目が覚めたらどこか分からない家の中にいました。どこだここ。
「起きたか、赤子」
「……ここは?」
「九鬼が所有している無人島だ」
「無人島……」
ベッドの近くに金髪ジジイがいた。
「今の貴様では周りに悪影響を及ぼす。だからここで制御できるまで暮らしてもらう」
「俺としては無人島なら大歓迎ですけど……九鬼?」
九鬼って何だか聞いたことがあるなぁ。あれか、世界最大の財閥だったか。
「九鬼って、あの九鬼財閥ですか?」
「そうだ。力を制御できるようになれば、貴様は九鬼で働いてもらう。いいな?」
「まあ、いいんですけど……そんな簡単に決めていいんですか?」
「それは貴様次第だ。貴様が相応しくなければ、分からせるだけだ」
「了解です」
まあ住むところも用意してもらえたら別に文句ないかな。
このジジイといれば制御ができて術式を極められそうだし。
「今日はしっかりと休め。俺が来る時にはしっかりと扱いてやる」
「無人島ですから簡単には来れないですもんね。分かりました」
「無人島にあるものは好きに使って構わないが、無人島をなくすなよ」
「そんなことできるわけないじゃないですかー」
「貴様は自身の力を知っておけ」
そう言って音もなくどこかに消えた金髪ジジイ。
……まあ、ここなら隠れずに済むから色々とできそうだ。
そう言えば、あのジジイに玉犬たちを攻撃されたが、幸いにもジジイの攻撃を受けても無事なようだ。手加減されていたようだ。
ただ他の式神を調伏しなければ強みは出せないから、まずはそこら辺からだな。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「逃げてばかりでは終わらないぞ!」
ふっざけんなよジジイ! 何が実戦形式の訓練だよ。ただ殺されかけているだけだろ!
逃げるしかないだろ! ふざけんなよあのジジイ! もう決めた! あいつには拾ってもらった恩があると思っていたけどもう知らね!
俺の領域展開をお見舞いしてやる! 近い将来に絶対にだ! 服をすべて切り裂いて一物を落として国中に晒してやる!
だが金髪ジジイの言い分は分かる。
戦いの中で洗練されるのはジャンプ作品の基本だ。
だけど何もかも分からない素人だぞ、俺は。
そこに殺人ジジイに追われたら逃げるしかないだろ。
「やるしか、ないッ!」
こんな無様に逃げていると宿儺に嗤われてしまうからやめることにした。
「鵺!」
両手で鳥の影絵を作り出し、影から仮面をつけた怪鳥の式神が現れた。
金髪ジジイがいない間に調伏した一体で、最初に調伏したいと思っていたからすぐに調伏した。
「新しい式神か」
「そうです、よ! やれ!」
金髪ジジイに帯電した状態で体当たりさせるが、普通にこちらに返された。
帯電しているんだぞ? どういうことだよ!?
「式神を使うだけでは、何も改善しないぞ」
改善……そうか、何で式神で戦おうとしているんだ、俺は。
呪力を制御するために俺自身が戦って洗練されなければならない。それなら俺が突っ込まないと意味がない。
それに俺が未熟で式神が壊されたら目も当てられない。
前の世界で戦いとかを全くしたことがなかったから、こういう思考に知らず知らずのうちになっていたのかもしれない。
鵺を影に戻して、金髪ジジイの前に立つ。
「ようやくか」
どうすればいいのか分からない。でも死ぬ気でやらないとこのジジイが満足しないのは確かだ。
戦う心得とかないのにどうすればいいんだよと思っているが、そこら辺はジジイも分かってくれているだろ。考慮してくれなかったらキレるかもしれない。
「行きます!」
「フン、さっさと来い」
「クソが……!」
「武術の欠片もなく見苦しかったぞ」
はい、金髪ジジイにボコられました。
途中からはジジイが哀れに思ってくれたのか分からないが、蹴りが軽くなって動きが遅くなっていたな。
「そんなの、当たり前じゃないですか……! 俺に何を求めているんですか……!」
「貴様に武術の才能はない」
「そりゃそうでしょうね」
「だが武術以外なら見どころはある。今まさに、力の制御ができていることに気付いているか?」
「えっ」
……そう言えば、何だかいつもより体が軽い気がする。
周りにも不幸が襲い掛かっていた俺の力が、もう収まっている。
「戦いの中で、制御できていた、ということですか?」
「俺と戦っていくうちに無意識に制御をしていたのだろう。それを意識的にできるようにもう一度やるぞ」
「はい!」
何だかいつもよりも調子が良くて今なら意識的にできそうな気がする!
調子に乗れ! 調子に乗ればできる! 本気になれ! この金髪ジジイを倒そうと思え! 思わなければ勝てない! これをただの戦いだと思うな! 殺されると思え!
楽しむ!
横から来る金髪ジジイの蹴りはハッキリと見えた。
制御できたから見えるようになったのか、そういう風に体が対応しているのか分からないが、その蹴りに合わせて左腕に力を集めて受け止めた。
「ッつ!」
「ほお、受け止めるか」
「オラ!」
力を込めた右腕で金髪ジジイを殴りかかるが、簡単に避けられた。
でも余波で風が吹き荒れたから、ちゃんと制御ができている。
「フン、できるのなら最初からしていればいいものを」
「できる、とは思わなかったので!」
「それこそが赤子だ。自身の可能性を信じなければできるわけがない」
言っとけ、ジジイが。今、力のコントロールができたのだから、この莫大な力を試してやる!
「行きます!」
「力を制御できたお祝いだ、喜んで受け取れ。ジェノサイドチェーンソーッ!」
「グハッ!」
だからそれ子供に打つ技じゃないだろ……。
またあの技を受けてベッドの上で目覚めた。
何だろ、あの技。一回目も二回目も疲れている状態から受けたから定かではないけど、何だかゴッソリと力を持っていかれる気がするんだよな。
でも、もう無意識に力を抑え込んでいるから成功している。
もしかしたら俺は天才なのかもしれないな。あの弁護士の日車ほどではないが、そうかもしれない。
とりあえずあのジェノサイドチェーンソーッ! の対策をしないといけない。何だか因果も捻じ曲げている気がしてならない。
というか、あの金髪ジジイはいないのか。あの強さなら九鬼でも多忙なのかもしれないし、その合間に来てくれているのならありがたい話だ。
「よし……!」
楽しくなってきたぁ!
今までも伏黒恵と両面宿儺の力を持っていたから密かに楽しんでいたが、こうして力を思い通りに使えるというものはワクワクする。
まあ、制御できていればこの世界の母親を殺すこともなかったからそこだけはずっと後悔していなければならないことだが、楽しめることは楽しまないと人生損だ。
二度目の人生の俺が言うんだから間違いない。
早速鍛えることにする。体はしっかりと癒えている。
でもあれからどれくらい時間が経ったんだ? カレンダーもスマホも何もないからよく分からん。
ま、どうでもいいか。
そう思って外に出ると、どこかに連絡を取っている金髪ジジイがいた。
何だいたのか。
ていうか五感以外でどうやって気配を察知するんだろうな。俺は全く分からないぞ。
感覚が常人から離れられずに感知できても感知できないのか、そういうのは鍛えるものなのか。
「……無意識か」
「はい?」
電話を終えた金髪ジジイが何かボソッと言ったが聞き取れなかった。
「俺はもう行く。しっかりと体を休ませておくんだな」
「あ、はい」
そう言って金髪ジジイは見えない速度でどこかに消えた。
制御してもまだまだ見えないとかありえないな。あのジジイが不老不死の妖怪って言われてもたぶん驚かない。
それよりもとっとと修行をしようか。次にあの金髪ジジイが来た時には傷一つは絶対につけてやる……!
あぁ、ヒロイン何も考えてねぇ……どうしよ。
これからヒュームはどうする?
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クローン組と会わせる。
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川神百代に会わせる。
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九鬼従者部隊に合流。
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無人島で極めさせる。