俺は料理さえできればいい   作:サイリウムぶん回し隊

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おかしい、希望休み取ったから友達と遊ぶ約束を1ヶ月前からしたのに友達が仕事休めなくなったらしい。というわけでフリーになったので急遽更新します(本日希望休み入れたせいでしばらく仕事休みありません)


彼方とエマとふわとろオムライス

『兄さん、久しぶり。元気にしてる?』

 

 

金曜日の夜、家で雑誌を読んでいたらスマホから着信が鳴った。電話の相手は妹である、基本的にメールのやりとりが多かったら電話して声を聞くのは久しぶりだ

 

 

「ああっ、まあぼちぼちだな。お前はどうなんだ?」

 

『私も元気でやっている。けど兄さんの料理が恋しい。早くGWになってほしい』

 

「そっか・・・じゃあ久しぶりに一緒に料理でもするか。どうだ?あれから上達はしたか?」

 

『上達はしたと思う・・・姉さんは料理壊滅的だから私が作らないと家が崩壊する。母さんと姉さんだけには作らせてはいけない』

 

 

 

そうっ、ウチの家は妹以外の女性陣は料理の腕は壊滅的である。一応親父は人並みにできるけど数年前に単身赴任したから今の片山家でまともに料理できるのは妹だけである。姉さんは努力しろよ思うけど努力の方向性を間違えてるからどうしようにもできない。料理を科学か何かだと思ってそうで怖い・・・あの家で現状平和的に過ごすには妹が料理してお財布の紐握らないと大変なことになるとか。末っ子に何させてんだよお前らとは思う。

 

 

「けど久しぶりに兄さんの作った料理が食べたいな。私は・・・」

 

「ああっ・・・もちろんだ。お前は何が食べたいんだ?」

 

「・・・兄さんの作ったふわふわトロトロのオムライス。久しぶりに食べたい」

 

美秋(ミキ)はオムライス好きだもんな。分かった楽しみにしとけよ」

 

『うんっ・・・じゃあ兄さん。GWにまた・・・』

 

 

 

そう言って妹は電話を切った。オムライスかぁ、まずいな。こっちに来てから作ったのは調理実習の時だけだぞ。せっかく妹が楽しみにしてくれてるのに万が一失敗でもしてがっかりさせるわけにもいかない。オムライスは実家ではよく作ってたから心配はないと思う。けど念には念を入れておいた方がいいだろう。というわけで・・・

 

 

 

次の日の朝、俺は部室にやってきた。本来ウチの部は土日お休みなのだが知ったことではない。ゴールデンウィークに部活するつもりもないし部室にある卵は早めに使い切ってしまうことに越したことはない。長期保存効くものはいいがそうじゃないもの、肉とかも含めて今回で葬りさってやる。

 

 

さてと本来の俺の得意ジャンルは和食なのだが実家にいた頃は妹にせがまれてよくオムライスを作っていた。しかし最近は全然作ってないので今更ながら上手くできるか心配になってきた。

 

材料を一掃するいい機会でもあったし部室で作ってみることにした。まずは・・・ごはんを用意しないといけないがもちろん炊いてなどいないため今回は冷凍庫に突っ込んであった残ってた分の米の塊を解凍しよう。

 

まずはチキンライス作りからだ。残ってる材料の・鶏もも肉、玉ねぎ、ピーマンににんじんに加えてさっきスーパーで寄って調達してきたマッシュルームとコーン缶。これを具材にする。

 

 

味付けはウスターソースとトマトケチャップ、そして隠し味に無糖バターを使う。

 

 

「まずは鶏モモに下味をつける」

 

 

余分な水気と脂肪を除いて1cmの角切りにし、カットした鶏もも肉を白ワインと一緒にボウルにいれ、塩、こしょうを少々。軽くなじませ、10分放置。この間に玉ねぎ、ピーマン、にんじんを1cmに切ってマッシュルームを薄切り、コーンはしっかりと水気を切っておく。

 

 

フライパンにバターを小さじ1杯分、サラダ油をいれて中火にかける。サラダ油を入れることによってバターが焦げにくくなる。バターが溶けたらカットした玉ねぎとピーマンとにんじんを炒める。

 

ある程度玉ねぎが透き通ったタイミングで、鶏もも肉とマッシュルーム、コーンを加えて、鶏もも肉の色が変わったら、ケチャップとウスターソースをいれてさっと炒める。味を均一に広げるためにごはんは最後に加えるのがベストだ。

 

 

ごはんと材料たちが馴染んできたら残りのバターを入れて塩と胡椒で味を整える。これをすることによってチキンライスにコクを強く残すことができる。これでチキンライスの用意はできた。さてと・・・

 

 

 

あとはオムレツの部分だな。よく作ってたときにはそれなりに上手くできてたが今は上手くできる自信がない。少しでも成功率は上げておく必要がある。なのでまずは卵に下味はつけずに牛乳を入れて菜箸で切るように混ぜる!卵を凝固しにくくすることができるから少しでも成功率上げるために今回は牛乳を加えることにした。こいつも賞味期限近かったしちょうどいい。

 

加熱させてたフライパンにバターを入れて溶かしたら卵液を一気に流し入れ、菜箸でかき混ぜ、半熟に固まり始めたら、火からおろす。ちなみに火加減はミスったら終わりである。弱すぎると包みにくくなるし強すぎると焦げてしまうから絶妙な火加減を維持しないといけない。

 

これ以上かきまぜると、底に穴があいてしまいそうな程度までかき混ぜたらフライパンの奥側に向かって卵を包む。真ん中、横サイドの順に折りたたむと、良い感じに楕円形になったら卵を奥側にスライドして奥側の卵を手前に反して奥からも包み込む。奥側からヘラを入れ、思い切って裏返し、卵と卵の継ぎ目を下にして、少し火を通す。ご飯の上に卵をそっと乗せ、包丁で表面に切り込みを入れて、左右に開く。

 

本来ならあとはプラスでデミグラスを用意するんだけどそんな予算ないのでここで打ち止めだ。

 

 

 

さてと完成したとはいいんだけど・・・今日は土曜日なんだよなぁ。学校は休み、となると必然的に誰にも味見してもらえないのだ。わざわざここまで呼び出すのも申し訳ないし・・・近く通りかかった人にお願いするか。とりあえず部室を出てみるが見渡してもいないなぁ。中川ならワンチャン生徒会の仕事で校内にいそうではあるが・・・

 

いやっ、中川なら美味しいとは言ってもらえるけどそれでは参考にならない。もっとちゃんとした感想を聞ける人がいいけど料理の知識がある人なんて俺の身近には・・・

 

 

「あっ・・・」

 

 

いたわ一人だけ。電話帳の中にこの前登録した3年のパイセンの電話番号が載っていた。専攻学科は俺と同じだし少なくとも中川よりはちゃんとした感想くれると思う。だけどうーんっ・・・流石に休みの日に先輩をわざわざ呼び出すのはなぁ。

 

 

「うーんっ・・・・」

 

「さっきからどうしてそんなに唸ってるの?」

 

「オムライスを作ったのはいいんだけど味見役を探しててなぁ。今度妹がウチに来るんだけど・・・・」

 

 

そこまで言って違和感を感じた。俺がさっきら唸りながら独り言を言ってたら返事が返ってくるのである。俺はチラッと横を見た。

 

 

「こんにちは」

 

「うわっ!びっくりした、いつからいたんだよアンタ」

 

 

隣には先輩と思われる人物がいた。てかこのそばかすのひとどこかで見たなぁ。はてどこで見たのだろうか。

 

 

「部室に戻る途中に通りかかったら唸ってる声が聞こえたから気になっちゃって。えーっと・・・確か片山 夏樹くんだったよね」

 

「・・・そうだが」

 

 

何故か最近一方的に名前を知られてるケースが多い気がする。えーっとパイセンが言うに俺はライフデザイン学科ではちょっとした有名人らしい。なーるほどねうん、全部理解した。

 

 

「つまりアンタもライフデザイン学科ということか、成る程な・・・どうりで」

 

「わたし、学科は国際交流学科だけど・・・」

 

「??????」

 

 

じゃあなんでこの人は俺のことを知ってるのか。えっ、もしかしてライフデザイン学科以外でも俺って認知されてるの?というよりそもそもなんで俺はライフデザイン学科では有名人なの?もうよく分からないんだがだいたいこちらはどちら様よ。国際交流学科ってことは留学生なのだろうか。分からない・・・

 

 

「まだ自己紹介してなかったね。わたしは3年のエマ・ヴェルデです。彼方ちゃんと同じスクールアイドル同好会のメンバーの一人だよ」

 

「・・・あーなるほど」

 

 

どこかで見たことあるなと思ったらスクールアイドル同好会の人なのか。この前はパイセンくらいしか話してないからあれだけどそもそもあの同好会の名前はパイセン含めても半分くらいしか覚えてない。というより一度自己紹介した同学年が二人いたけど忘れちゃったし名前。

 

 

「この前のクッキーすごく美味しかったよ。ありがとね夏樹くんっ」

 

「喜んでもらえたのならまあ・・・」

 

 

ただ10人分を作るのは流石にしんどかったことだけは言っておこう。実際は17〜8人分くらい作ってたからかなりオーバーキルしてたのだが。

 

 

「それでオムライスの味見役探してるんだよね。それならわたしに任せてよ」

 

「ヴェルデさんにですか?」

 

「うんっ、今日は土曜日だけど部活あるし、なんなら彼方ちゃんも来てるから呼んでこようか?」

 

「マジですか!来てくれるならありがたいんですが・・・」

 

「今からスマホで電話してこっちへ来てもらうから」

 

 

ちなみにヴェルデさんの話によると一年生組は今は屋上で昼食を食べてて部室には2年生組がいるらしい。なんか学年別で親睦深める意味があるらしいけど3年生組は初期メンバーらしいからあまり意味ないとか。

 

 

「彼方ちゃん、来てくれるって。じゃあ部室で待っていようか。夏樹くんっ」

 

「・・・・」

 

「夏樹くん、どうかしたの?」

 

「いえっ・・・ただあまり名前で呼ばれ慣れてないものですから少し恥ずかしいと言いますか・・・」

 

「けど彼方ちゃんのときはすぐに打ち解けてたよね」

 

 

あのパイセンは例外なんだよなぁ。他のメンバーならともかくあの人は専攻学科も同じだから料理についてはいろんなこと聞けそうだし。これから先のことを考えたら名前呼びなど些細な問題である。

 

にしてもこの先輩、よく見てるなぁ。

 

 

「それにファーストネームで呼ぶのが私の故郷では普通だったから。だから夏樹くんも私のことはエマでいいからね」

 

「いやでも・・・」

 

「エマでいいからねぇ」

 

「だからそのっ・・・」

 

「エマでいいからねぇ」

 

 

お前はbotか何かかよ。さっきから同じ返事しか返ってこないぞ。俺から折れないと話進まない感じかこれ。これがもしゲームならクソゲーにも程がある。

 

 

「分かった、分かりましたからエマさん。これでいいですか?」

 

「うんっ、改めてよろしくね夏樹くんっ」

 

 

なんか怖いよこの先輩、心なしか少し圧がかかってた気がするし、けどあのままやりとりを続けたところで無限ループが落ちだろう。

 

 

「彼方ちゃんが来たよー。夏樹少年〜」

 

「どうもですパイセン、まさか部活で学園内にいたとは」

 

「彼方ちゃんもびっくりだよ。せつ菜ちゃんの話だと夏樹くんは土日部活してないらしいからさ」

 

「まあ今日は色々あって部活してるんですよ、実は今度妹がこっちに遊びに来ることになってオムライスリクエストされたのでその感想をもらえればと思って・・・」

 

「なるほど〜任せておいて彼方ちゃんが的確にアドバイスしてあげるから〜」

 

 

おおっ、さすが俺の同じ専攻学科の先輩なだけあって頼りになる発言だ。二人分しか用意してないけどちょうど二人分あるしいいか。ちなみに一つは自分用想定してたため俺のお昼ごはんは消滅した。

 

 

「代わりに夏樹くんには彼方ちゃんの手作り弁当を進呈しよう」

 

「えっ、いいんですか!」

 

「そういう約束だからねぇ。夏樹くんには何かを作ってもらう。対価として彼方ちゃんの使ったお弁当を夏樹くんにあげる」

 

 

そうだ前回クッキーを届けたときにそういう約束してたわ。今回はどうしても彼方先輩の助言欲しくて頼んだから別にいいのだが同じ専攻学科の先輩が作った料理には正直興味がある。

 

全く意図してなかったけど偶然にも対価が成立していた。

 

 

「それじゃあ食べよっか」

 

「うんっ、いただきます」

 

 

そういえば3年生組でお昼食べると言ってたけどあのスタイル抜群のお姉さんは一緒じゃないのだろうか。まあいいけど・・・

 

 

「このオムライスとってもボーノだよ!夏樹くんっ」

 

「なるほどね〜隠し味にバター入れてチキンライスのコクを強くしてるんだね〜彼方ちゃん的にもすごくいいと思うよその考え方は」

 

 

とりあえずパイセンからの太鼓判はもらえた。だいたいの感想は美味しいかどうかの話で終わるがこの人は隠し味にバターを入れてたのを分かっていた上で結論を出した。

 

 

「いやぁ逆に彼方ちゃんが教わりたいくらいだよ。夏樹くんの料理は一目見た時から美味しいのは分かりきってはいたけど・・・何気に実際に食べるのはこれが初めてだからねぇ」

 

 

 

そういえばこの前のクッキーの時も、中川に作っただし巻き卵のときも、他のメンバーの何人かは食べてたけどこの人は食べてなかった。

 

 

「うーんっ、特にこのたまごがトロトロに仕上がってて。すっごいふわふわ。いくらでも食べられちゃうよ」

 

「相当練習してきたみたいだね。これは」

 

 

久しぶりに作ったけど問題ないレベルで美味しくできてたらしい。彼方先輩曰く妹に出しても問題ないとか。よしっ、今度は彼方先輩の料理だ、とりあえず卵焼きを一口、美味っ、なんだこれ。パイセンの作った卵焼きめちゃくちゃ美味いんだけど。えっすごっ。

 

 

「ふふっ、気に入ってもらえて彼方ちゃんとっても嬉しいよ〜」

 

「いやっ、マジで美味いなこれ。さすがパイセンだ・・・」

 

 

今まで周りに比較対象がいなかったからあれだけど俺より年齢が一つ上のこの人。年齢近くてここまで料理上手い人と出会ったのは初めてかもしれない。さすが俺と同じ専攻学科を受けてる特待生なだけはある。弁当のバランスもいいし何より女の子だから見た目にも拘ってる。

 

俺も最近は天王寺に弁当作るようになったしキャラ弁まで行かなくてももう少し見た目に拘ってみるか。基本俺は味以外はあまり拘らないタイプだし・・・クッキー作りの時はそもそも部室に型抜きがなかったってのもあるが・・・

 

 

「ところで夏樹くんは妹がいるって言ってたよね」

 

「ええっ、中2なんで三つ下っすね」

 

 

ちなみに姉は3つ上である。大学生になって色々やってるらしいが詳細は不明だ。

 

 

「彼方ちゃんにも妹いるよ〜二つ下で今は東雲に通ってるんだぁ」

 

「わたしは妹が5人いるよ〜」

 

「妹5人もいんのぉ!」

 

 

さらっとエマさんは恐ろしいことを言っていた。何人兄弟かはともかくエマさんもパイセンも長女らしい。あとエマさんは俺のオムライスをぺろりと食べた上で弁当箱取り出したのだけどまだ食べるのと思ってしまった。スクールアイドルだよなこの人。まあ世の中には太りにくい体質の人とか一定数いるからあれだけど・・・この人スタイルはめちゃくちゃ良いし。

 

 

「せつ菜ちゃんは一年前から君と知り合いだったんだよねぇ。ずるいなぁせつ菜ちゃんは・・・」

 

 

そもそも知り合ったのは優木 せつ菜としてでなく生徒会長の中川 菜々としてだけどな。中川 菜々が優木 せつ菜だということも最近知ったし、スクールアイドルの存在を知ったのも同様だ。

 

 

「というより部活申請して部活アンケートを渡されたときからだからマジで虹ヶ咲学園に入ってからは1番付き合い長いのかもな」

 

「その時からせつ菜ちゃんのことずっと餌付けしてたんだね。最近よくせつ菜ちゃんが話すんだよね。夏樹くんの作る料理はとっても美味しいって」

 

「・・・・っ」

 

 

俺は思わずそっぽを向いてしまう。中川にはいつも言われてるから慣れてるけど優木 せつ菜として言われると少し照れてしまう。優木 せつ菜の時のあいつは大好きに対しては正直なところがあるからな。あとエマさん、決して餌付けしてるわけではないので。

 

 

「あっ、顔真っ赤にしてる。かわいいね夏樹くん」

 

「揶揄わないでくださいよ」

 

 

あと可愛いは男子に使う褒め言葉じゃないと思う。 

 

 

「とにかく時間はいいんですか?結構な時間ここにいますけど・・・」

 

「あっ、本当だ。練習が始まっちゃう、彼方ちゃん。部室戻ろうっ」

 

「彼方ちゃんは夏樹くんのオムライス食べてとってもすやぴなのです。だから夏樹くん、彼方ちゃんをおんぶして部室まで連れて行って欲しいなぁ」

 

「いやあのっ・・・」

 

「じゃないと彼方ちゃん。このまま部室ですやぴしちゃうよ。それは夏樹くんも困るんじゃない?」

 

 

俺は無言でエマさんの方を見る。エマさんは無言のままコクコクと頷いた。まあ流石にエマさんがおぶって連れて行くのは無理か。パイセンの言う通りこのままここに居座られても困るし・・・

 

 

「はぁ・・・分かりましたよ、ほらっパイセン」

 

「それじゃあお邪魔します〜」

 

 

そう言ってずしんと重みを感じる。決して重いかと思ったら意外にも全然軽い。ちょっと心配になるのでエマさんまで行かなくてももう少し食べてもいいかもしれない。というより・・・

 

 

「・・・・」

 

「どうかしたの?夏樹くん」

 

「・・・いえっ、なんでも」

 

 

柔らかいものが背中に当たる。意識するつもりはないがこの二人は揃いも揃って見ただけで大きさ分かるせいで余計に・・・

 

 

「それじゃあ同好会の部室までしゅっぱーつ」

 

 

そんな感じで俺はパイセンをおんぶして部室まで届けることにした。とりあえず届けてそのままずらかるつもりでいたのだが・・・

 

 

「戻ったよ〜、みんな」

 

「おかえり〜エマっちにカナちゃ・・・」

 

「どうかしましたか?愛さ・・・」

 

 

どうも部外者です。諸事情によりこの部のパイセンおぶって届けに来ました。

 

 

「パイセン、つきましたよ。降りてください」

 

「・・・・」

 

「パイセン?おーい、パイセン」

 

「すやぁ・・・」

 

「彼方ちゃん、寝ちゃったね」

 

「おいおい・・・」

 

 

マジかよパイセン。エマさんとしか会話してなかったから気がついた。さては割と前からこの人寝てたな。というより俺と同じ専攻学科なら体調管理はしっかりしてそうだけど単にパイセンがそういうキャラなだけなのかそれとも本当に寝不足なのか・・・・

 

俺はパイセンどころか同好会の人らのことを全くと言っていいほど知らない。もちろん自分から知るつもりはないが天王寺みたいに家の事情で昼ごはん菓子パンで済ませてきたという例もある。もしかしたらパイセンにも何かあるのかもしれない。

 

 

「まあいいや、彼方先輩降ろすから宮下、中川、手伝ってくれ・・・」

 

「・・・・・むすっ」

 

「・・・・・ぷいっ」

 

 

そう言って宮下は頬を膨らませて中川はそっぽを向いた。あのっ、助けて欲しいんだけどなんでそんなに怒ってるの。仕方ない後ろにいる二人にお願いするか。ちなみに部室を見渡すと一年生組はまだ戻ってないみたいだ。この場に天王寺いないしな。

 

 

「ほらっ、彼方ちゃん。部室着いたよ」

 

「うーんっ・・・」

 

「あはは、起きないね彼方ちゃん」

 

「仕方ない・・・そっちのソファーでおろすんでエマ(・・)さん、手伝ってくれませんか?」

 

 

 

 

「「エマ・・・さん?」」

 

 

 

 

「うんっ、いいよ〜っ。ほらっ、彼方ちゃん。夏樹くんすごく困ってるよ」

 

「・・・むにゃむにゃ・・・彼方ちゃんはわがままお姫様だからもっと夏樹くん困らせちゃおっかな〜」

 

 

ここから更にどうするつもりだよ。というより俺は早く食器片付けて帰りたいから離れて欲しいんだけど。

 

 

「・・・彼方ちゃん?」

 

「・・・ゾクッ」

 

 

今一瞬だがエマさんの声の温度がすごく下がった気がする。

 

 

「じ、冗談だよ〜エマちゃん。彼方ちゃんちょっとすやぴして完全回復したから〜」

 

「そっかあ〜それはよかったよ〜」

 

 

俺は心に決めた。エマさんだけは絶対に怒らせないようにしようと。さてと用事も済んだしそろそろ帰るか・・・俺は回れ右して部室から出て行こうとしたときだった

 

 

「「・・・・・」」

 

「・・・おい離してくれないか。中川、宮下」

 

 

 

俺は両方の肩をこの二人によって掴まれていた。おかしい体が全く動かないんだけど力強くないか?どこから出てるのその力?

 

 

 

「ちょっとお話ししよっか、愛さんと。せっつーもさ。流石にナツの最近の言動には問題あると思うよね」

 

「そうですね、少なくともこの中では私と夏樹くんは1番長いはずなのに・・・エマさん、彼方さん。部長のかすみさんに伝えておいてください。午後は自主練にすると」

 

「そういうこと。じゃあ行こっかナツ」

 

「ちょっ・・・待っ・・・行くって」

 

 

 

そう言って中川と宮下は自分の鞄を持って俺を連行した。

 

 

 

「ちょっと!?せつ菜ちゃん、愛ちゃん!ごめんエマさん、彼方さん。私もいくね」

 

「侑ちゃん!?えっと・・・待ってよぉ・・・」

 

 

こうして部室にエマさんとパイセンが取り残された。エマさんは笑顔でがんばってね〜とだけ言ってた。あのっ、今から俺は何をされるのでしょうか。有無言わさず俺は中川と宮下に連行されるのであった。誰か助けて・・・

 

 




今作、主人公がロクにスクールアイドル部に関わらないせいで通常の虹学のSSだと序盤から絡めるはずのかすみとかと現時点で全く接点ないの本当に笑う←おい

そんなわけで時系列は現在4話の終わりです。サイコーハート歌った後ら辺の話(厳密にはサイコーハート歌って侑ちゃんの笑いが赤ちゃんレベルの直後あたり)

5話に向けてエマさんと接点作ったのはいいけどそもそもエマさんに助力必要ないよね。それよりもとうとう愛さんとせつ菜さんがキレてしまいました。


次回、夏樹とスクールアイドル同好会2年生組の話です
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