恋する風は諦めない   作:とぅりりりり

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しょうげき

 

 

 

 呪いを受けてから一日が経過しました。

 朝、起きて勝手に動き回るわけにもいかず、着替えてから誠実さんを起こしに行くととってもびっくりされてしまいました。

 離れるとぶつかってしまったりするトラブルを防ぐため、歯磨きや顔を洗うのを一緒に済ませ、誠実さんが朝食を作るのを後ろで見学する。

 

「今日は本庁に顔を出すんだ。車戻ってくるからそれで行こうね」

 

「誠実さん、車があるんですか?」

 

 昨日は電車だったので持ってないのかと思っていました。どうやら事情があって昨日はなかったようです。

 

「まあちょっとね……午前中に納車されるはずだから、確認したら本庁に行こう。それまで、なにかしたいことある?」

 

「えっと……おべんきょうを……」

 

 結局昨日は全然頭に入りきりませんでした。

 

 ええと、異能者は異能があることが発覚すると、役所と防人衆に異能者であることを申告するのが義務になっていて、その手続きは昨日、卯月さんが代わりにやってくれたらしいです。

 未成年の場合は保護者の署名も必要らしいですが、寧々は一人ですし、そのへんの融通もしてくれたらしいので卯月さんには後でお礼を伝えなくては。

 

 そして、異能者は高校生になると異能者が通う学園に通う義務があるようです。

 初等部と中等部もわずかにはあるようですが、基本的には高校生からが大多数で、一般人と同じ価値観を育むためだとか。

 

 学園での3年間を終えると、大学、もしくは防人衆への就任。それ以外は異能関係の会社やお仕事に就くようです。

 

 基本的に異能者に職業選択の幅はそれほど多くなく、逆に言えばしっかり学びさえすれば、防人衆は常に人手不足なので拾ってもらえるようです。

 

 寧々は呪いが解ければ学園に通うことになるでしょう。

 でもそうしたら誠実さんとは離れ離れになってしまう。学園を卒業してすぐ防人衆に就任するまで3年。

 その間に誠実さんはこんなに素敵なんだから他の人からアプローチされるはず。

 そんなことになったら悲しくて泣いてしまうかもしれません。

 

「防人衆って、学園を卒業しないとなれないんですか?」

 

「正式な防人衆ってなるとまあそうだね。一部の特例はそうでもないけど……」

 

「特例!?」

 

 そう、まさにそういう特例が知りたかったところなんです。

 

「現役の防人衆が、将来防人衆になるであろう予定の学生を見習い助手として雇用する『先行見習い』って制度があるんだ。学生たちには今風に言うとサイドキックなんて呼ばれたりしてる」

 

 誠実さんが本の該当部分をぱらぱらーっと探し当てて開いて渡してくれます。

 これなら学園に行くことになっても、誠実さんに会えるのでは?

 

「ただ、これは現役防人衆1人につき学生1人までって縛りがあってね。だいたい自分の身内とか家族に経験を積ませたい人が使ってるからあんまり期待しないほうがいいかもしれないよ」

 

 夢と散りました。

 誠実さんにお願いしてみることも考えたのですが困らせてしまいそうで言葉を飲み込んでしまいました。

 あとでこっそり卯月さんに聞いてみることにしましょう。

 

「それに、まず君は自分の異能に慣れるところからね」

 

 最もな指摘にうっと口を閉ざす。

 本庁でもう一度詳しい検査があるらしいですが、昨日の時点では「安定しているので暴走の危険性はないと思います」と担当する防人さんに言われました。

 けど、それでも異能によってはちゃんと確認しないとトラブルの元なので、今日もう一度しっかり見てもらうことになったのです。なんでも、詳しい担当者さんが昨日はいないとかで。

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 本庁での検査は1時間もせずに終わりました。

 

 寧々の異能は【風使い】というもので、風を操る能力というものです。

 

「シンプルで先人も多いから資料に困ることもないね」

 

「よくある異能ってことですか?」

 

「そうだね。ただ、よくある分、人によって扱いとか出力で差が出やすい能力でもあるから、使いこなしたいなら勉強や訓練はしっかりする必要があるかな」

 

 検査で試しに使ってみましたが寧々は強い風を起こすことが得意なようで、後天性?で覚醒したわりには安定しているから訓練すれば攻撃的な扱い方に長けるだろうと教えてもらいました。

 

「防人衆でも……お役に立ちますか?」

 

「うん? そうだね。東京じゃないけど風を使う異能者の人が役職についてたりもするし、使いやすい異能だから色んな場面で活躍できると思うよ」

 

 防人衆に不向きとかではなかったようで少し安心しました。

 ふと、本庁というわりにあまり人と遭遇しないのできょろきょろ見渡していると、誠実さんがそれに気づいて声をかけてきます。

 

「どうかした?」

 

「あ、いえ。あんまり人がいないな、って」

 

「ああ、さっき検査してるタイミングであちこちで魔物出現の報告があってね。多分結構な数が出動したからそれで少なく感じるんだと思うよ。元々人手不足気味なのもあるけどね」

 

 人手不足……というならやっぱり見習いを目指すのは最短なのではないでしょうか。

 卯月さんのことを思い浮かべると、タイミングよく卯月さんが通路の奥から顔を覗かせ、近づいてきます。

 

「おーっす、坊っちゃんと嬢ちゃん。昨夜はどうよ」

 

「ベッドの位置を変えるはめになったよ」

 

「色気もなんもねぇ返答で逆にほっとしたわ」

 

 軽口を叩きながら誠実さんたちのオフィスに移動します。誠実さんと卯月さん以外誰もいませんがあちこちのデスクから持ち主の性格が伺えるような気配がする。

 寧々はソファに座って足をぶらぶらさせながら卯月さんが来るのを待っていると、別の部署の方が誠実さんを呼んで、離れられる限界ギリギリまで離れたところでお話をしています。

 その様子を眺めていると卯月さんが先に隣にやってきました。

 

「よっ。なーんか難しい顔してんじゃん」

 

「あ、その、聞きたいことがありまして……」

 

 まだお話をしている誠実さんをちらりと横目に見てから卯月さんに耳打ちします。

 

「先行見習いって……卯月さん、できますか……?」

 

 寧々の小声に応えるように声を潜めた卯月さんは口元を手で隠す。

 

「ん~? ああ、先行見習い? 何だ、俺に頼むのか? 坊っちゃんに断られた?」

 

「あ、その……」

 

 頼みづらくてまだ言っていないとは言えず、しどろもどろしていると、卯月さんは微笑んでおでこをぴんっと弾いてきます。

 

「とりあえず坊っちゃんに頼んでみなって。それに俺、立場上先行見習いは取れねーからさ。どの道俺じゃ無理だよ。悪ぃな」

 

「い、いえ……」

 

 卯月さんは親切に教えてくれたけど見習いは無理、ということで少しだけがっかりしつつ、まだお話が終わってない誠実さんを確認してもう一度耳打ちする。

 

「あの…………誠実さんって恋人、いますか……?」

 

 寧々の問いに卯月さんは虚をつかれたように目を丸くしてから、大きな笑い声を出します。

 

「あっははははは! えー、いないいない。坊っちゃんにそういうのいたことねぇもん」

 

 途中から小声に戻してくれますが誠実さんに聞かれてないか不安でちらちら確認してしまいます。一瞬だけ目が合った気がしますが……。

 

「そ、そうなんですね……誠実さん、すごいモテモテそうなのに……」

 

「いや、クッソモテねぇよ。少なくとも防人衆にいるやつにゃ、坊っちゃんは特大地雷だし」

 

 なにやら気になることを言いかけられましたがちょうど誠実さんが戻ってきて不思議そうな顔で自分のデスクの椅子を引っ張ってきます。

 

「なんの話してたんだい?」

 

「世間話さー。そっちの用件はいいのか?」

 

「うん。呪詛手当についてのことだったから」

 

 椅子に座ってようやく揃うと、卯月さんが待っていたとばかりにいくつかの書類を並べてくれます。

 

「前例、一応調べてきたけどけっこー解けるまで様々でな」

 

 寧々たちの呪い、固定化の呪詛というものらしいのですが、前例の記録をまとめていただいたようです。

 2週間の人から1ヶ月の人、そもそも数日で済んだ人まで様々で、解除方法は自然の場合もあれば、呪いをかけた魔物を倒すまでと様々らしいです。

 

「嬢ちゃんと坊っちゃんの場合、魔物の死ぬときの霊力爆発での呪詛だから時間経過だと思うんだよな。幸い、固定の呪いが解除されなかったっていう前例は今んとこ見当たらないし」

 

「だよね……最長だと……記録範囲では三ヶ月?」

 

「まあ三ヶ月が最長ってとこだな。最短は半日」

 

 既に寧々たちは1日経っていますが解除された様子はないです。

 前例を見ても特にどれくらいで解決するのかは読み取れなかったようで、誠実さんも困ったように頭を抑えています。

 

「記録によると、呪詛を浴びたときに接触していたものに固定されるらしいんだよな。坊っちゃん、呪い受けるときに嬢ちゃんとくっついてたの?」

 

「あれは……有害なものだとまずいと思って咄嗟に……」

 

「まあその心意気だけは評価するけどよ。下手すりゃ公園野宿野郎みたいにしばらくなんもできなくなるところだったんだし慎重にやれよ」

 

 公園野宿野郎ってなんですか?

 なんだかすごく気になる話ですがあとで覚えてたら聞きましょう。

 

「今言っても仕方ないことだろう。結局僕らの呪いもいつまでかかるかはわからないってこと?」

 

「特級クラスの魔眼持ちか、腕のいい霊術の使い手がいりゃあもっとわかるかもしれねぇな。まあそんな人材はいねぇけど」

 

「ご隠居されてるけど伊藤さんは?」

 

雪代(ゆきよ)のババア? とりあえず一回かけあってみてもいいけど多分無視されると思うぜ」

 

 解決できそうにない問題に卯月さんと誠実さんが話し合っていると、警報のような音がして思わずびくっとしてしまいます。

 お二人はそれに驚いた様子もなく、卯月さんが内線を取ってスピーカー状態にして応対します。

 

「あいあい。こちら特殊総務のわたぬき」

 

『緊急! 新しい魔物発生につき応援要請! 現在の人員では規模が大きく対応しきれません!』

 

「えぇー! 俺らの班、今みんな出払ってんだけど!」

 

 オフィスもう一度見渡しますが誠実さんと卯月さん以外は不在です。

 すぐに戻ってくる気配もないようだし……。

 

「討伐課に連絡は?」

 

『討伐課は現在行動可能な方が先程の別件対応中につき、急ぎの案件が難しいと予想されます』

 

「あのゴリラどもはよぉ!」

 

 苛立たしげに舌打ちした卯月さんに対して誠実さんは寧々に一緒に移動するように手を引いて、内線のそばまでやってきます。

 

「わかりました。今すぐ現場に向かいます。場所は?」

 

「あ!?」

 

 卯月さんが驚いて誠実さんを見てから寧々のことを見て正気を疑うように見つめます。

 内線でのやりとりを終えると、卯月さんが誠実さんに食って掛かります。

 

「ちょいちょいちょちょちょぉい! 嬢ちゃん連れてく気か?」

 

「規模が大きいんだろ? なら行かないと」

 

 卯月さんを諭してから誠実さんは寧々をじっと見て頭を下げます。

 

「寧々さん、事後承諾で申し訳ないし、そもそも離れることできないだろうけど、僕がかならず守るから仕事に付き合ってくれるかな」

 

「は、はい!」

 

「ありがとう。防人衆の仕事に興味あるならいい機会になるよ」

 

 卯月さんはそんな誠実さんを呆れた顔で見ながら「こんにゃろ……」と呟き、出動準備をしながらずっとぶつくさ文句を言い続けます。

 

 誠実さんの車で現場まで向かいながら、途中で卯月さんから色々と教えてもらいます。

 

 誠実さんたちの部署は特殊総務課といい、総務課と似てはいるものの、こういった際に応援に駆けつけたり、様々な雑事をオールマイティに請け負うようです。

 そのため、他の部署と比べても常に人手が足りず、今回のように人が足りてないということになるのも少ないのだとか。

 

「まあていよくこき使われる部署っていうか……本来特殊な立ち位置だから忙しいんだわ」

 

「大変なんですね……」

 

 運転している誠実さんが淡々と、カーナビを一瞬横目に見ながら答えます。

 

「ここ数年特に魔物の数も増加傾向だしね。討伐課は大型案件に吸われるし、しょうがないよ」

 

「つか、車で大丈夫か? 現場的に交通網麻痺ってね?」

 

「確認したから問題ないよ。ただ――」

 

 現場が近づいてくると遠目からでも黒い大きなものが見えます。寧々が昨日対峙した魔物よりもふたまわりは大きい。

 それがなにかを飛ばして――こちらまで降ってきました。

 

「瓦礫飛ばしてくるらしいからそれがちょっと危険かな」

 

「あ゛ーッ! 先に! 言え! まーた廃車寸前にする気か!」

 

「前回のは僕のせいじゃないし……」

 

 飛んでくる瓦礫を回避しながら荒い運転に目を回してしまいます。シートベルトがあってよかった。

 防人衆って……大変なお仕事なんですね。

 そうしみじみ思っていると、現場に到着し、そこの惨状に思わず言葉を失います。

 

 先に到着していた別の防人衆の人々が怪我人を守りながら魔物を押し留めており、怪我人の数も10……いえ、20人は越えていそうです。

 幸いにも重傷はそこまでいないようですが、魔物が大きいのが1体だけでなく、見えている範囲で6体ほど。昨日対峙した魔物よりも大きくはないですが数が多い。

 

「うわやっば。怪我人搬送優先でいいか!」

 

 卯月さんが錫杖をしゃんっと鳴らすと、他の防人衆の方が叫びます。

 

「それより結界をお願いします! こちらのメンバーでは対応できないため瓦礫被害が拡大しかねません!」

 

「げぇ、結界使えるやついねーのかよ」

 

 誠実さんは魔物を確認してから寧々に耳打ちします。

 

「寧々さん、異能使えそう?」

 

「えっ、その……」

 

 やらなきゃたくさんの人が危険でしょう。そして、最悪の場合、寧々や誠実さんも危険でしょう。

 でしたらやる、以外の選択肢は寧々にはありません。

 

 寧々は強い風を強く、強く、強くイメージして、こちらまで寄ってくる魔物にぶつけてみます。

 幸運にも、吹き飛ばされた魔物は別の魔物とぶつかって、動きを止めたところ、別の方がトドメを刺して2体減らすことに成功します。

 

「よし――」

 

 誠実さんがそれを確認して札を取り出そうとすると、赤黒いもやのようなものが見え、そこから新しい魔物が出現する。1体どころではなく、ざっと見ても4体。倒した倍増えています。

 

「嘘ぉ!?」

 

 魔物が増えたことで防人衆の方々の焦りが隠しきれなくなり、誠実さんも目を見開いてどうするべきか考えながら歯ぎしりをしています。

 寧々にもっとできることは――

 

 

 そう考えていると突如、魔物たちに勢いよくぶつかる直方体が一瞬で何本も出現しました。

 

 

「あーら、随分となまっちょろい雑魚どもが右往左往していらっしゃること!」

 

 

 楽しそうな声。振り返ればそこにいたのは赤い和傘を差した、寧々とそう歳が変わらないであろう女の子がいました。

 緑色の髪が風になびいて、その顔は自信に満ちている。

 その女の子を見るなり、防人衆の方々が叫び出します。

 

「いやぁぁぁぁぁあ!」

 

「で、出たぁ!」

 

「うわでも助かる! いややっぱ困る! お前ら下がれー! 鈴木女史が来たぞぉ!」

 

 なんだか予想していなかった反応に寧々だけ取り残されています。誠実さんと卯月さんを見ると、どこか「あーあ」という顔をしており、先程までの焦りは見られないものの、どこか困ったような顔をしているようでした。

 

 

「おほほほほ! 遅い遅い遅い、遅いですわ!」

 

 

 その姿はこの場にいる誰よりも軽やかで、一瞬のうちに直方体と立方体を異能で出現させているのか、それらを駆使して魔物を打ちのめしていきます。

 

「わぁ……! かっこいい……!」

 

「おう、嬢ちゃん。憧れるものは選んだほうがいいぜ。セージ坊っちゃんといい、あの女といい」

 

「今のどういう意味?」

 

 誠実さんが卯月さんを睨むと、卯月さんは舌を出して目をそらす。完全に傘の女の子が来てから緊張が解けているようで、他の方々は怪我人の搬送と保護を優先していました。

 

 そして、3分もしないうちに、女の子によって魔物は全滅させられ、残ったのは破壊されまくった地面や建物、そのほか色々な残骸。

 

 圧倒的に強いことだけは素人の寧々でもわかるほど。そして、自信に満ちたその姿にかっこいいと思いつつ、他の人達の反応が不可解で首を傾げてしまいます。

 

「あースッキリしましたわ。さて、帰りますか」

 

 女の子はそのまま気まぐれにやってきたと思えばまた気まぐれに立ち去ろうとして、防人衆の方に止められます。

 

「あの……討伐申告しないといけないので帰られると困るのですが……」

 

「あぁん? まーた申告申告申告……そっちで勝手にやっておいてくださる?」

 

「いえでも、決まりですから……」

 

「どいつもこいつもお役所野郎ですわね。別に私は記録に興味などありませんので。追加で報酬でも出るというなら考えますが」

 

「いえ、正式な案件でもないので……」

 

 なんだか不穏というか、イタチごっこみたいな気配がしてきました。

 横で誠実さんがため息をついて、寧々に手をつなぐように手を差し出してきて、それに応えると誠実さんは揉めている2人の方へと向かいます。

 

「ああもうまどろっこしい!」

 

 女の子が傘を振り上げ、相手をしていた防人さんがひいっと声を上げる。

 しかし、その傘は振り下ろされることなく止まりました。

 

 

「こら、夢ちゃん」

 

 

 女の子の腕を掴んで止めたのは誠実さんでした。もう片方の手で寧々の手を握りながら。

 他の人達は臆したり、怖がっているのに誠実さんは困ったようにため息をついて彼女を止めています。

 

「ちゃんと倒したんだから申告しなよ。担当の人たちも困るし、夢ちゃんだってレコード不確かになっちゃうよ?」

 

「別に、私のは趣味ですので。だいたい害獣倒すたびに申告とか鬱陶しいのですが」

 

「まったくもう……手伝ってあげるからちゃんと申告しなよ。面倒なのはわかるけど」

 

 誠実さんが困ったように、けど微笑みながら女の子に諭すと、ばつが悪いとでも言うように女の子は腕を組んで舌打ちします。

 

 

「……チッ、仕方ないですわね。その代わり、いつも通り、後で奢りなさいな」

 

「うん、偉い偉い。じゃあ一緒に行こうか」

 

 

 誠実さんは穏やかに笑って、女の子の頭を撫でます。それを鬱陶しそうに振り払われるも、誠実さんは気にした様子なくニコニコしています。

 

 後ろの防人衆の人たちが今にも悲鳴をあげそうなくらい驚いているのが見える。でも、寧々はそれよりも。

 誠実さんがあんなに穏やかに笑うところを初めて見たことが、頭から離れませんでした。

 本当に心からの笑顔はあんなにも私に向けるものとは違うだなんて。

 

 

 

 

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