偽・伏黒宿儺   作:二十口山椒

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アンケートを始めてから、最初の方はかなり同じ強さの方が票が入っていたので、あっ、これはこっちで進めた方がいいなと思って書いていました。

同じ強さと言っても、上限で同じ強さなので今の深夜では少しだけヒュームには敵いません。

それから誤字報告ありがとうございます。適当に書いているのでどうしてこんなことを書いているのだと報告されて気が付きます。


04:VSヒューム・ヘルシング

 無人島で修行するようになってどれくらい経ったか、もう七、八年くらいか。

 

 もう高校一年生になっている年齢だし、まさかあれから無人島でずっと暮らし続けるとは思わなかった。

 

 今世の人生で、半分は無人島生活とか狂っているんじゃないのか?

 

「早く準備しろ」

 

 俺はてめぇに言っているんだぞ? ヒュームよぉ。

 

 いきなりプライベートジェットで来たかと思ったら、執事服を渡されて行くぞとしか言われなかったんだが。

 

「もう出ていいんですか?」

「貴様が力の制御ができていればここから出そうと思っていた」

 

 それ数日で終わってません?

 

「だが貴様が思った以上に面白い成長を見せていたからな。丁度いい時期が来るまでここで鍛錬させることにしていた」

 

 これだけ時間があったら、術式を一人前に使えるくらいにはなった。

 

 領域展開も、十種影法術の使い方も、御厨子も、原作の伏黒宿儺よりは劣るだろうが、それなりには使えるようになった。

 

 俺と伏黒宿儺が同じ力を持っているとして、俺と伏黒宿儺の圧倒的で埋まることのない差、それは知識量だ。

 

 宿儺の知識量は作中ではトップクラスだと思うし、その知識で十種影法術も上手く使っていた。

 

 だから俺は宿儺よりも時間をかけながら術式を使いこなさないといけない。

 

 八年くらいそれを追求していれば、まあまあな感じになった。

 

 知識量は負けるが、何となく術式やこの体が本能的に指示を出してくれるから、中身が凡事である俺でも何とか宝の持ち腐れにはしなかった。

 

「丁度いい時期とは?」

「そのことは追って説明する」

 

 そう言ってプライベートジェットに乗り込むヒュームさんに続いて執事服に着替えた俺も乗り込んだ。

 

「どこに向かうんですか?」

「九鬼家極東支部だ」

「へぇ、ということは俺も働き出すってことですか?」

「そうだ。そのために十分に時間は与えたはずだ。まさかとは思うが、足りないとは言わないだろうな?」

「そう見えますか? それなら見る目がないですね」

「フッ、マシになったと思ったら生意気な口を。それを今日証明してもらおうか」

「証明?」

 

 えっ、何をするの? ねぇ、何を聞いても答えてくれないんだけどこのジジイ。

 

 補聴器いる? 耳いいとか嘘だろ。

 

 

 

 何気にプライベートジェットとか初めてだな。八年前の行きは気絶していたから体験していない。

 

「おぉ……」

 

 ここが知ってはいたが見るのは初めてな九鬼家極東支部。こんなに大きいんだな。半分に斬りたくなる。

 

 極東支部に入って進んでいくと、ある部屋の前まで来た。

 

 ヒュームさんから先に入って俺が次に入ると、会議室のような場所で人がずらっと俺の方を見ていた。

 

 うわっ、こんなに人と遭遇したのが久しぶりで気持ち悪……! ハッ! じょ、女性だぁ! ハッ! カマバッカ王国から出たサンジみたいになっていた……。

 

 いかん、情緒が不安定になってきた。

 

 ていうかこの中で知っているのは帝様しか知らないけど、額にバツをつけているのは絶対に身内じゃん。

 

「おう。久しぶりだな、深夜」

「はい、お久しぶりでございます。帝様」

 

 この場ではほとんどの人がファーストコンタクト。無様な姿は見せられない。

 

「何だかパッとしねぇ奴だな」

「ステイシー」

 

 金髪のメイドの言葉に黒髪のメイドが注意している。

 

 えっ、何あの美人さん。ていうかここ顔面偏差値高いなぁ。

 

 何やら俺のことを見て偉そうな人たちが話しているが、この空間に美女がいるということにドキドキして何も頭の中に入ってこない。

 

 武士道プランとか聞こえてきたけど、何? 武士の世界をつくるの?

 

「撫子深夜、貴様の力を証明するために俺と戦ってもらう」

 

 ヒュームさんが話しかけてきたが全く話を聞いていなかったとは言えない。

 

 まあだけど言葉的にはこの場にいる全員に俺の力を証明するために一番強いヒュームさんと戦うのが手っ取り早いということなのだろう。

 

「戦うって、真剣でですか?」

「あぁ、真剣でだ。そうでなければお前の力をお見せすることはできないだろう」

 

 この人と真剣で戦ったことは実は一度もないから、戦ってみたいとは思っていたんだ。

 

 でも待て、ここで俺があり得ねぇほど強さを見せたらドン引きされるのでは……職場恋愛は諦めよう。

 

 

 

 場所は変わり、広い場所にさっきの会議室にいた人たち以外にも強い人たちが来た。

 

 ある一人のジイさんとヒュームさんが俺のところに来た。

 

「この子がお前が言っていた弟子かの」

「あぁ、俺やお前以上だ」

 

 何だこのジイさんは。山本元柳斎重國かよ。

 

 それにしてもヒュームさん並みに強いな。ヒュームさんの方が強そうだが、この場にいる中ではトップだ。

 

「ワシは川神鉄心。川神院の総代をしておる」

「撫子深夜です。ヒュームさんの弟子をしています」

「ヒュームからお前のことを聞いておったが、想像以上じゃわい。モモと同じくらいの強さを持っておるとはのう」

「モモ?」

「だから言っただろ、こいつは才能で言えば誰よりも持っていると」

 

 えっ、なに? ヒュームさんはそんなことを俺には一言も言ってくれてなかったぞ?

 

 かなりべた褒めしてくれているんですが。ていうか俺ってそんな評価だったんだな。

 

「戦うために何でこんなに人が集まっているんですか?」

「俺とお前が戦えば、辺りに甚大な被害が及んでしまう。だから鉄心たちに結界を張らせて十秒だけ戦えるようにする」

「十秒ですか。決着つきますかね?」

「決着がつかなくても、貴様の実力を示せればいい」

「まあそうですね」

 

 十秒か。俺の実力を見せるのなら、領域展開はなしにして、殴りあいが妥当なところか。

 

 十秒なら魔虚羅の方陣を出してヒュームさんの攻撃に適応させる前に終わってしまうな。

 

 俺とヒュームさんの回りに川神鉄心さんたちによって結界が張られた。

 

 確かにこの結界なら耐えられそうだな。帳みたいなものか。

 

「この決闘の審判は、九鬼従者部隊序列三位のクラウディオ・ネエロが務めさせていただきます。決闘の制限時間は十秒。十秒でどちらかが戦闘不能になれば、止めさせていただきます」

 

 この人も強いな。

 

 もちろん、ヒュームさんや川神さんよりは弱いが、そういう雰囲気を見せている。

 

「準備はよろしいですか?」

「はい」

「あぁ」

 

 ネエロさんの問いかけに俺とヒュームさんは返事をした。

 

「始め!」

 

 ネエロさんの合図で俺とヒュームさんは激突した。

 

 ヒュームさんのここまでの気を今まで見たことがなく、真剣なのだと理解できた。

 

 だがこちとら無人島で無駄に修行をしていたわけではない。

 

 俺の拳とヒュームさんの蹴りが衝突した際、俺の拳が黒く光った。

 

『黒閃』

 

 今日は気分がいい! 狙って放てる術師はいないって作中に書かれていたけど、気分がいい時は百%で放てている俺は天才かもしれない!

 

 俺とヒュームさんの白兵戦はほぼ互角だと分かった。だがこれで十秒を費やすなんてもったいない。

 

「解」

 

 少し距離ができたところでヒュームさんを切り刻むように斬撃を放つが、それをすべて叩き落したヒュームさん。

 

 魔虚羅みたいに適応しているわけじゃなく初見で叩き落すとは本当に化け物だな。

 

 (ハチ)なら斬れるかもしれないが、今のところは解しか使わない。

 

 また距離を詰めようとしたが、あの技の気配を察してすぐに防御の姿勢に入る。

 

「ジェノサイド・チェーンソーッ!」

「ぐひっ!」

 

 やっぱりこの技を使って来たやがった。しかも毎度毎度疲れるけど、今回は耐えれた! だから今度はこっちの番だ!

 

(フーガ)!」

 

 片手から炎が現れ、手のひらを閉じてから弓を構えるように片手を前にして片手を引いた。

 

 そして炎の矢をヒュームさんに解き放ち、ヒュームさんに直撃させることができた。

 

 まあこれで倒せるとは思っておらず、炎の中からヒュームさんが出てくるさまはさながら映画のワンシーンだな。

 

 あれが敵だったら絶望のシーンだろ。

 

 だがヒュームさんもそれなりにダメージを負っているからまだまだこれからだ!

 

「終了でございます」

 

 行こうとしたところで、ネエロさんの言葉で急ブレーキをかけて止まった。

 

 う、ウソだろ……もう十秒が終わってしまったのか……!?

 

「も、もう十秒だけ!」

「それでは結界が耐えられない。それに貴様の実力を示すことはできたんだ、これ以上は不要だ」

 

 十秒って早くありません!? まだ俺もヒュームさんも余裕があるのに!

 

 ……いや、あのまま戦っていれば俺は負けていただろう。長期戦になれば俺が有利になるだろうが、その前に決められそうな気がする。

 

 俺が不足しているのは技術もそうだが、経験だ。そればっかりは無人島では得ることができなかったし、生きてきた年数が圧倒的に違う。

 

 ただそれは言い訳に過ぎない。

 

 俺の才能はヒュームさんよりも勝っているとは思うから、それを使いこなせていない俺の無能さが原因だ。

 

 何せ十種影法術と宿儺の力を持っているのだからポテンシャルは最強だろう。

 

「あのまま続けていれば俺に負けていたことが悔しいのか?」

 

 ヒュームさんに言い当てられて、俺は頷いた。

 

「まあ、悔しいです。鍛錬不足とか技術不足とか、そういう話ではなくて、自身の力を上手く使いこなしていないことが、悔しくて仕方がないです」

「貴様もまだまだ赤子同然だ」

「はい?」

 

 久しぶりにそれを言われた気がするな。

 

「お前はまだ道半ば。それなのに悔しいという顔をして終わりなのか?」

「……まさか。次は絶対に勝ちます」

「まだ奥の手を隠しているようだからな。楽しみにしている」

 

 楽しみに、か。

 

 ふっ、俺もまた次の戦いが楽しみで仕方がない。

 

 いつからだろうか、俺が術式を使いこなして楽しいと感じつつも、戦いの中で楽しいと感じるようになったのは。

 

 とにもかくにも、これで俺は九鬼に実力を認められた。

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