転生したから世界一のサイドバック目指す 作:口の端にほっぺが!
「よっと......。よし、カメラの準備はいいでやんすよー!」
七月の第一週の土曜日。今日も俺はパワプロ、秀人、功誠の3人と集まり、サッカーの練習をしている。だけど、今日は秀人がカメラを三脚においてニタニタしていた。
「ほ、ほんとにやるの?」
「昨日言ったでやんすよ、動画で配信すれば有名になって、モテモテになれるでやんす!」
「説得するならもっとマシな動機作れよ。ほら、動画配信しなくてもイケメンでモテモテな俺はどうすりゃいーんですかー」
「かーーーー!! そんなに言うんだったら映らなくていいでやんす!! オイラが有名になってモテてく様をハンカチ咥えて見てるでやんすよ! ほらあっちいったでやんす! しっしっ!」
不安そうな顔でリフティングする功誠。確かに整っている顔を嘲るように歪めて煽るパワプロ。キレて喚く秀人。いつもの光景だ。
「尊史。そっちで1VS1やろーぜ。ユーチューブなんて顔出したら個人情報特定されてネットタトゥーだ」
「ああ。1VS1は久しぶりだな。パワプロはSBもしばらくやってないだろ? ハンデつけるか?」
「おいおい尊史クン。それは舐めすぎじゃねーの?」
「こ、個人情報......。ねえ、僕も1VS1に混ぜて───」
「ダメでやんす。こーせいくんだけは残るでやんす。オイラとモテモテになるでやんすよ!」
哀れ、功誠。ユーチューブがなんなのかはさっぱり分からないが、あれだけパワプロがはっきり意思表示しているのだ。それに秀人の持ち込んでくる話題は少しばかり危険だったりする。君子危うきに近寄らず、だったかな。
それにしても、パワプロはSBを続けていないのに対人守備が異常に上手い。以前より上達している。
強引な縦突破をしても、パワプロも強引に体を入れてくる。カットインも体を当てられてシュートが緩くなる。最近習得したエラシコやシザースもしてみるが、むしろそっちの方が楽に対応されている。
コーべの右SBも中々の相手だったが、パワプロはそれ以上だ。
「驚いてんだろ。俺だって成長してんだ。身長だってまた伸び始めたんだぞ」
「たしかにな。無理やり足が入ってくるし、前みたいに軽く押せば吹き飛ばせるわけじゃないな」
「おら、俺の三連勝だ。エラシコでもシザースでもクリロナチョップでもなんでも来いよ。全部俺の獲物だ」
「見てろ......」
パワプロは体が大きくなって守備が良くなったらしい。たしかに身長差はちぢめられている気がする。俺が小さくなったわけは無いから、成長期なんだろう。近頃膝が痛いと気にする場面もあった。
俺とパワプロとの間にあったのは、フィジカル差が最も大きいのだろう。それ以外の部分では、ほとんど互角───いや、むしろパワプロの方が技術的に上だ。
「なあ」
「あん?」
しばらく1VS1を続けたあとで一息入れる。そのタイミングで給水して、パワプロに声をかけた。
「お前は色々研究しながら上達してるだろ? 俺のドリブル、一緒に考えてくれないか?」
正直、ドリブルに関して言えばプライドがある。ホコリがある。今までこれで抜けない相手はいなかったし、実際パワプロも苦戦していることに間違いはない。
だが、パワプロは打ち倒すべき強敵であると同時に、共に強くなる仲間だ。
こいつのやり方から学べるところがあるなら、是非もない。
真っ白な水筒から口を離して、パワプロは頷く。
「いいぜ。俺もドリブルできるようになったら選手としての幅も増えるし、一緒に考えてやる」
その後パワプロに礼を言って早速ドリブルの練習を始める。パワプロはまず言葉で説明した。こいつにはこうやって言葉にして整理したがる癖がある。
パワプロによれば、ドリブルは一対一の連続だと言う。そしてそれを制するには、いくつか方法があるのだと。実力が拮抗している場合には、選択肢を複数用意して相手を惑わせてやるのがいいらしい。
「守備もただの障害物じゃない。相手の選択肢を削って、よりリスクを小さくして対応しようとする」
「パワプロが縦警戒してるのもそうだろ? 一番ゴールに近づくから」
「まあそれもある。あとは利き足でプレーさせたくないってのもある」
「それでカットインして、ボールを奪われたりブロックされたりするのがよくあった。......シザースしても縦を抜ける気はしなかったな」
俺のドリブルの選択肢は、縦か中だ。中も縦と同じ精度でやれれば脅威は増すだろう。そうすれば、守備側も対応に困ることになる。
「あとは、パスだ。スピードでぶち抜かれるのを警戒してディフェンダーがスペースを作ったんだったら、クロスをあげればいい」
「ああ、いいなそれ。確かに俺が加速しようとしたら思いっきり下がる時がある。......クロス練習するか」
「だな。それがいい」
それから、クロスの練習を始めた。俺はあまりクロスをあげたことがない。俺がゴールを決めるからだ。アシストの時は大抵相手ゴール近くからゴール前にグラウンダーのパスを送っている。まずはパスを浮かせるところからだ。パワプロは「飛鳥に教えを乞うといい」と言っていた。確かに高見のクロスは上手い。次の練習で聞いてみようか。
そして、今度はパワプロの番だ。とはいえ、パワプロもドリブルが下手な訳では無い。単純に経験値が足りないのだ。よって、俺との1VS1をすることになった。
そうして20分ほど時間が経つ。再び給水しながら、秀人の方を眺めていた。羨ましいとかではなく、功誠が心配だった。
「ペットボトルチャレンジ、でやんす!。わーー! というわけで、あそこに並べた五本のペットボトルを、シュートで倒すチャレンジをやるでやんす。ルールは簡単、5メートルの距離から、合計で5回シュートを撃つでやんす。倒した本数が多い方が勝ちでやんすよ! ......コーセイくん」
「......え、あ。わーい、わーい......」
「はい、じゃあ最初にオイラからでやんす。世代最強のSB、いざ参らんでやんす」
なんだか思ったより面白いことをやっている。この公園は割と広く、二箇所にアスレチック場がある。その中でも大きい方は子供たちに人気があるが、小さい方はそうでもない。その小さな木組みの5箇所にペットボトルを置いて、5メートルの距離から秀人が狙っていた。
当然キック精度を試すようなことに目がないのがパワプロだ。今もドリブルの練習をしながら虎視眈々とチャレンジを眺めている。
功誠が手持ちカメラを向ける先で、秀人がシュートを始めた。一本目、ハズレ。二本目、ハズレ。三本目、四本目と当たった。が、五本目は力んだのか宇宙を開発していた。
「二本でやんす。いやー、ちょっと滑っちゃったでやんすね」
「で、でもすごいよ。いつものパス練より正確だよ?」
「あーーーーー! うるさい、言うなでやんすー!」
そして、秀人が功誠からひったくるようにしてカメラを奪い、次は彼の番だと促した。
「あー、滑ったー!」
が、パワプロの間抜けな声とともに背後からボールが飛んで行った。かなりのスピードで撃たれたボールは寸分たがわず残った三本のうちの一本を弾き飛ばす。
呆然とする二人に「ほら、映しとけ。距離はだいたい10メートルはあるだろ?」と指示を出し、俺に手招きした。
俺がボールを放ってやれば、ダイレクトで左足をふりぬいた。斜め回転のかかった浮いたシュートは、これまた正確にペットボトルの一本を撃ち抜く。もう一本も同じように撃ち抜き、変わらず呆然としている秀人の持っているカメラに近づいて、ドヤ顔で言い放った。
「ピース、オーブ、ケーイク」
「うぜえええええええええええでやんすうううう!!」
当然、秀人は面白いくらいにブチ切れていた。
☆
後日そのユーチューブとやらで秀人の動画を見てみれば、意外と反響があったようだ。再生数は二万と、多いのか少ないのか分からないが、「面白い企画!」だとか「上手だ」とかの肯定的なコメントが散見された。
ちなみに「うぜえクソガキ」だとか、「うめーけどこのドヤ顔腹立つわあ」なんてコメントもあったのでパワプロに伝えてみたが、至極ご満悦なようで、その日はニヤニヤしながらえぐいパスを通していた。
ちなみに、読者の皆様はスマホアプリのパワサカをやってらっしゃいますの?
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ほとんど毎日遊んでいますわ
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コラボとかだけですわ
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昔やってましたの
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パワサカ? それはどんな洋菓子ですの?
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知ってるけどプレイはしませんの
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パワプロに一途ですわ