転生したから世界一のサイドバック目指す   作:口の端にほっぺが!

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全国初ゴール

ゴールデンウィーク。一般的な小学生は家族旅行の週に入る。俺たちスポーツバカは、取っておきの大会ウィークに入った。

都内のグラウンドで開催するため移動はそこまで大変では無いが、3日間連続で試合をするため疲労度の高い休みになる予定だ。

 

「オイラとの約束を果たすでやんすよ~。悲願の優勝を果たすでやんす!」

 

全国大会が近所で開かれることもあって、多くの人が応援に来てくれた。学校のクラスメイトや元チームメイト、それに近所のニートしてるおっちゃんとかも来てくれている。あと、やんす口調の知らない矢部坂も。

 

ウォームアップをしつつ誰が来ているのか探してみる。

 

両親は来てくれたようだ。母さんが一番前の席でにこにこしながら手を振っている。父さんは腕を組みながら目を瞑っていた。よくやる格好である。苦笑いしながら手を振り返しておいた。

 

それ以外に探してみると、クラスメイト達がこぞって来ていた。女子が沢山応援に来てくれるなんてのは夢にまで見た光景だ。今日、俺は死ぬかもしれない───。

 

あの集団の1番前に、ここまでずっとクラスが一緒のメガネやんすくんがいた。もしかしたら彼がみんなを誘ってくれたのかもしれない。しょうがないから手を振り返しておいた。

 

さて、と改めて探す。いるかなー? いないかなー?

 

いた。

 

「パワプロくん! わたし、サッカーのこと詳しく分からないんですけど、えと、頑張ってください。応援してます!」

 

「ありがとう、ゆうるちゃん。見てて、活躍するから」

 

観客席の端っこの方にいたゆうるちゃんに声をかける。先日また会ったので試合の観戦に誘ってみたのだ。本人は既に旅行の予定が入っていたそうだが、日程をずらしてまで来てくれると言ってくれた。

 

ゆうるちゃんにも、融通を聞かせてくれた彼女のご両親にも深い感謝を。今日の俺はミドルシュートを全て決められる気がする。

 

ウォームアップの最中で、さすがに喋っている訳にも行かずチームの輪に戻った。早速ヒューヒューと言われたが、何も恥ずかしい事では無い。ゆうるちゃんが来てくれたのだ。今日の俺は完璧最強スーパーウルトラモード。自信満々だ。

 

「......ウォームアップ中に観客に声をかけない」

 

と、ツカサがいささか冷たい声で注意してきた。お? 嫉妬してるのか? 嫉妬してるのかかわい子ちゃーん? 今日の俺は自信満々だぜ!

 

「コーチに言うよ?」

 

「あーいや、違くてな? ただ近所の子が来てくれたんで驚いて声掛けに行ったのよ。それだけ」

 

まあ、当たらずも遠からず、だ。嘘は言ってない。

 

「何が違うのかは聞かないけど、今度詳しく聞かせてよ」

 

......ダメだ。結構怒っちゃったっぽい。確かにサッカーに一途って公言していた俺が、試合を見に来てくれた女の子に声をかけるなんてのは不埒かもしれない。

 

なので、もう何回か謝った。

 

全国大会は、予選リーグと決勝トーナメントで分かれている。各地方で勝ち抜いてきた16チームのうち、予選リーグを勝ち抜いた8チームが決勝トーナメントを争うのだ。予選リーグは4チームで4つ。3試合を終えて勝ち点が高い2チームが決勝トーナメントに進む。

 

ちなみにルールが少し特殊で、12分3ピリオド制となっている。第1ピリオドと第2ピリオドの間で選手を総入れ替えする必要があり、第2ピリオドと第3ピリオドの間では入れ替えが自由だ。つまり、3つのピリオド全て参加出来る選手はいない。

 

レギュラーメンバーはできるだけ2ピリオド分出させるのがセオリーだ。

 

まあ、第2ピリオドが終わった時点で得点差が大きければ、そのままターンオーバーになるだろう。1日2、3試合やるのだ。その辺は監督の手腕が試される。

 

初戦の相手は去年の準優勝チームで、今年の優勝候補の一角と呼ばれるチームだ。よって第1ピリオドはレギュラーメンバーとなり、第3ピリオドに体力を回復させて再び出ることになる。

 

ちなみに去年の成績はこのチームに負けて決勝トーナメント一回戦敗退だった。初めっから難易度高いなあ。

 

開会式を終えて、試合の準備が行われる。チーム同士で挨拶して、直ぐに試合が始まった。

 

初っ端から押し込まれる展開が続く。相手は2-4-1という布陣で、中盤でボール保持の時間を増やすチームだ。コーチいわく、中央突破が武器のチームらしい。

 

相手CBのひとりが落ち着いて味方に指示し球出しするため、なかなか相手を捕まえられない。どんどん押し込まれ、ついには相手ボールがハーフラインを超えたので、リトリート守備に移行した。

 

俺は最終ラインの前のスペースを埋め、そこからのミドルシュートやクロスがマイナスに入ってきた時の対応をなど任されている。俺たちの3-3-1という布陣は攻守にバランスがよく、CBには的確に指示を送るツカサがいるためそう簡単に失点しない。

 

......はずなのだが、今日はツカサの対応が後手に周りがちだ。もしかすると、さっきの出来事が原因かもしれない。集中しきれていない様子だった。まずいことしちゃったなあ。

 

だが、何とかペナルティボックス内からボールをかき出している。前線にボールが来ずすぐに回収されてしまうが、失点もしていない。これだけ押し込めているのに点が取れない。相手がそう感じて焦ってくれれば反撃の目も見える。

 

「おっ」

 

クリアボールが飛んできた。俺のファーストタッチ。すぐに反転すれば、相手ボランチが潰しに来ている。目の端で相手SHも囲いに来ているのが見えた。おそらく背後からもシャドーがプレスバックしてきているだろう。

 

そして目では確認できないが、間違いなく尊史が相手ディフェンスライン背後を狙っている。判断は一瞬だった。

 

「!!しまった、カバー!」

 

吊り出されたボランチの股の間に、高速スルーパスを通す。相手CBの間を通り、尊史サイドに曲がる回転をつけたボールだ。ボールの軌道は寸分違わず望んだとおり。相手ボランチは焦ったように叫んだ。

 

さあ、決めてくれ。

 

尊史がボールの勢いを殺さずに受け取る。そのスピードのままゴールにドリブルして言った。圧倒的なスピードにCBは追いつけない。GKとの一対一。

 

冷静に右足を振り抜き、キーパーの足が届かないゴールの隅に入っていった。

 

「おらあああああ!!」

 

尊史の彷徨にスタンドが歓声をあげる。尊史もそれに応えるように膝スライディングのゴールパフォーマンスをやってのけていた。ここは人工芝のグラウンドなので、何とかできるのである。

 

「ナイスタカ!」

 

「よっし、よっしまず1点!」

 

「さっ、この勢いだ。次やるぞ!」

 

チームメイトが尊史に集まってもみくちゃにする。あれだけ押し込まれていた中で、起死回生の1点だ。こうもなる。だが、キャプテンでもあるGKの声で、俺たちはすぐに自陣に戻った。

 

コーチからは、せめて3点差までつけろと言われている。第2ピリオド終了まででそこまで差がついていれば、ターンオーバーを考えるという意味でもあった。

 

「次もよろしく」

 

「任しとけ」

 

尊史が俺に向けてタッチする。俺もそれに応えた。

 

そして、ツカサの方に向かう。彼女は味方が点を決めた中で、少し憮然とした表情をしていた。自分のプレーに納得していないのだろうか。あまり表情を変えない彼女だが、数年付き合ってきた俺にはわかる。

 

「......何?」

 

だから、彼女に両手を広げさせ、ばちんと合わせた。

 

「俺はサッカーが好きだ。一生サッカーを愛するつもりだ。だから、ここで負ける訳にはいかない」

 

ツカサだってそうだろ? と薄く笑いながらツカサに問う。

 

原因は俺にあるが、あえて挑発するように声をかける。

 

彼女だって、負けず嫌いなのだ。

 

「......任せなさい」

 

一瞬釈然としないような顔を見せたが、次の瞬間には心強い微笑みを浮かべた。

 

試合は再開する。

 

ツカサが最終ラインを上手く統率し始めたため、相手が中盤でボールを持った時の彼らの出足が良くなった。背後からインターセプトを狙われるため、彼らは迂闊に中盤にボールを付けられなくなった。

 

つまり、彼らお得意のボール保持を制限したのだ。

 

それに、俺たちの攻撃チャンスも増える。

 

もし彼らが無理やり中盤にボールをつけようとすれば、すぐにカウンターの餌食になるのだ。

 

焦りの見える相手CBが、相手シャドーに向けて長いパスを送る。配球能力は高いため、途中でカットされずに届いた。

 

しかし、ツカサが背後から出てこようとしているため、相手シャドーはそれを嫌がるようにサイドに逃げながらボールを受ける。

 

即座に、俺が食いついた。

 

「な、あっ」

 

相手の脇の下から体を当て、ボールが足から離れたところで一気に体を入れて奪い去る。そして相手の奪還の輪をくぐり抜けるようにサイドにボールを散らした。

 

「クソッ」

 

相手シャドーは悪態をついてプレスに行く。味方のサイド選手はディフェンスに1回戻してビルドアップからリスタートさせる。

 

相手はCBにはプレスをかけず、それ以外の選手にマンマーク気味に着いていた。相手最終ラインにはふたりが残り、片方がCFを見ている。

 

ボールのだし先で潰してショートカウンターを狙っているのだろう。

 

普通のCBではパスを出しにくいはずだ。

 

───しかし、俺たちのCBはツカサだ。

 

俺は少しサイドに流れる。俺をマークしている相手も着いてきて、中盤にスペースができた。

 

ツカサにプレスをかける人はいないので、彼女はゆっくりとドリブルして上がっていく。

 

ハーフライン直前で、味方SBに着いていた選手が我慢できずにプレスをかけに行った。その瞬間、俺とCFが中盤におりパスコースを作る。ツカサは一瞬の隙を着いて比較的マークの緩いCFにパスを出した。彼をマークしている相手は最終ラインの選手なので、あまり前に出たくないのだ。

 

そこからは早い。フリーになったSBに落とし、サポートに寄った俺にボールが渡る。左SHへとボールを飛ばした。

 

味方SBのオーバーラップを利用してスペースを作り、左SHがクロスをあげる。味方CFは背が高く得点能力も高い選手だ。

 

だが、それ以上にポストプレーが上手く、落としのプレーも上手い。マイナスエリアに駆け込んだ俺に、彼はヘディングでボールを落とした。

 

俺についてるはずの相手はボールに目がいってしまっている。俺はフリーだ。

 

「しゅっ!」

 

丁寧にトラップして左足を振り抜く。詰めてきた相手DFの股の間を抜くシュート。ゴール右サイドネットに突き刺さり、心地のいい音が鳴った。

 

得点を認める笛が鳴る。

 

「よっし!」

 

思わずガッツポーズをした。すぐに味方選手が集まって叩き合う。尊史にもツカサにも背中を叩かれた。

 

「ナイスシュート。落ち着いてたな」

 

「アシストサンキュ」

 

CFの大加田が鋭い目で睨みながら口元を綻ばせる。俺のシュートにご満悦らしい。

 

観客席を見れば、母がはしゃいでいた。そんな母をなだめながら、父も拍手している。それを見れただけでも満足だ。

 

他にもクラスメイトや元チームメイトも歓声をあげていて、観客席の端っこではゆうるちゃんがぱちぱちと拍手を送っていた。

 

俺の全国初ゴールだ。

 

観客に向けて、左手を突き上げた。




実際のこの大会はU-11ですが、U-12扱いにしていますわ。

それと、活動報告の感想に返信できないことに気がつきましたわ。
感想と評価のお礼をここで言わせていただきますわ。非常に励みになりましたの、これからもご愛読よろしくお願いいたしますわ!
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