転生したから世界一のサイドバック目指す   作:口の端にほっぺが!

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遊園地 観覧車編

「おんぎゃああああ! はマジで録音しときたかったなあ」

 

「ほんとでやんす。目の前から爆音で聞こえて吹き出したでやんすよ」

 

時が過ぎるのは早いもので、既に赤い空が青黒く染まっていく。綺麗なグラデーションが街を照らしていた。

 

絶叫やお化け屋敷なんかを沢山楽しんだあとで、最後に8人で観覧車に乗ることにした。少し狭いが、俺は女子3人と椅子を分け合ってるので問題ない。峰、沼野、尊史、矢部坂で分け合ってる反対側の椅子はさぞきついだろう。ナム。

 

ちなみに、今の話題は最初のジェットコースターで峰があげた「おんぎゃああああ!!」という悲鳴について。あまりにも爆音だったために自分どころか隣の尊史も気絶させ、係員にまで心配される羽目になったのだ。

 

あれから峰は絶叫に乗ってない。お化け屋敷は入ったが、途中のなにもないところで悲鳴をあげてダッシュで抜け出した。本人曰く子供の霊が居たらしいが、そんなのは出てきていない。ただの幻覚にビビったのだ。

 

「ったく、峰は怖がりだなあ。俺なんてバイキング10回は乗ったのに」

 

「あ、最初のジェットコースターの話していい?」

 

「やめろツカサ。それは俺に効く」

 

峰は相当な怖がりだ。だが、彼は俺たちが絶叫を楽しんでいる間それを改善しようと決意したらしく、観覧車には乗ってくれた。まずは高所恐怖症を克服しようというのである。

 

目をがっちり瞑ってしまっているが、一緒に話を楽しめているのだ。とりあえず問題はなかった。

 

話題はテキトーに転がっていく。みんな走り回って、叫びまくって疲れたのだ。沼野なんかはコクリコクリと船を漕いでいる。尊史や川原も眠そうだ。唯一矢部坂だけは遊び足りないようだった。ガキンチョめ。

 

「ね、みんなはどんな夢があるの?」

 

唐突に飛鳥が尋ねる。が、眠たい今にはちょうどいい話題だった。早速矢部坂が食いついた。

 

「オイラはプロ選手になるでやんす。美人なモデルとケッコンするのが夢でやんす」

 

「ぼ、僕もサッカーを続ける、かな。プロには、どうだろう。難しいし───」

 

「誰かオイラに突っ込んでくれでやんす。ただの痛いヤツになっちゃったでやんすよ......」

 

「目指す前から諦めんなよ。俺は峰ならなれると思うぞ」

 

「パワプロくーん?」

 

矢部坂がうるさい。じっと睨んで黙らせると、尊史が笑ってあげていた。優しいやつだなあ。

 

「俺は、プロ選手になって海外に行きたい。最終目標はバロンドールだよ」

 

「尊史らしいな」

 

続けて尊史が語った。眠そうだが、相変わらず熱い何かを目の中に光らせている。

 

「バロンドール、って何?」

 

「あー。毎年世界中で一番活躍をした選手に送られる賞だ。まあヨーロッパでプレーしてないと候補にすら上がんないけどな」

 

「今年のは半年後に発表だよ。俺はロナ〇ドが手にすると思う」

 

「ほーん。今年もメ〇シだ。予言してやる」

 

「ん?」

 

「あ?」

 

「2人とも落ち着いて。それに狭い」

 

俺と尊史が中腰でメンチを切り合うと、ツカサが俺の背中を叩く。この話題は良くないな。少々地雷だったようだ。だけど今年もメッ〇だ。

 

沼野と川原はもう眠ってしまっている。少しヒートアップしたが、お構いなく寝息を立てていた。起こすのは忍びないので、そのままツカサの番に回る。

 

「私も、プロ選手になりたい。ママに憧れてるんだ。中学校はママの母校に行くつもり」

 

「冬河のお母さんもプロ選手だったのか」

 

尊史が興味をもったようで尋ねる。ツカサは頷き、他の面々も初めて知ったことなのか驚いていた。

 

それで、とツカサは続ける。

 

「それで、パワプロと高校サッカーで日本を獲る。その予定」

 

その言葉に、起きていた連中が反応した。

 

「なんだそれ、かっこいいな」

 

「親友のはずなのに初めて聞いたでやんす......。パワプロくん、オイラも混ぜてくれでやんす。きっと日本一の右SBになるでやんすから」

 

飛鳥も羨ましそうにツカサを見ていて、峰は笑っていた。

 

元々ツカサとは一緒の高校でサッカーをしようという話をしている。そして最終的に全国優勝を成し遂げたいのだ。

 

「パワプロくんなら、日本一なんて簡単に取れそうだよ」

 

「そうか?」

 

そんな簡単なものでもないのだが、みんなは笑って頷いてくれる。確かにジュニアでは実際にとったけど。

 

まあ、峰たちがそれだけ信頼してくれているということでもある。純粋に嬉しいと感じた。

 

そして、ツカサが目で促してくる。最後に俺の番だ。

 

「俺はスペインの下部組織に行く。中学の間は海外で修行するんだ」

 

「それ、前に聞いた覚えがある。バ〇サに行きたいんだったよな」

 

「行ければ、だけどな。......それで、高校はツカサと日本一を目指す。高校日本一には、こだわりがあるんだ」

 

へえ、と誰かが呟いた。尊史は興味が湧いたのか、なんだか楽しそうに聞いてくる。

 

「じゃあ、どこの高校に行くんだ? 俺も混ぜてくれよ」

 

「あ、あたしも! 高校日本一は夢があるし」

 

「オイラもでやんす!!」

 

3人の言葉に、峰も小さく「僕も」と呟いた。それは夢がある。このメンバーで高校日本一を目指すのは、ロマンがあった。出会ってから今日まで、全国優勝を目指して心を通わせてきたのだ。小学生の頃からの仲間と日本制覇するのは、それこそ漫画のような野望だ。

 

とはいえ、どこの高校に行くかはさっぱり決まっていない。その辺は中学のときでいっか、と俺もツカサも後回しにしていたのだ。

 

「......決まってない感じでやんすね」

 

「まーな。欲を言えば、クラブレベルの施設が揃ってるところがいい。けど、万年優勝してるような学校じゃつまらない、って思ってる」

 

これは、俺のちょっとした自尊心と好奇心だ。それまで地方大会1回戦負けだった学校を全国統一に導く。そんなヒーローじみたことをしてみたいのだ。

 

「あー。じゃあ海皇山(かいおうざん)とかはなしか」

 

「有名だけどな。こっからも少し遠いし」

 

海皇山高校は俺も知っている。静岡県の高校で、去年の冬の選手権の決勝だけ見たが、大勝して夏冬のダブル優勝を達成していた。優勝が当たり前みたいな高校に行っても面白くない。

 

みんなでうーんと首を傾げる。何も今考える必要は無いが、乗り気だった。

 

「私立とか? お金ありそうだし」

 

「部活に力を入れてるところがいい」

 

「飛鳥とツカサの言う通り、そのふたつを踏まえた学校がいいな」

 

「そ、それとあまり強くなくて、近場のところだよね? そんな都合のいいところ、あるかなあ?」

 

ないよなあ、というのが残念ながら俺の本音だ。無名の高校を一代で全国優勝に引っ張る。これ以上ないロマンだが、その後のプロキャリアを考えると制限が多くなる。

 

「中学に入るまで一年、高校は四年もあるんだ。ゆっくり探してみようぜ」

 

尊史のその言葉で締めくくられた。ちょうど観覧車も一周終えたようで、ドアが開く。風が舞い込んできた。

 

もう、夢から覚める時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

電車の中は思ったより混んでいない。8人全員が座れた。その瞬間にほとんどが泥のように眠る。俺はまだ起きていられたので、駅に着いたら起こす役割を自動的に受け持った。こいつらの降りる駅は一応把握している。矢部坂は終点だったかな。

 

と、隣の席の峰はリュックから本を取り出した。表紙を見てみれば、海外で奮闘しているフォワード選手の著書「フォワードの極意」という本だった。端から覗き込んで読んでみれば、ちょうどポストプレーのコツについて書かれている。

 

峰は熱心にそれを読み込み、時折何かを書き込んでいた。

 

「バイブル、ってやつか」

 

「ビクウッ!!」

 

「そんなビビるなってのに」

 

「ご、ごめん。寝てるかと」

 

やはりビビりは簡単に治ることは無さそうだ。胸に手を当てていた峰は、呼吸を落ち着けてから返事をする。

 

「うん。この本の内容、すごくわかりやすいんだ。ほかのも参考にしたけど、両足使えるようになったのは、この本のおかげだよ」

 

ほら、と見せてくれたページは、赤ペンでところどころ書き込まれたページだった。本には練習方法が書いてあり、赤いペンで自分用に解釈し直しているようだった。月日らしき数字も書いてあり、計画的に練習していたのがわかる。

 

「すげえな」

 

「そ、そんなことないよ。僕はこうでもしないとできないんだ」

 

「でも、それでできるようになるって気づけてるのがすごい。世の中には40年かけても分からないやつとかもいるんだ。十分すげえことだよ」

 

「そうかな? はは、ありがとう」

 

それで、再び本に没頭していく。なんというか、努力家なんだなと改めて気付かされた。こいつは負けても失敗しても、努力を続ける。そういう奴なんだろう。

 

なんだか、眩しく思えた。

 

だが、これが俺のチームメイトなのだと思うと、随分頼もしく感じた。

ちなみに、読者の皆様はスマホアプリのパワサカをやってらっしゃいますの?

  • ほとんど毎日遊んでいますわ
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  • パワサカ? それはどんな洋菓子ですの?
  • 知ってるけどプレイはしませんの
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