番外編で無下限呪術書きてぇ……。
俺が挑発したことで百代先輩の攻撃は苛烈になっていくが、その分だけ雑さが目立ってきている。
一般人から見ればその差は分からないようなものだが、壁超えの人たちからすればその差は勝敗を分けることになる。
「ほらほら、私がチャレンジャーじゃないのか!?」
「十分チャレンジャーですよ」
百代先輩の攻撃をすべて受け流し、片手で蛇の形にする。
「大蛇」
不完全な状態で顕現した大蛇は、百代先輩の胴体に噛みついて上空に向かった。
原作ではここで鵺による電撃攻撃が炸裂するが、ああ言ってしまったから電撃攻撃は使わないようにするし、何なら百代先輩は瞬間回復を使わないだろう。
大蛇に拘束されている百代先輩から攻撃の気配を感じたから、その前に百代先輩をとらえている大蛇はグラウンドに百代先輩を叩きつけた。
ここで空中に飛び出して満象を落としても良かったが、百代先輩にダメージを負わせるとなると学園にも影響を与えるからなしだな。
そうなればこの状態でやれることは両手で牛の形にすることしかない。
「貫牛」
砂ぼこりから出てきた百代先輩と完全な状態で顕現した貫牛が衝突した。
だが百代先輩に負けて俺の後方にフッ飛ばされる貫牛。
「今度は何が出てくるんだ?」
「いいんですか? 目を離して」
その瞬間、さっきよりも距離を取れた貫牛が百代先輩に一直線に突進して、先ほどよりも威力が増したことで今度は百代先輩が飛ばされた。
「距離で、威力が増すのか!」
「その通りです」
術式開示をすれば威力の底上げができただろうが、それはするつもりはない。これ以上威力を底上げしたら本気になっちゃうからな。
それに魔虚羅をこんなところで披露するつもりはないし、鵺の雷撃は使わない。
反転術式よりも効率がいいヒーラーである円鹿は、まあ百代先輩に言った手前こっちも回復を使わないことにする。
つまりは、玉犬・白、玉犬・黒、雷撃ナシの鵺、蝦蟇、大蛇、満象、脱兎、貫牛の八種類が使えることになる。
「鵺+蝦蟇」
原作で伏黒が使った羽が付いた小さな蝦蟇が俺の体や周りに何体も顕現された。
「今度は蛙か。いよいよサーカスだな」
「自覚はありますよ」
鵺がついた蝦蟇が周りにいる状態で俺と百代先輩の攻防が始まったが、蝦蟇による舌で一瞬止められたことで俺の攻撃の方が百代先輩にあたる。
この十種影法術は術者が単体で強い場合それをサポートする動きができるから強い。まあ伏黒もそうだったし、本来の式神使いとは違うか。
そもそも縛りではない限り術者が何もしないというのがあり得ない。
攻防を続けていくうちに、百代先輩のエンジンもかかっているが、それでも俺の呪術師としての戦い方が勝っていて上手く戦えていない。
だが、一番の原因は百代先輩自身にある。
こういう人を相手にしていなかったから今まで分からなかったが、東堂が虎杖と出会った時にどういう気持ちだったのか今理解できた。
別に存在しない記憶のことを言っているわけじゃない。というかあれってどういうことなんだよ。原作よみてぇ。
俺は少し思うところがあって、十種影法術を解いた。
「何だ、サーカスは終わりか?」
「百代先輩。このままだと俺は勝ちますよ」
「もう勝つつもりでいるのか? まだ戦いは終わっていないぞ?」
「いいえ、もう分かります。最初から分かっていたことですけど、百代先輩は瞬間回復ありきの動きをしているので瞬間回復をなくした途端に強さが格段に落ちます。瞬間回復は強い技ですけど、慢心を生むのがデメリットみたいですね」
「言いたい放題言ってくれるじゃないか……!」
「瞬間回復がなくても百代先輩は強いですけど、今のままだと本当に強くなれませんよ? 百代先輩の悪癖はその才能を腐らせるだけです。それでもいいんですか?」
「後輩のくせに上から目線でムカつくなァ……」
「俺は百代先輩と最初に戦った時、たぶん百代先輩も同じことを思ったはずです。こいつは自身のライバル足りえる存在で、切磋琢磨し合いたいと」
「少し違うが、はしゃげる存在だとは思ったな」
「俺は百代先輩と強くなりたいんですよ。ヒュームさんとは違う、全身全霊をぶつけあえる人に強くなってほしいと思うのは間違っていますか?」
俺が思っていることを口にすると、百代先輩の顔色は変わった。
「これ以上言葉は要りませんよね。武道家として、拳を交えるのみです」
「あぁ、お前の告白は十分に受け取った。ここからは戦いで分かり合うだけだ」
俺と百代先輩は改めて構えをとる。
学長に止められるかと思ったが、何も言われなかったから、俺と百代先輩の武と武がぶつかり合った。
紋様やヒュームさんの思惑とは違っているとは思うが、百代先輩の悪癖をこれ以上見過ごすことはできない。
東堂風に言うのなら、全力で導く! のぼってこい、高みへ! というところか? でもあれは呪力初心者の虎杖を導いていたから少し違うか。
まあ百代先輩の悪癖を直すためという点では間違ってはいない。
お互いに拳がぶつかり合っている内に、百代先輩は天才であるためどんどんと俺が言おうとしていることを理解して吸収していく。
そしてヒュームさんから才能に愛されていると言われた俺も、百代先輩から川神流の技術を吸収していく。
お互いがお互いにいいところを、伝えようとしていることを常人では計り知れない速度で吸収していることは、俺は楽しいし百代先輩の表情からも楽しそうだと分かる。
時間が経つにつれ、本気になりつつあり、威力も攻防も激しさを増していく。
俺も百代先輩も確実に戦う前よりも強くなっていることが実感できている。
不覚にもこう思ってしまった。百代先輩は運命の相手なのかもしれないと。
だがそれは幻想であるとハッキリと認識を捨てて、ただただ戦いの中に身を投じる。
ちょっとした思考は邪魔でしかない。この戦いを百代先輩と心行くまで味わうことだけを考えろ。
百代先輩の荒さも段々と消えていき、技の鋭さも格段に上がっている。
俺も百代先輩と実戦を積んでいることで確実に強くなっていることが分かる。
「これ以上は止められますね」
「そうだな。だけど私はそれで満足しない」
「それはそうですね」
攻防の最中少しだけ思考を巡らした結果、両手を鵺の形にした。
すると巨大な鵺が俺の影から現れて、俺と百代先輩の足場になって上昇する。
「最後は空中で勝負です! 地面に、周りに被害が及ばないようにしましょう!」
「それはいい案だな!」
その間も鵺の上で百代先輩との攻防は続き、ある程度上空に上昇できたところで鵺が俺の影に戻り、落下するまでのラストファイトが始まった。
俺は武道家として全力で百代先輩にぶつかり、百代先輩も全力で応えてくれる。
「かわかみ波!」
「■開」
百代先輩のかわかみ波とフーガによる炎の矢が衝突して上空で大爆発が起きて俺と百代先輩の距離が開くが、お互いに上空を蹴って再びぶつかり合う。
「楽しいな! お前と出会えて本当にうれしいぞ!」
「それはこっちのセリフでもありますよ!」
攻防の末再び距離が開き、百代先輩の両方の手のひらに収まらないほどの巨大なエネルギーが凝縮されている。
俺はそれに応えるように、片手を突き出してエネルギーを凝縮する。俺が前からやりたかった技、無下限呪術の術式反転『赫』を真似て、エネルギーを圧縮して凝縮している。
ただ弾く力を真似るのなら簡単だが、あの虚空を完全に再現することは今の俺には無理だから限りなく真似た技になる。
「はあぁぁぁぁぁ!」
「はぁっ!」
百代先輩と俺のエネルギーは衝突し合い、先ほどよりも威力がある大爆発が起きた。
だがその余波は下には影響を及ぼすことはなく、それを最後に俺と百代先輩は元のグラウンドに降り立った。
「楽しかったですよ、百代先輩」
「あぁ、こっちこそ楽しかった。途中で何を言い出すのかと思ったが、お前は私のライバルだ。深夜」
「違いますよ、百代先輩はチャレンジャーですよ」
「それまだ言うのか?」
俺も百代先輩も最後までやり切っていないがスッキリとした表情だった。
戦う前の百代先輩と比べれば、一皮むけているほどに違っていた。それはたぶん俺も同じことだろう。
そして少しの沈黙の後、学園中に大歓声が響き渡った。
「すごい歓声……」
「私とあんなに戦える奴がいないんだ。あんな戦闘を見せられたら盛り上がるだろ」
「それもそうですか」
ふぅ、百代先輩と戦えてよかった。
「またやろうな、深夜」
「そんなに何回もできるか」
百代先輩の言葉に学長がつっこんだ。
「周りに被害が出てないんだからいいだろ~」
「あんな衝撃が何回も来ていたら大パニックじゃろ。撫子もむやみやたらにモモと決闘せんように」
「それもそうですね。きっと相応しい舞台が用意されるでしょうから」
「相応しい舞台?」
そういうのは紋様とかヒュームさんがやっているだろうが……九鬼が用意する対戦相手、百代先輩が強くなったけど大丈夫なのかな?
文句を言われても俺は知らぬ存ぜぬをつらぬこ。
おめでとう燕ちゃん。
武神討伐ウルトラハードモード突入だね!
ルート選択。
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燕ちゃん共闘ルート。
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燕ちゃん絶望ルート。