転生したから世界一のサイドバック目指す   作:口の端にほっぺが!

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小学生編 全国制覇
転生


死んで起きたら転生していた。

 

死ぬ間際のことはぼんやりとして思い出せないが、俺は前世の記憶をもっている。30歳手前だったはずだ。短い人生だった。

 

それが、気がついたら赤ん坊になっていた。

 

両親ともに見知らぬ人で、逆行では無いと知った。イケメンと美人のおしどり夫婦だ。転生に間違いなかった。

 

今世の俺は、どうやらかなりのイージーモードらしい。両親の身長と顔を見れば俺のラブコメは確約されたようなものだ。そして一軒家住みの一人っ子。3人兄弟の末っ子で割を食っていた、生涯アパート民の前世からすれば壮大なランクアップだ。

 

こんなに恵まれているのだから、俺は前世にやりたかったことを全てやることにした。

 

全てとはいっても、本当に俺がやりたいのはひとつ。サッカーだけだ。

 

奨学金目当てで前世には相当勉強していたから、高校生くらいまでは勉強しなくても支障ない。その分、幼いうちはサッカーの練習にあてたいのだ。

 

小学3年生頃から小学6年生頃まで、いわゆる「ゴールデンエイジ」と呼ばれる、体の神経系が著しく発達する時期がある。この時期に技術レベルをあげられるかどうかで、その後のサッカー人生を左右するのだ。

 

前世の経験と知識を活かして、もう一度サッカーをやれる。

 

どうせ一度失った命なんだ、悔いのない二度目にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

時は200X年、俺は神谷パワプロ、5歳。

 

いくら張り切ったところで、実際幼児にできることなどなかった。

 

これまでの5年間は両親が悲しまないように甘え、幼稚園で浮かないように幼児退行し、魂年齢が5倍は違う友達とおままごとしてきた。おそらく、30年間で最も恥ずかしかった数年間だった。間違いない。

 

おかげで両親やママ友含め、色んな人から「頼りになる子」という印象を得ることが出来た。あまり期待や責任を押し付けられても辛いのだが、「この子が言うなら大丈夫ね」ムーブができるようになったのは大きい。将来海外の下部組織なんかを目指そうとしたとき、親の理解は必要なのだ。

 

もちろん、サッカーの練習も欠かしてはいない。とりあえずボールタッチや壁パス、トテトテドリブルくらいしかできることはないが、こういう地道な努力が大事なはずだ。

 

実際、今も家の隣の空き地で壁パスをしている。フェンスの向こうでは庭の洗濯物を取り入れながら母さんがこちらを見ている。この空き地ならボールの音も聞こえるし、ひとりで遊んでいいと許された。ここは自由で、うってつけの場所だ。

 

たん、たん、とボールが軽い音を立てて跳ね返ってくる。トラップは足のクッションで勢いを殺して、次に自分が蹴れる場所に。骨盤の回転を意識して、両足交互に、体を正面に向けて───。

 

「ねえ。僕たちも一緒に混ざっていいかな?」

 

と、黙々と続けていると後ろから声がかかった。

 

振り返れば空き地の入口に2人の顔が似た少年が立っている。どちらも銀髪に紺色の瞳。そして美少年。漫画の世界からでも出てきたようなふたりが、俺を見ていた。

 

「僕はケイ。この子は双子の弟のユウ。僕たちもサッカーが好きなんだ。一緒にやろうよ」

 

ケイと言った少年が爽やかな笑顔を浮かべて近づいてくる。どうやら背丈は同じくらい。同年代らしい。

 

「ああ、いいぜ。やろう」

 

まあ、断る理由なんかない。下手だろうと上手かろうと、人数が増えればできることも増えるのだ。それにイケメンはサッカーが上手いジンクスに則れば、ケイもユウも上手い。

 

よし! と笑顔を深めるケイと、控えめながら嬉しそうに駆け寄るユウを含めて、3人でパス回しをすることにした。数回やってみれば、ケイはかなり上手だとわかった。こいつも転生者じゃなかろうか。それチートだぞ?

 

反対に、ユウはそれほど上手いわけではない。ケイと比べてしまうと雲泥の差だった。

 

ただ、それ以上にユウは体力がなかった。

 

「はあっ、はあっ」

 

「......よし、ユウはそこまでにしよう。そろそろきついでしょ?」

 

見かねたのか、ケイが言葉をかける。しかし、ユウはいやいやとでも言うように首を振る。

 

「はあっ、やだ......まだしたい」

 

「ユウ......。明日も明後日も来れるんだから、今日無理しないで、お願い」

 

「っ......、わかったよぅ」

 

不躾だと思ったが、詳しく聞いて見ればユウは生まれつき体が弱いという。軽い運動でも一日に10分が限度ということだ。走るなど論外らしい。

 

......思った以上に不躾な質問をしたな。

 

「謝らなくていいよ。ただ、これから一週間はこの時間にこの空き地に来るから、一緒にサッカーをしてくれないかな?」

 

ケイが俺の目を見ながらお願いする。どうやら申し訳なさが顔に出ていたらしい。

 

「ああ。俺もひとりでやるよりは3人の方がいいし」

 

その答えを聞いてケイは嬉しそうに微笑み、ユウは呼吸を落ち着けながら、ありがとうと呟いた。

 

次第に辺りが赤く染っていくのを感じながら、俺はケイとのパスに没頭していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

早いもので、あれから半年ほど経った。

 

ケイとユウとのサッカーは、一週間の練習を何度か散発的に繰り返した。数回、2人の妹のエルも着いてきて、ユウと共に観戦していた。夕方の15時から16時までの、短い時間だ。つい一週間前にも一緒に練習をしたのだが、そのときにしばらく一緒に練習できそうにないことを聞かされた。

 

てっきり、3人は近所に住んでいて小学校から学区が同じになるものだと考えていたのだが、そうでは無いらしい。

 

本家とは別の邸宅がイギリスにもあって、小学生のうちはそこに通うという。イギリスに、別邸があるのだという。......思わず2回言ってしまったが、ちょっと何言ってるか分からない。すごい負けた気分だ。今世の俺の家も結構お金持ちのはずだけどなあ。

 

時々来るかもしれないから、その時はよろしく───。そう言って3人は別れを告げる。

 

ケイたち3人と「またね」と言って別れた。ほんのひと時の、泡沫のような時間だった。ケイとは、最終的に1on1をやるにまで至った。あの天才ファンタジスタから背後のゴールを守れたのは、数百回試したうちの数十回しかない。

 

悔しさもあるが、紛れもなく俺の糧になった。

 

あと2週間すれば、小学校に入学する。体は大きくなり、サッカー以外のやることも増えてくる。

 

小学校に入る前に、1つ目標を決めよう。俺のサッカー人生に掲げる目標だ。

 

日本代表に選ばれたいし、海外のサッカークラブにも行ってみたい。とにかく、史上最高の、と頭文字が着くような選手になってみたいのだ。

 

......思ったより漠然としちゃったな。その都度、中くらいの目標を立てる必要があるかもしれない。小学生のうちは、どこかの大会で全国優勝、ってところかな。

 

それと、目標とする選手像だ。

 

俺は、サイドバック*1をやりたい。まあ、前世の経験を生かせるのと、ちょっとした未練だ。

 

それに、俺はロベカル*2やTAA*3に憧れている。悪魔の左足や黄金の右足でクロスを上げて、ロングパスでアシストして、フリーキックを決めて、弾丸ミドルを突き刺したかった。

 

CF*4もWG*5もOMF*6も、やりたくないわけじゃない。点を決めるのはサッカーの最も楽しい部分だし、そこに近い選手でいたい気持ちもある。

 

けれど、転生してまでやるとしたら、ロマンも目指す。

 

俺の思いが転生という事象を引き起こしたのなら、俺の最も大きい欲求に従うべきだと思った。

 

だから、俺はサイドバックを極める。

史上最高のサイドバックになってやるんだ。

*1
ディフェンダーの中でも、サイドを守る選手。対人能力やスピードに特化した選手が多い。有名選手は長友、ロベカル

*2
ブラジルのレジェンドサイドバック『ロベルト・カルロス』の略

*3
イングランドの名門、リバプールの若きサイドバック『トレント・アレクサンダー・アーノルド』の略

*4
センターフォワード。フォワードの中でも中央で戦う選手

*5
ウィング。フォワードやミッドフィールダーとして、サイドで攻撃に関わる選手。

*6
攻撃的ミッドフィールダー。攻撃陣を一列後ろで指揮する選手




主は小学生サッカーを一年やっただけで、クリロナメッシを去年知ったばっかのど素人ですわ。

違和感があったら、“お嬢様言葉”でドシドシ送ってくださいませ。

主、申し訳ないことに豆腐メンタルなのですわ。
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