転生したから世界一のサイドバック目指す 作:口の端にほっぺが!
梅雨が明ける。じっとりとした空気はだんだんカラッとしたものに変わっていく。夏が来るのだ。
夏のサッカーはひたすらに暑い。去年も日本の計測史上最高気温を更新していたはずだ。夏の暑さは年々増している。地球温暖化は恐ろしい限りだ。
セミの声を聴きながら、近くのスポーツ用品店へ向かう。少し遠くに行けばデパートに大きなチェーン店がある。だが、こういうこじんまりした老舗も好きだ。俺の顔を覚えてくれるし、欲しい商品を寄り添って考えてくれる。
いつものように店に入り、店長であるおじいさんに声をかける。膝あてが合わなくなってきたのだ。マグワイ〇*1のようにサイズの合わないものを付け続ける訳にもいかない。自前のサッカーボールにお店の空気入れを勝手に借りて空気を入れながら、精算を待った。
「おじさん、こんにちはー」
すると、ドアが開いて一人の女の子が入ってきた。小さな店だが、好んで利用する人も少なくない。その女の子もその類の人らしく、おじいさんは笑顔で名前を呼んでいた。
その名前で気づく。
「飛鳥じゃん。元気?」
「ぱ、パワプロ? 偶然ね」
私生活ではなかなか会わない、飛鳥が来ていたのだ。
☆
「ごめん、待ってもらっちゃって」
「いーよいーよ。俺が待ちたくて待ったんだから」
飛鳥の用事が終わり、一緒に歩いて帰る。ちょうどお昼すぎで、せっかくなんだからということでアイス屋さんに寄った。
俺は三段アイス、飛鳥は二段アイスを買っていた。俺が味変三種を選んでいるのに対し、飛鳥は見た目が可愛いふたつだ。これが男女の差というのだろうか。
「あんたも、あのお店使ってたのね」
「ああ。色々話してくれるし、居心地いいし」
「わかる! おじちゃんの話面白いよね」
お店の奥の2人席のテーブルに座ってアイスを頬張る。外が暑かった分だけ快適で、アイスも体に染み渡った。この甘さは病みつきになる。2年前にオープンしたが、夏には週一で訪れるほどに好きなのだ。
「あんた、随分幸せそうに食べるね」
「......ん? そんなふうに見える?」
「それはもう。でも、その気持ちは分かるよ。おいしいもん」
「そうだな、おいしい」
ゆっくりとした時間が進む。俺の方が一段多いので飛鳥が早く食べ終わったが、俺に遠慮してか黙ったままでいる。大きな瞳を細めて外を眺めている様は、実に絵になっていた。
「あんた、中学になったら外国に行くんだよね?」
「ん? ああ、そのつもり」
「そうなんだ」
すごいね、と飛鳥が呟いた。確かにすごいだろうな。前世に俺がすごいな、と感じたことをやっているんだ。
「パワプロはさ、どうやったらあたしは上手くなれると思う?」
「そりゃ、既に上手いじゃんか」
「そうじゃなくて、もっと上手になりたいの。どうすればいいと思う?」
悩み相談だろうか。とは言っても、飛鳥は至って真剣に練習に取り組んでいる。監督の指示に正しく従い、時にコーチにアドバイスを求める。後片付けをサボるやつには注意して、自分から率先して仕事をこなす。
いわゆる、優等生タイプだ。
「どうするったって、そうだなあ」
このくらいの歳の優等生は、言われたことは素直にこなす。けれど、その分だけ自分で考えないという悪い癖があるように思う。前世で家庭教師をやっていた頃の印象だ。
こういうタイプは、サッカーで言うところのDFに向いている。今でこそあまり浸透していないが、10年も経てばディフェンスの決まり事は明確になる。することの優先順位や原則さえ守れていれば、失点することは限りなく少なくなるのだ。
その点において、飛鳥はDF向きだろう。
だが、彼女はWGだ。いずれSBにコンバートする可能性もあるが、体の小さい彼女では対人面で劣る。正確なクロスは高い位置でこそ活かせるはずだ。
だが、アタッカーは杓子定規ではいけない。ディフェンダーよりも工夫が必要な場面が多い。これは攻撃が守備ほど言語化されていないことも大きいだろう。
まあ、これは全て俺の持論なのだが、飛鳥にはそういう考えの「自由さ」が足りない気がする。
「......例えば、なんでもいいから新しいことを続けてみる。そして、しばらくしてからやっていることにどんな意味ができて、どんな効果があるのか考えてみる。......みたいなことをやってみるといいんじゃないか? 」
「......つまり、とにかく色んなことを試してみろって?」
「ああ。ほかのやつがやってる基礎練とか、あるいは違うポジションの練習とかでもいい。無駄かもしれないって思いは置いておいて、まずやってみる、それから考える。───即席だけど、こんな感じでどうかな」
飛鳥の自由さをどう育んでいくか、なんて俺に正解は分からない。実際に足りてないかも分からない。だから、彼女の中に「無駄」ができるように、と考えて言ってみた。無駄ができるほど、それが必要だったかあるいはどう生かせるか考えることができる。それにそういった余分もプレーには必要なのだ。
まあ、余計なお世話だったかもしれないが。
「ありがとう。パワプロの言うことだもん。やってみる」
「そっか。俺も手伝うよ。1VS1とかいい相手になると思うぜ」
「それは......遠慮しとく」
なんでや。
☆
アイス屋を出て、お互いに家路に着く。とは言っても帰路は結構重なっていた。飛鳥は尊史と同じ学校らしい。
俺の家は大きな川の近くに建っている。川が流れ、広い土手があり、道路を挟んで家が一件。そして空き地を挟んで俺の家だ。空き地では小さな子供たちがサッカーをしている。土手は野球で使われているし、この空き地は近所の子供にとってはちょうどいいんだろう。ただ、母は窓ガラスが割れない対策を考えるのに頭を悩ませていた。
「そういえば......」
「ん? どうしたの」
はしゃぐ子供たちを見ながら、飛鳥がふと呟いた。聞き返すと、一瞬迷った後、ふるふると首を振っていた。
「ううん。あのさ、パワプロはなんでサッカー始めたの?」
「なんで始めたか?」
「うん。ほら、テレビを見た、とか。ない?」
「うーん」
急に質問をかけられた。
悩ましい、というか難しい質問だ。今世サッカーを始めたのは、未練があったからだ。高校一年生で左膝を壊し、10年のサッカー人生に終止符を打った後悔が、死んでもなお俺を蝕んだからだ。
前世はどうだろうか。もはや覚えていない。
親に始めさせられたんだったか。ロ〇カルを見て始めたような気もする。40年前のことだ。もう記憶の引き出しには用意がなかった。
「そんなに重く考えなくてもいいんだけど......」
飛鳥も困り顔だ。が、モヤモヤしたまま適当な答えを返すのは俺の性じゃない。
「俺は、プロ選手になるんだっ」
「俺も俺も!」
「日本代表のFWになる!」
そんなおり、子供たちから叫び声が聞こえた。何人かでパスをしながら、子供にありがちな夢見る掛け声をあげた。
俺も、今世は熱く決意していること。そして、前世でずーっと信じて同じように叫んでいた気がする。
「もう覚えてないけど、多分こんな感じなんだろうな」
俺の根っこは、それしか残っていなかった。けれど、これで充分だろう。
「......うん。すごく素敵で、かっこいいよ」
「ありがとな。そんな飛鳥はどうなんだ?」
彼女も同じだろうか。あるいは、ツカサみたいに別の理由があるかもしれない。
興味本意で尋ねてみれば、答えは用意していたようでニッコリとした笑顔で答えてくれた。
「それはね、サッカーしていた姿がかっこよかったから」
細められた彼女の目は、キラキラと輝いている。彼女が上手になりたいのは、自分もかっこよくなりたいからなんだろうなあ、なんて夕日に映える彼女の笑顔を見つめながら思ったのだった。
ちなみに、読者の皆様はスマホアプリのパワサカをやってらっしゃいますの?
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ほとんど毎日遊んでいますわ
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コラボとかだけですわ
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昔やってましたの
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パワサカ? それはどんな洋菓子ですの?
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知ってるけどプレイはしませんの
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パワプロに一途ですわ