転生したから世界一のサイドバック目指す   作:口の端にほっぺが!

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決着

第2ピリオドの間、俺たちを体を休ませながら話し合う。特にプレスのしかたについてだ。カウンターは上手く刺さっているが、最後の守備で延命されている。相手の体力が尽きれば必ずゴールが決まるというのが、俺たちの共通認識だ。

 

しかし、懸念点が一つ。

 

「峰、いいか? あれはお前のミスじゃない。確かにボールを失ったが、韓流イケメンの守備が良かっただけだ。次に気をつければいい。それに、失点はもっと関係ない。あれはもう、しょうがない失点なんだ」

 

俺は真っ赤な髪の爽やかなイケメンに、しっかりと言い聞かせる。チームメイトが覇気のある顔で話し合っている中、こいつだけ涙を零していた。図体はでかいのに心は小さいなこいつ。

 

「だって、俺のミスからだぢ、俺が何度もシュートを決めないかだ......」

 

「だってもくそもねえだろ? シュートは相手守備陣がそれこそ命をかけて守ってんだ。簡単に突破できなくて想定通りだよ!」

 

おら、元気出せ! と発破をかける。が、効いた感じがしなかった。困ったものである。

 

ぐすぐすと鼻を鳴らす様は、見ていてなんとも哀れだった。それだけ悔しいのだろうが、今は試合中だ。何とか持ち直して欲しいものだが───。

 

すると、話を静かに聞いていた尊史が口を開く。

 

「功誠の体格でポストプレーはまだきついかもしれない。パワプロの言う韓流イケメンは功誠より少し大きいんだ。無理に背負うより裏抜けとシュートだけに集中すればいい」

 

「確かに、それがいいかも」

 

飛鳥も賛成の意を示す。攻撃のオプションは減るが、仕方ないことだろう。相手CBが厄介すぎる。この一年で一段と能力の高いCBになっていた。

 

周りを見渡せば、全員聞いていたようで首を縦に振る。多少俺の工夫が必要になってくるが、みんな能力が高い。アドリブにも対応してくれるだろう。

 

......なんだか矢部坂が震えながら笑ってやがる。

 

「どうしたよ矢部坂」

 

「だ、だって......あののっぽを『韓流イケメン』て呼んでたなんて、パワプロくんのキャラに合わなさすぎるでやんす......ぶっ」

 

「ああ?」

 

「確かに、パワプロならキモキノコとかウザマッシュとか呼んでそうな感じはするな」

 

尊史までがそんなことを言う。おい、飛鳥。そんな顔をするんじゃない。俺はそんなマナーがなってないやつじゃないからな!

 

「ツカサ、お前ならわかるよな? 俺がそんなやつじゃないって───」

 

「残念だけど、桜羽選手のことを『金髪クソガキ』って呼んでたのを聞いてるんだ。私の口からはどうにも」

 

「裏切ったなあ!?」

 

チームメイトから笑いがこぼれる。峰も笑っていた。

 

俺の犠牲で少しでも心が軽くなったのなら、落ちた俺の評判も報われるというものである。

 

......だって桜羽は金髪のクソガキだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

第2ピリオドは0-0で折り返してきた。終始向こうの優勢だったが、必死に無失点で切り抜けてくれた。普通に大仕事である。

 

「よし、行くぞ!」

 

キーパー川原の声とともにピッチに出る。

 

まずいな。体力が切れたまんまだ。

 

去年から体力がついてきたが、。今日もこれで合計四ピリオド目だ。少しどころじゃなくきつい。

 

試合開始の笛がなる。今度は落ち着いたポゼッションから始まった。峰を起点にプレスをかけ、相手SBに蹴らせる。

 

が、第3ピリオドは上手くかわされてしまう。原因は3つ。桜羽が何度も降りてゲームメイクしているのと、峰のプレスに迷いがあるから。そしてプレスの指揮官である俺の体力が尽きたからだ。

 

中途半端になれば、簡単にパスを通されてしまう。味方陣地に押し込まれてしまった。

 

さつまいもから中央の桜羽に横パスが通る。シュートは撃たせない、とツカサが体を寄せれば、ターンしてかわされてしまった。

 

「ぬりゃあでやんす!」

 

が、矢部坂渾身のシュートブロック。ボールは大きく弾かれた。

 

峰が拾う。が、すぐに潰される。

 

そのボールを駆けつけた尊史が回収した。彼のドリブルが始まる。

 

中性───和蘭と尊史のマッチアップだ。尊史はボールを晒しながら進む。和蘭は取りに行って抜かれることを警戒してか、ディレイに徹している。その分、尊史の背後には相手のサポートが迫る。

 

尊史は、縦への強引な突破を選んだ。

 

「ぬらああああ!!」

 

「ぐ、うううう!!」

 

ふたりが競る。ボールを持っている尊史の方が不利かと思ったが、2人の体が一度大きくぶつかった時、和蘭の方が弾かれた。尊史は一気にゴールへ向かう。和蘭は悔しそうに地面を叩いていた。

 

「ぬぐおっ!?」

 

が、追いついたキノコが思いっきりタックルする。なかなか危険なタックルで、気がついた尊史が必死になって避ける。当然ファウル判定だ。

 

「おいクソキノコ! あぶねえだろうがよ!!」

 

倒れた尊史とキノコのそばにかけ寄っていく。幸い尊史に怪我した様子はなく、キノコの手を使って立ち上がっていた。

 

「いや、本当にごめん。勢い余ってしまって」

 

キノコは冷静に頭を下げている。自分が危険な行為をしたことはわかっているようだった。尊史にも謝っている。尊史の方は怪我をしていないこともあってか、そこまで荒ぶってはいなかった。が、嫌な顔はしている。

 

「パワプロ、落ち着いて。気持ちはわかるけど......」

 

「───ああ、そうだな」

 

飛鳥が駆け寄って宥める。俺も幾分かたった気が落ち着いた。俺が激高したのを見て他の選手も集まっていたが、それをレフェリーが割って入る。

 

「武蔵の六番さん。危なかったのはわかるけど、抑えて。選手同士で揉めたら君にもカードが出かねないよ?」

 

「......申し訳ないです」

 

「わかってくれたらいいんだ」

 

俺に多少注意をした後、キノコに体を向ける。キノコは、出されたカードの色を見てガックリと肩を落とした。

 

「当たってないし、君が勢い余って滑ったのは僕も確認している。けれど背後からで、とても危険なタックルだ」

 

残念だけど、退場だよ。と告げた。

 

「はい。も、申し訳ありませんでした」

 

キノコは丁寧に頭を下げてピッチを去る。相手チームはレッドは重すぎる、 と審判に抗議するが、彼は「今のが如何に危険なタックルか、しっかり理解してもらう必要がある」と説明していた。

 

ふとキノコを見れば、郷田と桜羽に脇を抱えられて、なにか話している。肩が震えていた。泣いているのだろう。

 

同時に選手交代が行われ、相手左SHの代わりに第2ピリオドで出たCBが出てきた。相手攻撃人員が一人減ったのだ。

 

「尊史。足に問題はないか?」

 

「ああ、問題ない。『やべっ』って声が聞こえて、このままじゃ危ないって予感がしたんだ。......ははっ。もしかしたら俺の選手生命、割と危なかったんじゃないかな」

 

あまり気にしてないふうだが、かなりビビっているのはわかった。まあ、あんな刈り取るようなタックルをされれば怖いもんな。一発退場が妥当だ。

 

「俺が蹴るか?」

 

「......俺だ」

 

気を遣って言ってみるが、尊史は首を横に振った。自分で得たフリーキックだ。自分で蹴りたいらしい。ボールを額につけている。

 

壁の人数は少ない。距離があるからだ。だが、尊史の合図で味方はゴール付近にはいない。そのため相手選手もゴール前にはいない。尊史とゴールの間には、壁とキーパーだけだ。

 

笛がなる。

 

俺の左足なら届く。一度ロベカルキックをしてみたかったが、まだお預けでも構いやしない。

 

代わりに、尊史のクリロナキックだ。

 

ものすごい音と共にボールが蹴り込まれる。無回転のボールだ。壁の上を超え、下にブレてゴールキーパーの正面に落ちる。

 

キーパーは、キャッチしようとした。

 

その手から離れるようにぶれたボールはキーパーの手をはじき、ゴールに吸い込まれた。まじかよ。決めちゃうのかよ。

 

「うらああああああ!!」

 

尊史渾身の膝スラセレブレーション。超絶フリーキックが決まった。退場劇でざわついていたが、一気にスタンドのボルテージが上がる。

 

「すげーフリーキックでやんす!」

 

「ナイス、進藤!」

 

矢部坂や飛鳥も尊史の背中をバシバシ叩く。尊史が得たファウルで、尊史が決めたゴールだ。彼のスーパープレーだった。

 

相手は1人足りないこともあり、苦々しい表情をしている。既に流れはこちらに引き寄せた。

 

「さあ、点をとるぞ」

 

バシン、と峰にもみじを食らわせてやれば、びっくりしたようでビビっていた。ただ、キノコが退場したせいか少しは気が楽なようだった。

 

「う、うん。頑張るよ」

 

「ほら、『逆転弾は俺が決める』、叫んでみろよ」

 

「え、ええ!?無理だよ......」

 

恥ずかしいのか、できないと思っているのか、峰は首をふる。が、こいつが弱気になったままなのは良くない。マッチアップ相手は退場したが、こいつの弱気が改善された訳では無い。スパルタ的な指導方法だが、今これ以上の方法はなかった。

 

「おら、今は観客もうるさいんだし、味方に向けて叫んでみろ」

 

「ぐ、わかったよ......」

 

峰は味方陣地を向いて大きく息を吸う。近くで俺の話を聞いていたツカサたちは優しい顔をして待っている。怖がる必要なんてない。

 

「み、みんな! 逆転弾は、お。お、僕が決めるう!」

 

盛大にどもった。

 

だが、声は一丁前だった。ちょっとした進歩だ。背中を叩いてやる。味方には全員に届いたようで、全員が力強い笑みを浮かべた。キャプテンのキーパーも大きくうなづく。

 

「やるぞ! 大逆転だ!!」

 

川原の喝が響く。峰には、こんくらいになって欲しいものだ。

 

 

 

試合が再開する。人数有利ということもあり、ポゼッションもチャンスも俺たちの手に転がってきた。これで勝つのはなんだか正規では無い気もするが、ファウルで退場をすることも含めてゲームだ。勝ちは勝ちなのだ。

 

まあ、勝ってから言えという話だが。

 

「パワプロ!」

 

峰が裏に抜け出している。オフサイドになる前にボールを出した。相手は中央に交代して入ったディフェンダーがいることもあってディフェンスラインがガタガタだ。簡単に峰が裏抜けする。

 

すぐに尊史がサポートに入って、ボールを受け取る。シュートモーションに入って、相手が食いついてきたとこでヒールで俺にパスした。余裕あるなあ。

 

左サイドに散らす。サイドバックのオーバーラップを利用して、飛鳥はクロスをあげるだけのスペースを作った。緩やかなクロスをあげる。

 

打点の高いふわりとしたボール。ゴールから離れていくボールで、キーパーは飛び出せない。

 

そして、背の高いキノコは既に居ない。

 

「ぐっ!」

 

助走をつけて飛び込んだ峰がヘディングでボールをたたき落とす。キーパーの脇からボールがゴールに飛び込み、ネットを揺らした。

 

「おおおおお!!」

 

「峰ええええええ!!」

 

ゴールだ。小さくガッツポーズをしている峰に飛びついてやった。峰も嬉しそうに俺の背中を叩いてくる。よくやった!

 

峰は派手なセレブレーションはしない。が、代わりに味方に向き合った。

 

「ご、ゴールは決めた。勝とう!」

 

「「「おう!」」」

 

思わず声を出した。たかがゴールひとつでよくここまで変わるものである。後で悶えても知らねえぞ?

 

ともあれ、流れは完全に俺たちの手中にある。桜羽や郷田も諦めずプレスに来るが、相手人数が少ない分だけ余裕がある。俺は既に体力が尽きているが、他の選手がサイドからのクロスや裏抜けで何度も決定機を演出していた。

 

どうやら尊史とマッチアップしている和蘭は、自分が退場劇の一因であると感じてか、体にキレがなくなった。そうなってしまえば、あっという間に尊史の餌食だ。

 

自分でサイドを突破した尊史のニア上シュート。そして俺のスルーパスから峰が抜け出し、キーパーとの一対一を制した。

 

4-1。俺が峰への縦パスをつけようとしたところで、試合終了の笛がなった。ベンチから選手や監督たちがかけてくる。

 

「やったぞ、優勝だーーーー!!」

 

大はしゃぎに監督が突っ込んできて、みんなで抱き合う。俺も尊史やツカサ、しまいには矢部坂とまで抱き合ってしまった。

 

その後レフェリーに注意されて整列し、挨拶をするが、それが終わればすぐにスタンドのサポーターの下へ向かう。キャプテンの挨拶で頭を下げる。大きな拍手が響いた。

 

顔をあげれば、ゴーラーである尊史や峰がたたえられていた。2人はドッピエッタだ。保護者も降りてきていて、嬉しそうに話している。

 

ふと、ゆうるちゃんを見ればバッチリと目が合った。左手を突き出してやれば、ゆうるちゃんも合わせるように左手を突き出す。ニッコニコだった。

 

そういえば、今日はアシストだけで俺の左足からはゴールが生まれてないことに気づいた。なんだか足りない気分だ。だが、優勝は優勝なのだ。

 

念願の日本一に届いたのだ。

 

飛鳥が話しかけたそうにしていたが、とりあえず両手のハイタッチに留めておく。

 

まずは、彼女だ。ツカサも俺を待っていたようで、近づいてきてくれた。

 

「やったね。まずは、1つ目の日本一」

 

「そうだな。相手の運も悪かった」

 

「ううん。私たちに運があって、実力もあった。だからこその勝利だよ」

 

ツカサが両手をあげる。ハイタッチした。

 

「そうだな。俺たちの勝ちだ!」

 

「うん! 私たちが、日本一なんだよ!」

 

ツカサも珍しくハイテンションだ。おかしくて、手を握りあったまま笑ってしまう。俺たちの両親が近づいているのが見えたが、しばらくこのままでいさせて欲しい。

 

別に時間がかかった訳では無いし、これで終わりでもない。だが、長い道のりの、ひとつの目的地に着いたのだ。達成感に溢れていた。

 

それを2人で一緒に感じてる。嬉しくて、楽しくて、幸せだ。

 

なんせ俺たちは、日本一なのだ。




6/25 1話のケイくんユウくんの設定を少々変えましたわ。
「イギリスに本家がある」ではなくて、「日本に本家があって、イギリスには別邸がある。小学生のうちはそこを使ってイギリスで学校に通う」にしましたの。

最近はパワサカの色んな学校・キャラのサクセスをやっていますわ。ストーリーもキャラも魅力的でオススメですわよ。
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