転生したから世界一のサイドバック目指す   作:口の端にほっぺが!

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一ヶ月ぶりですわ!
今回は小学六年生編を終わらせに来ましたの。50話まで毎日21時投稿ですわ!

ちなみに、主人公の苗字は神谷で「かみや」と読みますの。

では、お楽しみあそばせ?


小学生編 セレクション
遊園地 ジェットコースター編


5月のとある日曜日。この日は試合がなかった。

 

久しぶりの暇日だが、今日は予定がある。

 

「はあ、同じ東京なのにめっちゃ遠いでやんすね」

 

「南から北に走る電車は少ないからな。けどこんなにかかるなんて思わなかったよ」

 

電車から降りた瞬間に矢部坂が愚痴る。尊史も同じことを感じているようで、少しくたびれているようだった。

 

が、俺は違う。

 

「来たぞ! 遊・園・地!!」

 

ついに来たのだ。遊園地。かれこれ40年間一度も行ったことのない遊園地! 前世は親に連れられて行ったことがない。今世は両親が「一緒に行きましょ?」と子供の頃に誘っていたが、あのころは家族3人で遊園地に行くのが恥ずかしくて行けなかった。極めつけは学校の遠足で遊園地に行くはずだったのに、風邪のせいで参加出来なかったという徹底ぶり。俺は遊園地に嫌われてるんだろうか。

 

だが、今回は不幸も起こらずたどり着けた。同級生も一緒だ。魂年齢こそ違うが、いつも一緒になって頑張ってるヤツらと遊園地に来られたことが感慨深い。

 

「我が人生、一遍の悔いなし」

 

「パワプロ? 早まらないで!」

 

切腹の真似をしていると飛鳥が焦る。ノリがいいねえ。ツカサは呆れたようにこちらを見ていた。熱くなれよぉ、遊園地だぜ?

 

ここにいると乗り降りの邪魔になると感じた川原が、号令を取って入場口に誘導する。

 

「ぱ、パワプロくんって遊園地来たことないのかい? 見たことないほどに、その、喜んでるけど」

 

「ないと思う。私とも行ってないし、私のママづてに『パワプロは遊園地が好きじゃない』って聞いてたんだけど......」

 

「そんなわけあるかい!! 遊園地だぜ、とし〇えんだぜ! バイキングもジェットコースターも全部コンプリートしてやる!!」

 

峰もツカサも不思議そうだが、俺はそれが気にならない。今日はめいっぱい遊んでやると決めているのだ。もう数年は行きたくなくなるくらい楽しんでやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は、先週の全国大会に優勝したご褒美も兼ねて休日を与えられた。「せっかくだからみんなで遊園地でも行ってこい」というのが監督の弁だ。

 

お言葉に甘えて、レギュラーメンバーの8人でとしま〇んに行くことにした。選抜メンバー全員で行こうとすると30人近くになってしまう。だから、少数精鋭で出かけることにしたのだ。

 

ちなみに、予定と予約は飛鳥とツカサでやってくれた。俺もせっかくだしやってみたかったが、やり方を知らなかった。ガッデム。

 

メンバーは俺、尊史、峰、矢部坂、沼野、ツカサ、飛鳥、川原の、男子5人女子3人の編成。このメンバーで歩くと、大抵矢部坂と川原がうるさくなる。今がまさにそうだった。

 

「クレープ! クレープがあるでやんす!!」

 

「あ、あっちには爆弾たこ焼きがあるぞ! あれ辛くて美味しんだ行こう!」

 

「ダメだお前ら。最初はジェットコースターだって古事記にも書いてあるだろ?」

 

あまりにも騒がしいので俺が一喝する。

 

「へー。よく知ってるなあ」

 

「ああ。だからさっさとジェッコに行こう。ジェッコが俺たちを待っている」

 

「古事記にはそんなこと書いてないし、ジェットコースターをジェッコとは訳さないな」

 

ピュアッピュアな沼野と、冷静に突っ込むツカサ。オイツカサァ! ピュア度が足りねえぞ!!

 

 

 

早速ジェットコースターに着いた。なにか腹に入れるにはその前に腹ごなしをする必要があるというのは全員の同じ意見だった。スイーツは別腹の矢部坂と大食らいの川原を除いて。結局二人を引きずって列に並んだ。

 

「なあ、ジェッコってどんくらい怖いんだ?」

 

ツカサに聞くと、子首を傾げて考える。

 

「人によりけり、だと思うよ。怖い人は怖いし、怖くない人は怖くない。ブランコを漕いだときのお腹が引っ張られるような感覚が嫌いだったら、ジェッコは苦手かも」

 

「あー、あの感じか」

 

なら大丈夫だろう。俺はブランコが好きだ。魂年齢40歳が何を言ってるんだという感じだが、小さい体で風を切るのは気持ちいいのだ。

 

と、突然峰がガタガタと震え始めた。

 

「ち、ちなみにブランコにすら乗れない人は、どうすればいい?」

 

「ブランコ乗ったこと無かったのか?」

 

峰の質問に尊史が聞き返してやると、峰はさらに震える。

 

「一度乗って諦めたんだよ......。高いところは苦手なんだ」

 

「あんなに高く飛んでヘディングするのに?」

 

「するのに......」

 

試合中はゴールのバーを頭が超えそうなほどにジャンプするのに、ブランコを漕ぐのは怖いときたか......。というか、一度乗っただけで高所恐怖症になれるほどブランコを漕いだんだよな? あるいはめちゃくちゃに押されたんだろうか。可哀想に。

 

峰がガクガクと首を振る。なんというか、怖がりの度が超えてるな、こいつ。なんだか俺も心配になってきたぞ。ああ、峰の顔が真っ青になった。

 

「ぎ、ギブでいいかい?」

 

「まだ乗ってないでやんすよ。一度乗ってみてからでも遅くないでやんす。漏らした時はみんなでお金を出してズボンを買ってあげるでやんすから」

 

「も、漏ら......。ちょ、ちょっとトイレに」

 

「急げよー」

 

峰が焦って駆けて行く。爽やかイケメンの顔が台無しじゃねえか。ビビりイケメンだな。

 

「大丈夫? パワプロは怖くない?」

 

「だ、だいじょぶでい。峰につられてちょっとだけビビっただけでい! 心配するない!」

 

「顔が青いから聞いたんだけど」

 

「まじ?」

 

自覚は無いが、俺も顔が青くなってるらしい。峰が過剰に怖がるせいだ。屈辱なり。

 

言い訳をすると、やはり未知は怖いのだ。これは日本書紀にも書いてある。自分が知らないもの、知らない感覚というのは得てして不気味なのだ。本能で怖がってしまうのだ。

 

ようやく俺らの番が来て、ギリギリに峰が戻ってくる。匂いから既に吐いてきたみたいだ。未だ顔は青い。

 

川原と飛鳥、矢部坂と沼野、峰と尊史が一緒に乗る。俺はツカサとペアで最前列だ。ツカサは俺を心配して隣に来てくれたようだが、最前列を選ぶとは何事だろう。こいつは鬼か?

 

「最前列がいちばん怖くないんだ。いつ下るかわかるし、景色もいい」

 

「ほんとだな!? 信じるぞ!?」

 

ダメだ、情けないことに手が震えている。食いしばってないと歯もなりそうだ。生唾が溢れてくる。

 

すると、ツカサが右手で手を握ってくれた。

 

「体の力を抜いて。スピードに身を任せれば、意外と怖くないんだよ」

 

「......」

 

何も答えられない。が、従ってみることにした。リラックス、リラックスだ。大丈夫、俺は一度死んで転生したんだ。もしジェッコが落下しても生き返るくらいはできるはず南無妙法蓮華経。

 

背後でも誰かの呪詛が聞こえてきた。もしかすると死神が俺に囁いてるのかもしれない。そういえば一列後ろは峰と尊史だったな。あるいは峰も呟いてるのかもしれない南無妙法蓮華経。

 

「逝ってらっしゃ~い♡」

 

遊園地のお姉さんの声でジェッコが動き出す。暴れんなよ......暴れんな......。

 

ゆっくりとジェッコが坂を登っていく。断頭台の階段を登っているようだ。経験は無いけど。

 

「パワプロ。深呼吸して、目を開けて」

 

「ムリだーっ!」

 

「大丈夫だよ。思ったよりも怖くないから」

 

ツカサの言葉に、深呼吸して目を開く。上空の冷たい空気が肺を満たした。目を開けば景色が広がる。

 

何の変哲もない、真っ青な壁だった。地面で見上げているのとあまり変わらない。

 

思い切って横に目をやれば、単なる住宅街が目に入った。今までテレビやビルの上からでしか見たことの無い高所からの景色。すぐ脇を見下ろせば、園内でこっちを見て手を振っている子どもの姿も見える。高いには高いが、なんだかワクワクした。

 

「ほら、そろそろ下るけど、もう怖くないでしょ?」

 

「ああ。ほんとだ───」

 

「バカと煙は高いところが好きって言うし」

 

「ああ゛!?」

 

が、言い返す前にジェッコが降り始める。徐々にスピードが上がっていき、ついに自由落下のスピードになった。

 

最初こそビビった。未知の感覚だ。お腹が持ってかれる、景色があっという間に過ぎる。だが、次第に怖さは薄れていった。体が引っ張られる。スリリングだが、スリリングなりの気持ちよさがあった。しまいにはツカサと目を合わせて、一緒に悲鳴をあげてみた。楽しかった。なんだかあれだけ怖がっていたのがバカみたいだ。

 

 

 

「おんぎゃあああああああああああ!!!」

 

 

 

興奮冷めやらぬままジェッコが終着点に到着した。俺もツカサも笑っていて、大満足だった。係員の指示に従ってベルトを外す。降りようとすると、ツカサがちょいちょいと俺の腕をつついた。

 

ツカサの指は、俺が固く握りしめたツカサの右手を指していた。慌てて解く。

 

「ご、ごめん。痛くなかったか?」

 

「ううん。面白かったけど」

 

「ぐ」

 

こいつめ。薄い笑みを浮かべてやがる。今日のツカサは俺でとことん遊ぶつもりらしい。

 

いいだろう。女子はお化けが嫌いだと相場が決まっている。お化け屋敷で俺に飛びついてくるのを笑ってやるさ!

 

「思ったより楽しんでたね」

 

「まあな。それよりも途中の絶叫聞こえたか? おんぎゃあってやつ。あれ誰だろうな」

 

「それは気になる。6人のうちの誰かかな」

 

話しながら荷物を取って出口に行こうとすると、係員のお姉さんが慌てて呼び止めた。何かあったかな、と話を聞いてみると、指さす方向に峰と尊史がいた。

 

2人ともまだジェットコースターの上で、まさに白目をむいて気絶している真っ只中だった。

ちなみに、読者の皆様はスマホアプリのパワサカをやってらっしゃいますの?

  • ほとんど毎日遊んでいますわ
  • コラボとかだけですわ
  • 昔やってましたの
  • パワサカ? それはどんな洋菓子ですの?
  • 知ってるけどプレイはしませんの
  • パワプロに一途ですわ
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