俺は料理さえできればいい 作:サイリウムぶん回し隊
「それは一つの包みから始まったのだった・・・」
お昼休み、約束通りハンバーグをおかずに入れてお弁当を作ったのを天王寺に渡して中川と交えて部室でご飯を食べることになったお昼休憩での事。天王寺は電話で言っていた件について話を始める。昨日、俺が宮下の家に面接に行ってる間にスクールアイドル部はとんでもないことになっていたらしい。天王寺は真顔で説明しているが心なしか声に少し圧を感じるところがある。
「まさかあんなことになるなんて思ってもいませんでした」
そう言って少し疲れた顔をしている中川・・・見た目は優木 せつ菜の方になってるが俺は基本的にずっと中川で呼んでたため彼女の知らない第三者がいない時は継続してこっちの呼び方で統一している。
「ほんの少し練習がハードだった。みんな疲れていた。この前愛さんがおばあちゃんのお手製ぬか漬けを作っていてそれをみんなで食べてたことがあったんだけど・・・」
「あれすごく美味しかったですよね」
「・・・ぬか漬けか。それは興味深い話だなぁ、詳しく」
是非とも宮下のおばあちゃんのぬか漬けは食べてみたいものだ。いくら俺が和食が得意と言っても流石にぬか漬けは作ったことはない。美味しいものは時間めちゃくちゃかかるってのもあるし。
「・・・ちなみにぬか漬けの話は今回の話に全く関係ないのでその話はまた今度」
とあっさりその話を拒否された。悲しい・・・
「とりあえず話を戻しますね。昨日は体力作りメインで練習をしてました。それでみんな疲れていたんですよ。愛さんみたいに何か持ち寄りが有れば良かったのですがあいにく誰も持ち寄りがなくて・・・」
「そして私は片山さんが持たせてくれた包みのことを思い出した。それが地獄の始まりだった。そうっ・・・あれは・・・」
〜☆〜
話は遡ること昨日になる。どうも、私は天王寺 璃奈。最近愛さんと一緒にスクールアイドル部に入った情報処理学科の一年生。部に入ったのはせつ菜さんのライブに感動したとか色々理由はあるけど1番はやっぱりスクールアイドル部に入って私の表情を・・・・
そんなこんなではじめてみた部活。楽しくて驚きの発見の毎日。ボイストレーニングやストレッチ、いろんなことはあるけどまずは踊るためには体力をつけないといけない。というわけで今日はストレッチからのジョギングをして後は色んなダンスの練習をした。
私は体力がないからものすごく疲れている。明日は筋肉痛かもしれない。スクールアイドル部に入ったら生活環境を見直さないとも思っていたけど1番の食生活の問題を思わぬ形で解決してくれた。
料理がすごく上手な片山 夏樹さん。あの人と契約して事前に言えばお弁当を作ってもらえるようになった。そんなわけで私は今、明日のお弁当が楽しみで仕方ないんだけど・・・・それで思い出した。
「あっ、せつ菜さん。さっき部室で片山さんに会ったんだけど・・・」
「夏樹くんにですか?」
「昨日、せつ菜さんに会えなかったからこれをせつ菜さんに渡しておいてくれと頼まれた」
「包み・・・ですね」
それを開けた瞬間甘い匂いが漂ってきた。中にはクッキーが5、6枚入っていた。それと一緒に一枚の紙切れが入ってある。今度妹が来るらしいから妹に食べさせるための甘くて美味しいクッキー作ったけどかなり甘くしたから味見よろしくと添えられていた。
片山さんにとってはある意味いつものこと。せつ菜さんとの味見をしてもらうための関係も結構長いらしい。材料が少なかったのか1人分しかない。見た目からして例の企業が作ってるムーンラ○トをベースにして片山さんが味を少しアレンジを加えてる感じだ。
「おおっ、部活終わりにこれは嬉しいですね。さすが夏樹くんですね」
「ゴクリ・・・」
思わず喉を鳴らしてしまった。片山さんの作ったクッキー。バナナのパウンドケーキにしても今日の弁当にしても片山さんレベルの料理の腕の持ち主は早々いないと思う。
専攻学科は彼方さんと同じだしもしかしたら彼方さんと片山さんは料理の腕は同等なのかもしれない。私は彼方さんの料理食べたことないからわからないけど・・・
「それじゃあいただき・・・」
「あーーーーっ!!!せつ菜先輩クッキー持ってきてるんですか!?ずるいですよ!」
そう言ってせつ菜さんがクッキーを食べようとしたところを静止したのは同学年のかすみちゃんだった。コッペパンを作るのが上手なスクールアイドルの現部長である。
「そんな甘い匂いで誘惑してっ!かすみんも食べたいですっ!」
「え、えっとこれは・・・これはダメなんです!」
「ダメってなんですか!だいたい生徒会長ともあろう方が学校にお菓子なんて持ってきていいと思ってるんですか!?」
もちろんそんな校則はない。けど学校にお菓子を買って持ってくるのはグレーゾーンだ。それが買って持ってきたらの話なんだけど。まあ綺麗な包みに入っていたらそう思うよね。どこかのお店で買ったクッキーだと思われても。
「別に校則でダメとは書いてませんしそれにこれは手作りだから市販のクッキーじゃないです!」
「もしかしてその人せつ菜先輩のファンですか!?食べ物で釣ろうなんて羨まし・・・じゃなくてけしからん!?」
「かすみさん、アイドルが使ったらまずい単語が所々出てるから抑えて」
とこのように今日の練習はかなりハードだったせいでみんなお腹が空いている。クッキーの甘い匂いにかすみちゃんが惹かれるのも無理はなかった。ちなみにせつ菜さんのファンか?と聞かれたら怪しいところではある。
会ってまだ全然時間は経ってないけど、片山さんは良くも悪くも料理以外に興味ない人だと思う。
「それにファンからそうホイホイもらうものじゃないですよ。特に食べ物は何が入ってるか分からないんだから!てなわけで仕方ないのでかすみんがせつ菜先輩の代わりに毒見してあげます」
かすみちゃんが想像以上に外道だったのは置いておくとして片山さんの作った食べ物は恐ろしい。かすみちゃんもふざけなければ料理は上手い方だけどそのかすみちゃんが手段選ばずに食べたそうにしてるのはよくわかった。
「これは大丈夫な奴です!そもそもファンというよりかは料理専門の部活やってる人が作ったので無問題です!?一年近く食べてるので・・・」
「一年近く・・・だとっ!」
もうかすみちゃんがアイドルがしてはいけない顔をしている。アニメや漫画の作品で例えるとジョ○ョに出てくるモブが適切だど思う。それにしてもまずいこれは非常にまずい。
かすみちゃんが目立ってるだけだけどよく見ると・・・
「ずるいですずるいです!かすみんもせつ菜先輩の持ってるクッキー食べたいです!しず子もそう思うよね!ねっ!」
「まあせつ菜さんの私物なので私からはとやかく言いませんけどでも可能なら一つ食べてみたいな・・・なんて」
しずくちゃんも陥落していた。さっきからしずくちゃんがお腹を押さえてるけど頑張ってお腹鳴らさないようにしてるのだろう。残念なことに今この場でせつ菜さんの味方がいない。このままだとまずいと思ったせつ菜さんも観念することにした。
「・・・仕方ないですね。一つだけですよ」
「やったー!」
クッキーの数は全部で数えたら6枚。今ここにいるのは私たち一年生組とせつ菜さんの4人。これ以上増えなければ・・・2年生と3年生が戻って来なければ穏便に解決する。かすみちゃんがクッキーを取り出したその時だった。
「ただいまー、やっと帰ってこれたよー」
「お疲れ様歩夢、最後のターン良かったよ!」
「疲れたぁ、エマちゃん膝枕後でしてー」
「うんいいよー、果林ちゃんもありがとね。わざわざ練習付き合ってくれて」
「エマの力になったのならそれでよかったわ。それで一つ気になることがあるんだけど・・・」
そうこうしていたら他のメンバーが戻ってきてしまった。クッキーの枚数は6枚に対して部員は愛さんを除いた8人+練習のコーチとして付き合ってくれた果林さん。合計9人、つまり分け合うのは不可能になる。
「かすみちゃんの持ってるクッキー美味しそうね」
「本当だー、ねぇかすみちゃん。私も一つもらっていいかな?」
「彼方ちゃん、ちょうど甘いものが欲しかったんだ〜」
何度も言うけど今日の練習は体力作りメインだったのでみんな疲れてる。少なくとも甘いものを食べたい気分ではあった。けど元々1人分として想定してるためこれを分けるのは不可能である。
「それかすみちゃんが作ったの?美味しそうだね」
「かすみちゃんって結構料理上手だよね」
「いやっ、これは別にかすみんが作ったわけじゃあ・・・」
「あらっ、なら問題ないわよね」
「あわわ・・・・」
かすみちゃんはあわあわと動揺していた。ここでかすみちゃんが作っていれば誰も文句は言わなかったのだろうけど作ったのはかすみちゃんじゃない。つまりここでかすみちゃんが強く拒否できないわけで・・・
「まずいことになりました・・・どうしましょうせつ菜先輩、クッキーの枚数少なすぎて分けることできませんよ、それに・・・」
クッキー一枚を半分に割ったところでみんなはきっと納得しない。かすみちゃんがずっと考えて考えて考えて・・・・そして意を決してかすみちゃんは宣言した!
「こうなったら!これでケリをつけましょう!第一回、スクールアイドルガチンコ歌唱力対決!」
『『『スクールアイドルガチンコ歌唱力対決!?』』』
「ルールは至ってシンプル。部室棟にあるレコードブースでカラオケの採点機能を使って勝負する!それで1番点数が高かった人にはこのクッキーが進呈されます!スクールアイドルらしく公平に歌で勝負しましょうっ!」
それは別にいいけど歌唱力ならこの中だとぶっちぎりでせつ菜さん有利だと思うけどみんなどう思ってるのだろう。
「あら面白いじゃない。私はスクールアイドルじゃないけど歌には少し自信あるわよ」
「これは彼方ちゃんも本気にならないとだね」
「クッキーのためなら手加減なんていらないよね?」
3年生組が恐ろしかった。璃奈ちゃんボードぶるぶふ。いつもぽわぽわで優しいエマさんは見る影もなく絶対に一位になるという闘争心が剥き出しになってた。私はこの状況に困惑しかしてないけどなんだかんだでかすみちゃんの提案は反対するものはいない。歩夢さんも不安そうにしてるけど侑さんに応援されて前向きになってた。あと侑さんもさりげなく勝負に混ざるつもりだけど大丈夫なのだろうか。
そんなわけで場所はスタジオブースに移動して第一回、スクールアイドルガチンコ歌唱力対決が始まった。一位の人がクッキーを貰える。たたがクッキー一つでと思うかもしれないがそれだけみんな食べたいと言う想いは一つになっていた。いつもは"バラバラ"なのに片山さんの料理は恐ろしい。
「じゃあトップバッターはかすみんです」
そう言ってかすみちゃんは自分の曲を入れた。というよりスクールアイドルの曲入ってるんだ。というよりそれはズルなのではと思ったがかすみちゃんは「勝てばなんでもいい」と言ったのだ。外道すぎるよかすみちゃん。ちなみに選曲は無敵級*ビリーバーである。
「96点・・・かすみちゃんすごい」
というよりせつ菜さんも自身の楽曲選択されたらかすみちゃん終わりなのではないかと思ったが黙っておいた。ちなみにみんな90点以上叩き出しておりエマさんはかすみちゃん抜かして97点を叩き出した。ちなみにこの中で90点以下なのは侑さんだけだった。それでも88点だったけど。
「次、せつ菜さんですよ」
「勝負は勝負です。何事にも全力で行かせてもらいますよ!」
そう言ってせつ菜さんも自身の楽曲を歌った。屋上ライブの時もそうだけどやっぱりせつ菜さんは頭ひとつ抜けてるというか生徒会長でもあるあの人の性格を考えるとこのメンバーの中ではかなりのストイックだ。そういう意味では片山さんもせつ菜さんも好きなことに対しては全力なところがなんか似てるなと思った。
そしてせつ菜さんは98点を叩き出して暫定トップとなった。残り歌ってないのは私だけ。私が最後に回ったのには理由があった。カラオケにはもちろん歌唱力もあるけどそれでも機械によって点数の取り方が異なってくる。この採点機能はここ独自で作ってあるからどうやったら高得点を取れるのかを研究する必要があった。
そして解析完了、歌唱力も大事だけどいかに高く点数を取れる歌い方ができるか。高得点を狙うのはある意味そこさえ抑えておけばいい。ちょっとズルいかもしれないけど私も負けるつもりはないから。
「嘘でしょ!?りな子の歌は聞いてても総合的にみたら歌唱力が高いとは言えないのに・・・」
「採点は機械で行う。だから高得点をとれるように計算して私に合う曲を選曲して歌った」
それでもカラオケは久しぶりだったから100点取れなかったけど・・・
「せつ菜先輩ならともかくまさかりな子にカラオケで負けるなんて・・・」
画面には98点と表示されていた。せつ菜さんと同列で1位である。もし普通に歌っていたら感情を出すことが苦手な私は100%負けてただろう。これも戦略の一つ、璃奈ちゃんボード『ドヤっ!?』
とそんなわけで勝者である私とせつ菜さんはクッキーを食べる権利を得たのだけど・・・あからさまに他のみんながどんよりしていた。というよりただでさえハードトレーニングでボロボロなのにそこから全力で歌ってしまったので正直もう体力なんて残ってない。
こんなことになったのも全部片山さんのせいだ。だからこんな原因を作った片山さんには責任をとってもらおう。そして私は片山さんに電話するのではなく愛さんにつなげた。面接中も可能性もあるので状況を知るためにあえて愛さんに繋げて問題なさそうなので代わってもらい・・・
そして私は一連の流れを伝えて片山さんにお願いした。
〜☆〜
「なるほど、それであんな電話が来たのか」
「ちなみに今日の朝練でみんなが集まってその話になったとき、愛さんがその件でポロッと愛さんもクッキー食べたらしいけど・・・みんな怒っていた」
ああ・・・なるほど。宮下はノーリスクでクッキー食べてるからな。妹に食べさせても問題ないかを聞きたかっただけなんだけどどうしてこんな大事に・・・
「とにかく本当に大変でした。というわけで片山さんはそんな私たちを労う義務があると思うんです」
「と言っても何をすればいいんだ?」
「そ・・・それはそのっ・・・・」
そう言って中川は俺の弁当に入っているハンバーグをチラッチラッとみる。天王寺がお弁当でリクエストしてもらったものだ。ちなみに天王寺の分は少し大きめにしておいてやった。肉汁たっぷりの手作りだ。本来は大きく作りたいのだけどお弁当なので一口サイズである。
「ジューシーで美味しい。本当にハンバーグを手作りで作ってもらえるとは思ってなかった。大変だった?」
「いや全然だ、料理が好きだから基本的に作れるものはなんでもOKだ。それにこうして美味しいって言ってくれるのは嬉しいしな。こうやってると妹にお弁当作ってやってたことを思い出すよ」
正月の時に実家帰省しなかったから会うのは1年ぶりくらいか。
「あのっ、夏樹くん。私も頑張ったのでそのっ・・・えっと・・・」
「片山さん・・・チョイチョチ」
そう言って天王寺は俺に耳打ちしてくれた。どうでもいいけど君耳打ち好きだよね。何か意味があるのだろうか。
「せつ菜さんは片山さんの作ったハンバーグが欲しいらしい」
「なるほどそういうこと・・・別にいいけど、ほらっ」
そう言って俺は箸でハンバーグを持ち上げてから中川のお弁当箱に移そうとした。大事なことでもう一度言う。俺は移そうとしたんだ。
「あーんっ」
「なっ!?」
「?!」
あろうことかこいつは移そうとする前にそのまま食べてしまった。微塵もあーんするつもりなかったのに俺の一言が誤解となったのか分からないが中川はそのままハンバーグを食べてしまった。
「天王寺・・・」
「分かってる・・・片山さんにはそう言うことに関しては微塵も狙ってないことに。それよりもせつ菜さんの方にびっくりした」
あの時さりげなく天王寺もボードを出すくらい中川の行動にびっくりしたらしいがさすがというか天王寺は冷静な方だし理解はあるので誤解はおきてないけど・・・
「このハンバーグ美味しいですね。さすがは夏樹くんです。ありがとうございます」
「・・・それはよかったよ」
「片山さんもある意味ご褒美だね」
「うんっ、お前は少し黙れ天王寺」
真顔で茶化してくるのが余計に怖かったけど割とこういうの好きそうな性格ではある。顔に出ないだけで感情はあるから。
「そもそもスクールアイドルである中川・・・というか
というより本質は一緒だとしても少なくとも生徒会長である
「私も少しそう思う・・・ところでせつ菜さんどうかしたの?顔赤いけど」
「い、いえっ・・・なんでもないです。あはは」
そう言って中川は顔を少し赤くしてご飯を食べ進める。これはおそらくあれだなうんっ。
「天王寺、今更自分のやったことに気がついたのかもしれないな(ゴニョゴニョ)」
「それはあるかもしれない。これでせつ菜さんも少しは意識すると思う(ゴニョゴニョ)」
「だといいけどな(ゴニョゴニョ)」
なんてこっそり話をしていたけど・・・
「(夏樹くん・・・今、私のこと名前で呼びました!?)」
俺らの想いなど微塵も届いてなく中川が全く別の理由で顔を赤くしていたのをこの時の俺も天王寺も知る由もなかった。ちなみにお昼ご飯の味は全く覚えていない。
ちなみに天王寺に「片山さん、意外と純情だよね」と言われた。放っておけ。
そろそろ全員ちゃんと書かないと怒られそうだったから。なお昨日の回想シーンメインのため愛さんのみ不在である。ちなみに璃奈は心の中でお昼ご飯の関係は黙っておこうと固く誓ったらしい。時系列は多分4話あたりだと思う。
スクールアイドル部に入ってないので物語は好き勝手に描く予定です。原作はお前らで勝手にやってくれスタイル。
次回はクッキーの話です。ちなみに今回はクッキーメインの話ですがタイトルにないだけで正確にはハンバーグとあーんの話がメインです。おまけが強く出過ぎてるだけ。