偽・伏黒宿儺   作:二十口山椒

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燕ちゃんが深夜くんとタッグを組んでいたらウルトライージーモードになるんだろうなぁ。

武神と戦う時も深夜くんで精神攻撃を行えば簡単に調子を狂わせれる。可哀想に……。


若獅子タッグマッチトーナメント。VS松永燕

 試合はどんどんと進んでいき、松永先輩と義経先輩と黛は別ブロックにいるため覇王先輩以外は特に強い人と当たらずに決勝まで来た。

 

 俺と弁慶先輩のペアと対戦するペアはもちろん松永先輩だ。知略で勝ち進んでいくことは何となく分かっていた。それに加えて強さもあるからこそ相方が直江先輩でも勝ち抜けていた。

 

「次が決勝か。あっという間に来たな」

「そりゃ俺だけが戦っているんですからね」

 

 それはこちらもほぼ同じことだ。弁慶先輩は逃げなくても俺がすぐに倒してしまうから奇しくも松永先輩ペアと同じような感じになっていた。

 

「はー、終わらせて早く川神水を飲みたい……」

「あと少しですよ。それに川神水をこんな場で飲んだらヒュームさんと他ジジババに何か言われますよ」

「分かってる。だから早く終わらせてくれ」

「松永先輩はともかく、百代先輩は無理でしょうね」

 

 決勝前だが、覇王先輩を相手にした後だから緊張すらしていない。

 

 それに今は闘気が高まっている。黒閃を決めたことも影響しているだろうが、それ以上にこの会場の雰囲気に当てられているのもある。

 

「で、松永燕は任せていいんだよね」

「もちろん。清楚先輩と与一先輩の時と同じ感じでお願いします」

「領域展開だっけ? それを使うのか?」

「場合によっては。領域展開を使ったら一定時間術式が使えなくなりますから勝負を決める時にしか使いませんけど」

「そうなの?」

「はい。脳に刻まれた術式が焼き切れているのでそれが冷えるまでは使えません」

 

 川神水同好会と知性チームが呼ばれたことでその話は中断して武舞台に向かう。

 

「それではいよいよ決勝戦を行います! 知性チームと川神水同好会!」

 

 余裕な表情の俺と弁慶先輩に比べて、松永先輩は顔色は優れない。

 

「まあこうなるよね」

「どうしました? 顔色が悪いですよ? 知略でどうにもできない敵にでも当たりましたか?」

「言ってくれるね~、その通りだけど」

 

 松永先輩が百代先輩と戦う場合は精神攻撃が良さそうな感じはするけど、俺はそういう隙は与えない。

 

「それでは決勝戦、レディゴー!」

 

 決勝戦が始まり、直江先輩は後ろに下がるがそれを弁慶先輩が追う。

 

 松永先輩は弁慶先輩に構わず襲い掛かる俺の攻撃を捌く。

 

「どうやって勝つつもりなのか聞いても良いですか?」

「それを教えると思う?」

 

 ほぼ確実に松永先輩は九鬼が、紋様が用意した武神を倒すための対戦相手なのは分かっている。

 

 時期的にも、その強さ的にも。だけど武神と同じくらいの強さを持つ俺にどうやって勝つつもりでいるのか気になった。

 

 川神院でやっている朝の稽古で百代先輩はもちろんのこと松永先輩とも組み手を何度も行っていたから、俺も、松永先輩もお互いのことが分かっている。

 

 だから最初は朝にやるような感じで武芸のように松永先輩と拳を交える。

 

 さっきの覇王先輩との時とは違い、松永先輩はちゃんとした武がある。でもそれだけで覇王先輩の方が強いのは当然だ。

 

「くっ!?」

 

 いつもよりかなり調子がいいから防御しようとした松永先輩の腕に黒閃が決まった。

 

「まだまだ!」

 

 黒閃が決まったことでダメージを負って一瞬だけ怯んでいる松永先輩に、黒閃の嵐に引き込む。

 

「燕先輩!」

「よそ見している暇ある?」

 

 俺の攻撃に防戦一方の松永先輩を見て直江先輩が声をかけるが、それをするほど弁慶先輩は甘くはない。

 

「そいそい」

「うおっ!?」

 

 百代先輩のおかげで回避性能が高いとは言え、よそ見をしてその性能を十全に発揮できるほど直江先輩は武人ではないはずだ。

 

 それに松永先輩は直江先輩に心配されるほど弱くはない。すぐに俺のくせを見抜いてか、隙を見て俺から距離を取った。

 

 俺もそれを追わずに様子を見る。

 

「どうしよっかー……」

「いつものように策を持っているんじゃないんですか?」

「いやいや、深夜くんはモモちゃんみたいに情報があるわけじゃないし、少し変わった戦い方をするよね? それに清楚ちゃんにやっていた技も分からないし、策なんてないよ」

「らしくないですね。どんな相手であろうと策を練り上げるのが松永燕では?」

「できれば私だってそうしたかったよ。でもキミは情報が無くて実力が未知数。そんな相手にどうやって勝てって言うのさ」

 

 松永先輩はかなりウルトラハードモードをやっているみたいだな。しかも松永先輩の目的は百代先輩で、俺はラスボスではないのにラスボスよりも勝てる見込みがないと言っているのだ。

 

「ま、頑張ってくださいと言っておきましょうか。松永燕無敗伝説、俺が終止符を打ってあげましょう」

「もう! 深夜くんがいなければ上手く行ってたのに!」

「ハハッ、ウケる」

 

 松永先輩にそう言わせることができて満足しながら、両手を鳥の形にして、その後に犬の形にする。

 

「鵺、玉犬」

 

 空から雷撃を纏った鵺を向かわせ、地上から玉犬を向かわせる。

 

 そして手の空いた俺は両手を合わせて指先を松永先輩に向ける。

 

「穿血」

 

 満象の能力を顕現させずに引き出し、赤血操術で使っていた「穿血」を真似て水を噴射させた。

 

 鵺と玉犬の攻撃を避けつつ、穿血を少しかすっただけだが避けた松永先輩。

 

「ふぅぅぅぅぅ……仕方ないかな」

「ようやく切り札を出すつもりになりましたか?」

「キミがとても仲が良くて可哀想な先輩に勝利を譲ってくれればそんなことをしなくてもいいんだよ?」

「ハハッ、仲がいいのはああいう可愛い年下じゃないんですか?」

 

 俺は弁慶先輩に追いかけられている直江先輩を指さす。

 

「俺はどちらかと言えば生意気な年下ですよ」

「生意気な年下じゃなくてとても生意気な年下だね。でも今までにない男の子だから気になってるよ」

「そんなことを言っても手加減はしませんよ」

「弁慶ちゃんを飼いならしているだけはあるね」

「年上の威厳とやらを見せてほしいところです」

 

 ホントに弁慶先輩は色気があるのにそれだけはとても残念だ。

 

 松永先輩は本気でやるようで準備を始めた。俺は準備が終わるのを待ち、松永先輩は腰に変身ベルトのようなものを付けた。

 

「装・着!」

 

 松永先輩から光が発せられ、光が収まると松永先輩は戦闘服を着ていた。

 

 松永先輩は本気だ。まあここで俺にそれを使わずに負けるよりも、それを使ってここで負けるか武神に挑むかを考えれば後者にするか。

 

「機械ですか」

「そうだよ。松永が扱うのは機械の力だからね」

「ということはそれが平蜘蛛ですか」

「そうだよん」

 

 ま、機械の力がどれほどのものか教えてもらおうか。

 

「百代先輩すみません! 先輩の楽しみ一つ貰いました!」

「ずるいぞ深夜! 私も混ぜろ!」

 

 さてさて、あの手甲がどういう動きを見せるのか。

 

「スタン」

 

 チューブを腰のベルトに差し込んだ松永先輩の手甲に雷撃が走り始めた。

 

「それで百代先輩の瞬間回復を止めるつもりだったんですね」

「そうだよ。でも深夜くんが雷撃攻撃をしちゃって瞬間回復の弱点がバレちゃったんだけど、ね!」

 

 松永先輩の恐ろしいところは分析力。組手の時に俺や百代先輩のクセを見抜いているのだと思う。

 

 俺はそこまでの分析力はない。でもおそらく百代先輩の研究ばかりしていたと思う。俺は目的じゃないからな。

 

「そこぉ!」

「ぐぉ」

 

 上手い具合にカウンターを決められて俺の腹に雷撃の攻撃が決められた。ここら辺も松永先輩が強いところだな。

 

「これを何度もして瞬間回復を封じるというのが松永先輩の算段ですか」

「どうかな」

「ま、第一にあの瞬間回復をどうにかしないことには始まらないですからね。ただ俺の反転術式は戦いが少し粗くなるだけで電撃も取り除けますけどね!」

 

 体に蓄えられるはずの電気をすべて取り除きながら松永先輩との攻防を続ける。そもそも微量すぎてすぐに取り除ける。

 

「俺の師匠はヒュームさんなんですよ? 電撃攻撃を体で教えられる時に動きながら取り除かないと死にますよ」

「うわ、かわいそー」

「そのおかげでスタンは意味がないですね」

 

 俺と松永先輩の攻防は誰がどう見ても俺の方が攻撃を通していた。

 

「リカバリー」

「回復ですか」

「キミやモモちゃんみたいにチートじゃないけどね」

 

 俺の方が呪力÷2換算でも総量は多いから回復勝負なら俺に分がある。

 

「これなら、どうかな!」

「フラッシュ」

 

 手甲から眩い光が発せられた。目くらましで俺の隙をつくつもりなのかと思ったが、すぐにそうではないと気が付いた。

 

「弁慶先輩!」

「分かってる!」

 

 俺が倒せないのなら倒せる方、弁慶先輩を狙うのはタッグマッチトーナメントで当然のことだ。

 

 だがそれで倒せるほど弁慶先輩は弱くはないし、すぐに玉犬黒と白を組み合わせて顕現させる。

 

「渾」

 

 感知にも強いバランス型の玉犬二体を組み合わせた渾を顕現させ、松永先輩に食らいつく。

 

「応用力が高い式神たちだこと!」

「スタン」

 

 すぐにチューブをスタンに切り替えて渾を振りのける松永先輩。

 

 特にダメージがない渾を影に戻す。そしてそろそろで終わらせることにした。

 

 俺的な配慮で、こういう相手なら負けても仕方がない。義経を倒したのだからすごい。と思われるには、領域を見せるしかない。しかも閉じずに周りから見える感じで。

 

 だが伏魔御廚子は松永先輩が死にかねないから十種影法術しかない。

 

「松永先輩。俺のことを可愛がってくれた先輩に敬意を表して大技を披露しましょう」

「それ恨みが入ってない?」

「いいえ、全く入ってませんよ。百代先輩と松永先輩に可愛がられた思い出は忘れられませんね」

「うーん、何だかなぁ。棘があるような気がするね」

「それは受け取る方が悪いですね」

「ほらそれだよ!」

「はいはい。やりますよー」

 

 両手を薬師如来の掌印にする。

 

「弁慶先輩! 直江先輩が沈みそうなら助けてあげてください!」

「どういうことだ!?」

 

 弁慶先輩の言葉に答えずに別のことを口にする。

 

「領域展開」

 

 俺を中心に影が周りにあふれ出し、武舞台全体を俺の影で覆った。

 

「嵌合暗翳庭」

 

 閉じない影の領域が出来上がったことで、まず最初に取り込まれるのは気が使えない直江先輩だった。

 

「くそっ! 何だよこれ!」

「こういうことか」

 

 この領域は地面を呪力か気で足場を作らなければ影に飲み込まれてしまう。

 

 飲み込まれそうだった直江先輩を弁慶先輩がつかんで落ちないようにする。

 

「これ、何なのかな……?」

 

 冷や汗をかいている松永先輩に答える。

 

「ここは術式を付与した生得領域を具現化させた空間です。清楚先輩を血まみれにした空間も領域展開ですけど、術式が違うので心配しなくてもいいですよ」

「いやこんな空間早く出たいんだけど」

「それなら場外へどうぞ。空間は場外までですから」

「そうはいかないよ!」

 

 向かってきた松永先輩だが、影から貫牛が三体出てきて襲い掛かる。

 

「それは直線しか動けないんだよね! 分かっているよ!」

「その認識は間違いですよ」

 

 俺と百代先輩の戦いを見ていたから知っている式神があるのだろう。だが、領域展開ではそれが覆される。

 

「がっ……!?」

 

 貫牛三体の攻撃を避けたと思った松永先輩だが、貫牛三体すべての攻撃が当たって大ダメージを負った。

 

「この領域ではすべての攻撃が当たります。避けても意味がありません。嵌合暗翳庭では式神が出た瞬間に攻撃が当たることが決まっているんですよ」

 

 さらに鵺、虎葬、玉犬、大蛇、満象、貫牛の物量攻撃が続く。領域に対抗できなければ、この物量攻撃はすべて脅威にしかならないわけだ。

 

 途中でリカバリーをしている松永先輩だが、ダメージは全回復しないからこの状況では意味がない。

 

 覇王先輩の時に学んだから、可哀想にならない程度で攻撃をやめて領域を解いた。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 もう息も絶え絶えで全身ボロボロな松永先輩は立っているのがやっとな状態だ。

 

「すみません松永先輩。俺は百代先輩に勝ちたいんです」

 

 松永先輩の前に立つ。

 

「……負けかぁ」

「大丈夫です。ちゃんと責任は取りますから」

 

 松永先輩の額に指をトンと叩くことで松永先輩は倒れそうになったから受け止める。

 

 これで今にも襲いかかってきそうな武神とのエキシビジョンマッチが行われるのか。まあ無駄に長引かせたのは俺のせいだけどね。

呪術廻戦を履修済み?

  • 週刊ジャンプで追ってる。
  • 単行本で追ってる。
  • アニメで見ている。
  • 見たことがない。
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