転生したから世界一のサイドバック目指す   作:口の端にほっぺが!

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VSコーべ

チームで整列すると、やはり桜羽が俺の前に立つ。この一年で随分背が伸びたな。

 

それとやっぱり桜羽に対する黄色の声援がうるさい。なんだか負けじと俺の名前を叫ぶ声があったような気もしたが、それもかき消されるくらいの爆音だ。

 

「神谷パワプロ。今日はよろしく」

 

目の前の金髪クソガキが手を差し出してくる。右手だ。マナーがしゃんとしてやがる。

 

「俺もお前も左利きだ。左で握手しよう」

 

「あ、そっか。よろしくね」

 

「よろしく」

 

固く握って眼差しをぶつけ合う。マナーとしては最低だが、構いやしない。お互いに戦意をぶつけ合っているのだ。左手の握手はちょうどいい意味をもつ。

 

───それに、こいつがいつか左利きの奴と左で握手して怒られる未来があったら面白いな、という願いも込めている。左利き、左手握手、左利き左握手───。

 

「パ、パワプロ。なんだかいつもより気合いが入ってるじゃない」

 

「相手が相手だから、仕方ないな」

 

飛鳥とツカサが俺を傍目になにか呟いている。いいか、絶対に勝つぞ!気合い入れろよ!!

 

「去年は何度も煮え湯を飲まされた。だが今日は勝てる! 運も実力も私たちに分がある!」

 

「行くぞ!」

 

「「「おう!!!!」」」

 

キャプテンである川原の号令で円陣を組む。全員の心にエンジンがかかった。

 

第1ピリオドが始まる。

 

 

 

相手ボールから始まったゲームは、仕込まれたプレーから始まった。

 

ワンタッチして桜羽がドリブルで運ぶ。俺がプレスに行けば桜羽はサイドの青髪強面の男にボールを託した。去年は見なかったヤツだな。クロスが入る。

 

味方ボックス前には相手選手が4人。韓流イケメン、中性イケメン、そしてさつまいも色の髪をした男の高身長3人に、手前には背の低い黒髪少年がひとり。いつの間にか前線にヘッダーが揃っている。桜羽に気を取られすぎた。

 

対する味方はツカサ、沼野の2人だけだ。矢部坂のやつ、慌てて戻ってきてやがる。

 

まずいな。と思っていれば、川原のパンチングではじき出された。なかなかしないプレーだが、勇気を出した。そして、いい判断だった。

 

「ナイスパンチング!」

 

こぼれ球に近寄る。幸い矢部坂が触って俺の方に転がってきた。相手守備陣はまだ味方ゴール前にいる。カウンターだ。

 

しかし、反転した俺の前にはいつの間にか青髪の強面男が待っている。逃がさないぞ、という意思がオーラとなって出てくるようだ。体も尊史と同じくらいに大きい。

 

それに、コースも上手くきられている。尊史と飛鳥のどちらにも預けられない。

 

思わず舌打ちをする。が、背後に相手が迫ってくるのを背中で感じた。

 

ボールを背後に蹴って、フリーだった矢部坂に渡す。相手はその隙にポジションを整えていた。どちらの攻撃も不発に終わった。

 

その後はポゼッションを始める。相手はミドルプレスだが、サイドにボールが来た瞬間思いっきりプレスの強度を上げる。特に矢部坂に対しては鋭く踏み込んでいた。

 

そして、俺に対しては青髪の徹底マークが付く。こいつはインターセプトのタイミングが上手い。気を抜かないでもボールが奪われてしまいそうだ。その上周りの味方に大声で指示を出している。俺の近くで。耳が壊れそうだ......。

 

少し長めのパスを混ぜる。そして、味方に近づいて短めのパスを落とした。合図である。

 

すぐに反転して青髪から距離をとる。アジリティは俺の方が高い。すぐに寄せられたが飛鳥の方に散らすだけの余裕があった。

 

飛鳥は対峙するサイドバックの背後から飛び出した峰にボールを預ける。峰は左サイドに流れ、サポートに来た俺にボールを預ける。

 

「尊史!」

 

来たボールをワンタッチでマイナスに送る。高速グラウンダークロスだ。相手の隙間をぬって尊史に届く。

 

が、尊史はそれをスルーした。

 

背後の矢部坂が受け取って縦に突破する。急なサイドチェンジで相手守備陣はマークにつききれていない。

 

矢部坂はキーパーとディフェンスラインの間を通過するグラウンダーパスを通した。

 

いて欲しいところには、既に峰が入っている。

 

「ぐっ!」

 

が、キーパーが峰のシュートをキャッチングしてみせる。至近距離でのシュートだったが真正面に撃ってしまったようだ。

 

「カウンター!!」

 

相手キーパーが叫んでボールを投げる。めっちゃ飛ぶな。正確に右ウィングのさつまいも色に届いた。

 

「沼野、ディレイ!」

 

ツカサが指示を出して、自分は裏を狙っている桜羽を注意した。俺も全力で戻る。

 

「郷田!あ、やべ」

 

さつまいもはフリーマンだった青髪にパスを通すが、俺がそれをカットする。ゴールキーパーに戻した。再び仕切り直しである。

 

なるほど、カウンターが怖いというのはキーパーのロングスローもあるようだ。幸い味方左サイドバックは守備がいい。が、頻繁にオーバーラップする味方右サイドを狙われたら苦しくなる。矢部坂には帰陣を早くするように伝えなければ。

 

ここまで五分五分である。

 

幸い桜羽はあまりボールに触れられていないが、フラストレーションが溜まっているふうにも見えない。このままスコアレスで終わるだろうか。

 

そんなことを思っていれば、すぐにスコアが動く。───悪い意味で。

 

韓流イケメンの出足の良いインターセプトで峰からボールを奪われる。すぐに桜羽にボールを出された。まずい。

 

桜羽は溜めを作って、裏抜けしたさつまいもにボールを出した。すぐに味方サイドバックも対峙するが、タイミングをずらされクロスを入れられてしまう。

 

が、キーパーから離れていくアウトスイングのボール。桜羽は下がらなければヘディングはできず、青髪───郷田からは遠い。ルーズボールだ。思わず足を止めてしまった。

 

「よっ」

 

それで、目の前の行動に反応できなかった。いや、ボールウォッチャーになっていなくても、これに反応できなくて仕方ない。

 

桜羽のオーバーヘッドシュートは、味方の誰も動けないまま、ゴールネットを揺らした。

 

「オーバーヘッドォォ!!」

 

「りゅーきーーーー!!」

 

「「「キャー!! さくらばくーん!」」」

 

大歓声が上がる。桜羽もそれに答えるようにセレブレーションを行った。ダッシュ→ジャンプ→ガッツポーズのコマンド技みたいなやつだ。スタンドは大いに盛り上がった。

 

「今のは仕方ない。意表をつかれたんだ。切り替えていくよ!」

 

「おう!」

 

すぐさまツカサが声をかける。頼もしいばかりだ。

 

が、この時ばかりはみんな呑まれてしまっている。何せ、スタンドでは敵味方関係なく賞賛の声を上げているのだ。今の一点は、ただの一点以上に重い。場の流れを変えてしまった。

 

これがファンタジスタの真骨頂なのか。

 

「パワプロ!!」

 

「いでえ!」

 

バチン、と背中にもみじをはられる。ツカサだ。

 

「下向かないで、私たちは負けてない!」

 

「そうだ。パワプロ、去年みたいな屈辱は味わいたくないんだ」

 

尊史も俺に声をかける。ほかのメンツもお互いに声をかけあっていた。下を向いていたのは俺くらいのものである。

 

心底恥ずかしい。

 

「ああ。取り返すぞ」

 

気炎を吐いた。スコアは0-1だ。

 

 

 

第1ピリオドの残り時間は少ない。今度は相手のポゼッション時間が増えているが、俺達もカウンターの機会は多い。

 

「尊史!」

 

郷田に来たボールを素早くパスカットする。俺はマンマークしていないが、アジリティが早いためカバー範囲が広いのだ。多分第3ピリオドには体力がなくなってできなくなるが、そうも言ってられない。今のうちに一点返したいのだ。

 

すぐに尊史の走る先へスルーパスを出した。

 

脅威的な加速力で尊史がゴールに向かう。ウィングストライカーの真骨頂はこれだ。俺達も負けてはいない。

 

しかし、シュートは体を投げ出した中性イケメンにブロックされてしまう。シュートフェイントをしたのに、だ。なんだこいつ! 見た目少女漫画なのにプレーが泥臭いぞ!!

 

「いいぞ、和蘭!」

 

再び相手のボールポゼッションに移る。その後も何度かカウンターを狙うが、粘り強い守備に手を焼いた。0-1で第1ピリオド終了の笛がなる。

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