でも手間にならない。問題があるなら食費だけだ。
「嬉しい・・・片山さんがいいならぜひこっちからお願いしたいくらい。それじゃあ片山さん。明日も一緒にお昼食べる」
「明日も!?まあいいけど・・・中川もそれでいいか?」
「・・・・・」
「あのっ・・・中川?」
「プイッ」
そう言って中川は頬を膨らませてそっぽを向いた。どうやら怒ってるらしいけど俺、なんかしたか?悪いこと・・・
「片山さん・・・耳貸して」
「いいけど・・・」
ごにょごにょと耳打ちで天王寺が中川の不機嫌な理由を教えてくれた。理解はしたけどなんで?となった。
「それで俺が中川に言うのか?」
「じゃないとせつ菜さんの機嫌治らないと思う」
「・・・中川」
「・・・・」
「天王寺と同じ条件ならお前の分も用意してやるが・・・」
「本当ですか!?」
これ以上にない速度で中川が反応した。もはや反応が優木 せつ菜の方なので頭がバグを起こしている。天王寺の言った通りだけどまじかよ。じゃあもう少し真剣に考えないといけないのかもしれない。
「けどお母さんが作ってくれてるのにいきなり弁当作らなくてもいいとか言って大丈夫か?」
「それは・・・ちょっと聞いてみますね」
「まあいいかダメかは分かったらまたメールでもしてくれ」
「私・・・片山さんの連絡先知らない」
「そうだったな。いい機会だし交換しておくか」
そう言って俺と天王寺はアドレスと電話番号を交換した。とりあえず今日は面接に向けての準備。その後に弁当でも考えるか。
「それで天王寺、おかずのリクエストあるか?」
「それじゃあハンバーグで」
「はいよ」
というわけで明日はハンバーグメインでお弁当を作ろう。そして俺は天王寺に例の件の話をしてくれた。とりあえず今日の部活はそれ次第になりそうだ。
・謝罪の理由
愛さん出すって言っておいて出なかったことですね。ですがご安心を、次回は絶対に出ます。そのための準備で丸々1話使ったけど。
お仕事忙しくて中々休みないので投稿頻度クッソ遅いです。今は週に一回だけ休みあるので全然マシですね()